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コラム - 最新エントリー

一. 
 平成29年9月14日、経済産業省は、「ベビーカーは歩道を通行出来ます」というタイトルの「釈明文」のような文章をインターネット上に掲載しました。
 経済産業省の公表したある文章がインターネット上で議論され、「炎上」とも言いかねないような状況に陥ったからです。

二. 
 そもそもの発端は、平成29年9月7日、経済産業省が、「電動アシスト付ベビーカーに関する道路交通法及び道路運送車両法の取扱いが明確になりました〜産業競争力強化法の『グレーゾーン解消制度』の活用〜」という公表を行ったことにあります。
 この経済産業省の公表を流し読みすると、「電動アシスト付ベビーカー」は歩道を通行できず、車道を通行しなければならないかのように読めてしまいます。
ベビーカーは車道を通行しなければならないと役所から言われれば、幼い子供を持つ親は激怒するに決まっています。そんな危ないことを経済産業省は言うのか、と。その結果、インターネット上の議論が盛んになったわけです。
 もっとも、実際のところは、経済産業省の公表の仕方が説明不足だったこととインターネット上の情報が錯乱しただけのことであり、ベビーカーが一律に歩道を通行できないというわけではありませんでした。

三. 
 本コラムでご紹介したいのは、今回の騒動のもととなった「グレーゾーン解消制度」という制度です。
 産業競争力強化法という難解そうな名前の法律に基づき創設された制度ですが、ベンチャー企業などにとっては画期的な制度です。この制度は、経済産業省にとっても「肝入り」の制度であるため、力を入れて周知に努めていたところ、思ってもいなかった形で広まってしまいました。

四. 
 新事業を行いたい方にとって、今までは、「新しい事業を始めようと思っているが、適法か違法かが分からない」「新しい事業を適法な形で始めたい」等と思っていたとしても、良い制度がありませんでした。
 所管の省庁に聞こうにも「役所に聞いたら逆に目を付けられてしまうかもしれない」「役所に潰されてしまうのではないか」などという不安があったため、なかなか聞くことができませんでした。その結果、新事業を開始する際に様々な検討が必要となり、コストも時間もものすごくかかってしまっていました。コストと時間ばかりかけて、曖昧なまま進めざるを得なかったり、リスクを考えて断念してしまったりすることも多かったと思います。
 しかし、グレーゾーン解消制度を利用すれば、経済産業省が会社の立場に立って相談に乗ってくれた上で、所管の省庁と折衝や調整をしてくれます。
 しかも、1カ月後には回答が出るというスピーディさです(もちろん延長になることもありますが、1ヶ月ごとに理由を教えてもらえることになっています)。
 このような制度を利用することを検討しないのは本当に損だと思います。

五.  
 もっとも、グレーゾーン解消制度は、法律に詳しくない方にとっては、それほど簡単に行うことができるというものではありません。
 グレーゾーン解消制度の照会書には、産業競争力強化法施行規則のどの要件に満たしているのかを記載しないといけませんし、どの法律のどの文言が問題になるのかを指摘しなければなりません。会社は、法律に違反しないと判断している理由を、法令の文言や規制官庁が示している逐条解説での見解等を参考にしながら、論じなければなりません。
 そのため、「新事業を始めたいが、もしかしたら違法になってしまうかもしれない。」「違法になってしまうかもしれないが、どの法律のどの条文が問題になるのかが分からない」と漠然に考えていらっしゃっている会社にとっては利用のハードルが高いですし、「違法ではないと思うが、逐条解説等を読んでもどのように論理構成をすれば、適法だと主張できるのかが分からない」という場合も利用しづらいです。
 そのような場合には、照会書の書き方も含め、弁護士に相談するしかありません。

六.
 当事務所は、ベンチャー支援(いわゆるベンチャー企業も、既にしっかりとした会社になっているもののベンチャー事業を行う会社も含みます。)にも力を入れています。
 いかなる会社であっても弛まぬ努力をしなければ生き残っていけないでしょうが、新規性のある事業を行う場合には必ず法律の壁が立ちふさがってしまいます。法律の壁が立ちふさがるからといって、法律を無視したのでは、コンプライアンス違反のブラック企業の仲間入りになってしまい、従業員や株主の方々が会社に対して誇りを持てなくなってしまいます。
 当事務所は、長いお付き合いをして頂ける顧問会社(顧問料は月5万円以上です)の場合には、「新事業を開始するにあたりどのような点が法律問題になり、適法になり得るかどうか」に関するアドバイスについても、顧問料の範囲内で、無料で行っています。
 新事業を行いたいが適法なスキームになっているかが心配だという会社さんは、是非とも当事務所にご相談くださいますと幸いです。
                                        以 上

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1 証人尋問の劇場性に関係するコラムで、書き残したことがあります。
裁判が、「劇場性のあるショー」のように楽しめるものかどうかという視点で、本コラムを書いてきましたが、日本の裁判が「ショー」としては不適切であろうと何度かお話ししてきました。
 しかし、弁護士が弁護士活動をしていて、「劇場的」とも言えるような刺激的場面がなかったかというと、優秀な弁護士の方は「たくさんあった」と言われるはずです。私もそんな刺激的な場面、「劇場のショーのような一幕」の場面は、いくらでも思い出せます。
 言い残したことがあると言いますのは、その刺激的場面が「劇場性」に通じるとも言えることから、今回のコラムでは、その刺激的場面が、どのような場面で発生するのかを書いてみたいと思ったのです。

2 説得するべき相手は誰か?ということは弁護士にとって常識です。
陪審裁判であれば判断権者は陪審員ですから、陪審員への説得が必須であり、この証明過程が劇場的だったのですね。
 でも通常、訴訟の判断権者は、裁判官になります。争う双方の主張のいずれが正しいのか、誰が判断する立場にあるのかということに尽きます。その判断権者が、今迄言っていたことと違って、全く逆の結論に判断を変えてしまったのであれば、必死で依頼者の主張を続けてきた弁護士にとって、それは劇的な勝利です。刺激的な場面であることは間違いがありません。依頼者がその一部始終を見ていたなら、自分の主張が入れられたことによって、感動を受けない訳がありません。
 裁判官と論争になって、当方有利な証拠を示しながら40分以上議論して、結局、逆転し、勝訴判決を得たこともあります。その際に、私が示す証拠を私の説明に従って、次々と裁判官の面前に示すという、離れ業のような作業をしてくれた副所長の事件に対する理解の深さにも感心しました。依頼者は、一部始終を見ておられ、本当に喜ばれました。
 或は、証人尋問中、真正な登記名義の回復について相手弁護士が不勉強で意味不明の質問を連発したことから、裁判官が、我々に軍配をあげて論争を終わりにさせました。このような経緯から、その後の証人尋問も当方有利に運び、証人尋問に出ておられました依頼者は、明らかに裁判官の思考が逆転したことが分かったとまで感想を述べられました。
 この件も、当方が勝訴同然の和解にて決着しております。
これらの裁判歴はいくらでも示せますが、判断権者である裁判官を説得することができた事実等を示すことによって、誰かを不愉快にさせるのは、私の趣味に合いません。

3 裁判で決着がつくことを予測して、今後の予測を立てるのは常識だと説明するのは馬鹿々々しい。そもそも法律家は、要件事実論に従い、無意識に判断しております。それは裁判にならなくとも、弁護士双方が、要件事実論による分析と当該事件における事実を徹底的に洗い出しして、有利・不利の分岐点を探り、事件の解決に臨むのです。
 弁護士になった当初は、このように事件の分岐点を推理するという当然のことが、困難なようですね。要件事実論を勉強したのかという弁護士もいますから・・。
 もちろん、裁判が当然の前提ではあっても、それより有利に解決できると判断して、他の制度、例えばADR・裁判外紛争解決手続を利用したこともあります。
 裁判における事件の分岐点を整理していて、私的調停制度を利用するほうが、当方にとって有利になるという次の高等戦術に進むのです。

4 その事例を一つあげてみます。
当コラムの「金融取引」の項目でも紹介しました全国銀行協会による私的な裁判外紛争解決機関(ADR)によるあっせん申立てでは、このような高等戦術を使わせていただきました。
 この事例は、銀行が十分な説明もしないで「為替デリバティブ取引」をさせて、多くの市民に損害を与えた事件です。大手町に開設されたばかりのADRに行って、あっせん委員を説得しました。
 事件は、二つの銀行に対する申立てでした。一つ目の事件は、超大手銀行が「儲かります」としか言っておらず、中途解約時の費用の説明もなく、詐欺行為の一種という認定が働く事案でした。もう一つは別の超大手銀行によるもので、当方依頼者は、前の取引で知恵がついており、説明不足とまで言えない事案でした。
 訴訟にすれば、第一の事件では勝訴するが、第二の事件で多額の敗訴判決を受ける恐れがあったのです。であるなら、二つの事件を一挙に解決し、しかも第一の事件を有利に使う方法がないかどうかを考慮の一つにしたのです。

5 この調停では、銀行側関係者から当事務所に対し、ずいぶんお褒めの言葉をいただきました。
 そもそもあっせん委員は、公正に選出されると言っておりますが、全国銀行協会側で選ばれるのですから、今、流行りの「忖度の精神」によって、銀行にとって最悪の解決(裁判による大手銀行全面敗訴)は、できるだけ避けようとするはずです。
 一社は、明らかに違法ですから、何とか上手に二つの事件を纏めるためには、適法と判断される一社に対し、当方有利な解決案を提案しない限り、私は和解しません。適法だと判断している他方の金融機関に妥協をしてもらうしかないのです。
 見事!実に、当方有利に和解が成立しました。銀行側の関係者が、何度も「例がない」と発言した和解で終わりました。
 当事務所の若い弁護士先生が、感激して、直後にレポートを出してくれました。「無い袖は振れない抗弁」(払いたいが、お金がなくて払えません)の見事さを褒めてくれました。しかし、それは違います。先ず、第一事件である金融機関の詐欺に迄発展しかねない不法な経緯の立証が完璧であったこと(これは副所長作成の長文の申立書です)、そして、不利な和解を回避するため、二つの金融機関の事件を、一挙に申立てをするという知恵(当事務所の見通し力)を褒めて欲しかった。
 ところで、依頼者代表者は、ご夫婦揃って、その一部始終を見ておられました。大感激していただき、大手町からの帰途、高級レストランでランチコースをご馳走になりました。

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1 前回、証人尋問の劇場性について書きましたが、書いた後、面白い社会現象に気づきました。
 我が国で、裁判員裁判制度の導入が具体的になった頃、裁判所の内部を案内する業者のような方が出てきたと噂になりました。当時、新たなビジネスが生まれたと驚いたものです。しかし、今では、このような業者の方の話が出てこなくなりました。つまり、裁判員裁判制度が導入されたからと言って、外国の陪審裁判のように「ショー」になる要素は殆どありません。裁判所内部の見学は、司法制度の勉強にはなっても、劇場性もなく、面白味が全くないからです。日本で裁判所巡りをするより、観光地巡りのほうが面白いと言われるのは心外です
 従って、今回は、誰でも参加できた30年程前の“陪審裁判の模擬法廷”のお話しをし、当時は「ショー」としての側面も楽しんでもらうため、一生懸命頑張っていた昔の話をしてみたいと思います。
 平成16年5月28日、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、やっと我が国にも国民の司法参加が可能な裁判員裁判制度が実現することになりました。法曹界で、国民の司法参加が強く主張されるようになったのは、それ程、昔のことではありません。第一東京弁護士会で、そのための「下働き」を一番長く続けたのは私であると自負しております(この経緯に詳しい人なら反対する人はいないでしょう)。ですから当時のエピソードを紹介できる適役だと思っております。
2 ここで申し上げておかねばならないことがあります。私は、我が国の裁判を「ショー」或は劇場性のあるものにしようなどと思ったことは絶対にありません。
 その証明というには大袈裟ですが、原体験の一つをお話しします。
司法試験合格後、司法研修所における最初の刑事裁判での授業のことでした。その最初の授業で“陪審裁判について考察しよう”と問題提起されました。クラスの皆さんは、陪審裁判を無批判に受け入れるか、チンプンカンプンのようでした。私は、敢えて“民主主義が徹底してから陪審裁判を考えればいい”と自己の体験と参審員裁判を念頭に置いた所信を述べました。今でもその考え方は正しいと判断しております。
 その意味としましては、私は、あくまで主権者である我々(皆さま)が司法制度に参加できるようにし、官僚一色の、しかも悪弊はびこる日本の司法制度に問題提起をし、風穴を開けたかったのです。
 当時、模擬陪審裁判に参加していた多くの弁護士も、私と同じ思いであったと信じます。
3 早速紹介ですが、関係者を含め数百人規模の、且つ賑々しい模擬陪審裁判は、東京では二回ありました。この二つの模擬陪審裁判については、当時出版された本がありますので(現在では入手不能です)、それに基づいて紹介しましょう。
 一つ目は、平成6年(1994年)9月30日、銀座ガスホールで開催しました。第一東京弁護士会と第二東京弁護士会の共催です。
 当時、小さな模擬陪審法廷を開催することには飽きてきておりました。しかも劇場性においても工夫がなくなっておりましたので、新宿御苑にある青年劇場と、舞台監督として有名な宮崎監督にもお願いし、銀座ガスホールを借り切ったのです。失敗は許されませんよね。
 私は、一万円を盗んだ被告人の役を演じました。その基本となる無罪事件の発掘は、シナリオチームの優秀な岩崎先生が選定されたように記憶しております。私は、「無罪」色が強すぎるシナリオに疑問を持ち、「有罪」色を強めるため、即ち劇場性を強めるために、当該事件を扱われた千葉県の弁護士さんに突然電話をして、指導を受けたことが鮮明に記憶に残っています。
 でも「ショー」としてはもう一つだったのです。
 当時、出された「模擬陪審裁判の実践と今後の課題」には、陪審員として参加された方の直後のアンケートが残されておりました。その方は、次のように述べておられます。「被告人の人柄が良過ぎて初めから心証が良かった、もう少し品のないキャストにしたほうが良い」と記載されているのです。
 笑ってしまいませんか。私は俳優失格です。しかしながら、この本には、私の息子である中学生時代の副所長が参加してくれたアンケートの記録がありました(中学生の参加者は、一人のみとの記録あり)。今回始めて、中学生時代の副所長の心構えを知りました。
4 もう一つは、弁護士会館竣工記念として平成7年(1995年)10月14日、できたばかりの弁護士会館3階、大講堂「クレオ」にて開催しました。この模擬陪審裁判は日本弁護士連合会と東京3弁護士会の4者共催で行いました。私は、事務局次長として、「第8章 広報・総務チームの総括」として、如何に報道に関心を持たせる工夫をしたかをメーンに、一番長い報告書を書いております。
 この模擬陪審裁判も劇場性において失敗しております。弁護士役の先生が、大反省をされておりますので紹介しましょう。
 「しかし、やってみると、自分は分かりやすくやっているつもりなのに、全然わからないと、練習中に随分演出の先生に言われまして、そういうものなのか、知らず知らずに私たちは業界の言葉で染まっていたんだなというのを改めて感じました」。ショーは、難しいのです。
5 今回は「弁護士の能力」というテーマから大分離れました。でも優秀な弁護士は、模擬陪審裁判でもその能力を発揮しておられます。つまり、弁護士としての優秀さは、その時の「見極め」にあるのです。

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1 前回のコラムでは、次回、証人尋問の劇場性について書いてみましょうと結びました。“証人尋問に劇場性など不要”というコラムばかり書いておきながら、その劇場性についてお話ししたいのは、その意外な結末が小説より面白いからです。
世紀の裁判と言われたO.Jシンプソンの裁判を視察に行きましたが、そのサンフランシスコでの経験は、半端ではありませんでした。今回、同時に紹介しようと考えておりますアメリカ大統領、リンカーンの弁護士時代の証人尋問も、刑事弁護等の多くの専門書に掲載されています。劇場性を紹介するなら、この二つの事件しかないでしょうが、やはりO.Jシンプソンの裁判・刑事裁判無罪は別格です。
それまで勉強してきた証人尋問の教科書等が色あせる裁判でした。
2 証人尋問の劇場性について触れる前に、一番驚いた話から始めます。20年以上前の話といっても、正確に復元することは問題があるかもしれません。多少、トーンを落とします。
それは、報酬数億円と言われた、当時アメリカの超一流弁護士を集めた弁護団「ドリームチーム」に関与された方から直接聞いた話です。
最初のうちは、陪審裁判の証人尋問のやり方を勉強してきた私たちにとって、通常よくある話でした。その一部が、役に立つよう標語式に纏めたメモの形で、私の古いノートに残っておりました。これだけでも我が国の弁護士には驚きでしょうが・・。
?  陪審員の会議で、中心的な役割を演じる者を見抜け。
彼がターゲットだ。
?  靴やネクタイを見よ。ラフな見かけの人は楽な方向に流れる。それ以上に偏見を持つ人を見つけて扇動することが重要。
?  弁護士は、陪審員の誰を見て話すのかなど、証人尋問の際のパフォーマンスを検討せよ。証人尋問はショーである。
?  二日目に目標とする人を見定められないとすれば、あなたは無能弁護士だ。
国民の司法参加を標榜して世界中の裁判制度を視察していた私には、上記の項目は、それ程刺激的な話ではありません。
次に、俗な話題になりました。弁護士の報酬が数億円であったかどうかについて、お聞きしたのです。ところが煙に巻かれました。しかし、高い報酬は当然だという話をするためでしょうか。「弁護団は、陪審員の属性等の細部についても調べ上げる」との説明がありました。これにはショックでした。ここで話しが終わってしまったのです。
探偵を使ったのかどうかなど詳細は聞けませんでした。
我が国の裁判員のプライバシーに関する調査を事前にされたら、裁判員裁判制度は終わりです。国民の司法参加を標榜していた我々にとって、こんな恐ろしい話はありません。陪審員・裁判員には、絶対アンタッチャブルでいてほしい。
3 O.Jシンプソンの裁判で、劇場性そのものと考えられた事実は、O.Jシンプソンの自宅の門の通路に落ちていた右手の革手袋です。
この手袋は、刑事によって発見されたものです。私たちも驚いたのですが、当時、裁判はテレビでそのまま放映され、超人気を呼んでおりました。法廷でこの手袋を嵌める実演があったのです。なんと、この手袋はO.Jシンプソンの右手には小さくて嵌まらなかったのです。この実演を見て陪審員は、この手袋に証拠性はない、無罪であると判断するのは無理からぬことではないでしょうか。
確かに、捜査機関の証拠保存の不手際(血液の保存方法や現場に残された靴跡の靴等)や、刑事の黒人差別発言もあったのですが、極めつけは手袋を嵌めさせようとしたものの、小さくて入らないという劇場性・ショーにあったことは明白です。
O.Jシンプソンは、その後の民事裁判では逆に敗訴し、巨額の損害賠償責任を負いました。現在、無罪判決は間違いだったという風説が強いようです。事実、ネット情報というのでしょうか、右手に手袋が嵌まらなかったのは、当時、手に関節炎を患っていたが、薬を飲まないで腫れをそのままにしていたからだという話しも読んだ記憶があります。
4 リンカーン大統領の証人尋問での劇場性に触れましょう。
頁の残りが少ないので「弁護士リンカーン」(フレデリック・トレヴァー・ヒル著)の引用に留めます。小説のように楽しまれたい方は、「反対尋問」(ウエルマン著 旺文社文庫)をどうぞ。この本は、我が国に裁判員裁判制度を導入された平野龍一先生が解説されており、裁判員制度を勉強されようとする方の必読書でもあると思います。
引用「(殺人事件の現場を目撃したという)証人は、被告人がパチンコか何かそのような武器(ピストルではない)で致命的な一撃を与えるところを実際に見たと証言し、リンカーンは彼を問い詰めて、凶行の時刻を夜の十一時頃だったと言わせておいてから、そんな時刻にどうしてそんなにはっきりと見ることができたのか陪審員に教えてやるよう要求した。「月が出ていたので」と証人は即座に答えた。「でも、起こったことが何でも見えるくらいに明るかったんですか?」と尋問者は迫った。証人は、朝の十時に太陽のあるあたりに月が出ていて、だいたい満月だった、と答えたが、その言葉が口から出るやいなや、この反対尋問者は暦をつきつけて、月は午前零時七分に完全に没したはずであり、したがって十一時には実際上月明りはなかったことを示したのである。これがこの裁判の転換点となり、以降はすべてリンカーンの思うままに運んだという」。これを、証人尋問の劇場性だという人が多いのですが、楽しまれたい方は、「反対尋問」82頁以下(上記引用と異なる)をどうぞ。

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1 ずいぶん昔のことですが、陪審裁判を研究することが花盛りだった頃、証人尋問の能力を自慢する弁護士の方が多数おられました。アメリカ映画で描かれる弁護士を見て、証人尋問のうまい弁護士に頼みたいとおっしゃった一般の方もおられました。
私も弁護士になった頃は、“証人尋問のコツは陪審裁判にあり”と考え、証人尋問の仕方を随分勉強したものです。模擬陪審裁判の弁護士を 演じるため、舞台監督の方にお願いしたこともあります。
2 でも長年弁護士稼業をやっておりますと、証人尋問を上手にできる ということが、即、弁護士の優劣を決するということとは全く関係ないということが分かります。証人尋問も弁護士の仕事ではありますが、単なる一つの業務というほどのものでしかないのです。結局、証人尋問を上手に行うためには、事件の終着点に関する見通し力と、その終着点を左右する徹底的な事実調査力に帰結するのです。
我が国の裁判員裁判制度の採用から、アメリカの裁判と類似させて証人尋問の劇場性を強調される方もおられましたが、陪審員のみで有罪・無罪を決する陪審裁判とはやはり異なります。
大切なことは、民事裁判での証人尋問まで考察するなら、その劇場性は殆どなくなってしまうのです。つまり、民事裁判において証人尋問をする際、相手方弁護士の目指す結論は、互いの準備書面において主張整理され、周知の事実になっております。そもそも判断をする裁判官の理解が前提になるのですから、劇場性など絵空事でしかないことが直ちに理解いただけるでしょう。
自らの主張を裏付ける具体的な事実について、裁判官の理解を得るために、判断の基礎となる事実をたくさん集め、且つどれを強調するか工夫し、裁判官を事前に説得できねば、勝訴は見込めません。
3 証人尋問能力を敢えて積極的に認める前提で定義するなら、それはプレゼンテーション能力というほどのものでしかありません。
プレゼンテーションということは、他者に対する働きかけといえますが、それが効果的なものになるということは相当な能力とも言えます。
しかし、臨機応変に対応ができるということは長年の訓練により可能になると誤解されてはいけません。経験も必要でしょうが、臨機応変に対応できるよう、その事件の分岐点、先読みに関する取り組み以外にないのです。事件に関する理解を深め、その分岐点となる事実を、どれだけ発掘できるかに尽きるのです。
4 一つ例をあげましょう。
その事件は、集団訴訟と言って、たくさんの弁護士が将来の「飯の種」を探して被害者なる者を集め、集団で訴訟を行うものでした。その弁護士さんの中には、現在、弁護士会で活躍されている方もおられますので、詳細は省きます。
結論から言いますと、この訴訟の帰趨を分けたのは、被告が「儲かります」と言って、客を集めたかどうかに尽きます。
この事件の長い経緯を、膨大な時間をかけて聞いていきますと、詐欺的な結末となったのは意図的なものでなく、“バブルの崩壊”によるものであることが分かります。その事実を集める苦労は、“筆舌に尽くしがたい”という言葉そのものでした。
分岐点の一つを示しておきましょう。
被告担当者が、原告の一人である女性と、フアミリーレストランで営業中、その真実を語る出来事の一つがありました。その時、女性の知り合いの方が、座る席がなくて偶然同席になった際、知り合いに対する彼女の話がありました。当然、被告担当者の陳述書にも、準備書面にも書きましたが、裁判官達には原告の主張は崩せないと判断したようです。当方に億単位の和解を迫るのですから、結局、証人尋問になりました。
裁判官の思い込みをどう崩すかが、当方のプレゼンテーションです。
最後の手段として、先ず裁判官が反対尋問を続ける私に、「その質問は止めてください」と異議を出させるまで原告の女性に対し、何時「儲かる」と言われたかの種々の場面を示して、回答を迫りました。いくつもの事例を出していたところ、思い通りに裁判官が介入してきました。そこで初めて、私は、“あなたがこの知り合いと、どのような話をしたか”について具体的な内容を聞きました。警戒していた担当者は、当時、景気の変動もあるし、保証まではできないと言っていたのです。彼女は、私が原告方の弁護士になっていれば、まず考えられない状態、“真っ白”になって支離滅裂の証言になっていったのです。
これは、原告弁護団の勉強或は準備不足以外の何ものでもありません。これらの事実は、被告担当者の陳述書にも、準備書面にも書いてあるのですから、徹底的に準備しなかった原告弁護団の責任です。
5 当事務所は、証人として法廷に立っていただく方に対しては、徹底して準備及び復習することが常識です。教育のようになってしまいますが、前項のように、極度に緊張される方もいらっしゃるのです。故に、相手方の質問を予想し、幾通りものパターンを作って事前の準備をします。究極は、劇場性など生じないようにすることです。事件の終着点と、その見通しがつけられるなら、その準備などそれ程難しくありません。
結論ですが、劇場性のあった証人尋問が演じられるなら、むしろ演じさせられた証人の弁護士は、無能なのです。
でもこんなことを書いていては、コラムとして面白くありませんね。
従って、次回は、証人尋問の劇場性について書いてみます。
私が、諸外国の裁判制度、O.Jシンプソンの裁判視察など、当時興味をもったことを中心にして、紹介したいと思います。

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1 内容証明は弁護士の専売特許のようなものです。

  事件を受任しますと、通常、先ず相手方に対し、今回の紛争を受任した旨、内容証明郵便で 知らせます。まだ先行きが見えぬ段階であっても、相手方に当方の依頼者の意向或いは本件紛 争の根本を示す必要のある場合が多いのです。当然、相手方の反発も考慮せねばなりません。
  近時、内容証明を本人以外の関係者や勤務先に出したり、或いは侮辱的な言辞を記載したり して、懲戒処分される弁護士もいますが、本コラムはそんな馬鹿らしい警告をするつもりなど ありません。
  つまり、最初に出すことになる内容証明は、私が何時も言っております弁護士としての必須 能力「先読み」が試されていることを知ってほしいのです。「先読み」が内容証明の中身を決 めるのです。
  当事務所は10年以上、毎年、司法修習生をお預かりしてまいりました。将来の法曹人を育て る事務所となっておりますが、内容証明の意義について深い理解をもっておられる方は少ない のです。当然、若い弁護士の先生方にも、その自覚を持ってもらいたいということもありま  す。2、3日程度で起案しなければならない内容証明が、職業人としての弁護士にとって、如 何に難しい仕事かを知っていただくことが、弁護士として成長する一番の早道なのです。この コラムは弁護士の先生も読んでおられますが、しかし、私の意識は、一般読者にあります。
  一般読者の方々は、内容証明によって、弁護士の優劣を判断することが可能であるとお知ら せいたします。皆様のご意向が反映されない内容証明は最低なのです。そもそも事前打ち合わ せは十分でしたか?

2 誰もが知る内容証明郵便ですが、法律上の根拠から述べましょう。

  今回の郵政民営化によって郵便法等がどのように変わったのかについて触れてみましょう。 それまで公務員であった郵便局員は、通常の民間会社の社員になってしまったのです。
  郵政民営化によって、郵便局には郵便認証司が設けられました。郵便認証司は「認証事務に 関し必要な知識及び能力を有する者のうちから、総務大臣が任命する」者で(郵便法59条)、 認証事務を行います。認証とは「総務省令で定めるところにより、当該取扱いをする郵便物の 内容である文書の内容を証明するために必要な手続きが適正に行われたことを確認し、当該郵 便物の内容である文書に当該郵便が差し出された年月日を記載することをいう」(郵便法58  条)とされております。例えば、民法では、債権譲渡の通知・承諾は「確定日付のある証書」 でしなければならないと規定していますが(467条2項)、民法施行法第5条1項6号で、上記証 書に当たるものとして内容証明郵便を規定しております。ここまでは「先読み」とあまり関係 ないですね。

3 内容証明の使い方は多種多様です。

  昭和55年から始まり、30巻も発行され続けてきた「弁護始末記」(弁護実務研究会 大蔵省 印刷局発行)を紹介しましょう。昭和の終わり頃の若き弁護士の先生方に熱読されたシリーズ ものです。
  紹介するものは、第1巻の冒頭において掲載されました。主題は「内容証明郵便の利用」で す。紛争或いは事件の「とっかかり」として、30巻に及ぶ膨大な事例紹介の第一歩として適切 な題材だったのです。
  内容の項目を見ていただければ、内容証明の使われ方、つまり、その注意点が理解できる仕 掛けです。
 ?内容証明郵便は、最も親しみやすい法律手段の一つ
 ?内容証明郵便は、法律上意味のある手紙である
 ?内容証明郵便は、宣戦布告の手紙である
 ?内容証明郵便は、威儀を正した催告である
 ?内容証明郵便は、諸刃の剣である
 ?内容証明郵便は、ときには観測用の気球であることもある
 ?内容証明郵便に対する回答は可能な限り避けるべきである
 ?内容証明郵便は、必ず、配達証明付にすべきである
 著者がいう「内容証明のチェックポイント」も上げておきましょう。
 ?この文書は何を目的として書いたのか
 ?相手方を不当に傷つける不穏当な記載はないか
 ?この文書は撤回し難い最後通告だと何度も考えてみたか
 ?相手方に誘発されて書かされた文書ではないのか
 ?この文書が相手方の有力証拠になることはないか
 ?この文書の内容が所定の法律要件を備えているか(契約解除の場合など催告期間をおいたか  どうか等)
 ?この文書の効果がなかったとき次に打つべき手段を考えているか

4 私が弁護始末記を引用させていただきましたのは、事件解決屋としての弁護士にとって「先 読み」の能力が問われているという指摘が不足しているということに尽きます。もちろん弁護 始末記の指摘でも、先読みが必要であることは分かりますが、意識した取り組みが必要という ことなのです。例えば、相談当初、難しければ時系列表を作り、証拠表、要件整理表を作成  し、理解困難なところは他の弁護士や専門家に相談する姿勢を崩してはなりません。当然法律 書や判決等の先例分析も必須です。これらの準備をして、十分な先読みがなされねば満足な内 容証明は作成できないのです。依頼者が和解を希望される場合も多いですが、和解ができるか どうかの先読みに失敗して裁判になった場合、内容証明の内容について、裁判官がどう考える かも大切な先読みです。その際の提案金額が下敷きになるということですよ。
 弁護士でない皆様、内容証明が出される前に、相手方の対応にも配慮し、種々の視点から検証して弁護士の能力を試してください。

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1 この本は、畏友である弁護士安童二先生の著作であり、昨年9月29日、出版されました。昨年末、新宿紀伊国屋書店にこの本を求めて案内担当に尋ねたところ、「よく売れていますよ」と不思議そうな感じで説明を受けました。確かに表紙は、字だけのみの簡素なものであり、題も一般受けしにくく、宣伝意識が不十分のようにも思います。
  安得萓犬箸里付き合いは既に20年近くになるのではないでしょうか。近時、激しく揺れ動いております築地の仲卸業者の債務整理、つまり営業権譲渡の特殊案件において、東京地方裁判所のご依頼を受けて面識を得ました。互いに破産法上の保全管理人として、築地市場で新たなシステムを作る中でのお付き合いが始まりです。
  安得萓犬蓮行動力に優れておられますが、その法的バランスも申し分なく、この先生はできる弁護士だと確信した数少ない方です。
  本書も優れたドキュメントでありますが、私は「刑法の教科書」として或は「お医者様の必読文書」として推薦したいと思いました。でも、とてつもなく面白いドキュメントでありますから、皆様には、教科書的読み物でなく、ノンフィクション小説のように読んでいただければ幸いであると考えております。

2 早く本論に入りましょう。
  第一に、この本により、医療分野の本当の難しさに、新たに目を開かせていただいたことであります。
  安得萓犬蓮∋実の追求が半端ではありません。私も、若い先生方に事実をどこまでも調べてくださいと要求しておりますが、こんなことは、安得萓犬砲肋鐚韻任后あるいはまた、私が、「その道の専門家に聞くことが一番」という事実調査の実践は、常識以前のものでしかありません。この究極の人脈造りは、安得萓犬凌由覆里覆擦觀覯未任垢ら、真似ができません。ドキュメントですから、その説得力が違います。
  以上の調査結果として、産婦人科医の仕事の大変さを肌で知りました。胎盤と血液などの関係を勉強しておりますと、子供が生まれる仕組みを知りました。母の大変さに思い至り、自らの無知の猛省です。母や妻に感謝せねばなりません。
  また医療の世界の一部ではありましょうが、麻酔科医の先生の役割も、初めて勉強したことになります。神奈川がんセンター事件は、まさしく麻酔科医の先生が起訴され、無罪となった事件ですが(横浜地方裁判所平成25年9月17日判決・確定)、その紹介の場面も本書の急所です。
  これらの事件が発生する問題の一つとして「事故調査委員会の報告書」をあげておられます。これは、後に述べることにします。
 
3 第二の衝撃は、法と医療の目指す「正義」が全く違うという指摘です。起訴されれば、有罪か無罪。検事の立証が、法に抵触したと認定するに足りる事実を摘示して立証するなら有罪となります。安得萓犬蓮△海譴鰺罪か無罪かの二択と説明します。しかるに医療は三択なのですね。安得萓犬遼椶魄用します。
  「医療事故はいくら誠実に調査しても、結果は、三択の答え、要するに、『何が原因で起こったのか判らない』との結論が出る可能性がいくらでもある」(261頁)。ここで医療と刑事罰との正義の思考形態が異なることの説明も面白いのです。だから納得しがたい起訴もありうるのですね。もっと引用をしたいのですが、書きたいことがありすぎて‥。勘弁してください。

4 この本を、ノンフィクション小説の一分野として世に広めたいという希望を述べました。これは、この本が、刑事裁判の経過を詳細に展開していながらも、そのエピソードが実におもしろいのです。
  例えば、勾留理由開示の裁判が終わり、退廷する加藤医師が手錠腰縄なのに、自然に振り返ったという場面も傑作です。引用します。「これはなんだ、と見上げると看守と目が合った。なぜか腰縄がゆるめられたと。」その理由まで読み進むと、思わず、涙ハラリです。
  もう一つ。「私は怒りを最高裁への上告理由書にぶつけた。『東京高裁は東京地検公判部東京高裁出張所と言われている』と書き出した。」
  いやー、痛快ですね。
  こんな面白い話が続出では、刑事裁判の教科書だけで終わりにするのはもったいない。このような部分は、安得萓犬痢版の溢れる人柄”がそのまま生かされているのですが、私は、つい、ノンフィクション小説などと発言してしまうのです。
  もちろん刑事事件に通暁しようという若い弁護士の先生方には、是非とも読んでいただきたい。ミランダルールとか書きたいことは一杯ありますが‥。刑事弁護の手抜きは、できなくなりますよ。

5 最後に、安得萓犬問題提起しておられる事故調査報告書です。
  私も、会社依頼の第三者委員会報告書等に関して、本コラムに、その問題点などを提起してまいりました。その解決策も提案してきたつもりです。その一案として、保険制度を利用し、依頼者という夾雑部が入らないようにしないと公正性が保ちえないなどと警告してきたつもりです。お金を出す人と関係しない仕組み造りが、必要なのです。
  安得萓犬蓮⊂綉点について問題提起をされておりますが、医療の世界では“患者とその家族という利害関係人”まで入ることに驚きました。引用します。「なんとか遺族に補償がでるように、(医師に)過失ありきとも読めるように、書かねばならない状況に追い込まれた」事故調査委員会の報告書に警告を鳴らしておられるのです。しかも、この報告書によって警察等の捜査機関が動くのです。悲しい因果関係です。
  ページが尽きました。最後に、再度「この本はすごい」。

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一 個人情報保護法が改正され、平成29年5月30日から施行されます。これまでは取り扱う個人情報が5000人以下の事業者には関係ありませんでしたが、今回の改正後はこのような企業にも個人情報保護法が適用されることになります。
  履歴書一つを取ってもお分かりの通り、従業員を雇っている場合、必ずと言って良いほど個人情報を取り扱っていますので、今回の改正により、個人情報保護法を無視して良い会社は殆ど無くなったと言えると思います。

二 では、個人情報保護法が改正されたことにより会社は何をどのように対応すれば良いのでしょうか。
  まず、ホームページのトップページから1クリック程度の場所にしっかりとした内容のプライバシーポリシーを載せることです。
  個人情報保護法は、?個人情報を適正な方法で取得すること、?利用目的を特定し、?利用目的の範囲内で取り扱うこと、?利用目的をあらかじめ公表しておくこと等を求めております。
  そのため、会社がどのような目的で個人情報を利用するのかについてしっかりと検証した上で、中身のあるプライバシーポリシーを掲載する必要があります。

三 次に、従業員や委託先をしっかり監督するなどして個人データ(個人情報がデータベース化されたもの等を個人データといいます)を厳格に管理する必要があります。
  個人情報保護委員会が公表している「個人情報保護の法律についてのガイドライン」によりますと、「従業者が、個人データの安全管理措置を定める規程等に従って業務を行っていることを確認しなかった結果、個人データが漏洩した場合」や「個人データの安全管理措置の状況を契約締結時及びそれ以後も適宜把握せず外部の事業者に委託した結果、委託先が個人データを漏えいした場合」等には、個人情報保護法違反になってしまいます。
  それ以外にも、個人データを委託するにあたり、必要な安全管理措置の内容を指示しなかったり、再委託の条件に関する指示を委託先に行わなかったりした場合には、違法になってしまう可能性があります。
  そのため、外部の業者と契約する場合には、個人情報の管理に関する規定を業務委託契約の内容にしっかりと盛り込む必要があります(逆に、個人情報を預かる側の会社も必要以上に不利にならないような契約内容にする必要性が今以上に高くなることになります)。

四 また、名簿業者等が個人データを第三者に提供する場合には、個人情報保護委員会に届け出るとともに、提供の年月日や受領者等の記録をしなければならなくなりました。
  名簿業者等から個人データを購入して営業をかけるという会社もあると思いますが、名簿業者から個人データを購入する側も、名簿業者が個人情報保護委員会に届け出ているかどうかを確認した上で、取得経緯等を確認、記録し、保存しなければならなくなりました。
  他の会社との間で個人データをやり取りする場合には、今まで以上に厳格な対応が必要になったわけです。

五 親子会社やグループ会社間で個人データをやり取りする場合にも、第三者に提供していることになってしまいますので、何の対応もしないまま行ってしまうと、個人情報保護法違反になってしまいます。
  そのため、個人情報保護法には「共同利用」という制度が設けられています。
  親子会社やグループ会社間で個人データを利用する場合で、「共同利用」として個人情報保護法違反にならないためには、「共同して利用される個人データの項目」や「共同して利用する者の範囲」などをプライバシーポリシー等にあらかじめ記載しておく必要があります。
  プライバシーポリシーに「共同利用」の項目がない場合には、できる限り早めに記載した方が良いと思います。

六 さらに、個人情報保護法改正に伴い、個人データの開示、訂正、利用停止等の請求が裁判上の権利として明記されました。
  そのため、一定の要件を満たした場合、保有個人データに関して訴訟を提起されるリスクも生じています。
  今まで個人データの開示、訂正、利用停止等を請求されたことのない企業であっても、今後は、裁判になる前に、どのように対応するのかを良く検討しておいた方が良いと思います。

七 今回の個人情報保護法の改正では、特定の個人を識別することができないように個人情報を加工した情報(匿名加工情報)に関するルールを明確化することにより、ビッグデータを活用したマーケティング業務等を行いやすくなったという一面もあります。
  しかし、そのように個人情報等の有用性が確保された反面、データベース提供罪(1年以下の懲役又は50万円以下の罰金、会社の代表者や役員も処罰される可能性があります)が新設されるなど個人情報の保護に関して厳格な規制もなされております。
  知らず知らずのうちに個人情報保護法違反になってしまわないように十分な法対応を行うとともに、仮に個人情報が漏洩してしまった場合にも適切な措置を取る必要があります。  
  当事務所では、個人情報保護法改正に伴う法対応に関するアドバイスを顧問会社に対して行っているほかに、「ウェブシステム会社に対して個人データを委託していたところ、個人情報が漏洩したという事案」でシステム会社との間の紛争を処理したりもしております。
  具体的にどのようにすれば良いのかが不安であるという方は是非当事務所にお問い合わせください。

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1 先日、私は、講談社と文芸春秋と共に「濱嘉之さん 文庫200万部突破を祝う会」の発起人として、上野精養軒にて行われた記念パーティーに出席しました。
大広間には驚くほどの人が集まりましたが、20年近く前、宇宙開発を目的として活躍した当時の会社役員とお会いし、昔のことを懐かしく思い出しました。当時の宇宙開発は、軍事目的(?)のロケット開発が中心でしたが、資金繰りに窮して会社に詐欺師が入り込んだため、濱さんと彼と私の三人は、大変苦労しました。特に、株主総会の運営は本当に厳しく、昨年9月、本コラムの「株主総会の運営(IR株主総会 その3)」においても、その一部を紹介しております。
当時の記念に、現在は公安警察小説家、第一人者と言われながらも、いまだ「危機管理が主たる業務」と宣言された濱さんを囲み、当事務所の副所長も含め、四人で記念写真を撮ってもらいました。

2 宇宙開発会社の業務も、人工衛星の利用により、実に多種・多様な業務に利用されるようになってきました。ネット通信や天候関係の業務には早くから利用されるようになっておりましたが、現在は画像の利用による交通や農業・漁業の収穫時期にまで利用できると言われております。日経ビジネスには、伊藤園が茶葉の摘み頃の判断に利用するという記事が掲載されておりました。
 でも生身の人間が宇宙を飛び回るというには時期尚早です。いまだ人類の月面着陸には疑惑があるとする説も唱えられる昨今、どうしても紹介したい本があります。
平成23年発行なので多少古いとも言えますが、人類にとって、宇宙の無重力での生活が如何に人間に馴染まないものであるかについて、詳細に取材した本を紹介したいのです。

3 それが「わたしを宇宙に連れてって」(メアリー・ローチ著 NHK出版)です。メアリー・ローチは、厚かましいおばさん(ごめんなさい)ジャーナリストですから、どこでも“もぐりこむ”という感じで取材します。例えば、日本の宇宙飛行士選抜試験にも実際に突撃取材するのです。型通りの日本で、こんな奇抜な試験をするのかと疑問ですが、“さもありなん”と思うから不思議です。
そもそも宇宙環境が如何に人間になじまないものであるかについて、若田光一さんが初めて宇宙に旅立つ際の記事(平成21年2月8日付日経新聞)が分かりやすいのです。この古い記事を読むと、宇宙に行きたくなくなりますが、その一部を紹介しましょう。つまり「宇宙から大量に降り注ぐ放射線や、方向感覚もまひさせる無重量環境」、しかも宇宙環境では「骨粗しょう症の患者に比べて十倍の速さで骨の量が減っていく」、あるいはストレスや睡眠不足など支障をきたす「自律神経」の問題など頭が痛くなります。現在、宇宙ビジネスの対象となっている数分の宇宙旅行など話の種にもなりません。

4 「わたしを宇宙に連れてって」では、無重力の世界では“ヒューズが飛ぶ”ことで障害を防ぐなどという重力現象の利用はできず、現代の科学技術の見直しという側面も描かれでおります。しかし何といっても極めつけは人間の体そのものに関する突撃取材でしょう。
 この本は、初めからズバリと本題です。「宇宙開発のエキスパートにとって、あなたは巨大な頭痛の種だ。彼らが扱う機械やシステムのなかで一番めんどうくさい相手、それがあなただ。気まぐれな代謝作用、貧弱なメモリー量、統一規格の存在しない形状にサイズ。あなたは予測不能だ。まるで安定していない。壊れるようなことがあれば、修理するのに何週間もかかる。宇宙で水や酸素や食料に困ったらどうするかという心配もしなくてはならない。あなたが小エビのカクテルや放射線たっぷりのビーフタコスを調理して食べるのに、どのくらい燃料を消費しそうか」。 長くなるので引用は止めます。
しかし無重力の世界で、人間の排せつ物の処理が一番工夫を要するという話、「14 別離の不安 無重力トイレの冒険は続く」で笑います。別離とは自分の排せつ物との別離です。
 皆さん、排せつ物が重力を利用して下に落ちていることを、ここで初めて勉強されると思います。重力がないと、液体は排せつ器官の周りで液体として漂うのです。物体も出てしまった空間に留まるのです。
宇宙開発のエキスパートがどのように苦労をしているのかを知るとおかしくも、せつなくなります。

5 今年の初め、宇宙法の説明について、アポロ11号の月面着陸に際して議論された題材をテーマにして紹介するつもりでいました。つまり月面にアメリカの国旗を立てるということは、宇宙条約に違反しているのではないかということです。北米旗章学協会に提出された論文を紹介して宇宙法の説明をしようと計画しておりました。でもメアリー・ローチの本により、旗がうなだれることは予想され(月の引力は地球の六分の一)、実際には横棒をつけたというエピソードの紹介で疑惑も解消するという腹積もりだったのです。でも宇宙法を概論するだけでもコラム一回分になります。そこで当事務所の秀才田中弁護士に宇宙法の概論を、今年夏過ぎ頃に、コラム形態で書いてほしいとお願いしました。
そもそも宇宙法の専門書は、私の所属する弁護士図書館でも2冊しかありませんでした。硬い表紙のほうの本を借りたのは、この14年間で私が二人目です。即ち、弁護士のコラムで宇宙法を宣伝にする弁護士は多いのですが、体系だった解説書は薄い表紙の本、学者先生方編著になる「宇宙法入門」程度しかないのです。
田中先生。宇宙をじっくり楽しんで、コラムはゆっくりやって下さい。

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1 前回コラム書評で、日本経済新聞、元日版「宇宙でごみ掃除。誰もやらないから面白い」と報道されていることを紹介しました。
この記事は、日本の民間会社社長が、将来、宇宙のゴミ拾いを民間ビジネスにするというもので、2017年にも自社開発の衛星を打ち上げ、衛星やロケットの残骸を片付けるというものでした。しかも女性社長の紹介記事なのです。
この記事を読んで、次回の書評は、宇宙のゴミ拾いを職業とする未来の若者たちを描いた漫画「プラネテス」しかないと思いました。

2 昔、宇宙開発会社の顧問をさせていただいていた当時、「思い出を宇宙に飛ばそう」という企画 に関し、私の友人弁護士から「宇宙にゴミを撒いて大丈夫なの」と質問されて以来、心の傷でした。でも、それから30年近く、宇宙開発事業は冬の時代であり、実際にその会社も整理になりました。しかるに近時の報道には多少呆れる思いです。
  昨年暮れから本年1月20日頃まで見ましても、宇宙の記事が掲載されまくりです。日本経済新聞でも、年末27日「欧州ロケット首位維持に総力」、同28日「中国、宇宙開発3強狙う」、今年になっても「宇宙システムに防衛指針」、「電柱サイズロケット公開」、「低コスト競争出遅れも」、「ミニロケット失敗」等と凄まじい勢いで宇宙ビジネス関連の報道です。他の新聞も同じだと思います。
新春の日経ビジネス「2017年宇宙商売ビックバン」も、表紙の題名のわりに新聞報道の枠を大きく出るものでもありません。でも纏まった状態にされた報道は全体を見るのに便利です。

3 これらの記事を書かれている記者の皆様は、40年以上前から宇宙開発に携わってきた民間企業の前人未到の開発、そして営業努力、しかもどれほどの苦難があったかを知っていらっしゃるのでしょうか。
笑ってしまう話ですが、弁護士の世界でも「宇宙弁護士」で売り出そうという企画があるそうです。でも宇宙関係の法律は、まだ「宇宙法」というほど充実していません。宇宙関係の会社も、従来の会社経営の法律相談が中心であり、宇宙関係の法律はその「付けたし」の段階です。宇宙旅行の契約書と言っても「専門性」を言うほどのものではありません。1月26日、TBSから報道された「人間観察モニタリング 宇宙旅行に当選したら?」をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。契約書も話題になっておりましたが、専門性を問われるほどのものではないのです。でもこの当選を知ったお父さんの喜びぶりは、「騙し」だけに本当に可哀想でした(面白かったですね!)。

4 漫画「プラネテス」幸村誠著 講談社(4巻)の紹介をしましょう。
 2001年発行のこの漫画はいろんな賞をとっていて有名です。宇宙のごみ掃除(ごみを「デブリ」と言います)を職業とする若者の青春群像を、宇宙という途方もない大きな世界に対比して「生きる意味」を問うという、いわば青春小説です。
描かれる世界は、現在の数十年後を舞台にしております。従って、現在とは大違いに宇宙法も発達しております。漫画の世界では、宇宙のごみ問題に関する取り決めもあり、或は「宇宙葬」も禁止された後の世界として描かれるのです。もちろん月には衛星都市が作られ、月面地下に都市が存在しております。

5 宇宙ごみを拾うという過酷な労働であっても、高賃金ということで衛星に乗り地球軌道を回って働く青年が、いろんな人と葛藤し、初の木星探査乗組員として成長していきます。父親も火星に何度か行った「船乗り」なのですが、同様に葛藤の対象です。確かに無重力で空気のない世界に行けば、人類つまり人間とは何か?神っているのか?といろいろ考えざるをえないのでしょうね。空気もないのですから。
主人公は悩みが多すぎるようにも思います。しかし経験のない世界に行くと当然このようになるのかなとも思います。いずれにしても宇宙と比較し、地球上の懐かしい風景がしっくりと馴染むのです。これこそ絵を主体とする漫画の醍醐味です。
本作品は「愛」がテーマなのですね。4巻目のラストで遂に木星に到着した主人公が人類へのメッセージに際して「愛し合うことだけが どうしてもやめられない」と話したのに対し、木星探査責任者が「気安く愛を口にするんじゃねエ」とつぶやくところなど、これは論評の枠を超えていますが、面白ければいいのです。

6 近時、「宇宙」或は「ロケット」と聞けばすぐに買って読んでしまう癖がつきました。例えば、昨年9月10日第一刷発行の「売国」真山仁著(文春文庫)も「ロケット」が題材と知って直ぐに読みました。
真山仁作品では「ハゲタカ」など好きな小説です。最近では原発のメルトダウンを題材にした「ベイジン」も読んでいましたので、期待して読みました。
でも今回紹介する漫画「プラネテス」のほうが断然面白かった。「売国」はロケット、つまり宇宙関係の取材が不足ではないのかと感じてしまう。特に、主人公の女性八反田遙は夾雑部のようで、特捜検事の世界と馴染まず、私には構成不足と感じました。

7 宇宙物の作品を紹介しておりますと、何か作り物めいた、偽の社会を紹介しているような違和感が残ります。
故に、次回は完全な取材ルポ作品である「わたしを宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦」(メアリー・ローチ著)を紹介しましょう。著者は、実際の無重力空間が如何に人間になじまないものかについて、取材しまくって書いております。
  宇宙に関する法の紹介が遅れておりますね。

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