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新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 最新エントリー

 

一 京都地裁平成25411日判決の紹介
 
上記判決掲載の判例時報2192号による事件の流れ
(1) 遺言書を残された方は会社を経営する女性の方でした。
彼女は京都祇園で舞妓・芸妓さんをされていたそうですが、東京で呉服商を営んでいた男性と結婚されました。その男性が祇園で呉服商を開かれ、会社組織にされ、大阪や名古屋にも支店を出されております。ご主人の亡くなられた後も経営は順調だったようです。
判決文を追っていきますと、ご主人が亡くなられた約27年後に最初の自筆証書遺言を作成されておられます。その内容は“私の遺産はお任せしている弁護士○○に遺贈します”という平仮名まじりの内容で、その女性にはお子様がおられませんでした。ご両親やお子様がおられませんので(兄弟姉妹に遺留分はありません)、その女性の遺産は全て弁護士○○に渡ることになります。
 
(2) 遺言をされた2年後、その自筆証書遺言を秘密証書遺言にされました。もちろん遺言執行人として二人目の弁護士も登場しますが、 弁護士○○は将来の紛争を恐れて、念を入れられて秘密証書遺言にされたのでしょうね。
ところで秘密証書遺言とは、民法970条によるもので、そんなに難しく考えることはありません。当事務所でも、遺言者の入院先は当然、自宅にも公証人の先生をお連れして作成しております。
本件もそのような感じで作成されております。前項の自筆証書遺言を公証人や証人の前で、自筆証書封紙に署名押印する手続きでされたようです。
 
(3) この事例紹介では、相続財産についても詳細に触れております。
 その女性が、結婚直後に自宅不動産を自分名義で取得されているものを別にしても、預貯金だけでも3億円を越えております。本件で特に問題とされた会社の株式については、純資産方式で2億円を越える資産であったとあります。
 ところで預貯金に関し、その弁護士○○が17000万ほどの払い戻しに関与されていたようです。これも別途裁判が行われている旨の記載があります。姉の養子という方が登場し、どんどん小説のような感じで広がっていくのですね。
 
本事例の争いの骨子「認知症と遺言書作成能力」
(1) 本件遺言書に関する争いは、この女性に遺言書を書く能力、即ち遺言能力があるかどうかが最大の争点になります。この女性の姉の養子になられた方が、この女性は「認知症であって遺言能力はない」と主張され、原告として秘密証書及び自筆証書遺言の無効訴訟を提起されたのです。無効になれば原告は、女性の兄弟姉妹の養子ですから、自ら遺産相続人として登場できるのです。
もっとも「この女性の姉の養子」という身分関係自体も深刻な争いの対象になっております。上記身分関係の判旨を読んでおりますと、女性の複雑な生い立ちが直ちに分かることになります。この女性は自らを「天涯孤独の身で相続人はいない」と自称する女性ですから、当時の日本の社会状況・世相をよく表しているのです。
 
(2) ところで、この女性が自筆証書遺言を作成された当時、彼女は87歳で、その翌年にはアルツハイマー病と診断され、痴呆の状況は「?」段階とされているのです。
認知症に関する医学的所見や日常生活の状況を読んでいく限り、この女性の判断能力には疑問が生じざるを得ません。認知症で悩まれる相続人の方がいらっしゃれば、是非とも一読してください。
特に本件は株式の遺贈に論点があてられております。確かに会社経営に関して100%の株式が弁護士○○のもとに渡ってしまうのです。高度な判断能力が要求されるでしょう。姉の養子となられた女性は、祇園店の店長をされ、会社運営に尽力されていた方でした。
 
二 遺言能力に関する裁判所の判断
 裁判所の判断を抜き書きするだけで十分なほどです。
まず「遺言能力の相対性」の項目から見ましょう。判例は、近代法の原則から解きほぐしています。「私的自治といえども正常な意思活動に基づくことが前提」としております。次に纏めの部分を見ましょう。
20歳以上の者であれば誰でも有効に契約が締結できるわけではないし、15歳以上の者であれば誰でも有効に遺言ができるわけではない。・・遺言を行うのに要求される精神能力は特に「遺言能力」呼ばれる。意思表示がどの程度の精神能力がある者によってされなければならないかは、当然のことながら、画一的に決めることはできず、意思表示の種別や内容によって異ならざるをえない(意思表示の相対性)」
「しかしながら、本件遺言は文面こそ単純であるが、数億円の財産を無償で他人に移転させるというものであり、本件遺言がもたらす結果が重大であることからすれば、本件遺言のような遺言を有効に行ううためには、ある程度高度(重大な結果に見合う程度)の精神能力を要するものと解される。」
 
以上により、秘密証書遺言を無効とし、次にその2年前に作成された自筆証書遺言も同様に無効としました。
 
三 感想
お医者さんやその家族から「患者さんより、遺産全部をあなたに遺贈する遺言書を作ると言われているが」という相談は、枚挙にいとまがありません。羨ましい職業ですね(弁護士にはないです)。でも「面倒なことに巻き込まれることもありますよ」とアドバイスしております。

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一 新年にあたってのご挨拶と思い出
 
  本年も宜しくお願い致します。
 
1   新年を迎えまして、「新年の始めには遺言書を書こう」と宣伝していた10数年前のことを思い出しました。
      当時、私は、東京にある三つの弁護士会が作っていた法律相談センターを構成員とする東京法律相談連絡協議会の議長をしておりました。各々の弁護士会が、別個に組織していた法律相談センターを纏める組織としての協議会ですから(当時新しい弁護士会館ができ、三弁護士会を束ねる組織がやっと機能し始めた頃です)、この協議会の影響力は大変なものがありました。そこで種々議論をした結果、新年の始めには、「遺言書を作成すると言う習慣」を作って頂きたいという宣伝活動をすることになったのです。現在、各弁護士会には遺言センターなども組織されておりますが、当時は遺言書の作成について、組織として議論する環境はなかったのです。
 
 2   弁護士会のことなど、どうでもいいのですが、「新年の始めに、遺言書を書きましょう」と提案したことには特別な意味があると思います。これは“死後の相続争いを避けるため”という実用的な面だけではなく、人生の締めくくりや希望の意味を込めて、年の始めに自分の思いを遺言書で残すことも大切な習慣になるはずです。
      ところで遺言書の作り方はネットで氾濫しております。私のコラムではそんなつまらないことは書きたくありません。毎年作成するということに疑問をお持ちの方に説明しておきますが、民法の定めに従って作成していただく限り、最後に作成された日付けの遺言書が有効になります。従って、前の遺言書が残っていても何の問題もありません。このような私の思いのせいでしょうか、当事務所の貸金庫には遺言書が大量に保管されていたこともあります。
 
二  遺言書を巡る事件
1    遺言書に関係する事件も本当にたくさん扱ってきました。遺言書作成当時の遺言能力に疑問を感じ、医療鑑定をした経験もありますし、自ら長谷川方式で認知症テストまでしたこともあります。遺言書の筆跡鑑定程度の事件なら、たくさん扱ってきました。
今回は、一つ目として、遺言書の作成で受任した弁護士が失敗した事例を紹介しましょう。この事案なら私の依頼者と関係がありません。そして、もう一つは、一昨年「判例時報」という弁護士にとっては有名な雑誌に紹介されていた事案を紹介しましょう。この事案のような、まるで時代小説のような事件も経験しましたが、公開されている事例を紹介するのですから、遠慮なくその詳細をご紹介できます。
 
2   最初の事件ですが、弁護士が遺言書の作成で失敗したにもかかわらず、その後始末にも失敗された事案です。つまりその遺言書で自らを遺言執行人に指定されておられました。私はその弁護士(巨大事務所の有名弁護士さんです。一度事務所をお尋ねしましたが、驚くほど広かった)の遺言執行人解任の申立(民法10191項)のみ受任しました。その際、関係する相続事件等には一切関与しておりません。                                                          
        この事案は、遺言書の作成について注意するべき論点の一つです。
 
       本論ですが、有名な弁護士さんは、超資産家の顧問のような立場におられたのでしょうか?奥様の話を聞いて自筆証書の遺言書を自ら下書きされたようです。二点の曖昧な記述部分についての説明で、弁護士さんは他の相続人に対し、以上のような説明をされたそうです。
          不明点の一つは、超高級賃貸マンションの奥様の持ち分5分の3(5分の2は、元々長男所有)の遺贈に関する規定が疑問でした。この弁護士さんは「この持分五分の参のうちの五分の壱」を長男に相続させると記載されたのです。通常の常識からは「うちの五分の壱」ですから、全体で25分の3になります。しかし、この弁護士さんは奥様から直接、長男の取り分を5分の1にしてくださいと話されていたと主張されました。つまり25分の5です。長男には絶対的な持ち分ということ以外に、何十億の物件なのですから、金額としても大変な違いなのです。
          皆様、面白いでしょう。単純に5分の1になるように計算して表記すればよかったはずです。或は奥様の言う通りに書いてしまってもよかったのです。もちろん登記できない表現では、長男が遺言書に基づいて単独で登記できませんから、弁護士として失格ですが・・。
          結論として、有名な弁護士さんの言うとおりの登記申請は法務局が受理せず、遺言書に基づく登記はできませんでした。やはり失格です。
 
4   第二は、重要文化財クラス()の骨董品等の所有権の来歴を調査されないまま、奥様の申されるとおりに長男への遺贈として下書きされたようです。これは先に亡くなったご主人の遺産分割協議書等、多少調査されれば事実が違うこともすぐに分かったはずです。
        弁護士さんは、その後も遺言執行人として「奥様の話しを直接聞いた」として長男の弁護をされ続けたため、私は遺言執行人解任申立事件のみ受任しました。家庭裁判所裁判官は「みっともない」と感想をもらされ、私の知らないところで有名弁護士さんに「辞任する」ことで話をつけられ、私は依頼者の説得を頼まれ、事件は終了しました。
       上記事件の依頼者は、優秀な方で資産家ですから、その後の相続については「普通に終わりました」という報告しか受けておりません。つまり弁護士さんの介入がなければ何の問題もない事件だったのです。
予定ページになってしまいました。第二の事件紹介は次回のコラムに譲らざるを得ません。
次回は、「時代小説もどき」の紹介ですね。

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一 この一年間の感謝の言葉
 
   皆様、本コラムを読んでいただき、本当にありがとうございます。
   年末、いろんな方々から私のコラムを「読んでいるよ」というお言葉と感想をいただきました。正直なところ、このような反響は想像もしておりませんでした。よく考えてみますと、昨年、毎日新聞の「週刊エコノミスト」の記者からコラムを読んだとして執筆依頼があったことに続き、メデイアから種々取材のあったことから推測して、読者の皆様の存在に気付くべきであったのです。
私のコラムがそんなに読まれているなどと思いもせず、そろそろコラムを卒業し、違う形のものを書きたいと考えていました。「不動産の放棄のコラム」については、出版社から原稿依頼があったこともあって、他のことができないかと、いろいろ模索しておりました。でも、私の思いを楽しんでくださっている方々がたくさんいらっしゃることに初めて気づきました。
感謝の気持ちで一杯です。
 
二 相続事件の多様性
 
1  これから暫くは「相続関係」に想いをはせようと考えております。 
       我が国の老人人口の伸び率は凄いものがあります。現在4人に一人が高齢者という人口構成では、今後、どんどん社会のひずみが表面化してくるのは当然のことです。
老人国家に移行するにつれ、当事務所における受任事件も「老人社会問題へ移行」(?)しております。相続関係事件が日々増大し、その急激な伸びには当事務所副所長も驚いております。
 
2   相続に関係した事件を大量に取り扱っておりますと、深刻な家庭内紛争にも出会い、相談しているだけでも落ち込みます。そして気づきますことは、単純に相続事件と言いましても、実に多様性を示す事件が多いということです。
       今回は、30年近く前、自殺されたことが、相続法理としてどのような法律構成ができるのか悩んだ事件を紹介しましょう。
内容は「家出をして行方不明になっていた認知症気味の父が、賃借アパートで自殺したため、大家さんから、相続人である妻とお子さん宛に動産撤去、原状回復、滞納分家賃の請求、誰も借りてくれないことによる損害を賠償するよう請求されている」というものでした。
 
3    当時、自殺に触れた判例はありましたが、アパート経営者に大打撃を与えることを前提に、全面的に認容した判決は見当たりませんでした。ましてや賃借物件であるマンションに居住していた者の自殺が、相続事件として取り扱われるものは見聞できない状況でありました。
しかし、そもそも民法は、896条で「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」とされています。亡くなった方の「一切の権利義務」というのですから、その幅は確かに広い。自殺しないことが契約上の義務なのか一般不法行為なのかを別にして、損害を請求する大家さんの気持ちは分かります。そうすると、貸せなくなったことによる損害は契約責任なのかどうかも弁護士の関心の的になります。不法行為として構成する電車投身自殺を思い出してください。
 
  賃貸マンションでの自殺
 
   私が弁護士になった頃、売主である著名な一部上場企業を相手にし、自殺について説明しなかった説明義務懈怠を理由に損害賠償請求をしたことがあります。当時は売買契約についても、売買目的物での自殺について種々議論があり、認容を前提とした判例はありました。しかし確定とまで言える状況ではありませんでした。売主である一部上場企業のエリートサラリーマンも、証人尋問で自信を持って証言しておりました。その意味で本判決は、今弁護士のあいだで流行の「不動産売買と自殺」シリーズ、弁護士コラムの草分け的な存在です。当時は判例の取扱いが慎重だったように思います。あの勝訴判決はどうなったのでしょうか?判例集に載せたければ、低い損害賠償金額に拘らず、契約の解除まで主張すればよかったのかもしれません。でも依頼者は、転売目的で購入された業者でしたから、解除まで希望されておりませんでした。
 
2  本題です。相続人は自殺した方の何を相続するのでしょうか?
       自殺者は死なれた瞬間この世におられません。大家さんは、何故損害賠償請求できるのかの法律構成ができなければ相続人に対して請求できません。もちろん不法行為構成も可能ですが、これは契約関係に基づく法理ではありません。不法行為ですと、大家さんには賃借人の過失に関する立証責任が課されます。前記相談事例の行方不明の父が認知症で意思(責任)能力がなく、しかも行方不明ということですから妻やお子さんに監督できない状況があります。これは請求が難しい。
手っ取り早く判例を見てみましょう。自殺事件では、必ず引用される東京地方裁判所判例を紹介します(平成19810日付判決)。
「賃貸借契約における賃借人は、賃貸目的物を・・返還するまでの間、賃貸目的物を善良な管理者と同様の注意義務をもって使用収益する義務がある(民法400条)。・・自殺により・・心理的な嫌悪感が生じ、一定期間、賃貸に供することができなくなり、(賃料が低下することは)常識的に考えて明らかであり・・自殺しないように求めることが加重な負担を強いるものとも考えられない」としているのです。
 
3  抽象的な規定である善管注意義務違反を相続するのですね。私も当時、賃借人には使用貸借準用の「用法義務違反」とは考えておりましたが・・。「悩む法律家はまどろっこしい」と思われますか?

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一  当事務所が数多くの立退き案件を取り扱っていることは、これまでいくつかのコラムの  中でお話しした通りです。
 
二  当事務所は、主として貸主又は不動産業者の立場から受任することで多くの成果を挙げておりますが、借主から依頼を受けることもあります。
    以前のコラムにおいて、借主から依頼を受けた事案で賃料200ヶ月分の立退き料を獲得した事案を紹介いたしましたが、つい最近も賃料100ヶ月分を超える立退き料を獲得した事案もございます。
    近時の裁判例は、耐震性に関して貸主の立場である正当事由の認められる可能性を増大させているように見受けられます。
   注意されねばならない論点が増えております。
 
三  近時、開発案件などで立退きのご相談を頂く機会が増えておりますので、改めて立退き料の動向についてご紹介させて頂きます。

立退き料
平成26年12月19日東京地裁判決
3237万3000円
耐震性能不足に起因する本件建物の取壊しの場合、賃貸人だけに負担させるのは相当でない。立退料は、賃料差額を1344万円(〔月額新規支払賃料206万円−月額実際支払賃料150万円〕×補償期間24か月)、一時金運用益を32万8000円(〔新規月額賃料206万円×10か月−本件賃貸借契約の保証金1240万円〕×運用利回り2%×2年)、新規契約に関する手数料等及び移転費用、営業補償費、内装費補償費、広告宣伝費等を1860万5000円とした合計額とする。
立退き料
平成26年12月10日東京地裁判決
3318万9825円
(賃料の36ヶ月分超)
立退料は、移転までの空白期間について、本訴提起前の交渉経過とほぼ同程度の期間である約1年半程度と想定し、その間の賃料等相当額に直接剰余を加えた程度の額とする。
立退き料
平成26年7月1日東京地裁判決
5120万円
5215万円
180万円(賃料約2年分)
立退料は、移転実費、借家権そのものが有する財産的価値(借家権価格)及び営業上の損失に対する補償額を考慮した上、そのうち立退料以外の事情による正当事由の充足度を踏まえた一定額とする。
左記はいずれも異なる店舗である。借主が平成25年8月以降営業を行っていない状況を考慮している。
立退き料
平成26年4月17日東京地裁判決
124万8000円
(賃料6ヶ月分)
借主は既に本件建物での営業をやめているのに対し、貸主は道路拡幅工事のための用地買収に応じるために本件賃貸借契約を解約して本件建物を取り壊す必要がある。
賃貸人からの解約申入れの猶予期間が本件賃貸借契約において6か月間と定められていたことなども考慮している。
立退き料
平成25年12月11日東京地裁判決
215万円
借主が家財を搬出して退去する費用相当額、新たな賃貸物件等住居を確保するために要する費用相当額、相当期間についての当該物件の賃料と借主が本件貸室について支払っていた賃料との差額相当額を考慮している。
立退き料
平成25年6月14日東京地裁判決
4130万円
耐震補強工事に代えて建替えを行うことは貸主にとっても費用対効果上メリットであること、建替えが結果的にもたらす敷地の高度利用化という利益も専ら貸主が取得することなどを総合考慮し,借家権価格(鑑定の結果)の半分相当額とする。※賃料月額315万円
立退き料
平成27年3月20日東京地裁判決
0円
木造住宅であり、少なくとも増改築前の部分についてはその建築から50年を優に超えていること、貸主は現在67歳の単身生活者であること、50年を超える長期にわたって本件建物の所在地を生活の本拠とし今後も本件建物を建て替えて同所で生活する意思を有していることなど貸主側の立場を考慮している。
他方で、借主における本件貸室の用途は専ら経理関係の書類等の保管にすぎないことを考慮している。
立退き料
平成25年1月23日東京地裁判決
0円
耐震性能を現行法の水準にまで高める工事をすることは建物所有者として合理性を有する。本件建物の耐震性能は相当低く、倒壊する危険がある。残寿命は10年程度であり、本件建物を取り壊して新たな建物を建築する等する必要性の高いことを考慮している。
他方で、借主は、本件建物を居住用に使用しているわけではなく、現在は転借人もいない。借主は自ら賃貸物件を多数抱える不動産業者であり、新たな物件の調達にさしたる困難があるともいえないこと等を考慮している。
請求棄却
平成25年9月17日東京地裁判決
正当事由なし
 
建物の倒壊の危険性から取壊しを要すると主張する以上、貸主は本件建物の倒壊の危険性を具体的に立証することが必要であるが、本件建物の耐震性について耐震判断審査を行っていない。なお、貸主は立退き料を支払わないと明言していた。

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1    当事務所が病院やクリニックの顧問弁護士を務めさせて頂いており、様々な形で医療に関与する事件を取り扱っていることは当ホームページをご覧いただいている方には既にご存知のことと思います。
そのような中で、近時、厚生局等から保険診療に関する個別指導や監査があった際に、保険医等が弁護士を同席させることが多くなったという話を良く聞きます。

2    保険医等が個別指導・監査を受けた場合、最悪の場合には保険医指定取消にもつながり得るものですが、過去には行き過ぎた個別指導・監査により保険医が自殺したのではないかと取り沙汰されたこともありますし、国会で取り上げられたこともあります。
東京歯科保険医協会は、平成19年10月4日付けで、個別指導・監査に関連して抗議文を出しております。
そして、当該抗議文には、「一年にわたる長期間の指導を受けたうえ、監査直前に本会会員のM先生は心身ともぼろぼろになり、あげくの果て自殺にいたった。」「最初の個別指導では『こんなことをして、おまえ全てを失うぞ!』『今からでもおまえの診療所に行って調べてやってもいいぞ、受付や助手から直接聞いてもいいんだぞ!』など『恫喝で終始』した。その後も指導時の技官の態度について『なぜあそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか』と涙ながらに訴えていた。」「一回目の指導中断から再開まで九ヶ月もかかり『今まで経験したことのない苦しい時を』過ごし精神的に追いつめられていた。苦しみ抜いたうえでの自殺である。」という衝撃的な内容が掲載されています。

3    医師や歯科医師らからは、弁護士会に対して個別指導・監査の在り方に関して人権救済申立がなされ、平成26年8月26日、日本弁護士連合会は、厚生労働大臣及び都道府県知事に対し、「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」を提出しています。
日本弁護士連合会は、「手続の不透明性」や「指導の密室性」に問題点があると指摘し、保険医等の適正な手続的処遇を受ける権利を保障するため、改善等を求めています。

4    保険医の方の中には、個別指導・監査の際には必ず弁護士の帯同をした方が良いとおっしゃる方もいるようです。
そして、平成23年10月26日付けで厚生労働省保険局医療課が発行した「事務連絡」には、「地方厚生(支)局が第三者たる弁護士の個別指導等への帯同を認めることはあり得る」と明記されています。
要するに、個別指導に弁護士が同行することも可能ですので、保険医の先生が一人で悩む必要性はありません。個別指導にどのように対応すれば良いのか不安な保険医の先生方は是非一度弁護士に相談して頂いた方が良いと思います。

5    弁護士は医療の専門家ではないとはいえ、法的な立場からアドバイスを差し上げ、場合に応じて個別指導に立ち会うことにより保険医の方々の権利を守ることの手助けになると考えております。

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一.     はじめに

1.       毎月配送される判例時報を纏めて見ておりますが、最高裁判所は、昨年3月6日付にて「(第一審で付加金の支払いを命ずる判決が出されたにも拘わらず)控訴審の口頭弁論終結前に未払割増賃金等の全額を支払って(使用者における)義務違反の状況が消滅したときには、裁判所は付加金の支払いを命ずることができなくなる」旨の判決を出しております。
 上記判例は、従来の最高裁判決で疑問になっていた部分に関し、明白にしたものです。つまり、控訴審という第二審であっても口頭弁論終結前であれば、未払い割増賃金等を支払って義務違反の事実をなくしてしまえば、制裁である倍返しのルールが適用されないということを明らかにしたものです。

2.       そもそも付加金という倍返しのルール、即ち労働基準法114条「付加金支払」条項については、若かりし時代より特別な思いで対応してまいりました。私の過去などお話ししたくもありませんが、弁護士になって数年で一弁人権擁護委員会副委員長或はその後すぐに日弁連人権擁護委員会委員となった私にとって、倍返しのルールには敏感でありました。テレビドラマ「半沢直樹」シリーズで有名なせりふ「倍返し」ではありませんが、左翼を称される弁護士の世界?では、付加金命令を取ったことがあるかどうかは自慢の種になったものです。その「自慢大会」?に知らぬまに参加したこともあるくらいです。

3.       付加金とは、解雇手当、休業手当、割増賃金、有給休暇の際の平均賃金を支払わない使用者に対して、裁判所は、それらの未払い金のほか、更にそれと同一額の金額を労働者に支払うように命じることができるというもの(法律学辞典引用)で、法律を守らない使用者に対する制裁として裁判所が付加する裁判であります。付加金が訴えの対象となる訴訟物として計算に入れるのか議論したことが思い出されますし、裁判所の命令なので労働審判事件では審判の対象にならないのですが、でも通常裁判に移行する場合も考えて、付加金の申立ても同時にされる弁護士もおられます。

二.     付加金と固定残業代

1.       付加金に関係する残業代といえば、労働基準法に規定のない「固定残業代」をテーマにするのが自然でしょう。必然的に、今回も優秀な社会保険労務士の先生とタイアップして対応しなければならないという結論になってしまいます。
 そもそも固定残業代とは、一定の時間外割増賃金(残業代)を毎月の賃金などに加算して固定的に支給する制度です。固定残業代とすることについては判例も認めておりますが、しかし判例が指摘してきた要件をみたす必要があるのです。
 通常、残業代を基本給の一部に含まれるものとして支払われている場合、経営者の方は当社は固定残業代として法律通りに定めていますと説明されます。しかし、実際のところ、判例の基準から外れていることが多いというのが実状です。社会保険労務士の先生など専門家に聞いた上で作っていると仰っている会社でも、判例の基準から外れた規定になっていることが、あまりにも多いので驚きます。

2.       仮に、判例の基準から外れた規定をしていた場合、経営者の方からすれば既に支払っていたつもりの残業代をプラスし(それも残業代を含む高い支給基準の基本金額を計算基礎とする)、更に付加金として二重に支払わなければならないことになります。場合によっては1000万円以上支払う金額になることもあり、労働基準法上の刑事罰すらありうるのです。
 平成2438日付最高裁判決、櫻井裁判官の補足意見の要旨「固定残業代の定めがなされている場合、雇用契約上もそれが明確にされている必要がある。支給時、支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、且つ時間を超えて残業が行われた場合には、その所定の支給日に別途上乗せして支給する旨もあらかじめ明らかにされている必要がある」からも分かりますが、固定残業代には今後も厳しい判断が続くものと思われます。

三.     訴訟にしない準備と訴訟になった場合の対応策

1.       残業代請求事件は、いつでもどのような企業でも起こりうる事件です。
従業員に愛を傾けておられる経営者の方に申し上げます。紛争が起きる前に、優秀な社会保険労務士・弁護士等の専門家を入れて事前の検討を行い、「ブラック企業」などと呼ばれない準備が必要です。

2.       仮に、不幸にも訴訟になってしまった場合、労働者側の主張が正しいのかどうかを徹底的に検証して、不当なのであればしっかりと反論していくことが重要です。残業代請求事件は労働者側が有利という前提のため、会社側の大雑把な反論を見受けることも少なくありません。しかし、残業代請求事件における基本的な主張・立証責任は労働者側にあります。会社側で十分に証拠を収集して反論することで、労働者側の主張を弾劾できることも少なくありません。
 その例ですが、残業代請求事件において、使用者側の抗弁により、東京高裁で認められた金額と東京地裁で認められた金額に合計1000万円以上の差があったという裁判例を紹介します(東和システム事件 判例タイムズ136749頁)。
 結論として、ポイントを押さえた主張・立証活動と、しかも粘り強い丁寧な反論が必要であるということです。

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一 「労務管理」という言葉は嫌いですか? 
(1)  企業経営者の皆様、自分の会社で働いてくれている社員を宝だと思っておられますね。当事務所は、会社側の代理人として対応することが通常ですが、社長の真摯な姿勢に感激する体験を幾度もしてまいりました。
  でも会社の健全な成長のためには、愛だけでは不足です。「労務管理」という言葉を聞くと嫌な気持ちになるという経営者の方は、それはそれで立派なのですが、会社の成長なくして、従業員に報いることはできません。その事実は、あなたが一番ご存じのはずです。日々の成長に苦しまれる貴方こそが、「労務管理」の必要性を一番ご存じのはずです。 
(2) 幾度か体験した労働災害の実例、今回は、従業員の死亡の場合について紹介しましょう。
  私が弁護士になったころと比較しますと、近時、従業員の自殺が労働災害の紛争として激増している印象です。私の経験だけでも自殺事件は10件を超えているのですが、その例として皮肉にも「愛の示し方」の失敗により、泥沼状況になった例をあげてみましょう。
  自殺の報を聞いて、一番に駆け付けた営業部長が泣きながら「会社にも非があったと思う」と述べたことから、労働災害による自殺として労基署に申請されました。この案件は、後に双方の感情がエスカレートし、本当に残念な経過をたどりました。また、葬儀に出席された幹部社員のお詫びの言葉によって、会社に強い要求がなされた案件もありました。これらが上場企業の実例だとお話ししたら、あなたは驚かれるのではないでしょうか。
  更に、従業員の病死までも含めますと、残業代、パワハラによる損害賠償請求を巡って、共産党系の弁護士と弁護士会館で怒鳴りあいの交渉になった経験も幾度かあります。この方々は、事実により判断するのでなく、感情的に主張される例が本当に多い。何故か、相手の指定する喫茶店での交渉で、下品な罵詈雑言に対し(この方も、残念ながら弁護士)、「事実に基づいて主張しろ!」と怒鳴り返したのは、私が血気盛んな頃の話です。
 
二 社会保険労務士(以下、「社労士」と言います)の先生 
(1) 労務管理はどうされていますかとお聞きしますと、人情味のある経営者幹部の方の多くは、従業員の就業規則や労働保険、更には給与計算まで全面的に、社労士の先生にお任せしているから大丈夫ですとおっしゃる方が多い。
  確かに、当事務所で提携しているような優秀な先生を除き、全く大丈夫でない実例をお話ししてみましょう。 
(2) 社労士の先生方の未熟な対応により、紛争になった事例は本当に多いのです。かっては社労士の判断ミスによって、懲戒解雇が労働訴訟になった事例はたくさんありました。労働訴訟になれば弁護士の出番であり、社労士では処理できません。訴訟を経験しないで微妙な法的判断をすることが難しいのは誰が考えても分ります。
   最近懲戒解雇の正当性を巡る社労士の典型的な失敗事例は減ってきたように感じます。社労士会等の自覚で講演や実習等をされていることも知っておりますが、むしろ経営者の方々の知識が高まり、懲戒事例の場合には早期に弁護士に相談されるからでありましょう。 
(3)  しかし、労働災害事件は、社労士のミスによる案件が逆に増えている印象があります。
   事件の端緒ともなりますが、労災請求に関して労働基準監督署から関係資料の提出依頼が来た場合、会社の対応としては、社労士に相談することはあっても、弁護士には相談されないということが原因ではないでしょうか。
   驚いたことに、社労士の先生が、「この案件は、どう考えても労働災害として認定されることは無いでしょう」と言われたため、放置していたら労災が認定されてしまったという事件もありました。更には、社労士の先生が作成された書面や発言が逆に会社にとって不利に扱われてしまったという事件も経験しております。
 
三   結論=「社労士と弁護士との協同作業が会社を支える」
     社労士の先生は、訴訟の専門家ではありません。訴訟の代理人にはなれませんし、代理が可能な民間紛争解決手続きにおいても120万円などという制限もあります。訴訟となった場合、二重経費の計上となる弁護士と社労士の先生双方に依頼することは通常ありません。弁護士は登録さえすれば社会保険労務士としての資格も具備できるのですが、残念ながら、弁護士業務と並行して社労士業務である社会保険の代理申請や給与規定のチェックをする弁護士は知りません。両者の業務システムには大きな違いがあるからです。
当事務所は、社労士業務に関しては優秀な先生にお願いしています。何故なら、日常業務となる社労士の先生との協同こそが大切なのです。優秀な社労士の先生は、訴訟になることまで見込んで、日常の労務手続を進めていただけます。根本的なことは、労務管理においては、弁護士と社労士との双方が協同関係をもって、即ち双方の専門家が何時でも連絡を取り合えることを前提として、日常の労務管理を行うことが要諦なのです。このような「企業活動を支える仕組み」を作りましょう。
当事務所は、経験豊富な社会保険労務士法人酒井事務所と勉強会を開くなどして、日常的に連携を取り合い、これまでも様々な事案に対応してきました。

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一 システム開発事件
 
1 20年以上前の事件
(1)  コンピューターが開発の一環を支えるようになり始めたすさまじい経済成長時代を紹介します。お話ししようとする事件は、ITと工場一体型というような大規模開発システムが問題となった紛争であります。
取扱い事件の紹介は極力控えてきましたし、紹介する場合にも特定できない形で紹介しております。しかしこれらの会社は既に存在しない会社です。一つは世界を席巻するアメリカの上場企業に吸収され、もはや誰も関心をもたない遠い昔の事件になりました。
 
(2)  第一の事例紹介は、最先端の医療機器を取り扱う会社と紹介しておきます。この会社は輸出入する医療機器の在庫管理と搬出入に資するシステムを作ろうとしました。医療機器には保存期間があり、しかも緊急手術のため、迅速且つ自動での搬出が必要です。何億円もかけて日本各地にある倉庫の一括管理を目指したのですが、そのシステムがうまく機能しませんでした。開発会社は誰でも知っている世界有数の開発専門会社でしたが、厳しい交渉に難儀しました。当時はシステム開発初期の時代だったため、開発に関する指針もなく参考文献もなく、どう証明するのか悩みました。相手方から提出される証拠を見ていると、一方的に開発会社有利のもので、依頼者は、システムについて理解困難な状況のまま契約しておりました。でも裁判官には、役にたたないものはしょうがないという理解を得てやっと解決させました。
 
(3)  次に紹介する案件も大型工場にて生産される機具(詳細は言えませんが、人力では取り出せず、分解に馴染まない機具)の製造、搬出、保管に関するシステム開発です。これらの機具は、パソコンにより自動的に加工され、組立てられます。その後、自動運搬装置で積込み、保管されます。当然全てパソコンの指示によって自動的になされるのですが、この装置も故障が多くて使い物になりませんでした。
当職への依頼会社は、何億円もの支払いをストップしたためすぐに訴訟事件になり当職が受任しました。開発会社からは、契約書のみならず、当初からの打合せ書、提案書、仕様書や議事録等、システム開発に関係する膨大な資料が証拠提出されました。当時は、そのような場合の事例も一般的になっておらず、資料の読み込みにも大変苦戦したため、直ちに理工学部出身の弁護士に参加してもらい、相手の主張を精査したことが懐かしく思い出されます。この案件では差押えを受け、その差押解除金だけで何億円もの金銭を入れておりましたので、早期解決に尽力しました。この時の報酬額は高額でしたが、何人もの弁護士で分け合ったので、総指揮をとる私自身は不満一杯でした。
 
(4)  近時のソフト開発は社会の隅々に行き渡り、社会のあらゆる分野において当たり前のものになりました。開発ソフトもそれほど金額がかさばらない事案も多くなり、システム開発が一般の経営陣にとって経営改革の当然の前提概念になっております。パソコンは我らの生活、企業活動に深く浸透しているのです。現在我が事務所で取り扱っているソフト開発関係事件を見ておりますと、昔のように特殊領域という概念は露ほども出てきません。
 
2 これらの事案の解決ポイント
(1)  前回、副所長が担当してくれた「情報システム・ソフトウェア関連取引で紛争になった場合の対処法」の解説にありますが、東京地裁の判断基準が指針になる場合が殆どです。でも裁判所が言う「不具合・障害が軽微かどうか」という判断は実際には大変に難しいのです。
 
(2)  そもそも裁判所自身が判断の難しさを述べています。つまり、東京地裁では調停部という部が作られているのですが、システム事件は、通常訴訟の部(特許等は関係がないので、システム開発は通常訴訟です)から付調停という決定がなされて調停部に回付される案件が多いのです。通常部の裁判官から難しいという折り紙がついているのです。また裁判所には専門委員の制度もありますが、この説得も大変です。
パソコンの中身を吟味することがこれほど難しいということは、これらの事件を大量に処理されていない皆様方には理解してもらえないと思います。それほど専門的な分野なのですが・・。パソコンの内部は覗けません。このことについては数学者も問題にしています。
 
二 人工知能の進歩と数学者の世界
 
 1   サイモン・シンの書いた「フェルマーの最終定理」(新潮文庫)を読んでいて驚きました。数学者は、いわゆる遺伝アルゴリズムという考え方を用いて、コンピューター自身が決定を下す新たな仕組みを作ったというのです。現在は、おおまかな構造は数学者が設定していますが、細かい部分はコンピューター自身が決定を下して計算等を行うようになったそうです。プログラムの一部がちょうど生物のDNAに含まれる遺伝子のように変化し、進化していくのだそうです。
 
2    これは数学者の恐ろしい程の精魂つめた努力の必要がなくなり、数学者の楽しみを奪うものであるという感想もありますが、実は、この本では、数学者はコンピューターが正しいと言うだけで証明できたことになるのかどうかと批判しています。この話は人工知能が人間を支配するという映画マトリックスの世界を彷彿とさせます。
早速、パソコンで「人工知能」と検索してみました。「2045年問題、コンピューターが人類を超える」と題して、このままの速度でITが進歩すれば2045年には知性をもったコンピューターが誕生するとありました。私は、その時既にいないでしょうが、驚きの時代がすぐにも訪れようとしているのです。

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1 サイト管理者に対する検索結果削除要請の頻出
 
(1)   ネット社会における変化のスピードは驚くほど早い。
つい最近まで、ネットのサイト管理者は、表現の自由・国民の知る権利を建前に、誰が見ても不都合と判断できる書き込みの削除など歯牙にもかけない対応を続けてきました。
しかしながら、近時、グーグルやヤフーのネット管理者は、自ら削除基準等を公表せざるを得ない社会状況になってきたことを認めております。もちろんその背景として、ネット社会に対し正面から対応してきた当事務所などの努力も評価してほしいものですが・・。
 
  (2) 裁判所もひどかったですね。唾棄すべき判決をいただいた(?)こともあります。
例えば、卑劣且つ虚偽だらけの事実をネットに書きこんだ者に対して損害賠償請求をするため、書き込んだ者の情報開示を求めてサイト管理者に提訴しましたが、東京地方裁判所女性裁判官は「当該書き込みは名誉毀損ではない」と呆れるような判断をし、書き込んだ者に関する情報開示請求を認めなかったのです。当然、東京高等裁判所で逆転勝訴しましたが、この一事をもってしても、時代の急激な社会的変化に追いつくことは、裁判官といえども大変なのです。
ところで法曹界の内輪話として聞いてほしいのですが、裁判官の世界では、上級審で逆転された裁判官には、今後厳しい裁判官人生が待っているというのが相場です。
 
(3) ネット関係の人権侵犯事件の激増を見るだけでも、上記事実は容易に理解せざるを得ません。
2チャンネル等に書きこまれた中傷(実際に相談を受けると衝撃です)や自分の個人情報、逆に安易な気持ちで書いてしまった投稿をインターネットから消したいという相談(そもそも事件)は本当に多いのです。でも、やっと裁判所も検索結果の削除を認める仮処分命令を出し始めた時代になってきました。でも、まだまだ裁判所の判断基準は厳しい。
 
2 「忘れられる権利」への関心
 
(1)  昨年末、「忘れられる権利」が、こんなに新聞記事になるとは思っておりませんでした。
そもそも今年の始め、一部上場企業の新年会の挨拶でこの権利を紹介しました。近年、海外に進出する企業の法律相談を受ける機会が増え、日本人の思考パターンが海外では通用しないこともある説明のキーワードとして紹介し、激励しました。
 
(2) 当時は、上記会社とは別の上場企業が中国進出に失敗し、相談にのってきた当事務所でも嫌な思いをしただけに、「忘れる文化」と「忘れない執念深い文化」とを比較したい気持ちもありました。
昔流行した映画「君の名は」の一節まで譬えに出しました。「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ」というものです。
「忘れるとは許すこと、私はこれを日本人の美徳と考えます」というような話をしたと記憶しております。ちょうどこの新年会の数日前に施行された、アメリカ、カリフォルニア州の「消しゴム法」の説明までしたかと思います。
 
(3) もちろんヤフーの削除基準の事例の一つとして「忘れられる権利」に関係する基準も出てまいります。
このような基準を公表するということは、ヤフーは、自らの法的責任(もちろんヤフーに対する損害賠償責任の追及です)についても受けて立つ決意をしたことになります。表現の自由や国民の知る権利を主張し、ネットサイト事業者は情報を機械的に集めているだけという無責任な姿勢はもはや時代遅れなのです。
 
3 忘れられる権利と検索結果の削除要請
 
(1)   紹介する判例の事案は、それ程多くありません。
欧州連合(EU)では裁判所が認め、法整備されて明文化されたなどと言われ、議論が始まりました。
日本では昨年109日、東京地方裁判所が検索結果の一部削除を認める仮処分の決定を出したのが最初となります。本件は、ネット検索すると、当該男性の犯罪への関与を連想させる単語の検索結果が出てくるということで、当該男性の生活が脅かされるという訴えでありました。アメリカ本社のグーグルに対し、どのように法的効果を与えられるのかと、当時疑問に感じたものですが、ネットによりますと、グーグルはその後自発的に削除したようです。
 
(2)   新聞によりますと、ごく最近、千葉地裁松戸支部やさいたま地裁がグーグルに削除の仮処分決定を出したようです。すごいですね。
事例が面白いので新聞報道を纏めてみましょう。松戸支部の事件は、グーグルが提供すする地図サービス「グーグルマップ」に事実無根の口コミが掲載されたというもので、医療機関からの削除申立です。これは忘れられる権利というより誹謗中傷の削除ですね。
さいたま地裁の事例は625日付ですが、「罰金の略式命令という過去の逮捕報道」が表示されるのは人格権の侵害だというものです。些細な事件ですから、知る権利より忘れられる権利の方に軍配は上がるでしょう。正確には分かりませんが、グーグルは前者の事例については異議申立てをしているようです。
 
 4 ネット社会に関するコラムは難しいですね。3回分を纏めて書くのが習慣なのですが、状況がすぐに変わってしまうので無理です。

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一 近時、各企業から当事務所に対して、情報システムやソフトウェア関連のご相談が非常に増えているという印象です。現在社会では、どのような商売を行うにせよ情報システムが不可欠になってきておりますので、それに伴って多くの紛争が生じることも当然のことなのかもしれません。
  しかし、情報システム関連の紛争に関しては極めて専門的な事項も多く、法律論についても全ての弁護士が詳しいという状況ではないようです。
 
二 情報システム関連の紛争の法律相談で一番多いものはシステム開発に関する紛争です。
  システム開発に関しては経済産業省がモデル契約書を公表しており、既に多くの議論がなされているところです。
  そのため、経済産業省が出しているモデル契約書やトラブル事例集を良く読んで取引をすれば紛争を予防できる場合はかなり多いと考えられるのですが、実際のところは、見積書と発注書程度の簡易な書面で契約が進んでしまっている場合が多いようです。
 
三  しかし、システムは、必ずと言って良いほど不具合が生じます。
  このような時に、最初の契約の際に事後のことまでしっかり決めておかないと、当事者間における考え方のズレが表面化し、紛争になってしまいます。
  このような紛争になった際、裁判所がどのように判断するのかについて理解しないまま協議をしていても、依頼人側は「こんなに不具合が多いシステムに金を払うのはおかしい」という主張になり、システム開発側では「過剰な要求ばかりされている」という主張になるため、いつまで経っても解決しないのです。
 
四  裁判例は多く存在するので、一つだけ取り上げておきますと、平成25年5月28日東京地裁判決は「一般に、コンピュータソフトのプログラムには不具合・障害があり得るもので、完成、納入後に不具合・障害が一定程度発生した場合でも、その指摘を受けた後遅滞なく補修ができるならば、瑕疵とはいえない。しかし、その不具合・障害が軽微とは言い難いものがある上に、その数が多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生ずるような場合には、システムに欠陥(瑕疵)があるといわなければならない。」と判示しています。
  このような裁判例が存在することを知っているだけでも、紛争になった際の対処法は大きく変わってくるはずです。
 
五 システム開発に関する紛争が訴訟になった場合、普通の訴訟に比べてかなり長時間かかることが多いです。
  訴えるにせよ訴えられるにせよ非常に大きなコストがかかりますので、事前に予防しておくことが不可欠です。
  システム開発に関する重要な契約を行う場合には必ず弁護士に相談して契約書を作成して頂きたいですし、仮に紛争になってしまった場合であっても弁護士の意見を聞きながら対処した方が会社にとって圧倒的に合理的です。
  当事務所にはコンピュータやシステムに非常に詳しい弁護士が所属しているため、場合によっては会社まで出張して調査をしておりますし、多くの案件を扱っておりますので、御社にとって有利な解決を導き出せるものと自負しております。
                                                

 

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