• カテゴリ 株主総会 の最新配信
  • RSS
  • RDF
  • ATOM
アーカイブ一覧はこちら

コラム - 株主総会カテゴリのエントリ

  1.  粉飾事件の紹介が遅くなりました。
       粉飾とは何かというところから始めましょう。
       粉飾とは、不正な会計処理によって、故意に貸借対照表や損益決算書等を操作して、企業の財務状況や経営状況を実際よりも良く見せる操作を言うとされています。帳簿上の資産を増やすことが簡単な粉飾ですが、資産項目といっても種々ありますし、これらを説明していては面白い話になりません。例の東芝は、種々の資産項目をいじりました。特に、買収したアメリカの原子力会社「のれん代」を劇的に増加させたことは有名です。そもそも、東芝が粉飾に走る契機になったのは、バイセル取引と言われております。自分が発注する受託製造業者に原材料を高く売るなどの操作をしたとされます。
      粉飾の実態が暴露されると上場企業の社会的信用は失墜し、株価も暴落します。社会が許すわけもありませんが、そもそも犯罪になります。通常、実行行為者が特別背任罪になることも常識の範疇です。
  2.  最初の大型粉飾事件に遭遇することになったのは、野沢社長が号泣して記者会見した天下の「山一證券」です。私は、会社の顧問弁護士としてではなく、第三者的な立場で調査をすることになりました。
      20年経過しておりますが、私が受任した事件の内容は述べられません。その詳細を書きますと、関係者に不快に思われるのは嫌だからです。しかし、20年前、私が、実態調査のために、山一証券の本社に行ったことは昨日のように覚えています。茅場町の先、雪の積もった霊岸橋 を渡った際の記憶があまりにも鮮明なのです。山一證券は、当時、四大証券会社の一社と言われておりましたが、粉飾事件等で揺れる本社では何の威厳もなく、会社の顧問弁護士に同情したほどです。つまり、寄り添うべき依頼者によって、自分の立場が全く違ってしまうという認識を痛いほど感じました。
      前回のコラムでもご紹介しましたが、粉飾と私との関わりは、会社の利益と相反する可能性のある相談、つまり粉飾を実行した従業員周辺からの相談から始まりました。会社のためを思いながらも、会社利益と鋭く対立する場面が必ず出てまいります。
  3.  その後、外部委員として粉飾に関与する経験もしました。殆どが顧問先の粉飾で、数年前には、会社再建委員という外部委員に任命されたこともあります(近時、税務署からこの外部委員の説明を求められ、驚きました)。
       経験して分かったことは、純粋な第三者委員会の委員は自分に向いていないということです。第三者委員会の委員と言えば聞こえはいいのですが、職人のように調べまくるのが中心的な作業で、現実に向き合う人がいないのです。検事のように強制調査権がある訳でもなく、しかも社会正義というのも中途半端です。想像される以上に地味な仕事です。
  4.  監査役の立場での経験もありますが、感想は複雑です。今流行りの「忖度」も分かりますが、それ以上に監査役の責任は難しい。私は、現在上場企業の監査役を複数勤めておりますが、現場で隠そうとして意図的に行っている粉飾を見つけることは本当に困難です。こんな事件でも役員に対する非難は浴びせられ、法的問題に発展するのです。
       監査役では、楽しい経験もしております。30年以上前、ある弁護士先生に大変お世話になりましたが、10数年前、上場企業の監査役までご紹介いただくほど可愛がっていただいております。この監査役は今も続いており、毎年、顧問弁護士である先生と株主総会の仕事を一緒にやらせていただいております。こんな嬉しいことはありません。
  5.   粉飾事件の責任の根は、何処にあるのか考えてみましょう。
       この問題は、本など読んで研究していただかなくとも、容易に想像できることです。オリンパス事件を書いたドキュメント「ザ・粉食(粉飾に群がる闇の人々)」(山口義正著 講談社 α文庫)や「東芝粉飾の原点(内部告発が暴いた闇)」(小笠原啓著 日経BP社)など著名な 粉飾ドキュメントを読みますと、会社経営者が自ら粉飾に走っている実態が暴かれています。
       両ドキュメントでは、奇しくも内部告発で粉飾が暴かれていくのですが、そもそも内部告発者がいないと粉飾の事実はなかなか判明しないことも証明しております。
       でも、両者の社長が、自らの名誉のためだけで粉飾に走るのは想像を越えます。通常は、地位だけでなく、お金や複雑な要因が絡まって行われるものです。第三者委員会の報告書や近時特集された日経新聞の記事からしても間違いがないようですが・・。この社長の弁護をさせられる弁護士にも寄り添いがなければなりません。この場合の業務は、会社に対する責任、株主に対する責任などの民事責任だけにはとどまりません。会社の顧問と違った立場での弁護活動が要求されています。
  6.  粉飾を発見することは本当に難しいと思います。公認会計士である井端和男先生が書かれている有名な専門書「最近の粉飾―その実態と発見法」によっても、その難しさはよく分かります。特に、「極地型」と言う言葉で書かれている子会社や関連会社を使った粉飾、或いは本社から遠く離れた支店等の出先機関になると、粉飾の実態が暴露されるまでに相当な時間を要することは必然です。
  7.   最後に、粉飾の防止策ですが、顧問弁護士の仕事として重要です。
       先ずコンプライアンス研修等を工夫し、会社のカルチャー造りが大切です。社員の自覚を高める工夫ですね。このような工夫を日々の業務に取り入れ、弁護士など専門家を外部相談窓口に選任することです。2006年4月に施工された公益通報者保護法を下地にした内部通報制度を工夫する必要もあります。残念ながらページが尽きました。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (1599)
一 第三者委員会の報道は面白い

1 前回のコラムで、形式的或いは権威主義的な株主総会は嫌いだと書きましたが、まさしく「第三者委員会」はその象徴ですね。
  特に笑ってしまったのは、東京都前知事舛添さんが「第三者の弁護士に厳しい調査を依頼した」という直近の事例です。記者会見に登場された弁護士、特に通称「蝮の善三さん」の記者会見は傑作でした。形式的な返答に終始し、最後は開き直り。これで舛添さんの得になったのか疑問でした。最初は腹を抱えて笑い、そのうちに本当に困ったことだと頭を抱えることになってしまいました。
報道陣の質問も紋切り型でしたが、そもそも「第三者の弁護士」としか言っておらず、第三者委員会ではないのですね。2名の弁護士では日弁連のガイドライン3名以上の枠組みにも反します。
「蝮の善三さん」については、私の関係した会社の不祥事の際、第三者委員会委員として登場していただいたこともあるため、余計に関心が高くなるのです。

2 第三者委員会とは、日弁連のガイドラインの要約によりますと、企業や組織において犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等が発生した場合或いは発生が疑われる場合に、企業や組織から独立した委員のみで調査をし、原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言する委員会とされています。
私は、日弁連が第三者委員会ガイドラインを出す相当前、ある顧問会社から第三者委員会の体裁をとって、不祥事で紛糾する株主等のステークホルダー達を押さえてもらえないかという依頼を受けたことがあります。この会社は外国人が社長をされておられ、第三者委員会のような紛争解決策をよくご存知でした。
私は悩みました。
だって、第三者委員会といえば聞こえはいいのですが、徹底的に会社の不正を暴くことを希望されている訳ではありません。むしろ会社の実態の何処までを話せばステークホルダー達に納得してもらえるかの限界点、即ちその調和点を探すことが使命なのです。そもそも会社が第三者委員会委員に金を支払って、会社が潰されるようなことを期待する訳がありません。深く考えなくとも当然のことです。
最終的に私が顧問から外れることのデメリットを考えていただきました。結論として、今の会社体制で今後も経営できることを前提とし、不祥事については徹底して謝罪し、企業活動を害さない範囲で役員を変更し、その他情報開示を行うとういう方針にて解決しました。

二 「蝮の善三さん」という弁護士

1 「蝮の善三さん」は、多くの第三者委員会委員をされておりますが、上記の点に関する理解力は悪い意味で素晴らしいと判断できます。
第三者委員会の報告書に関して「格付け委員会」(私的な検討委員会)なる組織もありますが、そのホームページを見ますと各報告書について点数も付けられております。ここで厳しく批判されている報告書は、社長のような最終権威者を庇うような形での決着、或いは組織存続を図るため一番重要なことは調査から外すというような種々の工夫をごらんいただけます。
「蝮の善三さん」は上記のテクニックに長けておいでで、ネットでも“汚職の守り神”のように書かれております。

2 ここで「東芝 粉飾の原点」という本を紹介しましょう。
「東芝 粉飾の原点」は日経ビジネスの記者が東芝の不正会計の構図を暴いた本で、次々と粉飾が暴かれる呆れた本です(日経BP社発行)。本コラム作成時、東芝は特設注意市場銘柄から外れるかどうかという瀬戸際にあります。株式投資に興味を持たれている方の中には、東芝株は今が買い時かどうか悩んでおられる方もおいででしょう。
でも“買い”に入るべきでないことがこの本で分かりました。ウエスチングハウスに関する粉飾は、第三者委員会報告書提出後4カ月も経過して、やっと“パンドラの箱”が開いたのだそうです。5000億円を投じて買収した東芝子会社、アメリカの原子力機器大手ウエスチングハウスの赤字の実態について詳細を知ると“買い”ではないですね。しかも将来展望として、東芝が原子力発電所の受注規模を、発表毎に順次縮小しつつも、現在も連結で45機(15年間で)、ウエスチングハウス単体で64基(同)の受注というのは先ず無理だと思います。
おっと!違いました。この本では、第三者委員会がウエスチングハウスについては調査しないことになっていたという暴露に驚いてほしかったのです。投資の話ではありませんでした。立て続けの粉飾が、最後ウエスチングハウスというのでは本当にひどい話です。子会社は調査をしないと約束したうえでの第三者委員会の報告書だと言われては、東芝に関係する利害関係者、ステークホルダーは何を信じればいいのでしょうか。

三 形式的第三者委員会にならないための対策

1 形式化した第三者委員会報告書に対する対策として、その前提事項を確認する必要があります。先ず、私と同様の悩みを持たないような弁護士とはお付き合いいただかないことです。“誠意”という人間としてあるべき姿が見えません。
もちろん不祥事の発生原因に関する調査と言いましても、企業にとって紛争解決にならないのでは、お金を支払って第三者委員会に依頼する意味がありません。この矛盾に悩まない弁護士に、利害関係人にとって納得される報告書など書ける訳がない。
現在、日弁連が指導する第三者委員会も、私が煩悶した当時と同様、日弁連ガイドラインとして、会社から時間給の形で報酬をもらえることになっております。

2 そこで違う形での対策を提案してみようと思います。
一つとして、企業不祥事の際に備えて第三者委員会委員に対する保険による仕組み造りです。私は複数の外部取締役もしておりますが、会社代表訴訟等に備えた保険に入っております。それと同様の保険による仕組み造りはどうでしょうか?
次に、上場企業の場合には、証券取引等監視委員会などの公的な立場からの依頼という形にしてはどうでしょうか。対象会社からは課徴金プラス第三者委員会委員分の報酬を上乗せして追徴する制度を作るのです。このような制度の検討は、ひいては上記保険の仕組み造りにも進展していくのではないでしょうか。
第三者委員会委員報酬の仕組みを変えない限り、形式的第三者委員会で終わるのは無理のないことだと思います。
今はその過渡期ともいえます。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (7187)

 

一 これまでの株主総会
 
1   前回のコラムでは、次回「ためにする不規則発言」とその対策等についてご紹介するとお話ししましたね。
近時「総会屋」なる用語は出なくなりましたが、昨年の総会シーズンでは、ある「特殊株主」について話題に出ることが多く、意外と緊張しました。新聞や週刊誌にも出たこの方からご紹介しましょう。
この方は76歳の男性で、元お医者さんです。ネット情報を要約させていただくと、2年前(平成26年度)には都内で179社の株主総会に出席され、124社で発言されたそうです。訳の分からない不規則発言や言動が多く、株主総会の進行を混乱させることもあって、我々株主総会担当者の間で評判になったのです。しかし何と昨年、株主総会真っ盛りの6月20日に逮捕されてしまいました。識者の見方としては、株主総会の円滑な進行を図るため、多分この時期に合わせて逮捕したのだと指摘されております。何故なら、すぐに出所しておりますから。
この男性は議長不信任動議を出しまくる方で、その動議が否決されても騒ぐため、やむなく退場命令を出されるような荒れた株主総会になってしまったこともありました。そもそも議長不信任動議を出す前の発言も要領をえず、これらの行為は明らかに業務妨害になります。もちろん刑事告訴した会社もあったと聞いております。
 
2  株主総会といえば作家濱嘉之氏
       毎年地獄のような株主総会が続く中で、「助っ人」として依頼した作家濱嘉之氏を紹介 
     しない訳にいきません。最近はテレビにもよく出ておられますね。濱氏は公安警察の世
  界を描かせると、この人の右に出る作家はいないと言われておりますが、平成の初め
  、警察を辞めて危機管理を業とされておられました。濱氏をネットで調べると本名は最
  後の方でしか出てきませんが、危機管理コンサルティング会社経営者と言う事実は、最
  初のほうで出てきます。危機管理を依頼していたのは、まだ作家になられる前でしたか
  ら、今から20年以上も前のことです。濱氏がいてくれると前に述べた異常な特殊株主さ
  んの心配もなく、準備した予定表・想定問答集に従って粛々と進行したものです。
濱氏は2007年に「警視庁情報官」(講談社)を出版され、作家としてデビューされました。当時、私は自ら幹事役を買って出て出版記念会の司会もさせていただきました。現役警察官が多く出席され、多少雰囲気が違って楽しかったです。
「警視庁情報官」は、私の好きな作家佐藤優氏が激賞したもので、公安捜査の紹介としては最初の本でしょう。ご一読ください。
 
二 株主総会指導書に書きにくい理念
 
1   「危ない株主総会」を多く経験しましたが、当然の突発事故も予定のうえです。どの株主総会も無事に終了しておりますが、その反動でしょうか?もっと株主の皆様にソフトな運営もできたという気持ちもあります。もちろん株主総会議長役の方の了解なくして勝手なことはできません。しかし、このような視点から、現在氾濫する株主総会指導書の一部には不満を持っております。今はやりの「IR」の意味を再度検証していただきたい。「IR」とはInvestor Relationsの略です。企業が株主や投資家に対し、投資判断に必要な企業情報を、適時、公平、継続して提供する活動のことをいうとされていますが、私は株主総会が形式的に、時には権威的に運営されることに疑問をもっております。「できるだけ開示」などと低次元のことを言っているのではありません。そもそも「IR株主総会」と言われる程度に、情報開示に努力した事前準備の想定問答集を作成してほしいのです。
確かに株主総会というものは出たとこ勝負の側面もあり、いくら事前に準備しても、突発事故の起きる可能性は排除しきれません。
私の経験でも、会社の製造物から被害を受けたとして、わざわざ株主になって株主総会で質問・謝罪を要求された事例や、会社役員個別に具体的な報酬額を明らかにするよう迫った質問で、異議まで出された経験もしております。ハンドマイクを持ち込もうとして受付で乱暴が行われた危ない事例から、笑ってしまうものとして、事業報告においては英単語を使わないで説明しろというようなこともありました。
 
2    会社法では、取締役説明義務の規定(314条)もありますし、同時に説明を拒絶できる事由についても規定しております(会社法施行規則71条)。説明義務を果たしたかどうかの判例も大量に出ております。
でも上から目線の対応は好きではないのです。このようなことを社長にどのように説明できるのかが私の近時の関心でもありました。
実は前回のコラムで、ソフトバンクでの副社長に支給してきた報酬取扱いのまずさを指摘しました。悪口のつもりで書いた訳ではありませんが、多少気分が良くないので、その後も孫正義社長の発言等を追っかけしておりました。
孫社長は、7月28日の決算説明会において次のような説明をしたそうです。「我々はリングに立つボクサーのようなもので、何発目に左を出すとは言わない。勝つことが大事で、勝つプロセスを説明することが大事ではない」。この説明は「IR株主総会」の説明義務の分岐点を示しております。つまり、株主に対する説明の範囲が明らかにされ、私も当事務所の依頼会社社長に、具体的に総会で説明するべき限度をお教えするのに使えます。権威主義が嫌いな私の考えに少し馴染まないところもありますが、このような議論をすることによって、少しずつ形式主義の壁が取り払われるのでしょうね。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (7384)

 

一 株主総会での予想しない事故
 
1   毎年6月は緊張します。6月は、顧問先或いは社外取締役を務める上場企業の株主総会が多数行われることが原因です。そのための模擬株主総会や、当日遅刻しないためのホテル宿泊もあって通常の月と違った緊張感があります。
2年前の6月には顧問先一部上場企業において発覚したある事件の関係で、長時間の株主総会を乗り切るため、成人男性用「おむつ」まで着用しました。議長である社長がトイレ休憩を上手にとってくださればよいのですが、紛糾した場合なかなか難しい。仮に上手に休憩を入れてくださったとしても、我々事務方は社長のトイレ休憩に併せてトイレに行くことができるとは限りません。
 
2    株主総会というものは出たとこ勝負の側面があります。いくら事前に準備しても、突発事故の起きる可能性を排除しきれるものではありません。皆様が、たいしたことではないとお考えになるはずの事例から紹介しましょう。
社長が株主総会に遅刻された、或は遅刻されそうになった経験も幾度かあります。いずれの社長も社内規定に通じておられ「定款の定めに従って、専務が開会宣言をし、その後も株主総会を運営して下さい」と自信満々に指示されました。これは事故といえるようなものではないかもしれませんが、専務のお顔を拝見するなら、私が青ざめるのも無理がないと思います。
 
3   でも皆様、事前準備もなくして専務が株主総会を仕切れると思われますか?株主を無視した形式的株主総会ならできるかもしれません。しかし議事運営においては、株主の疑問には“きちんとお答えする”という気持ちを込めた事前準備なくして、株主に満足な進行は困難だと思います。
 
二 突発事故は株主総会指導書にも書かれていない
 
1    ところで今期のソフトバンクグループの株主総会では、事前に取締役候補として株主に通知されていたインド人副社長ニケシュ・アローラ氏を株主総会では取締役に選任しなかったという話が報道されました。かって同様の経験をしたことがあったため、報道に注意を払っておりましたが、私が経験をした当時は、インターネットのWeb情報等の利用もなく、株主総会の在り様もずいぶん違いがありました。
私の事案は、株主総会の前日、それも夜遅くになって、取締役を入れ替えたいという相談がありました。株主総会担当者は悲壮でしたね。当時はこのような事態に関する解説書もありませんでした。
私が大事なこととして配慮したことは、株主の意思を尊重した総会運営にするというものでした。
結論としては、ソフトバンクグループの株主総会と同様、会社提出の議案を撤回することは同じですが、私の場合は、更に新たな取締役の選任が必要になります。そこで株主の自主性を尊重し、株主より、役員として適切な役員選任の緊急動議を出してもらいました。そして株主提案の議案を先に討議し、会社提案は後回しにして撤回の処理にしました。今回、ソフトバンクに関する種々の解説を見ましたが、私の処理は間違っていなかったと自慢できると思います。
 
2    でもソフトバンクグループの株主総会処理には後味の悪いものが残ります。例えば、当時の当該副社長の役員報酬は64億7800万だと報道されていますが、株主総会説明責任は果たされているのでしょうか?純利益は4741億ですから、こんな高額報酬は疑問だと主張される株主もいらっしゃるはずです。ところが驚くべきことは、ソフトバンクの株主総会では役員報酬全体の上限額を「年額8億円以内」と決議されているというのです。上記8億円は役員全体の金額ですよ。
何故こんな無茶なことができるのかと思い、調べてみました。何とソフトバンクグループからは9900万円しか払われておらず、残りは全て子会社から支払い、会社法の規制を事実上免れていたというのです(日経ビジネス2016.07.18「役員報酬、規律なき膨張」16頁)。
世界に誇る会社にしようとされているのですから、コーポレートガバナンスはどうなるのでしょうか?法に従い、堂々と処理され、株主に説明するべきだと私なら言います。
 
三 株主総会は会社理念検証の場
近時「開かれた株主総会」或いは「株主に対する説明責任」が株主総会運営理念に掲げられることが多くなりました。弁護士用の株主総会指導書も昔と様変わりしております。昔は“とにかく無事に乗り切れればいい”という、その場しのぎのものが殆どでした。株主を尊重しようという姿勢よりも、結論として形骸化した民主主義、即ち“株主さまが王様です”と持ち上げながら、実態は形式的な、その場凌ぎのものという印象でした。私はこのような傾向に嫌気がさし、ずいぶん前に“ソフトバンク”と同様の株主総会指導をしていたことになります。
私は幸せだと思います。私が関与させていただいている上場企業は株主を大切にされております。例えば、株主総会の直後に、株主総会と同様の形で会社説明会を長時間もたれている一部上場企業、あるいは別の日程を設けて、経営方針説明会を開催されている会社もあります。会社の将来について株主に真剣に説明される社長の気概は本当にうれしい。
ところが近時、「特殊株主」について議論されることが多くなりました。「ためにする不規則発言」対策等を考えると、総会運営担当者には“気の休まる6月”などというものは、当分やってこないのです。
次回は、このような体験と対策を書こうと思います。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (7940)

 

一 昔の株主総会はきつかった
 
1   平成初めの株主総会は、法律の整備も不十分なだけでなく、景気の悪さも手伝い大変厳しいものでした。
宇宙開発を業とする会社の株主総会は、毎年、特別に大変でした。日本に帰化された社長は、世界的な頭脳の持ち主でいらっしゃいましたが、二時間以上、受け答えされるとさすがに答弁が困難になりました。社長とは今でも親しくさせていただいておりますが、アジア最大の国の解放軍とのいざこざで、私が破産処理させていただきました。当時の株主の皆様には「毎年必死で議論し、真摯にお付き合いさせて頂きましたのに、大変申し訳ありませんでした」と申し上げます。
その後、上記の国の人工衛星打ち上げニュースを聞くたびに、今でも怒りが沸いてまいります。
 
2    もちろん、上記宇宙開発の会社も、定款で「株主の代理人は株主に限る」旨の制限規定を設けておりました。しかし、株主の代理人として、株主でない弁護士が来られましても株主総会に出席していただいておりました。弁護士の独占的紛争解決機能(弁護士法第3及び72条等)に敬意を払っていたからだと判断します。
当時既に、最高裁は、代理人資格を制限する各会社の定款規定について有効と認めてはおりましたが、神戸地裁尼崎支部の次のような判例が出る時代的な背景もありました。
「弁護士が代理人になった場合、株主総会を混乱させるおそれがあるとはいえない」として定款規定の解釈運用を誤ったものとする判例(神戸地裁尼崎支部平成12年3月28日)もありました。つまり代理人の制限をすると、上記判例に従い、株主総会決議が取消される可能性もあったのです。株主総会指導弁護士としては窮地に陥ります。
 
二 違和感のある株主総会指導書
 
1    ところで最近の株主総会指導解説書等を読みますと、株主に限るとの定款規定を一段と重視する傾向が強くなっております。
例えば、株主でない弁護士の株主総会代理出席を拒否した事例において、東京高等裁判所が、株主でない代理人に関して個別的に判断することは受付を混乱させるとして、形式的に限定することに関し一定の合理性を認めたことから(平成22年11月24日)、巷に氾濫する解説書は一気に強気になりました。
でも長年株主総会指導をしてきた私には非常に不思議です。受付の混乱回避を理由にする上記判例は穴だらけだからです。もちろん判例は事実に即しているだけですから、この判例に責任はありません。
 
2    つまり、受付が混乱しない方法で弁護士の代理出席の要請があったらどうするのですか?例えば、株主総会の通知発送直後に、株主より当日は代理人として弁護士を出席させると通知してきたらどうするのですか?
時間もたっぷりあります。十分に本人から真意を調査できますし、受付の始まる、はるか前ですから受付に混乱など生じえません。
 
3    株主総会の指導をされる信託会社等の専門家に聞きますと、弁護士の解説書のような回答はまず返ってきません。先ほどまで自信満々に厳しく社長指導をされていた方が、驚くほど言葉を濁されるのです。そして最後に「難しい問題ですね。結論として会社にご判断いただいております。」つまり訴訟リスクの回避を考えておられるのです。
 
三 総会屋対策の延長では納得できない
 
  1      私は、20代の終わり頃、総会屋の方から「総会屋にならないか」とリクルートされたことがあります。忘れもしない歌手加藤登紀子さんのお父さんが経営される新宿のロシア料理店でのことでした。
       その当時のように総会屋が問題視される時代なら、非株主弁護士の代理出席を認めないのも一理あるとは思います。でもそんな時代は過去のものと言っていいでしょう。もっと柔軟に考えない限り、訴訟リスクはついて回るのではないでしょうか?いやいや、そんなことよりも弁護士の紛争解決機能について、どう考えておられるのか聞いてみたいものです。株主総会は紛争とは無関係という回答は変です。株主代表訴訟もあるのですから。
 
2    上記疑問を持ち続けていた私は事務所の若い先生に次のようなお題を出してみました。お題は「粉飾決算に揺れる会社で、代理人は株主に限るとの定款規定はあるものの、非株主弁護士の株主総会代理人出席は一律拒否でいいのか?」というものです。ヒントはこれまでの記述で十分だと思いますが、次のような考え方は如何でしょうか?
事前に代理出席を申し出られた株主様には「事前に質問書を出していただきたい。事前に質問書を出していただけるなら、弁護士の代理出席も検討致します」という内容の文書を送るのです。事前の質問であれば、粉飾に揺れる会社でも十分整理して回答することができます。しかも会社にとって重要な説明責任も十分に果たせることになります。先に示しました神戸地裁尼崎支部の事例は、事前に弁護士代理出席の通知があった事例ですから裁判官の悩みが伝わってくるようです。
   驚くべき経験もあります。粉飾で揺れていた会社で、弁護士が代理出席されたのですが、非常識且つ繰り返しの質問に会場が紛糾していた際、理路整然とした弁護士の質問がその場の雰囲気を変えたのです。さすがは弁護士という経験ですね。
 
3   若い弁護士の先生方、現在の株主総会指導書に疑問をお持ちになりませんか?否!あなたの職域を狭めておりませんか?
これは弁護士の在り方を問う問題でもあります。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (9939)