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コラム - 書評カテゴリのエントリ

 
  1.     毎日、AI(人工知能)に関する報道が絶えません。自動運転などを目指す次世代の車に関し、トヨタ自動車とソフトバンクが新会社を創設し、豊田社長と孫さんの握手する写真が新聞の一面を飾ったのは、つい5日前(30105日)のことでした。
     AI(人工知能)の将来については、話がどんどん広がっております。更に、加速度がついてきていると思いませんか。
    今回、紹介する上記の3出版物(朝日新聞GLOVEは新聞です。)は、AI(人工知能)の進展に伴い、近い将来でも食べられない職業が増え始め、更にその先は、AI(人工知能)が人間の仕事を肩代わりすることによって、人間不要の社会になってしまうというような、近時の話題となるものの総括的な紹介の意味も含んでいるとお考えください。

  2.  最初に紹介する「ホモ・デウス」は、副題にある通り、AI(人工知能)によるテクノロジーと人類の将来を正面から論じる本です。2年程前、本書を出版した著者の前作品「サピエンス全史 上・下」を、本コラムにて書評として書きましたところ、驚くほど多くの人が読んでくださいました(閲覧履歴で分かるのです。これもAIの初歩的な段階ですね)。その続き物である「ホモ・デウス」のコラムも書かねばならないという義務感のようなものを持っておりました。
      でも、現在の人類の築いた人間社会が喪失してしまうという最終段階まで発展する本書は、衝撃的ですが、愉快ではありません。著者は、人間至上主義がデータ至上主義に移行する結果、そのような結論になると述べております。AI(人工知能)の進展によって、人間が不要のものになるということですからね。しかも生き残ることができるのは、一部の大金持ちだけのようです。医療の大躍進により、保険がきかない医療によって、永続する生命を獲得する人類が出るというのです。現在の保険制度では受診できない治療があることに疑問のお持ちの方は、納得されるのでしょうか?もちろん、人類の複雑な脳の構造やデータ至上主義におけるAI(人工知能)の検証も十分になされている訳ではありません。AI(人工知能)を含めた科学と医療の進歩も将来のことですから、このような極端な結論は急ぎすぎのようにも思います。
      また、仕事をなくした人類についても、ベーシックインカム論の立場から異なる結論を引き出す可能性も残ります。最近、政治家でも主張する方が出てきましたが、ベーシックインカムとは、「政府が、全ての人に必要最低限の生活を保障する収入を無条件に支給する」というものです。私がお付き合いさせていただいている富豪の方が、ベーシックインカムしかないでしょうねと話されたのには驚きました。だって、その方の税金は、爆発的に増えるからです(最近読んだ本ですが、「AI時代の新・ベーシックインカム論」(井上智洋著)が分かり易いです)。
      本書にはこのような具体的な話はでてきません。知識なく読むと、嫌になるだけですから、それが本書を強く推薦しない理由です。
     
  3.   5年程前、「10年後に食える仕事、食えない仕事」(渡邉正祐著)を読んだ頃はそれ程感じなかったのですが、弁護士業界がAI(人工知能)に影響されるという事実は、当事務所でも既定の路線です。フォレンジックによる証拠検証についても、先々週、当事務所の田中先生とそれを話題にしました。でも近時の報道は、それどころではないですね。
      弁護士業は無くなるそうです。「あと20年でなくなる50の仕事」(水野燥著)という本によると、弁護士業もその一つに入るそうです。この種類の本は現在どんどん出てきております(読みたくありません)。

      過熱する報道の一つに、農業分野におけるAI(人工知能)の話もあります(英語のアグリカルチャーにかけて「アグリテック」と言われています)。知的労働がAI(人工知能)にとって代わられてしまうというのは分かります。農業も労働人口に著しい影響がでると聞かされると「そうだろうね」と一応納得しておりました。しかし、古来から連綿と続いてきた農業ですら、AIによるロボットによって人力が省力化されてしまうというのは信じられません。弁護士の将来など議論不要です。

  4.  朝日新聞GLOVEの「テクノロジーの世紀」は、これまで述べてきたことの総纏めとして、或いはデータ至上主義に至る前段階、即ち現在の社会状況(「民主主義」や「自由か格差か」)との関係についても論じてあります。次の8つのテーマが1頁毎に記載されているので、今までの議論の状況を急いで知るには最適と言えるでしょう。

    項目をあげておきます。

      フエイスブックは民主主義を壊すのか

      新時代のフリーランスがもたらすのは自由か格差か

      人はロボットを愛せるか

      中国はデータで世界を征するのか

      GAFA」の支配は続くのか

      不老不死は実現するか

      人工知能は人類を滅ぼすのか

      まとめ インタビュー「人間がデータ化される時代に」
     
      何と、もう頁がありません。詳細は何時か書くこともあるでしょう。 
     
  5.  最後の「オリジン」と言う本の紹介が十分にできません。
      でもこの本は、小説として楽しんでいただければ十分です。前項の「人はロボットを愛せるか」の裏返しとして「ロボットは人を愛せるか」をテーマとして、お読みください。斬新ですよ。

 

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1 今回の書評は、この本の面白さを宣伝するためのものではありません。著者の「あとがき」最後の2行に新鮮な驚きを感じた事を伝えたかったのです。徳田虎雄とは、徳洲会を率いて、医療の世界に巨大な変革をなしとげた人物ですが、この本は、その人物を巡る波乱の人生を描いたノンフィクションです。では著者による最後の2行を紹介しましょう。
 「徳田氏と、氏に伴走して旧態依然たる医療をあらため、無人の荒野に病院の砦を築いてきた人たちにとって、徳洲会とは・・・、かなり長めの「青春」そのものだった。」
 前回のコラムで、オウム事件を巡る朝日新聞の対応に疑問を呈しましたが、この本は、法律に抵触することなど厭わず、社会的な運動に身をかけた人たちについて「かなり長めの青春そのものだった」と言える著者の姿勢に驚いたからです。オウム事件との区別も、その線引きも必要ではないかと感じます。

2 先ず、この本を通じて知った徳田虎雄さんを紹介しましょう(まだご存命なので徳田さんと言います)。
 徳田さんは、選挙では公職選挙法違反になることなど全く意に介さず、周囲を巻き込んで、違法な「どぶ板選挙」に邁進し、マネー戦争でも、多分税法や特別背任罪などの法的考慮も一切されなかったのでしょう、徳洲会のため必要な金を獲得することだけを目的にして、あらゆる手段を行使されたのですね。
 でも金で買う一票は(一票などと言うレベルではないが・・)、民主主義の根幹に反します。私は許せません。また金儲けだけを考えて行われるマネーゲームも、読むに値するものでしょうか。
 そもそも私は弁護士ですから、法に抵触する方々ともお付き合いをすることが前提です。また弁護士と言う以前に、自分の若かりし頃を思い出し、どこまでの違法が「青春」と言う美名?の上で許容されるのか、常々考え続けてきました。
 つまり、どこまでの確信犯が、小説として読むに耐え、共感に値する範囲と言えるのでしょうか。

3 昔、私は、カンボジアの共産主義革命に絶望しました。でも常に関心を持っておりました。当時、カンボジアを描いた面白い本はなかったのですが、昨年夏、発刊された「ゲームの王国」上・下(著者小川哲 早川書房)というSF小説は、当時のカンボジアを題材としているため、直ぐに購入して読みました。
 やはり衝撃的でした。この本も紹介したくなります。でも下巻は、脳波でコントロールするゲームの開発と言うように、近未来のSF小説になってしまうのです(私は上巻だけで充分です)。故に、カンボジアの歴史としてその要約を紹介します。
 カンボジアの指導者となったポルポトは、毛沢東に憧れていることもあったのでしょうか、原始共産主義を目指したクメールルージュを組織しました。彼は、階級や格差のない原始共産時代の状態に戻すというスローガンの下に、邪魔になる富裕層や知識人を対象として100万人以上を殺害したとされています。共産主義であっても私有財産制度は廃止されないのですが、農本政治を行う限り、全ての私有財産が消滅してしまうのだということも、この本で十分に理解できます。マルクスの言う経済学はやはり理想論であって、特に農業を主産業とする発展途上国では学問的な理念など通用しないのですね。
 しかし、何を理想にしようと、革命のためだと言って、人を殺害することなど許される訳がありません。オウムも、坂本弁護士一家虐殺は、オウムの唱える理想国家創造のためだというでしょう。こんな単純で明らかな事実・犯罪を「オウム事件の闇」などと呼ばないでほしいのです。オウム事件が「みんなの責任」だとする朝日新聞の論調がおかしいと思う私の認識もこれに尽きます。如何なる説明をしようとも、人を殺めることが理想実現の手段として許される訳がありません。「みんなの責任」などである訳がない。
 朝日新聞の論調は、逆にオウム関係者を甘やかすことになりませんか?と言うのが私の結論なのです。

4 「神になりたかった男」は、聞取り風のルポルタージュになっておりますが、読み飽きません。そもそも医療は、私たちの生命に直結しています。徳田さんは「命は平等」を唱え、先ず休日・夜間の救急患者の受け入れから始めます。そして医療空白地域に病院の進出を図ります。当初は、病院建設費用等の金策、そして進出地域を管轄する旧態依然たる医師会との闘い、その後は、医療行政の是正など、拍手喝采を送りたくなります。病院通いが絶えない私自身の関心事なのですから、「命は平等」なるスローガンには泣けますね。
 この本を読んで、医療に対して違った側面から見られるようになったと思います。近時の新聞報道でも、不足する医師・看護師の実態、医療機関の休廃止・破綻の増加、或いは医薬分業制度や医療保険制度等枚挙にいとまがない程です。
 結論ですが、徳田さんやその周りにいる人たちにとって、徳田さんの戦いは、やはり「かなり長めの青春」なのでしょう。
 公職選挙法違反位で目くじらはたてられないか?
 皆さん、読んでご判断ください。

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1. これまで宇宙に関係するコラムを何度か書いてきました。でも、宇宙の話しに深入りすると、人類のためという社会的意義だけでなく、途方もない話に呆れたり、逆に、暗くなったりします。
   今回は、かなり落ち込んだ宇宙関係の本を紹介しましょう。今年の2月に発行された本で、夏に読んで、立ち直る迄に大分時間がかかりました。題からしてショッキングです。「宇宙に終わりはあるのか」(吉田伸夫著 講談社)と題されております。私たちの地球は12億年後、灼熱地獄になって人類が住めなくなるだけでなく、50億年程度で(40億年という本もある)、私たちの生存する天の川銀河は、アンドロメダ銀河と衝突して合体するらしいのです(ところで今年のノーベル物理学賞受賞者は、ブラックホールの合体により生じた重力波を初めて観測した研究者3名でしたね)。
   そもそも遠い将来、ブラックホールに銀河が飲み込まれる銀河崩壊時代が到来し、その後、物質消滅時代を迎えることになるというのです。これを無の世界といい、猛烈な大質量を誇るブラックホールですら、ホーキングの言う熱放射で蒸発するというのですから、先ずは信じられません。この宇宙の終末を「ビッグウィンパー時代」と言うのだそうです。ビッグウィンパーの時代では、新たな構造形成の可能性が全くなく、これを宇宙の終末と表現されています。
 
2.  宇宙の始まりを「ビッグバン」ということに習って、宇宙の終わりも「ビッグ」を最初に付けるのが宇宙論研究者の習わしらしいです。ところで「ウィンパー」と言うのは「すすり泣き」という意味なのだそうですが(「weeper」が「泣く人」なのは分かりますが・・誤記じゃないの?)、イギリスの詩人T・S・エリオットは“すすり泣きと共に”「これが世界の終わり方だ」と歌っているらしいのです。学術的な話と一緒に、こんな詩的な話を絡められると誰しも落ち込みます。
   今年12月に弁護士として当事務所に来てくれる室賀さんと食事をした際、宇宙終末の「すすり泣き」の話をしたところ、直ぐに分かってくれました。当時は、宇宙論の話をするのが辛い時期でしたので、室賀さん、中途半端でごめんなさい。
    仕方がないので、ホーキングが量子宇宙論でも有名なことから、ホーキングが関係しない量子論の本を漁って読みまくりました。笑ってしまいます。タイムトラベルも可能であるとか、パラレルワールドが存在するとか奇想天外な話のオンパレードです。しかも、ある量子論の本では「量子論を真に理解している人は一人もいないだろう」などと堂々と書くことができる学問領域なのです。少しの事実で次々と想像を膨らませる学問なのですね。
   つまり量子宇宙論は、これからの学問だと分かっただけでも気が楽になりました。
 
3. 私は、平成21年に発行されているサイモン・シンの「宇宙創成」(上下 新潮文庫)もかなり前に読んでいます。同書は、ピタゴラスの座右の銘である“万物は数なり”で表されるように、実に科学的で説得力のある書物でした。当然、私は、宇宙を知るためには事実に基づく科学的方法によって探求するという姿勢に共感していたのです。
   私は、常々「弁護士道の極意」は、事実の掘り起しにあるのだから「宇宙創成」の書にも通じるなどと話して、“読むといいよ”などと勧めておりました。今回分かったことは、宇宙論も、原子や電子や量子等の世界に入ると、分からないことがあまりにも多く、現在判明する僅かな事実から想像力を駆使して、量子論と言う学問を進歩させてきたのだということが判りました。本当に科学の進歩は凄まじく、宇宙の実態が、多少でも理解できる時代として、リーチがかかる少し前ということなのですね。
 
4. 新宿の紀伊国屋書店4階に行き、量子論について書かれた本を探しに行きました。驚きました。棚には、すごい種類の本が大量に並べてあるのです(皆さん、勉強されているのですね)。新聞でも、“弁護士の皆さんが宇宙に関係する新しい仕事を探している”というような紹介記 事も何度か読んでおりますが、量子論まで勉強しないといけないとは考えておりませんでした (新聞による宇宙部会の先生方、当然そこまで研究されているのでしょうね)。
   そこで、「図解 量子論がみるみるわかる本」(佐藤勝彦著 PHP研究所発行)を紹介しますが、本当に、安直に量子論を理解するいい入門書です。10次元の世界とか、パラレルワールドとか、タイムトラベルとか出てきますが、まだ我慢ができます。だって、納得して読めることに意味があると思うからです。
 
5. 宇宙ビジネスの民間参入が、日々新聞を賑わしております。弁護士も新たな世界に参入して、独立独歩の業態に変化させたいと腐心されておられるのでしょうが、そんなに甘いものではないと考えております。私は、20年程前、日本の草分け的な宇宙開発を担った会社の顧問業務をしながら、最後は破産させざるをえなかった悲しい経験があります。宇宙開発のために日本国籍まで取得され、世界を相手に、厳しい会社経営に人生をすり減らされた社長の姿がよぎります。でも火星に移住する日を思い、別の上場企業の新年会で“火星に人は住める”という話しをしたこともある位、宇宙の開発には関心をもっております。タイムオーバーにならないうちに、早くリーチをかけて、あがりたいですね(「あがる」という内容は不明ですが)。

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1 この本は、畏友である弁護士安童二先生の著作であり、昨年9月29日、出版されました。昨年末、新宿紀伊国屋書店にこの本を求めて案内担当に尋ねたところ、「よく売れていますよ」と不思議そうな感じで説明を受けました。確かに表紙は、字だけのみの簡素なものであり、題も一般受けしにくく、宣伝意識が不十分のようにも思います。
  安得萓犬箸里付き合いは既に20年近くになるのではないでしょうか。近時、激しく揺れ動いております築地の仲卸業者の債務整理、つまり営業権譲渡の特殊案件において、東京地方裁判所のご依頼を受けて面識を得ました。互いに破産法上の保全管理人として、築地市場で新たなシステムを作る中でのお付き合いが始まりです。
  安得萓犬蓮行動力に優れておられますが、その法的バランスも申し分なく、この先生はできる弁護士だと確信した数少ない方です。
  本書も優れたドキュメントでありますが、私は「刑法の教科書」として或は「お医者様の必読文書」として推薦したいと思いました。でも、とてつもなく面白いドキュメントでありますから、皆様には、教科書的読み物でなく、ノンフィクション小説のように読んでいただければ幸いであると考えております。

2 早く本論に入りましょう。
  第一に、この本により、医療分野の本当の難しさに、新たに目を開かせていただいたことであります。
  安得萓犬蓮∋実の追求が半端ではありません。私も、若い先生方に事実をどこまでも調べてくださいと要求しておりますが、こんなことは、安得萓犬砲肋鐚韻任后あるいはまた、私が、「その道の専門家に聞くことが一番」という事実調査の実践は、常識以前のものでしかありません。この究極の人脈造りは、安得萓犬凌由覆里覆擦觀覯未任垢ら、真似ができません。ドキュメントですから、その説得力が違います。
  以上の調査結果として、産婦人科医の仕事の大変さを肌で知りました。胎盤と血液などの関係を勉強しておりますと、子供が生まれる仕組みを知りました。母の大変さに思い至り、自らの無知の猛省です。母や妻に感謝せねばなりません。
  また医療の世界の一部ではありましょうが、麻酔科医の先生の役割も、初めて勉強したことになります。神奈川がんセンター事件は、まさしく麻酔科医の先生が起訴され、無罪となった事件ですが(横浜地方裁判所平成25年9月17日判決・確定)、その紹介の場面も本書の急所です。
  これらの事件が発生する問題の一つとして「事故調査委員会の報告書」をあげておられます。これは、後に述べることにします。
 
3 第二の衝撃は、法と医療の目指す「正義」が全く違うという指摘です。起訴されれば、有罪か無罪。検事の立証が、法に抵触したと認定するに足りる事実を摘示して立証するなら有罪となります。安得萓犬蓮△海譴鰺罪か無罪かの二択と説明します。しかるに医療は三択なのですね。安得萓犬遼椶魄用します。
  「医療事故はいくら誠実に調査しても、結果は、三択の答え、要するに、『何が原因で起こったのか判らない』との結論が出る可能性がいくらでもある」(261頁)。ここで医療と刑事罰との正義の思考形態が異なることの説明も面白いのです。だから納得しがたい起訴もありうるのですね。もっと引用をしたいのですが、書きたいことがありすぎて‥。勘弁してください。

4 この本を、ノンフィクション小説の一分野として世に広めたいという希望を述べました。これは、この本が、刑事裁判の経過を詳細に展開していながらも、そのエピソードが実におもしろいのです。
  例えば、勾留理由開示の裁判が終わり、退廷する加藤医師が手錠腰縄なのに、自然に振り返ったという場面も傑作です。引用します。「これはなんだ、と見上げると看守と目が合った。なぜか腰縄がゆるめられたと。」その理由まで読み進むと、思わず、涙ハラリです。
  もう一つ。「私は怒りを最高裁への上告理由書にぶつけた。『東京高裁は東京地検公判部東京高裁出張所と言われている』と書き出した。」
  いやー、痛快ですね。
  こんな面白い話が続出では、刑事裁判の教科書だけで終わりにするのはもったいない。このような部分は、安得萓犬痢版の溢れる人柄”がそのまま生かされているのですが、私は、つい、ノンフィクション小説などと発言してしまうのです。
  もちろん刑事事件に通暁しようという若い弁護士の先生方には、是非とも読んでいただきたい。ミランダルールとか書きたいことは一杯ありますが‥。刑事弁護の手抜きは、できなくなりますよ。

5 最後に、安得萓犬問題提起しておられる事故調査報告書です。
  私も、会社依頼の第三者委員会報告書等に関して、本コラムに、その問題点などを提起してまいりました。その解決策も提案してきたつもりです。その一案として、保険制度を利用し、依頼者という夾雑部が入らないようにしないと公正性が保ちえないなどと警告してきたつもりです。お金を出す人と関係しない仕組み造りが、必要なのです。
  安得萓犬蓮⊂綉点について問題提起をされておりますが、医療の世界では“患者とその家族という利害関係人”まで入ることに驚きました。引用します。「なんとか遺族に補償がでるように、(医師に)過失ありきとも読めるように、書かねばならない状況に追い込まれた」事故調査委員会の報告書に警告を鳴らしておられるのです。しかも、この報告書によって警察等の捜査機関が動くのです。悲しい因果関係です。
  ページが尽きました。最後に、再度「この本はすごい」。

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1 先日、私は、講談社と文芸春秋と共に「濱嘉之さん 文庫200万部突破を祝う会」の発起人として、上野精養軒にて行われた記念パーティーに出席しました。
大広間には驚くほどの人が集まりましたが、20年近く前、宇宙開発を目的として活躍した当時の会社役員とお会いし、昔のことを懐かしく思い出しました。当時の宇宙開発は、軍事目的(?)のロケット開発が中心でしたが、資金繰りに窮して会社に詐欺師が入り込んだため、濱さんと彼と私の三人は、大変苦労しました。特に、株主総会の運営は本当に厳しく、昨年9月、本コラムの「株主総会の運営(IR株主総会 その3)」においても、その一部を紹介しております。
当時の記念に、現在は公安警察小説家、第一人者と言われながらも、いまだ「危機管理が主たる業務」と宣言された濱さんを囲み、当事務所の副所長も含め、四人で記念写真を撮ってもらいました。

2 宇宙開発会社の業務も、人工衛星の利用により、実に多種・多様な業務に利用されるようになってきました。ネット通信や天候関係の業務には早くから利用されるようになっておりましたが、現在は画像の利用による交通や農業・漁業の収穫時期にまで利用できると言われております。日経ビジネスには、伊藤園が茶葉の摘み頃の判断に利用するという記事が掲載されておりました。
 でも生身の人間が宇宙を飛び回るというには時期尚早です。いまだ人類の月面着陸には疑惑があるとする説も唱えられる昨今、どうしても紹介したい本があります。
平成23年発行なので多少古いとも言えますが、人類にとって、宇宙の無重力での生活が如何に人間に馴染まないものであるかについて、詳細に取材した本を紹介したいのです。

3 それが「わたしを宇宙に連れてって」(メアリー・ローチ著 NHK出版)です。メアリー・ローチは、厚かましいおばさん(ごめんなさい)ジャーナリストですから、どこでも“もぐりこむ”という感じで取材します。例えば、日本の宇宙飛行士選抜試験にも実際に突撃取材するのです。型通りの日本で、こんな奇抜な試験をするのかと疑問ですが、“さもありなん”と思うから不思議です。
そもそも宇宙環境が如何に人間になじまないものであるかについて、若田光一さんが初めて宇宙に旅立つ際の記事(平成21年2月8日付日経新聞)が分かりやすいのです。この古い記事を読むと、宇宙に行きたくなくなりますが、その一部を紹介しましょう。つまり「宇宙から大量に降り注ぐ放射線や、方向感覚もまひさせる無重量環境」、しかも宇宙環境では「骨粗しょう症の患者に比べて十倍の速さで骨の量が減っていく」、あるいはストレスや睡眠不足など支障をきたす「自律神経」の問題など頭が痛くなります。現在、宇宙ビジネスの対象となっている数分の宇宙旅行など話の種にもなりません。

4 「わたしを宇宙に連れてって」では、無重力の世界では“ヒューズが飛ぶ”ことで障害を防ぐなどという重力現象の利用はできず、現代の科学技術の見直しという側面も描かれでおります。しかし何といっても極めつけは人間の体そのものに関する突撃取材でしょう。
 この本は、初めからズバリと本題です。「宇宙開発のエキスパートにとって、あなたは巨大な頭痛の種だ。彼らが扱う機械やシステムのなかで一番めんどうくさい相手、それがあなただ。気まぐれな代謝作用、貧弱なメモリー量、統一規格の存在しない形状にサイズ。あなたは予測不能だ。まるで安定していない。壊れるようなことがあれば、修理するのに何週間もかかる。宇宙で水や酸素や食料に困ったらどうするかという心配もしなくてはならない。あなたが小エビのカクテルや放射線たっぷりのビーフタコスを調理して食べるのに、どのくらい燃料を消費しそうか」。 長くなるので引用は止めます。
しかし無重力の世界で、人間の排せつ物の処理が一番工夫を要するという話、「14 別離の不安 無重力トイレの冒険は続く」で笑います。別離とは自分の排せつ物との別離です。
 皆さん、排せつ物が重力を利用して下に落ちていることを、ここで初めて勉強されると思います。重力がないと、液体は排せつ器官の周りで液体として漂うのです。物体も出てしまった空間に留まるのです。
宇宙開発のエキスパートがどのように苦労をしているのかを知るとおかしくも、せつなくなります。

5 今年の初め、宇宙法の説明について、アポロ11号の月面着陸に際して議論された題材をテーマにして紹介するつもりでいました。つまり月面にアメリカの国旗を立てるということは、宇宙条約に違反しているのではないかということです。北米旗章学協会に提出された論文を紹介して宇宙法の説明をしようと計画しておりました。でもメアリー・ローチの本により、旗がうなだれることは予想され(月の引力は地球の六分の一)、実際には横棒をつけたというエピソードの紹介で疑惑も解消するという腹積もりだったのです。でも宇宙法を概論するだけでもコラム一回分になります。そこで当事務所の秀才田中弁護士に宇宙法の概論を、今年夏過ぎ頃に、コラム形態で書いてほしいとお願いしました。
そもそも宇宙法の専門書は、私の所属する弁護士図書館でも2冊しかありませんでした。硬い表紙のほうの本を借りたのは、この14年間で私が二人目です。即ち、弁護士のコラムで宇宙法を宣伝にする弁護士は多いのですが、体系だった解説書は薄い表紙の本、学者先生方編著になる「宇宙法入門」程度しかないのです。
田中先生。宇宙をじっくり楽しんで、コラムはゆっくりやって下さい。

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1 前回コラム書評で、日本経済新聞、元日版「宇宙でごみ掃除。誰もやらないから面白い」と報道されていることを紹介しました。
この記事は、日本の民間会社社長が、将来、宇宙のゴミ拾いを民間ビジネスにするというもので、2017年にも自社開発の衛星を打ち上げ、衛星やロケットの残骸を片付けるというものでした。しかも女性社長の紹介記事なのです。
この記事を読んで、次回の書評は、宇宙のゴミ拾いを職業とする未来の若者たちを描いた漫画「プラネテス」しかないと思いました。

2 昔、宇宙開発会社の顧問をさせていただいていた当時、「思い出を宇宙に飛ばそう」という企画 に関し、私の友人弁護士から「宇宙にゴミを撒いて大丈夫なの」と質問されて以来、心の傷でした。でも、それから30年近く、宇宙開発事業は冬の時代であり、実際にその会社も整理になりました。しかるに近時の報道には多少呆れる思いです。
  昨年暮れから本年1月20日頃まで見ましても、宇宙の記事が掲載されまくりです。日本経済新聞でも、年末27日「欧州ロケット首位維持に総力」、同28日「中国、宇宙開発3強狙う」、今年になっても「宇宙システムに防衛指針」、「電柱サイズロケット公開」、「低コスト競争出遅れも」、「ミニロケット失敗」等と凄まじい勢いで宇宙ビジネス関連の報道です。他の新聞も同じだと思います。
新春の日経ビジネス「2017年宇宙商売ビックバン」も、表紙の題名のわりに新聞報道の枠を大きく出るものでもありません。でも纏まった状態にされた報道は全体を見るのに便利です。

3 これらの記事を書かれている記者の皆様は、40年以上前から宇宙開発に携わってきた民間企業の前人未到の開発、そして営業努力、しかもどれほどの苦難があったかを知っていらっしゃるのでしょうか。
笑ってしまう話ですが、弁護士の世界でも「宇宙弁護士」で売り出そうという企画があるそうです。でも宇宙関係の法律は、まだ「宇宙法」というほど充実していません。宇宙関係の会社も、従来の会社経営の法律相談が中心であり、宇宙関係の法律はその「付けたし」の段階です。宇宙旅行の契約書と言っても「専門性」を言うほどのものではありません。1月26日、TBSから報道された「人間観察モニタリング 宇宙旅行に当選したら?」をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。契約書も話題になっておりましたが、専門性を問われるほどのものではないのです。でもこの当選を知ったお父さんの喜びぶりは、「騙し」だけに本当に可哀想でした(面白かったですね!)。

4 漫画「プラネテス」幸村誠著 講談社(4巻)の紹介をしましょう。
 2001年発行のこの漫画はいろんな賞をとっていて有名です。宇宙のごみ掃除(ごみを「デブリ」と言います)を職業とする若者の青春群像を、宇宙という途方もない大きな世界に対比して「生きる意味」を問うという、いわば青春小説です。
描かれる世界は、現在の数十年後を舞台にしております。従って、現在とは大違いに宇宙法も発達しております。漫画の世界では、宇宙のごみ問題に関する取り決めもあり、或は「宇宙葬」も禁止された後の世界として描かれるのです。もちろん月には衛星都市が作られ、月面地下に都市が存在しております。

5 宇宙ごみを拾うという過酷な労働であっても、高賃金ということで衛星に乗り地球軌道を回って働く青年が、いろんな人と葛藤し、初の木星探査乗組員として成長していきます。父親も火星に何度か行った「船乗り」なのですが、同様に葛藤の対象です。確かに無重力で空気のない世界に行けば、人類つまり人間とは何か?神っているのか?といろいろ考えざるをえないのでしょうね。空気もないのですから。
主人公は悩みが多すぎるようにも思います。しかし経験のない世界に行くと当然このようになるのかなとも思います。いずれにしても宇宙と比較し、地球上の懐かしい風景がしっくりと馴染むのです。これこそ絵を主体とする漫画の醍醐味です。
本作品は「愛」がテーマなのですね。4巻目のラストで遂に木星に到着した主人公が人類へのメッセージに際して「愛し合うことだけが どうしてもやめられない」と話したのに対し、木星探査責任者が「気安く愛を口にするんじゃねエ」とつぶやくところなど、これは論評の枠を超えていますが、面白ければいいのです。

6 近時、「宇宙」或は「ロケット」と聞けばすぐに買って読んでしまう癖がつきました。例えば、昨年9月10日第一刷発行の「売国」真山仁著(文春文庫)も「ロケット」が題材と知って直ぐに読みました。
真山仁作品では「ハゲタカ」など好きな小説です。最近では原発のメルトダウンを題材にした「ベイジン」も読んでいましたので、期待して読みました。
でも今回紹介する漫画「プラネテス」のほうが断然面白かった。「売国」はロケット、つまり宇宙関係の取材が不足ではないのかと感じてしまう。特に、主人公の女性八反田遙は夾雑部のようで、特捜検事の世界と馴染まず、私には構成不足と感じました。

7 宇宙物の作品を紹介しておりますと、何か作り物めいた、偽の社会を紹介しているような違和感が残ります。
故に、次回は完全な取材ルポ作品である「わたしを宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦」(メアリー・ローチ著)を紹介しましょう。著者は、実際の無重力空間が如何に人間になじまないものかについて、取材しまくって書いております。
  宇宙に関する法の紹介が遅れておりますね。

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「火星の人」アンディ・ウィアー著  その映画版「オデッセイ」(主演マットデイモン) 「絶対帰還」クリス・ジョーンズ著

1 新年元日の新聞には、宇宙に関係する記事が掲載されるということを皆さまご存知でしたか?
10年以上前になりますが、私は、上場企業新年会の来賓代表挨拶の際、当時関心の高かった宇宙の話をしました。話したかった題材は「人類が火星で暮らす日が近い」というものでした。当時、宇宙を仕事とする会社の法律業務をたくさん扱わせていただき、社長さんとお話しする機会が多く、誰かに話をしたいという誘惑がありました。でも、それ以降、宇宙の話題が下火になるにつれ気になっておりました。そのような経緯から、私が購読している元日の新聞には、宇宙に関係する記事が必ず掲載されるということに気付いたのです。
本年の朝日新聞は「月面へ国際レース」、日本経済新聞は「宇宙でごみ掃除。誰もやらないから面白い」を掲載しております。
朝日新聞は、月面での国際レースに日本からも参加を目指すチームがあるというものです。日本経済新聞は、宇宙の環境問題に取り組むベンチャー企業について紹介しております。

2 そうなのです。ずいぶん前とはいえ新年そうそう、数百名の方にお話ししたことからもお分かりのように火星に関するコラムを書きたくてうずうずしておりました。
弁護士らしく宇宙に関係する法律から始めるのが常道でしょうが、次回にさせてください。でも概略だけ述べておきます。2008年、既に宇宙基本法が成立し、昨年11月、宇宙事業に対して民間参入を認める宇宙活動法が成立しました。今後、宇宙事業は一気に本格化するでしょう。つまり今年の新年こそが、火星についてコラムを書くラストチャンスと判断されるのです。
でも今回は冒頭の題にもありますとおり、三つの書評等を併せて紹介したいのです。長年蓄えてきた題材ですから、国連の宇宙条約等法律の側面と併せて、次回、宇宙SF漫画「プラネテス」(幸村誠著)の書評と一緒に書かせていただくことにします。

3 2015年12月、文庫本で発行された「火星の人」(アンディ・ウィアー著 上・下 早川文庫SF)は、宇宙オタクでなくても十分楽しめる本です。
  最初の84頁迄は、火星探検に派遣された乗組員の一人が、事故から火星に取り残されてしまい、やむなく火星で生き延びることのできる環境づくりをする作業から始まります。火星に着陸する次の火星降下機は4年後、それも3200キロも離れた地です。それまで生きるとすると食料も水も不足しております。ここら辺は早読みが難しい。
人間の生きることのできる空気や水の話ですから高校生時代に勉強した知識フル動員です。水は酸素と水素でできていますが、酸素と水素という分子から話が進むのですから大変です。環境づくりのための電力も同じように工夫が必要です。その中で、私が楽しんだのは基地内でのジャガイモ造りです。土壌とバクテリアという微生物の関係には、のめり込みました。私が映画「オデッセイ」を見たくて堪らなくなったのはこのジャガイモ畑の様子を見たかったからです。
ああ話が飛びました。映画「オデッセイ」の話になってしまいました。でもジャガイモ畑と赤茶けた火星の砂漠のイメージ。これをどうしても掴みたくて映画「オデッセイ」を見てしまったのです。でも、どちらかにしろと言われたら、私は映画より小説である「火星の人」を勧めます。迫力が違いすぎます。

4 宇宙を飛ぶロケットなどの本物の科学知識があれば、もっと面白いと思いませんか。
その材料として、私が昔読んだ「絶対帰還 宇宙ステーションに残された奇跡の救出作戦」(クリス・ジョーンズ著 光文社 2008年発刊)を紹介しましょう。
この本は、宇宙に関係する基礎知識の吸収に役立ちます。つまり、宇宙開発をめぐるさまざまな出来事をてんこ盛りにしたノンフイクション作品なのです。ノンフイクションですから宇宙の基礎知識を吸収するのに安心です。
このノンフイクションは、宇宙飛行士の本当に残酷な世界を教えてくれると同時に、組織の世界であるNASA(米国航空宇宙局)の実態も皮肉なまでに書かれています。
そもそも火星にはまだ誰も行っていません。小説や映画が正しいかどうかはまだ立証されていません。読んでいて「本当かな」と思う煩わしさはどうしても取り除いておきたい。だって1969年アポロ11号の月面着陸は、NASAの陰謀だなどという話はネットを見ればたくさん出てきます。

5 中国が宇宙開発の「3強」を狙うという記事が昨年12月28日、日本経済新聞に出ておりました。
小説「火星の人」でも、映画「オデッセイ」でも、中国が火星に取り残された主人公を救う手助けをするという話が出てきます。秘密の国なので誰も知らないロケットが飛ばせるという奇抜な筋立てに感心しました。でも日本経済新聞の報道によれば、中国は2020年には火星探査機を打ち上げるそうです。
現在、アメリカとロシアが中心になって開発していることは皆が知っておりますが、小説が本当のような話になります。
面白くなりそうですね。

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1 ある上場企業の役員会に出席した際、公認会計士の先生から、先月出版された「黒い巨塔」という本の書評を求められました。先生には、前回のコラム「サピエンス全史」の書評をご覧いただいたのでしょうか。書評を求められたのは初めての経験です。
今回のコラムの題材が決まりました。

2 瀬木氏の著作については、2014年7月、当コラム「裁判員裁判」の項目、2回目で「絶望の裁判所」(講談社現代新書)を紹介したことがあります。「黒い巨塔 最高裁判所」という題を見ただけで同じような内容が書かれていることはすぐに分かります。
弁護士をやっておりますと、最高裁判所が、どうしても行政寄りに判断することは直ぐに分かることです。高校時代、司法は、三権分立の一端を担い、行政や立法をチェックする機関と教わりました。しかし、社会状況の変動に及ぶような判断は避けたいに決まっています。もちろん、瀬木氏の著作は、そのような常識を更に逸脱した最高裁判所の実態について、紹介というよりも暴露です。その内容はあまりにも凄まじい。
行政や時の権力者におもねる裁判官、私たちの言葉でいう「ヒラメ裁判官」(瀬木氏からは「ヒラメではない。中途半端なことを言うな」と怒られるでしょうが)のいやらしさを驚くほどの事実を示して、苦悩する若い裁判官と対比させて書いておられます。
公認会計士のような畑違いの先生に、このような最高裁判所の側面を紹介できることは面白いことです。

3 でも瀬木氏は、少し気を使いすぎです。最初に「フイクション」だと断っているのに、あとがきで再度同じことを繰り返しておられます。「この作品は、私の一八年ぶりの創作である」と断られただけでなく、これを「異例のあとがき」だと付け加えておられます。
では小説、或はフイクションそのものと言えるのでしょうか?
「黒い巨塔」が小説だと主張されるなら、私は、お読みになる方に対して110頁迄の最初のほうは、辛い読書体験になるとお話しせざるを得ません。主人公の活躍もなく、最高裁長官や最高裁事務総局の面々を登場させて紹介のような形で、どうしようもない人物の話がえんえんと続きます。ここには物語性など全くなく、飽きてしまうのです。
この本を読まれる方には、読み方に工夫してくださいと申し上げざるを得ないのです。

4 後半は、瀬木氏と同じような苦労をされたと判断される主人公、つまり事務総局民事局に勤める主人公が、主人公の親友である裁判官と共に悩み、その妹との不思議な関係が続き、更にはトバモリーと名付けられた猫が登場します。
小説なら、前半との統一性を工夫されないと面白くありません。苦言めいた読書評になってしまいますが、もう一つ。
瀬木氏ではなく、編集者かもしれませんが、単語や横文字、更には専門用語の分かりやすい表現に工夫してほしいのです。例えば、瀬木氏はいろんなところで「韜晦」なる表現を使われますが、これは一般的に難解です。「フイクション」と言いながら、読者対象者を我々法律専門家に絞っておられると判断せざるを得ないのです。
でも我々法律専門家は、前回の「絶望の裁判所」以上でないと満足しません(これ以上書きませんが、専門家は厳しいですよ)。

5 瀬木氏は、我が事務所副所長が愛読する民事保全法(判例タイムズ社発行)の著者であることからも分かる通り、民事訴訟実務の大家であります。
この民事保全法の「著者略歴及び著者目録」(第三版776頁)を見ると、何と実名による著作と、関根牧彦という筆者名による著作を列挙されています。学術書にこのような著作集をあげられる実務家は珍しい。「映画館の妖精」なるフアンタジー小説も書いておられるのですね。これまで、私は幻想小説を読む暇がありませんでしたが、この読書評を書いたからには読まざるをえないでしょう。

6 この本を読んで、今、一番大事なことだと思うことがあります。
  瀬木氏は、最高裁長官による強烈な思想統制、それを最高裁事務総局主宰の裁判官協議会に始まり、裁判官に対する任地への配置転換という、今日言われる「ブラック企業」以上の凄まじさで後半を展開します。そしてその題材を原発訴訟に求めます。瀬木氏は原発推進派や反対派という立場でなく、裁判所の機能を「当該原発につきシビィアアクシデントの可能性がほぼありえず、ほぼ確実に安全であるといえるか否か」(ママ)にあるとします。裁判所は客観的な第三者として、原発の安全性を厳格に審査し、社会におけるフェイルセイフ(危険制御)の機能を果たすのが本来の司法の役割としております(156頁)。
  昔の仲間から、経産省前テント広場の原発反対闘争、座り込み運動に勧誘されても応じえなかった主要な理由は瀬木氏と変わりません。

7 ここで申し上げたいことがあります。今後の司法の行方を見てもらいたいのです。その材料として「逆襲弁護士河合弘之」大下英治著(祥伝社文庫)の第七章「身命を賭して徹底抗戦」だけでも読んでいただくと(その前の章の、自慢話は省きましょう)、現状認識に便利です。何と言いましても、河合氏は、原発反対訴訟の元締めです。今後の裁判所の行方ですが、潮目が少し変わってきたことを強調させてください。連戦連敗だった原発運転差し止め訴訟につき、裁判所が大飯原発及び高浜原発の運転差し止めを言い渡す事例が出てきたのです。
今後の裁判所の行方を見定めるためにも注視する必要があります。

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疑問に答える本書の面白さ
1 皆様と同様、私もいろんな疑問をもって生活してきました。でも「サピエンス全史」は思考の方向性を示してくれているように思います。
  これまで疑問に思っていたことで本書に関係するものとしては、次のものがあります。
第一は、何故、我々が、猛獣或いは他のサピエンスを排して現在の地球上に残れるようになったのか?その原因が「知力」にあるとするなら、何故「知力」が生まれたのか?「知力」の仕組みとは?
第二に、人間は「知力」という武器を持ったのに、何故こんなに不自由な共同体(国も家族も含む)を作り、それに属することでしか生きていけないような結末になってしまったのか?
第三に、私が学生時代、夢中になったマルクス・エンゲルスのいう共産主義的な思考はもはや宗教と同程度なのか?或いは又、経済的な側面においても採用困難な思考なのか?
2 第一および第二の疑問については何となく考えるべき方向性が分かってきたように思います。
この本では「知力」とは、我々が何も知らないという事実を知ることから始まり、不知であるが故に探求心が生まれ、科学等の学問に発展し、文明が爆発するという経緯も説得的です。
そして開花した「知力」がどのような終末を迎えるのか、あるいは幸せな将来になるのかについては、決して油断できないことも結論付けされています。前回のコラムで、我々の将来に必然はなく、期待できない結果を招来するかもしれない場合についても書きました。
3 前回触れなかった農業革命の詳細について、楽しみたいと希望される方には次の書籍を勧めます。
4年前、当時ランキング第一位と言われて売り出されたジャレド・ダイアモンド著「銃・病原菌・鉄」です。この本も有名で「サピエンス全史」と一体となる本です。この本は、地球上の併合される以前の文明を紹介しながら、消滅する必然性を銃・病原菌・鉄に理由を求めます。読んだ当時、やはり書評を書きたいと思ったほどでした。
この本の著者は「サピエンス全史」の著者と交流があります。本書末尾の謝辞でジャレド・ダイアモンドに「全体像をつかむことを教えてくれた」と感謝している程です。
「銃・病原菌・鉄」は、論点の掘り下げ型で書かれているところに特色があり、具体的な事実が展開されます。特に太平洋に浮かぶ島々の先住民の文化、例えばニューギニアやオーストラリアの先住民(マオリ族やモリオリ族など)の論評は本当に楽しめます。
ところで研磨加工をほどこし、刃先の長い石器を最初に作ったのは日本人だったということは皆さま知らないでしょう?これはヨーロッパで石器が研磨される1万5000年も前のことだそうです。
4 三番目の疑問は、私の若き日の感傷のようなものです。
「サピエンス全史」を読む直前、「マルクスの心を聴く旅 若者よ マルクスを読もう番外編」(かもがわ出版)を楽しみましたが、このような単純な宣伝文句につられちゃうのです・・。
 ところで、ある事情があって昔の蔵書を整理することになり、レーニンやロシア文化人の本が大量に出てきて嫌になりました。中国文化大革命における凄惨な家族及び自己体験記、ユン・チアン著「ワイルド・スワン」は複数あり、一つは出版直後の英語版(当時、日本で出版されていなかった)だったこともショックでした。つまり挫折して最後まで読めなかったのです。
本論に入ります。マルクス経済学に対する批判は、いまだ経済的な側面については十分になされていないと言い訳してきましたが、現状、労働者階級なる概念はもはや通用しないでしょう。労働者も一元的ではありません。会社に属していても投資等のクレジットに取り囲まれて生活しており、単純に労働価値や剰余価値などのみで分析できない時代に入っております。
体験的に考えればもっと単純です。つまり中国文化大革命が日本で起きるなら最初に抑圧されるのは単純な私でしょう。詰まらない予測は別にしても、これまでの歴史を見れば分かることです。
いやー、若き時代の熱を冷ますのは大変です。
5 怒りを一つ。
先に紹介した本、「マルクスの心を聴く旅」のなかで「過去の日本の左翼運動には身体性がなかった」という記述、そして「パートタイムの学生運動だった」という感想には腹がたちました。
“遊び半分の学生運動は東大生だけでしょう”と言いたい。マルクスを訪ねるドイツやイギリスの旅に「いいな」と思っていたところ、終わりの211頁で呆れました。こんなことを言う大学教授(名前は書きません)が“マルクスの心を聴けるのか”と文句をつけたい。そもそも東大生には選択の幅があり、恵まれた学生でした。学生運動にのめりこんでいても選択の幅がありました。それ以外の学生は、人生における強烈な分岐点に立っていたのです。
文句はこれくらいにしますが、不服なら何時でも受けます。
6 そろそろ終わりにしましょう。
  長いけど気持ちがいいので「サピエンス全史」の冒頭を紹介します。
「今からおよそ一三五億年前、いわゆる「ビッグバン」によって、物質、エネルギー、時間、空間が誕生した。私たちの宇宙の根本を成すこれらの要素の物語を「物理学」という。
物質とエネルギーは、この世に現れてから三〇万年ほど後に融合し始め、原子と呼ばれる複雑な構造体を成し、やがてその原子が結合して分子ができた。原子と分子のそれらの相互作用の物語を「化学」という。
およそ三八億年前、地球と呼ばれる惑星の上で特定の分子が結合し、格別大きく入り組んだ構造体、すなわち有機体(生物)を形作った。有機体の物語を「生物学」という。
そしておよそ七万年前、ホモ・サピエンスという種に属する生き物が、なおさら精巧な構造体、すなわち文化を形成し始めた。そうした人間文化のその後の発展を「歴史」という。
歴史の道筋は、三つの重要な革命が決めた。約七万年前に歴史を始動させた認知革命、約一万二〇〇〇年前に歴史の流れを加速させた農業革命、そして僅か五〇〇年前に始まった科学革命だ。」

凄いテンポではありませんか。

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書評を書きたくなった動機
1 「サピエンス全史」(ユヴァル・ノア・ハラリ著 河出書房新社 上・下)は凄い本です。
この本を読むと宗教も哲学も不要になったという実感です。歴史学がこのような形で講義されるようになり、種々の学問の集大成として歴史学が語られる時代になったのです。
ところで、この本は結論で“人類は果たして幸福になったのか”という疑問を提起しています。つまり最終章の紹介になってしまいますが次のよう述べています。
「今日、ホモ・サピエンスは、神になる寸前で、永遠の若さばかりか、創造と破壊の神聖な能力さえも手に入れかけている」。
そして“我々はバイオニック生命体等で生物の生命に直接関与可能となり、しかも我々は永遠の生命を手に入れるかもしれない”とまで表現しています。日本経済新聞によって「人間の寿命は125歳が限界」とする米アルバート・アインシュタイン医科大学研究グループの報道(2016.10.6)があったばかりですが、これは別の話として本書の歴史学に魅了されてしまうのです。
しかも我々が神になったとしても、実際に「どこへ向かうのかは誰にもわからない」し、「自分が何を望んでいるかもわからない、不満で無責任な神々ほど危険なものがあるだろうか?」と結んでいます。
この結論は嫌です。近時の世界情勢をみるまでもなく理解できる話だから更に困るのです。
2 この本の中核は、上巻直ぐに始まる「第一部 認知革命」の著述でしょうね。読み始めた当初は、認知心理学で出てくるような用語に拒否反応がありました。
著者によると「認知革命」とは新しい思考と意思疎通の方法とされております。そしてサピエンスという我々の先祖に起こった認知能力を革命と表現しております。
具体的には「噂話」や「陰口」のように現実には存在しないことも語ることができる能力、つまりチンパンジーや旧人類にない能力、これこそ現在我々が地球上に生き残ることができた根本的理由だとしております。すなわち「想像上の現実」は嘘とは異なり、誰もがその存在を信じているものであるなら、その存在に対して共有される「信頼」が生じ、それが存続するかぎり、その「想像上の現実」は社会の中で力を振るい続けるとしております。そして我々がゴリラやチンパンジー且つ他の25種のサピエンス(更科功著「爆発的進化論 1%の軌跡がヒトを作った」新潮新書)に打ち勝てたのは、多数の固体や家族、そして大きな集団に結び付いていくという、このような想像上の接着剤である「信頼」を基盤とするというように話が進みます。
貨幣の流通だけでなく国や会社組織というように「想像上の現実」が「信頼」に基づくとすると、益々筆者の思うつぼに嵌まっていきます。新たな制度は、将来への信頼であり、それが信用=クレジットというように発達を遂げ、貨幣だけでなく国や会社制度というような種々の仕組みに発展していくのです。読んでください。納得できるから困るのです。現在は仮想通貨の時代に突入していますから・・
3 上記論法は、私が学生時代を終わるころ、ちょうど50年程前、思想書と言われた吉本隆明著「共同幻想論」に重なります。
 古すぎて直ぐに出てこない本なので、ウイキぺディアを引用してしまいます。「当時の教条主義化したマルクス・レーニン主義に辟易し、そこからの脱却を求めていた全共闘世代に熱狂して読まれ、強い影響を与えた思想書である。」
これは当時の状況を知らない人が書いた論評ですね。私がもう一つ共鳴できなかったところ、つまり経済的側面に関する分析の欠如があったために「熱狂して読まれた」というのは言い過ぎだと思います。でも国の在り方や個人の関係が古事記等から解きほぐされ、共同幻想や対幻想で語られるこの書は、今回紹介する本の著者ハラリさんに是非とも読ませたい本です。
吉本隆明氏は、科学(化学)の進歩がまだまだであった50年前、既に共同幻想論を言っております。彼を尊敬する先輩がいたこともあり、私も吉本隆明氏にお会いしたこともありますが、歴史的分析というより多少文学的であり、私の感性には馴染みませんでした。しかし、母の法事で会った甥っ子が吉本隆明にはまっていると話したことには驚きました。
4 「サピエンス全史」だけでは理解困難な部分を詰めておきましょう。
昨年4月号の「文芸春秋」で読んだ立花隆「脳についてわかったすごいこと」です。「意識とは何か」として脳の構造が科学的に分析され紹介されていました。
「死の瞬間の脳細胞」、「夢を自由に操る化学物質」、「臨死体験」等が話題の中心をなすのですが、脳神経細胞とシナプスなどの関係、或は脳のどこかの遺伝子(最小のニューロン集団の存在)、脳科学における「ゲノム計画」などにより明らかにされる将来を思うと「我思う、ゆえに我あり」という哲学すらも超えてきたと思わざるをえません。
つまり「意識」が科学的に明らかにされようとしている現実に接すると、行動主義心理学からの批判も吹っ飛んでしまいます。
5 宗教についても同様の感想になりました。
 神は全能で、神こそ死後の世界の主宰者であり、森羅万象の全てを教えてくれる。これを前提にして宗教は成り立つものでしょう。あるいは仏教では、仏の存在を仮定しないと人類は謙虚に生きることができなかった。故に宗教が必要になると思います。しかし死の瞬間、脳に快楽物質(セロトニン)なるものが放出されるなどと聞くと興ざめしてしまいます。
死の世界が意識の側面から分析され始めてきますと、神も信じられなくなるのです。否、人間こそが神に仮定されてしまうとこの本は述べているのです。
次回も、本書の論評です。

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