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1 前回は、破産法上配慮されねばならない複雑な立場の利害関係人について書きました。第二次世界大戦にまで、遡って考えねばならいことに驚いていただけたでしょうか。
 そもそも、前回コラムの私の最大の関心は、借地権という法的権利を有しておられる借地人です。しかし、借地人と申しましても、破産法上の位置づけは借地料を払うだけの債務者でしかありません。考えなしの破産管財人なら、ガンガン借地料を回収して、それでも支払わない借地人には、法的権利がないのだから保護に値しないと切り捨てるだけで終わりです。
 家庭裁判所に破産の申立てをお願いされた国の税務署の立場は、何十億という相続税の回収、即ち破産法上の債権者そのものの立場です。しかし、本件に関与された心ある役人の方の関心は、借地人の将来をも見据えた解決策を希望されていたように判断できます。それも、近時評判の「町づくり」という行政的な関心をも示されていたのです。大分昔のことなのですから、本当に驚いていただきたい。
 開発業者の方から、当事務所の事務方が作成した、本件に関与する者の何枚もの地図的なチャ
ート(借地人の分布を示すもの)を高価で買い取りたいと申し出されたときには、本当に管財人冥利に尽きると思いました。開発業者にとって宝の山だったのです。

2 前回のコラムで、破産法上における「債権者」という概念については、破産法第1条の全文を紹介して、法的権利者として第一位に考慮されるべきものであることを示しました。
 債権者と言っても種々です。典型的な破産業務では、通常のビジネスで失敗した破産者から取引代金を回収しなければならない債権者が思い出されます。また通常の取引でない損害賠償請求もありますし、税金や離婚の際に生じる養育料などもあって、本当に種々様々です。
 詐欺的取引の被害者という事例もあります。弁護士が被害者を集めた被害者救済の会のような破産事件もありました。私が、裁判所から任された被害者の会の事件では、弁護団の究明に耐え切れず、詐欺取引に走った会社が逆に破産の申立てをした事例もありました。
 通常、弁護団が破産の申立てを行います。しかし、この事案では、弁護団が法的な手段を含め、種々の方法で会社を追い込んでいたようです。確かに、会社の末期には、目の見えない老人にファックス機を何台も売りつけるなど常軌を逸した商売をしておりました。
 被害者の会は、裁判所が任命した破産管財人である私に協力的ではありませんでした。被害者の会が、私に面会を申し入れてきたのは2週間以上経過した後ですから、この被害者の会を軽蔑したくなる私の気持ちを分かっていただけるでしょう。2週間もあれば、できる破産管財人は、本店及び支店3カ所、倉庫程度であれば現状を押さえ、在庫等の商品の換価についても、遅くとも目途がたってきている段階です。
 弁護団は、動産執行類似の法的ではない行動もされていたのでしょう。破産管財人の私達が倉庫に入ろうとすると倉庫管理業者の弁護士が“入庫を実力で阻止します”という訳の分からない抗議をしてきました(安心してください。破産管財人の私は“ワクワクして”、「警察に連絡するぞ」と言いながらドンドン入庫しました。この時は、若い肉体派の当事務所の先生も活躍してくれました)。
 弁護団の弁護士先生は、女性先生を中心に来所されましたが、最初は批判的な姿勢でした。私の経過説明で批判のトーンが徐々にダウンしたことが不思議で、昨日のことのように思い出します。

3 既に30年近く昔のことになりますが、新興宗教法人の破産管財人になって財産整理をした経験もあります。この破産管財事件では通常想像できない経験をしました。この事件は、弁護団の先生方が大変に活躍されておりました。破産申立て時には、一般の債権者に対する支払いは終わり、何億もの現金をどう精算するかという段階にありました。
 宗教法人の解散ですが、理由があって破産の道しかありませんでした。
信者の方の帰依により浄財が寄付され、通常の財産整理をしても残存する現金があまりにも多額でした。詳細を述べることはできません。当時の関係者の方の「心の平安」に影響することが予想されます。概略にとどめますが、関係者の皆様方の誠意ある対応及び破産事件の結末については、ご紹介するに値すると信じます。
 先ずは、都庁や法務省等に問い合わせを行い、残財産を宗教法人の構成員である信者の皆様に配当することになりました。住所移転等により裁判所の破産通知書がつかないため住民票だけでも500通は取り寄せしました。土曜日及び日曜日は、事務所の数メートルの廊下を信者の方への連絡票で埋め尽くされました。電話連絡のために、特別チームを作って対応しました。
 これほど頑張って連絡したのに、何と!殆どの方が信仰を理由にお金を受け取ることを拒否されたのです。本当に驚きました。いろいろ書きたいのですが、ここらへんで辞めさせていただきます。

4 宗教法人の構成員である信者の方々に受け取っていただけないとなると、本件破産管財事件は終わりになりません。破産事件ではありえない残現金の処理に煩悶の日々が続きました。弁護団の先生方の報酬か、破産管財人の報酬とするには高額すぎるし、あまりにも下品です。
 再度の役所巡りの結果、当時、裁判所に出向されている大蔵省の役人の方とお話しして国庫に納めることで一件落着しました。
 破産事件になるまでの経過は複雑ですが、結末は、本当に爽やかな話で終わるのです。

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  1.  ここ何回かは、法的紛争に関して「弁護士が寄り添う」ことの意味について考えてきました。その続き物のコラムとして「破産管財事件では誰に寄り添うのか」と考えますと、紹介することが多すぎると直ちに分かります。題をつけた最初のところで、(その1)としてしまったほどなのです。
      本コラムでも破産事件については幾度も紹介してきました。個別事案の紹介では、プライバシーに関係する詳細については話しておりません。しかし、それでも本コラムに関心を寄せていただいている方からは、破産事件のコラムも大変面白いとお聞きしました。
    破産管財事件は、まさしく「弁護士が寄り添う」ことの意味について大変複雑な様相を呈するのです。種々の事件を処理しておりますと、私という弁護士は“少し変わり者なのか?”とも思ってしまいます。
     
  2.  弁護士のコラムですから、寄り添いの相手を考えるにも、やはり法律から考えねばなりま せん。破産法の条文第一条では、目的として次のように規定しております。「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」
       先ず、上記条文で、寄り添わねばならない人たちが網羅されていることに驚いてほしいのです。破産法が配慮するべき人は、第一に債権者です。そして第二に債務者(ここでは破産者)。債務者の経済生活の再生の機会の確保が必要であるとされ、破産者に対する配慮を要請しております。でも「債権者その他の利害関係人の利害」と定められていることに驚いてください。 つまり「その他の利害関係人の利害」を明確に認識して対応しなければならないのです。破産の事例に接しておりますと、かかる認識のない破産管財人・弁護士はかなりおられます。
     
  3.  今回紹介する事件は、相続財産管理人が破産の申立てをされた破産管財事件です。破産管 財人として任命された私は、記録を取り寄せ、事案を検討して直ちに破産申立人である相続財産管理人の弁護士をお呼びしました。私よりかなり高齢の女性弁護士でしたが、会った最初で、種々配慮をされ、思いやりのある方だと好印象を持ちました。
       事案も的確に説明されましたが、「事前に、大手町に行って国税からのお願いや説明を聞いてください。国税から強くお願いされています」と言われたのには驚きました。更に「調査の前に訪問されるのがいいと思います。本事案の特殊性もお分かりいただけるでしょう。」とのお願いでした。
       大手町合同庁舎では、偉い役人の人が部下を連れて面会され、大変丁寧に応対していただきました。「本件は、東京大空襲の際、焼夷弾から逃れるため、川を渡って田畑に仮住まい小屋を建ててしまい、戦後、バラックを建てた人たちを借地人として取り扱ったことから、今回最終処理となる公売予定案件です。国税はもとより都税事務所も大変困っております」と話されたのには驚きました。「公売処分等をしたくとも、この場所に住む方々は、国に反感を持っておられ、十分な調査ができません」と話されたのには更に驚きました。その後、街づくりに関する貴重な話もありました。私は、まさしく、国税を含む行政の街づくりも利害関係があると思いました。私は、調査した結果について報告することを約束しました。帰途、エレベーターまでお見送りいただいたのは、官庁に来て初めての経験でした。
     
  4.  翌日から一週間程は現場巡りです。事務所からもベテラン二人を動員し、三人で広範囲の調査活動に入りました。
       驚きました。都心のど真ん中なのに救急車も入れません。このような状況を打破したいと夢を語られた国税の高官の言葉通りのひどさです。座敷にいるお婆様が隣のうちのお婆様と道路を挟んで話しているのですが、道があまりにも狭くて誰も通れません。(私はどんどん入ります)。
       このような方達が、国税や都税の調査官に対し、「国は、我々に何をしてくれたのか?」と言って調査に応じず、しかも殴りかかる人までいると聞いておりましたが、その通りです。私たち三人の聞き込みに対して、私たちを「詐欺師だ、詐欺師だ」と喚きながら、自転車でずっと追いかけまわしていた老人もいました。(驚きませんか?)
       戦後に始まり、救急車も入れない場所で生活される方々こそ、破産法でいう利害関係人以外の何者でもありません。私は、この人達を、本件の最大の利害関係人であると位置付けました。確かに、この人たちは、借地料を滞納する借地人かもしれませんが、借地料回収と別途の配慮も必要です。その後、私は、このような人達を地域ごとに集め、将来の展開を説明しました。即ち、不動産業者は、喉から手が出るほど皆様の土地を欲しがっている、この機会を逃すな。皆様が生活されている土地は、戦後初めての急展開となる。皆様が団結し、協力して対処しないと、良い結果にならない等と演説しました。
     
  5.  更に現場廻りを続けますと、壊れた建物も数多く存在し、強風が吹けば負傷者が出かねない建物もかなり発見しました。
       これらの不動産は、相続財産管理人の弁護士名義で登記されています。崩壊寸前の不動産が処理されず残ってしまった場合には、登記名義人である女性弁護士の管理責任すら生じかねません(私のコラム、「不動産は放棄できない」を読んでくださいね)。私は、相続財産管理人の先生も利害関係人と認識して破産管財業務に邁進しました。       (次回に続く)

 

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  1.  粉飾事件の紹介が遅くなりました。
       粉飾とは何かというところから始めましょう。
       粉飾とは、不正な会計処理によって、故意に貸借対照表や損益決算書等を操作して、企業の財務状況や経営状況を実際よりも良く見せる操作を言うとされています。帳簿上の資産を増やすことが簡単な粉飾ですが、資産項目といっても種々ありますし、これらを説明していては面白い話になりません。例の東芝は、種々の資産項目をいじりました。特に、買収したアメリカの原子力会社「のれん代」を劇的に増加させたことは有名です。そもそも、東芝が粉飾に走る契機になったのは、バイセル取引と言われております。自分が発注する受託製造業者に原材料を高く売るなどの操作をしたとされます。
      粉飾の実態が暴露されると上場企業の社会的信用は失墜し、株価も暴落します。社会が許すわけもありませんが、そもそも犯罪になります。通常、実行行為者が特別背任罪になることも常識の範疇です。
  2.  最初の大型粉飾事件に遭遇することになったのは、野沢社長が号泣して記者会見した天下の「山一證券」です。私は、会社の顧問弁護士としてではなく、第三者的な立場で調査をすることになりました。
      20年経過しておりますが、私が受任した事件の内容は述べられません。その詳細を書きますと、関係者に不快に思われるのは嫌だからです。しかし、20年前、私が、実態調査のために、山一証券の本社に行ったことは昨日のように覚えています。茅場町の先、雪の積もった霊岸橋 を渡った際の記憶があまりにも鮮明なのです。山一證券は、当時、四大証券会社の一社と言われておりましたが、粉飾事件等で揺れる本社では何の威厳もなく、会社の顧問弁護士に同情したほどです。つまり、寄り添うべき依頼者によって、自分の立場が全く違ってしまうという認識を痛いほど感じました。
      前回のコラムでもご紹介しましたが、粉飾と私との関わりは、会社の利益と相反する可能性のある相談、つまり粉飾を実行した従業員周辺からの相談から始まりました。会社のためを思いながらも、会社利益と鋭く対立する場面が必ず出てまいります。
  3.  その後、外部委員として粉飾に関与する経験もしました。殆どが顧問先の粉飾で、数年前には、会社再建委員という外部委員に任命されたこともあります(近時、税務署からこの外部委員の説明を求められ、驚きました)。
       経験して分かったことは、純粋な第三者委員会の委員は自分に向いていないということです。第三者委員会の委員と言えば聞こえはいいのですが、職人のように調べまくるのが中心的な作業で、現実に向き合う人がいないのです。検事のように強制調査権がある訳でもなく、しかも社会正義というのも中途半端です。想像される以上に地味な仕事です。
  4.  監査役の立場での経験もありますが、感想は複雑です。今流行りの「忖度」も分かりますが、それ以上に監査役の責任は難しい。私は、現在上場企業の監査役を複数勤めておりますが、現場で隠そうとして意図的に行っている粉飾を見つけることは本当に困難です。こんな事件でも役員に対する非難は浴びせられ、法的問題に発展するのです。
       監査役では、楽しい経験もしております。30年以上前、ある弁護士先生に大変お世話になりましたが、10数年前、上場企業の監査役までご紹介いただくほど可愛がっていただいております。この監査役は今も続いており、毎年、顧問弁護士である先生と株主総会の仕事を一緒にやらせていただいております。こんな嬉しいことはありません。
  5.   粉飾事件の責任の根は、何処にあるのか考えてみましょう。
       この問題は、本など読んで研究していただかなくとも、容易に想像できることです。オリンパス事件を書いたドキュメント「ザ・粉食(粉飾に群がる闇の人々)」(山口義正著 講談社 α文庫)や「東芝粉飾の原点(内部告発が暴いた闇)」(小笠原啓著 日経BP社)など著名な 粉飾ドキュメントを読みますと、会社経営者が自ら粉飾に走っている実態が暴かれています。
       両ドキュメントでは、奇しくも内部告発で粉飾が暴かれていくのですが、そもそも内部告発者がいないと粉飾の事実はなかなか判明しないことも証明しております。
       でも、両者の社長が、自らの名誉のためだけで粉飾に走るのは想像を越えます。通常は、地位だけでなく、お金や複雑な要因が絡まって行われるものです。第三者委員会の報告書や近時特集された日経新聞の記事からしても間違いがないようですが・・。この社長の弁護をさせられる弁護士にも寄り添いがなければなりません。この場合の業務は、会社に対する責任、株主に対する責任などの民事責任だけにはとどまりません。会社の顧問と違った立場での弁護活動が要求されています。
  6.  粉飾を発見することは本当に難しいと思います。公認会計士である井端和男先生が書かれている有名な専門書「最近の粉飾―その実態と発見法」によっても、その難しさはよく分かります。特に、「極地型」と言う言葉で書かれている子会社や関連会社を使った粉飾、或いは本社から遠く離れた支店等の出先機関になると、粉飾の実態が暴露されるまでに相当な時間を要することは必然です。
  7.   最後に、粉飾の防止策ですが、顧問弁護士の仕事として重要です。
       先ずコンプライアンス研修等を工夫し、会社のカルチャー造りが大切です。社員の自覚を高める工夫ですね。このような工夫を日々の業務に取り入れ、弁護士など専門家を外部相談窓口に選任することです。2006年4月に施工された公益通報者保護法を下地にした内部通報制度を工夫する必要もあります。残念ながらページが尽きました。

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1. 平成30年1月26日、大手仮想通貨取引所であるコインチェックから、5億2300万XEM(580億円相当と報道されておりました。NEMの通貨記号はXEMです。)が不正に流出したとの報道がなされました。
該当するNEM(ネム)の保有者は約26万人いること、コインチェックが約463億円という巨額の返金を自己資金で実施すると発表したことからも、仮想通貨の凄まじさを感じる出来事です。
補償時期については検討中のようですし、流出したNEM(ネム)の行方はどうなるのか等、不透明な部分はありますが、ここでは仮想通貨に関して被害に遭った場合の法律論を検討してみたいと思います。
 
2. まず、顧客が仮想通貨取引所に仮想通貨を預けている場合が一般的のようです。
そのような場合、顧客には、仮想通貨取引所に対して、仮想通貨の返還を求める権利があると考えることができます。
そのため、仮想通貨取引所が顧客に対して仮想通貨を返還することが不能になった場合、顧客は仮想通貨取引所に対して損害賠償請求することができると判断できます。
コインチェックがNEM(ネム)を返還することができない場合、顧客は損害賠償請求できると考えることが可能なわけです。
 
3. この点について、MTGOX(マウントゴックス)事件の際、「ビットコインについてその所有権を基礎とする取戻権を行使することはできない」と判断した裁判例(東京地裁平成27年8月5日判決)を根拠に、仮想通貨取引所に対して仮想通貨の返還を求めることはできないという意見もあるようですが、仮想通貨取引所が破産手続を取っていない状態であれば、事情が異なると考えることができます。
上記判決は、仮想通貨取引所が破産になった場合でも破産手続によらずにビットコインを取り戻すことができるかという争点について、「ビットコインは所有権の客体にならない」ことを理由に否定したにすぎない判決と判断できるからです。
 
4. 次に、事件発覚後に取引が停止してしまい、取引が停止している最中に仮想通貨の価格が下落してしまった場合に損害賠償請求する事例を検討してみます。
この点について、例えば、コインチェックの利用規約には、ハッキングによって資産が盗難された場合にはサービスの利用の全部又は一部を停止又は中断することができ、その場合に顧客に生じた損害については一切の責任を負わないという条文があります。
もっとも、仮に消費者契約法が適用される場合、このような条文は、消費者契約法8条1項1号により、無効になると判断できる可能性があります。事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効になると規定されているからです。
 
5. その場合、仮想通貨取引所に、発生した損害との間で相当因果関係が認められる債務不履行があるかどうかが問題になります。
資金決済に関する法律(いわゆる資金決済法)63条の8には、「仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業に係る情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。」と規定されていますが、具体的にどのような措置を講じるべきなのかは不明です。
ネム財団副代表によると、コインチェックがマルチシグ(複数の署名)を実行していなかったのが良くなかったということのようですが、マルチシグを実行していなかったから本件が起きたといえるのかは今のところ不明です。
もっとも、コインチェックのホームページを見ると、コインチェックは、MTGOX(マウントゴックス)のコールドウォレットの管理について完全なオフライン状態で行われていなかったため安全性が確保されていなかったこと、そのためコインチェックでは預り金のうち流動しない分に関しては秘密鍵をインターネットから完全に物理的に隔離された状態で保管しているという旨の記載をしています。
ビットコインに限った記載にも見えますので微妙ではありますが、コインチェックが遵守すると記載しているJADAのガイドラインには「コールドウォレットの整備」と記載されています。
コインチェックはNEM(ネム)についてコールドウォレットを実施していなかったということのようですので、この点について債務不履行(要するに約束違反のことです)になると判断することも可能かもしれません。
 
6. いずれにしましても、仮想通貨が盛り上がる中でこのような事件が起きてしまったことは非常に残念です。
   約26万人の方が被害に遭われているということのようですので、本コラムが、少しでも法律論を理解するための材料となれると幸いです。

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1. 前回のコラムの終わりに、次回は「粉飾決算」を題材にして事件の複雑な側面を紹介し、会社事件が弁護士の優劣を判断する側面も出てくることを書きたいと思って結びました。
しかし、有期労働契約者が無期の労働契約に転換することに関し、昨年末より突然、多数の相談を受けるようになりました。本年4月より適用される予定の、有期契約労働者による「期間の定めのない無期契約」への転換申し込み労働者が出てくることに対する相談です。
平成24年、法改正によって労働契約法第18条が新設されました。有期契約の労働者が、本年4月1日には、5年間ルールの適用により期間の定めのない労働契約に変じることを心配されての相談であります。その期限が迫っておりますので、最近お受けするご相談等を紹介し、今回のコラムで取り上げさせていただきます。
 
2. ご相談の内容は、多種多様であります。
   去年の相談の多くは、有期契約者にはパートタイマーの女性も入りますか?というような法律の入口の相談が多かったのです。
   それが、短時間労働者が正社員と同じ労働条件になってしまうのですか?というように、多少契約の内容に踏み込んだ質問に変化し、最近は、正社員と比較した上での、無期労働者に変化した際の労働条件の内容に関する相談に変わってきました。  しかも今年になってからは更に踏み込んだ相談になっております。無期契約の社員になってもらってもいいが、では正社員と同じ定年の適用はあるのか、従来予定になかった配置転換はできるのかというように具体的な相談になり、就業規則の新設に発展した相談も出てきております。
   そして急成長をしている上場企業からは、まさしく事業譲渡を受ける際のM&Aの相談を受けました。M&Aとは、企業の合併・買収に関係する相談で、弁護士にとっては「高値の花」の相談のように思われております(当事務所は報酬形態がタイムチャージ制度ではありませんので、それ程ありがたくもありませんが・・)。つまり事業譲渡を受ける際に、有期契約労働者に対する使用者の地位に関する相談で、労働契約法第18条を回避したいという相談です(回答自体はそんなに難しくもありません)。
   煮詰まった質問がくるようになってきたという感想です。
 
3. 就業規則の変更・新設や労働組合との協議等によって解決させるかどうかに限らず、事前に準備することは非常に多いのです。しかも有期契約社員の種類もびっくりするほどあります。しかも、会社によって当該種々の社員の必要性も様々であり、一律の解決案は出せません。
でも、放置状態のまま推移するなら、本年3月、或は4月になって、有期契約の更新自体をしないと決意する会社や、事前に有期契約社員を解雇する会社が頻出することは明白であります。有期契約社員が、景気調節弁の役割を担っている場合、或は低賃金での労働条件となっている場合に、上記結論を採用せざるをえないなら、いずれ訴訟になって敗訴する可能性は高いと言えるでしょう。その際、会社の損失は計り知れないものになると推測されます。
このような泥沼状況を回避するためにも、有期契約の更新拒絶が否定された有名な東芝柳町工場事件を紹介しておきます。昭和49年のずいぶん昔の判決ですが、労働法の勉強をする者にとっては常識に属する事件であります。すなわち「雇用期間2カ月の労働契約が五回乃至二三回にわたって更新を重ねた場合、実質上期間の定めのない契約が存在し、その雇止めは解雇の意思表示に当たるというべく、経済事情の変動等特段の事情の存しない限り、期間満了を理由に雇止めをすることは、信義則上許されない」とされております。労働契約法第19条は、有期労働契約の更新について更に厳格に規定しました。上記判例は古いのです。
会社経営者の皆様には、もっと根本的な問題を指摘しておきましょう。今回取り上げた労働契約法第18条の無期転換ルールと共に規定された第20条ですが、その条文は「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」と名付けられております。条文の引用は煩瑣ですから要約しますが、要は、期間の定めのある労働者と正規の社員との労働条件に関し、それら社員の間で不合理な労働条件の相違を認めないというものです。短時間労働社員やパートタイマーなどと名付けされた御社の契約社員に対する労働条件を、正規社員のそれと比較してください。
 
4. 労働の現場が大きく舵を切って変わろうとしていることは、新聞等でも報じられております。その典型は、安倍総理大臣の「働き方改革実現会議」でもあります。働き方改革の主要なテーマは、『同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善』なのです。
労働人口の減少、高齢者や女性の働き方改革、或は外国人労働者、人件費の高騰等切り込み口は多種多様ですが、労働の現場で経営者と共に悩む我が事務所においても、『働き方改革実行計画』に負けないタイムスケジュールをもって会社、否、社会に貢献することが明日への希望であります。
当事務所は、経営者の方から残業代請求事件や雇用に関係する事件を多数任されてきました。更に、当事務所は、副所長が中心となって、社会保険労務士の先生ともタッグを組んでゼミや合同法律相談に取り組んでおります。社員の種類が数種類以上もある会社では、日常的なフォローなくして将来成長を続ける会社たり得ないと判断し、専門家チームを作って会社を支援しております。
未経験の、このターニングポイントを乗り越え、社員のやる気を十分に引き出す会社になっていただき、共に成長いたしましょう。

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1.  平成28年12月に下請法(正確には「下請代金支払遅延等防止法」)の運用基準が改正されてから既に1年が経過しますが、まだ浸透しきっているとは言えないようです。
   大きな会社(親事業者)からも中小企業(下請事業者)からも様々なご相談があります。
   そこで、本コラムにおいては、下請法について説明したいと思います。
 
2.  下請法は、独占禁止法を補完する法律と言われています。
   もともと優越的な地位を濫用する行為を取り締まっている独占禁止法という法律がありますが、独占禁止法は様々な事情を総合的に考慮して違法かどうかを判断することになるため、判断が容易ではありません。
そこで、親事業者と下請事業者の資本金を形式的に比較し、下記表のような状況にある場合には、下請法が適用されることとし、いわゆる「下請けいじめ」を迅速かつ効率的に取り締まれるようにしたものが下請法です。
 
3.  平成28年12月に下請法の運用基準が改正された理由は、アベノミクスです。“アベノミクスによって一定の恩恵を受けたのは大企業だけで、中小企業は恩恵を受けていない”という批判を受け、中小企業(下請事業者)を保護することにしたわけです。
   そのため、改正内容は、中小企業(下請事業者)に有利な内容が多く、大きな会社(親事業者)が今までの現場のやり方を続けていると、違法として処罰される事柄も多くなっています(公正取引委員会のホームページに会社名と勧告内容が公表されることもあります)。
   具体的には、例えば、大きな会社(親事業者)が自らのコスト削減目標を達成するため、中小企業(下請事業者)の言い分をしっかり聞かずに下請代金を定めた場合、違法になります。
   中小企業(下請事業者)から大きな会社(親事業者)に対して、原材料や労務費などのコスト高騰による単価の引き上げの要請があったにもかかわらず、十分な協議をせずに単価を据え置いた場合も違法になります。
   また、下請事業者に製造を委託している品物について、量産が終了し、補給品としてわずかに発注するだけで発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず、一方的に、大量発注時の低い単価のままにしている場合も違法です。
要するに、下請法の運用基準を改正することによって、大きな会社(親事業者)が一方的に価格を決定している現状を見直したい、及び、大きな会社(親事業者)のコストを中小企業(下請事業者)に押し付けている現状を見直したいしたいという国の考えを理解して頂けると思います。
その他にも、国は、支払条件を改善したいとも考えています。下請法の運用基準と同時に「振興基準」というものも改正されているのですが、その中には、手形サイトは120日(繊維業においては90日)を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努める、とされています。
振興基準独自の内容については、今すぐできていないからと言って直ちに違法として処罰の対象になるわけではありませんが、注意が必要です。
 
4.  下請法の運用基準を改正することによって中小企業(下請事業者)の地位を向上させようという試みは、国策と言って良いものです。
大きな会社(親事業者)からすれば、「下請けいじめ」のレッテルを貼られて評判を落とすのは避けたいところです。とはいえ、中小企業(下請事業者)に問題があるにもかかわらず減額や返品ができないのでは困ってしまいます。下請法違反だという疑いをかけられないように適法に減額や返品を行うことは、それほど容易なことではありません。必ず弁護士に相談すべきです。
中小企業(下請事業者)からすれば、大きな会社(親事業者)との間に上下関係があるわけですからなかなか意見を言えないものの、絶対に譲れない一線というのもあるはずです。何でもかんでも自分たちで負担しなければならず、その挙句に一方的に取引を終わらせられてしまうようなこともあります。そのような場合に備えて準備をする必要性は低くありません。この準備についても必ず弁護士に相談すべきです。 
当事務所は、大きな会社(親事業者)からの相談に対しても、中小企業(下請事業者)からの相談に対しても、最も依頼者の方にとって有利になるようなお話しをさせて頂いておりますので、是非一度ご相談ください。

 

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1. 大林組の会社犯罪が毎日のように報道されております。私の叔父が、戦前、日本大学建築学科卒業後、大林組で働いていたこともあって関心をもって見ております。大林組は、10年以上の昔、談合事件との決別宣言まで出したのに不思議だなと、その経緯を見ております。
今回の事件は、リニア中央新幹線関連工事を巡る偽計入札妨害事件とのことです。この犯罪は、談合罪と同じ内容をもつものですが、発注者がJR東海という東海旅客鉄道株式会社という一部上場企業であり、公的団体でないことから、刑法第96条の3にいう「競売等妨害事件」として立件しているのであろうと推測されます。
私も昔、ゼネコンの談合事件を受任したことがあります。スーパーゼネコンを含む100社に及ぶ談合事件で、審判事件は、公正取引委員会が入るビルの最上階の大講堂で行われました。何回も続く審判手続き中、きちんとした発言及び書面が評価されたのか、我々は後ろの席から、どんどん前の席に移動を命じられ、スーパーゼネコンと並ぶ席に移された後、最後は審判長の面前の席に移動させられました。また、審判の山場では、大手弁護士事務所を差し置き、盟友比佐守男弁護士と私が、新聞記者から追っかけをされるほどになりました。でも活躍したなどという気持ちは全くありません。依頼者の気持ちに寄り添ったのみです。
上記事件も、今回の大林組の事件も、会社犯罪の典型例であります。 
別に珍しいことではありませんが、当事務所も新しい弁護士を迎えました。せっかくなら、弁護士業務とは何なのか、弁護士道とは何なのかを考えるきっかけになればいいと思いました。従って、今回から暫くの間、相手方としてではなく、そもそも依頼者内部で対立せざるをえない事件を紹介してみたいと思います。
つまり、弁護士は、依頼者が誰であろうと、依頼者の内部で全く逆の立場にたって物事を考える必要が生じる事件を紹介し、弁護士業務とは何なのかを問いかけしてみたいと考えました。「依頼を受けた人に寄り添うとは何か・・」が考えられるようなコラムに挑戦します。

2.  実は、上記事件の直後、スーパーゼネコンで、高い地位(○○支店長)にある友人から、有名な談合事件の相談を受けました。その友人は既に他界しているため、このコラムを書けるのですが、当時の超有名事件における私の弁護士業務を評価して相談に来てくれたと思っていたら、実は、会社における自分の身の保全でした。依頼者には、会社利益に相反する助言しかできないことがすぐに分かりました。
     その友人には、談合をした部下から事情を聞き取り、友人に不利益が及ぶかどうか確認させました。報告書など公的な書面は当然として、パソコン、電話受信記録等の一切を調査しました。その結果、会社の体質も含め、会社が友人を犠牲者にして処理する可能性が非常に高いと判断されました。友人は、会社責任者として、会社に対する被害を最小限に抑えたいという気持ちと、自分が犯罪者にされるであろうという会社の在り方に対する批判的な認識との間で揺れておりました。刑事罰も怖いですが、談合罪の課徴金も高いのです。課徴金は、売上金の10%から数%ですから(今回の大林組の契約額は約90億円ですから、課徴金は数億になる可能性がある)大変な額になります(この具体的な金額を書いたら、私なら、すぐに何の事件か推測できます)。
     そもそも前項にて紹介した私の事件では、地方公共団体の職員が一人自殺をし、何人かが逮捕されているのです(超巨大事件では、自殺者が出ることは珍しくありません。故に事件名は 推測できないはずです)。私は、無料にて、何回も彼と相談しました。会社が依頼している大手の法律事務所は信じるな。大手事務所弁護士は「平然と君を裏切るぞ」と具体例を教えました。最後に、私と打合をせした以外のことはしないと約束させました。結果、友人が危機を乗り切ったことは言うまでもありません。今になって思うことは、大学時代の共通の友人である奥さんにこの話をしてもよかったということです。
 
3. 受任に至らなかったとはいえ、事件の詳細を本コラムで書くことができない事件も経験しております。
     自殺した社員の家族の方から、談合事件で悩んでいた子供が自殺してしまったという相談を受けたことがあります。事案を詳細に聞き取り、当人の日記帳やメモを精査しました。私の法的な結論は、パワーハラスメント事件と認定されると申し上げました。当然、私は家族に寄り添いますから、談合事件での責任を彼一人にしわ寄せする会社は許せないという結論をもって、今後の進行スケジュールをお教えしました。
       つまり内容証明による会社に対する責任追求、同時に報道に対しての公表及び記者会見、そして労働基準監督署及び刑事の告訴、損害賠償請求訴訟等です。私の意見が会社社長に伝わり、社長から家族に、直に謝罪がありました。家族は、会社を思う息子の日記帳を全員で何回も読まれたそうです。会社の対応が真摯なものに改まったこともあり、このまま終わりにされることに落ち着きました。直後、家族の方々がお礼に見えられ、私の家族に寄り添う気持ちが、こんな意外な結論になったと申されました。私には「こんな意外な結論」という言葉が報酬になりました。
 
4. 今後のコラムの流れを、次のように考えております。次回は、やはり会社犯罪「粉飾事件」を紹介します。その後は相続財産管理人申立の破産管財事件です。裁判所が依頼者ですが、真の依頼者は誰なのでしょうか。そして、離婚事件の際、弁護士が年金分割の申立てを行わず2年が経過してしまったという事件です。内部の敵に弁護士が登場するという順番で、本コラムを書きたいと考えております。

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