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コラム - 独占禁止法・下請法カテゴリのエントリ

 1 下請法改正
⑴ 令和8年1月から、下請法が、「製造受託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(取適法)に改正されます。
そのため、注意しないと知らないうちに違法なことになっている可能性があります。
違法になってしまうと、原状回復させられるばかりか、再発防止などの勧告をされ、勧告内容が原則として公表されることになってしまいます。
勧告・公表だけではなく、事業所管省庁による指導も行われますし、個人も法人も最高50万円の罰金が科せられる可能性があります。

なお、従来の「親事業者」は「委託事業者」に、「下請事業者」は「中小受託事業者」に、「下請代金」は「製造委託等代金」に、それぞれ変更されます。
⑵ 主な改正点としては以下の通りです。
ア 適用対象の拡大
・適用基準に「従業員基準」が追加されました(第2条第8項、第9項)。
・対象取引に「特定運送委託」が追加されました(第2条第5項、第6項)。
イ 禁止行為の追加
・「協議に応じない一方的な代金決定」が禁止されることになりました(第5条第2項第4号)。
・「手形払」等が禁止されることになりました(第5条第1項第2号)。
ウ 面的執行の強化
・事業所管省庁に指導・助言権限が付与されました8第5条第1項第7号、第8条、第13条)。
エ その他
・製造委託の対象物品に金型以外の型等が追加されました(第2条第1項)。
・書面交付義務について、中小受託事業者の承諾の有無にかかわらず、電子メールなどの電磁的方法による方法とすることが可能になりました(第4条)。

2 取適法の適用基準
 ⑴ 「製造委託」「修理委託」「特定運送委託」、「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理に限る)について取適法の対象となる取引
 
委託事業者            中小受託事業者
資本金3億円超         ⇒資本金3億円以下
資本金1千万円超3億円以下   ⇒資本金1千万円以下
従業員300人超         ⇒従業員300人以下
 
※「常時使用する従業員」とは、その事業者が使用する労働者(労働基準法第9条に規定する労働者をいう。)のうち、日々雇い入れられる者(1か月を超えて引き続き使用される者を除く。)以外のもの(以下「対象労働者」という。)をいい、「常時使用する従業員の数」は、その事業者の賃金台帳の調製対象となる対象労働者(労働基準法第108条及び第109条、労働基準法施行規則第55条及び様式第20号等)の数によって算定されます。
 
 ⑵ 「情報成果物作成委託」「役務提供委託」(プログラム作成、運送、物品の倉庫における保管、情報処理を除く)について取適法の対象となる取引
 
  委託事業者            中小受託事業者
資本金5千万円超        ⇒資本金5千万円以下
資本金1千万円超5千万円以下  ⇒資本金1千万円以下
従業員100人超         ⇒従業員100人以下
 
3 委託事業者の義務
⑴ 発注内容等を明示する義務(第4条)
発注に当たって、発注内容(給付の内容、代金の額、支払期日、支払方法)等を書面又は電子メールなどの電磁的方法により明示することが必要です。
⑵ 書類等を作成・保存する義務(第7条)
取引が完了した場合、給付内容、代金の額など、取引に関する記録を書類又は電磁的記録として作成し、2年間保存することが必要です。
⑶ 支払期日を定める義務(第3条)
検査をするかどうかを問わず、発注した物品等を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内で支払期日を定めることが必要です。
⑷ 遅延利息を支払う義務(第6条)
支払遅延や減額等を行った場合、遅延した日数や減じた額に応じ、遅延利息(年率14.6%)を支払うことが必要です。
 
4 委託事業者の禁止事項
⑴ 受領拒否(第5条第1項第1号)
中小受託事業者に責任が無いにもかかわらず、発注した物品等の受領を拒否することが禁止されます。
⑵ 支払遅延(第5条第1項第2号)
支払期日までに代金を支払わないこと(支払手段として手形払等を用いること)が禁止されます。 
⑶ 減額(第5条第1項第3号)
中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、発注時に決定した代金を発注後に減額することが禁止されます。
⑷ 返品(第5条第1項第4号)
中小受託事業者に責任がないにもかかわらず、発注した物品等を受領後に返品することが禁止されます。
⑸ 買いたたき(第5条第1項第5号)
発注する物品・役務等に通常支払われる対価と比較して著しく低い代金を不当に定めることが禁止されます。
⑹ 購入・利用強制(第5条第1項第6号)
正当な理由がないにもかかわらず、指定する物品や役務を強制して購入、利用させることが禁止されます。 
⑺ 報復措置(第5条第1項第7号)
公正取引委員会、中小企業庁、事業所管省庁に違反行為を知らせたことを理由に、中小受託事業者に対して取引数量の削減・取引停止など不利益な取り扱いをすることが禁止されます。
⑻ 有償支給原材料等の対価の早期決済(第5条第2項第1号)
有償支給する原材料等で中小委託事業者が物品の製造等を行っている場合に、代金の支払日より早く原材料等の対価を支払わせることが禁止されます。
⑼ 不当な経済上の利益の提供要請(第5条第2項第2号)
自己のために、中小受託事業者に金銭や役務等を不当に提供させることが禁止されます。 
⑽ 不当な給付内容の変更、やり直し(第5条第2項第3号)
中小受託事業者に責任が無いにもかかわらず、発注の取消しや発注内容の変更を行ったり、無償でやり直しや追加作業をさせたりすることが禁止されます。
⑾ 協議に応じない一方的な代金決定(第5条第2項第4号)
中小受託事業者から価格協議の求めがあったにもかかわらず、協議に応じなかったり、必要な説明を行わなかったりするなど、一方的に代金を決定することが禁止されます。
 
5 まとめ
 このように下請法が改正されましたので、業務委託契約等を締結している会社は、直ちに取適法対応ができているかどうかを確認する必要があります。
 当事務所は多数の下請法案件を扱ってきておりますので、早めにご相談いただけますと幸いです。 

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1.  平成28年12月に下請法(正確には「下請代金支払遅延等防止法」)の運用基準が改正されてから既に1年が経過しますが、まだ浸透しきっているとは言えないようです。
   大きな会社(親事業者)からも中小企業(下請事業者)からも様々なご相談があります。
   そこで、本コラムにおいては、下請法について説明したいと思います。
 
2.  下請法は、独占禁止法を補完する法律と言われています。
   もともと優越的な地位を濫用する行為を取り締まっている独占禁止法という法律がありますが、独占禁止法は様々な事情を総合的に考慮して違法かどうかを判断することになるため、判断が容易ではありません。
そこで、親事業者と下請事業者の資本金を形式的に比較し、下記表のような状況にある場合には、下請法が適用されることとし、いわゆる「下請けいじめ」を迅速かつ効率的に取り締まれるようにしたものが下請法です。
 
3.  平成28年12月に下請法の運用基準が改正された理由は、アベノミクスです。“アベノミクスによって一定の恩恵を受けたのは大企業だけで、中小企業は恩恵を受けていない”という批判を受け、中小企業(下請事業者)を保護することにしたわけです。
   そのため、改正内容は、中小企業(下請事業者)に有利な内容が多く、大きな会社(親事業者)が今までの現場のやり方を続けていると、違法として処罰される事柄も多くなっています(公正取引委員会のホームページに会社名と勧告内容が公表されることもあります)。
   具体的には、例えば、大きな会社(親事業者)が自らのコスト削減目標を達成するため、中小企業(下請事業者)の言い分をしっかり聞かずに下請代金を定めた場合、違法になります。
   中小企業(下請事業者)から大きな会社(親事業者)に対して、原材料や労務費などのコスト高騰による単価の引き上げの要請があったにもかかわらず、十分な協議をせずに単価を据え置いた場合も違法になります。
   また、下請事業者に製造を委託している品物について、量産が終了し、補給品としてわずかに発注するだけで発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず、一方的に、大量発注時の低い単価のままにしている場合も違法です。
要するに、下請法の運用基準を改正することによって、大きな会社(親事業者)が一方的に価格を決定している現状を見直したい、及び、大きな会社(親事業者)のコストを中小企業(下請事業者)に押し付けている現状を見直したいしたいという国の考えを理解して頂けると思います。
その他にも、国は、支払条件を改善したいとも考えています。下請法の運用基準と同時に「振興基準」というものも改正されているのですが、その中には、手形サイトは120日(繊維業においては90日)を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努める、とされています。
振興基準独自の内容については、今すぐできていないからと言って直ちに違法として処罰の対象になるわけではありませんが、注意が必要です。
 
4.  下請法の運用基準を改正することによって中小企業(下請事業者)の地位を向上させようという試みは、国策と言って良いものです。
大きな会社(親事業者)からすれば、「下請けいじめ」のレッテルを貼られて評判を落とすのは避けたいところです。とはいえ、中小企業(下請事業者)に問題があるにもかかわらず減額や返品ができないのでは困ってしまいます。下請法違反だという疑いをかけられないように適法に減額や返品を行うことは、それほど容易なことではありません。必ず弁護士に相談すべきです。
中小企業(下請事業者)からすれば、大きな会社(親事業者)との間に上下関係があるわけですからなかなか意見を言えないものの、絶対に譲れない一線というのもあるはずです。何でもかんでも自分たちで負担しなければならず、その挙句に一方的に取引を終わらせられてしまうようなこともあります。そのような場合に備えて準備をする必要性は低くありません。この準備についても必ず弁護士に相談すべきです。 
当事務所は、大きな会社(親事業者)からの相談に対しても、中小企業(下請事業者)からの相談に対しても、最も依頼者の方にとって有利になるようなお話しをさせて頂いておりますので、是非一度ご相談ください。

 

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