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コラム - 借地借家カテゴリのエントリ

立退料の相場

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借地借家

一 当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまでいくつかのコラムの中でお話しした通りです。

二 そして、立退料に相場が無いということもこれまでお伝えしている通りです。
 このことは、当事務所において、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決していることもあることからご理解頂けると思います。

三 不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、賃借人の立場に立って解決する場合でも、具体的に近時の裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
 裁判所がどのような事案でどのような結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが弁護士の能力の一つだと思いますし、当事務所が様々な依頼者から喜ばれている理由の一つだと言えます。
 そこで、定期的に近時の裁判例をご紹介することにしております。

立退き料

平成27年9月18日東京地裁判決

1億7000万円(月額賃料の約65ヶ月分)

築44年。鑑定結果は、借家権割合法による価格を1億7000万円、移転補償額としての価格を1億7000万円。移転補償額の算定に当たっては、家賃補償年数を2年として算定することが一般的であるところ、鑑定時において賃貸期間3年を残しての中途解約事案であることを特に考慮して、家賃補償年数を3年として移転補償額を算定した。

立退き料

平成27年9月17日東京地裁判決

555万円〜760万円

営業補償について、賃借人らが財務諸表等の証拠を提出しないので、業種別・企業規模別に企業の営業利益等を調査した「中小企業実態基本調査」のデータに依拠して検討した。その他に店舗部分の内装設備工事費用、契約費用、引っ越し代を考慮した。

立退き料

平成27年7月28日東京地裁判決

1000万円

 

賃借人は立退き料を6738万9722円と主張したが、一般に利回り法による算定の際に前提とされる利回り率は、5%から6%が相当であるとされることが多いので、賃借人の計算をもとにしても1300万円程度になると推測した。賃借開始時点で既に建築後45年程度が経過していたこと、本件建物が木造であること、賃貸人は近隣に比べて低額な賃料について増額を請求しないばかりか、平成21年からは減額に応じていたことなどを考慮した。

立退き料

平成27年7月17日東京地裁判決

200万円(賃料40か月分)

築50年以上を経過した木造の建物で、現に、複数箇所で雨漏りがあり、天井板の一部が崩落しているほか、天窓の亀裂、カビの発生、床板や土台のきしみ、腐食も認められるなど、著しい老朽化が認められること、賃貸人は、賃借人らと紛争となり、調停も不調となったことから、低額の賃料収入を甘受しながらローン2000万円程度の返済を継続する必要があること、賃借人は両名とも高齢ではあるものの、他所に転居して生活することに特段の支障があるとは考え難いこと、賃借人は相当程度の収入を得ているものと伺えるだけでなく、別荘も所有していることなどの事情を考慮した。

立退き料

平成27年6月30日東京地裁判決

200万円

 

昭和9年建築であり、老朽化が進み、物理的に損傷している上、耐震性にも相当の問題があるために、現状のままで建物の機能を維持することは著しく困難であるものの、賃借人は平成12年から本件建物で起居していることから、これに代わる住居を手当てし、移転費用を支出しなければならないとして、賃料、通常要する引っ越し費用、近隣の賃貸住宅の賃料や敷金等入居に係る費用を考慮した。

立退き料

平成27年3月6日東京地裁判決

1億3000万円

本件耐震改修促進計画に基づく耐震診断は行われていないこと、賃貸人の必要性は経済的な理由にすぎないこと、賃貸人がいまだ本件各土地の具体的な利用計画を明らかにしていないこと等を理由に立退料なしでは正当事由が具備できないとした上で、借家権割合方式で借家権価格を1億3800万円と算定した。

立退き料

平成27年2月27日東京地裁判決

150万円

賃借人は立退料2354万2637円を主張した。賃借人には本件建物の使用を必要とする事情があるものの、必要性がそれほど高くないとした上で、代替物件への引越に要する実費及び数日分の休業補償に見合う分を立退料として認めた。

立退き料

平成27年1月30日東京地裁判決

2376万円(月額賃料33か月分)

 

賃借人は代替店舗が無いことなどを理由に立退料として4億9692万円を主張していた(年間売上額は2億円程度)。都市再生法に基づく再開発であり、築20年が経過していること、本件店舗の売上高は賃借人の売上高全体の1割にも満たないこと等から、借家権価格108万円と公共用地の取得に伴う損失補償基準等に基づいて求めた通損補償額(営業補償、工作物補償、動産移転補償及び移転雑費補償の合計額)2268万円の鑑定合計額を支払うことで明渡しを認めた。

立退き料

平成27年1月14日東京地裁判決

0円

主位的に債務不履行解除を、予備的に200万円の立退料と引換えに明け渡しを求めた事案。無断転貸とまではいえないものの、用法違反、高額の金銭請求をしたこと、無断で補修工事をしたこと等を総合して判断して債務不履行解除を認めた。

請求棄却

平成27年2月3日熊本地裁判決

正当事由なし

(福岡高裁においても維持)

賃貸人は自社ビルを建築すると主張するが法規制上建築できるか疑問であること、賃料が低額なのであれば増額請求手続を履践すれば良いこと、近辺で賃借人が同業を営むための建物を新規に建築することは難しいこと、賃貸人が提示している300万円の立退料では少ないことなどを理由とした。(高裁では賃貸人は1000万円の立退料を提示した。)

請求棄却

平成27年2月5日東京地裁判決

正当事由なし

建築後79年が経過し、外観が古びていること、賃貸人が実施しようとした専門家による検査への協力を賃借人が拒んだものの、賃借人が昭和19年生まれの男性であり、昭和61年頃から本件建物に居住していること、賃借人は約10年前から、本件建物のある東京都北区やその周辺地域で貨物の運送業を営んでおり、運送業収入と基礎年金で生計を立てていること、賃貸人が本件建物の所有権を取得するや、2か月余りで本件解約申入れをしていること等から、賃貸人が立退料204万円を申し入れているとしても正当事由は具備できないと判断した。

請求棄却

平成27年7月16日東京地裁判決

正当事由なし

賃貸人が使用する必要性が高いことを立証できないのに対して、賃借人が使用する必要性が高いこと、築50年以上を経た古い建物であり、築年数相当の老朽化が見られるが、その外観や内観からして、朽廃が近いものとは認められないこと、本件耐震診断評価書で倒壊の危険があるとされているが、筋交いを設置して補強するだけでも一定の耐震効果が得られるものであることは明らかであること、正当事由として立退料300万円を申し入れているものの金額の問題ではないこと等を理由にした。

請求棄却

平成27年8月31日東京地裁判決

正当事由なし

本件耐震診断書作成の際に行われた現地調査によれば、躯体のひび割れ、変形が著しいものは見受けられず、仕上げ材の剥落等もなかったこと、同診断書は、コンクリート強度調査,コンクリート中性化試験及び鉄筋調査を行わずに作成されたものであること、他方で賃借人は数十年にわたり営業していることなどを理由とした。

請求棄却

平成27年9月7日東京地裁判決

正当事由なし

賃貸人は他に建物を所有しているのに対して賃借人は家族で住む必要性が高いこと、築70年以上経過しているものの、一応居住できる状態にあって、朽廃の状態にあるとまで認められないこと等を理由とした。

請求棄却

平成27年9月10日東京地裁判決

正当事由なし

賃貸人の主張は相続税対策の必要性にすぎないこと、他方で賃借人は本件建物とは別に自宅マンションを有しているものの、年金以外に収入はなく、生活のため本件建物からの賃料収入を必要としていること等を理由とした。

請求棄却

平成27年9月17日東京地裁判決

正当事由なし

賃貸人は3億3880万円の立退料を支払うと申し入れていたが、具体的な建築計画を有していたと認めるに足りる証拠はないこと、本件鑑定結果からも建替えを必要とするような建物の劣化が存在するとは認められず、本件耐震診断においても経年劣化の程度は軽微であるとされていること、建物について耐震性が不足する場合であっても、これを取り壊して建て替えるのではなく、耐震補強工事を行うことが可能であること等を理由とした。

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                               以 上

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一  当事務所が数多くの立退き案件を取り扱っていることは、これまでいくつかのコラムの  中でお話しした通りです。
 
二  当事務所は、主として貸主又は不動産業者の立場から受任することで多くの成果を挙げておりますが、借主から依頼を受けることもあります。
    以前のコラムにおいて、借主から依頼を受けた事案で賃料200ヶ月分の立退き料を獲得した事案を紹介いたしましたが、つい最近も賃料100ヶ月分を超える立退き料を獲得した事案もございます。
    近時の裁判例は、耐震性に関して貸主の立場である正当事由の認められる可能性を増大させているように見受けられます。
   注意されねばならない論点が増えております。
 
三  近時、開発案件などで立退きのご相談を頂く機会が増えておりますので、改めて立退き料の動向についてご紹介させて頂きます。

立退き料
平成26年12月19日東京地裁判決
3237万3000円
耐震性能不足に起因する本件建物の取壊しの場合、賃貸人だけに負担させるのは相当でない。立退料は、賃料差額を1344万円(〔月額新規支払賃料206万円−月額実際支払賃料150万円〕×補償期間24か月)、一時金運用益を32万8000円(〔新規月額賃料206万円×10か月−本件賃貸借契約の保証金1240万円〕×運用利回り2%×2年)、新規契約に関する手数料等及び移転費用、営業補償費、内装費補償費、広告宣伝費等を1860万5000円とした合計額とする。
立退き料
平成26年12月10日東京地裁判決
3318万9825円
(賃料の36ヶ月分超)
立退料は、移転までの空白期間について、本訴提起前の交渉経過とほぼ同程度の期間である約1年半程度と想定し、その間の賃料等相当額に直接剰余を加えた程度の額とする。
立退き料
平成26年7月1日東京地裁判決
5120万円
5215万円
180万円(賃料約2年分)
立退料は、移転実費、借家権そのものが有する財産的価値(借家権価格)及び営業上の損失に対する補償額を考慮した上、そのうち立退料以外の事情による正当事由の充足度を踏まえた一定額とする。
左記はいずれも異なる店舗である。借主が平成25年8月以降営業を行っていない状況を考慮している。
立退き料
平成26年4月17日東京地裁判決
124万8000円
(賃料6ヶ月分)
借主は既に本件建物での営業をやめているのに対し、貸主は道路拡幅工事のための用地買収に応じるために本件賃貸借契約を解約して本件建物を取り壊す必要がある。
賃貸人からの解約申入れの猶予期間が本件賃貸借契約において6か月間と定められていたことなども考慮している。
立退き料
平成25年12月11日東京地裁判決
215万円
借主が家財を搬出して退去する費用相当額、新たな賃貸物件等住居を確保するために要する費用相当額、相当期間についての当該物件の賃料と借主が本件貸室について支払っていた賃料との差額相当額を考慮している。
立退き料
平成25年6月14日東京地裁判決
4130万円
耐震補強工事に代えて建替えを行うことは貸主にとっても費用対効果上メリットであること、建替えが結果的にもたらす敷地の高度利用化という利益も専ら貸主が取得することなどを総合考慮し,借家権価格(鑑定の結果)の半分相当額とする。※賃料月額315万円
立退き料
平成27年3月20日東京地裁判決
0円
木造住宅であり、少なくとも増改築前の部分についてはその建築から50年を優に超えていること、貸主は現在67歳の単身生活者であること、50年を超える長期にわたって本件建物の所在地を生活の本拠とし今後も本件建物を建て替えて同所で生活する意思を有していることなど貸主側の立場を考慮している。
他方で、借主における本件貸室の用途は専ら経理関係の書類等の保管にすぎないことを考慮している。
立退き料
平成25年1月23日東京地裁判決
0円
耐震性能を現行法の水準にまで高める工事をすることは建物所有者として合理性を有する。本件建物の耐震性能は相当低く、倒壊する危険がある。残寿命は10年程度であり、本件建物を取り壊して新たな建物を建築する等する必要性の高いことを考慮している。
他方で、借主は、本件建物を居住用に使用しているわけではなく、現在は転借人もいない。借主は自ら賃貸物件を多数抱える不動産業者であり、新たな物件の調達にさしたる困難があるともいえないこと等を考慮している。
請求棄却
平成25年9月17日東京地裁判決
正当事由なし
 
建物の倒壊の危険性から取壊しを要すると主張する以上、貸主は本件建物の倒壊の危険性を具体的に立証することが必要であるが、本件建物の耐震性について耐震判断審査を行っていない。なお、貸主は立退き料を支払わないと明言していた。

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  以前「正当事由と立退き料の事例紹介」というコラムを掲載致しましたが、その際皆様から大きい反響を頂きました。今回は、最近の裁判例がどのような判断を下しているのかについて一部を追加して紹介しておこうと思います。皆様が直面している案件について、高額な立ち退き料になるのか低額な立ち退き料になるのか判断する際の参考にしてください(借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」も併せてご覧ください。)

 
 
 ところで、下品な言葉で言うなら、当事務所は業者の皆様からいわゆる「地上げ」の段取りや相談を継続的に行ってまいりました。しかし、先日当事務所のホームページを見て来所されたお客様に、当事務所で是非とも立ち退き料を獲得してほしいと懇願され、やむなく賃料の約200ヶ月分を取得した事例が発生致しました。
  この事例につきましては今後当コラムにて掲載するかどうか検討しておりますが、いずれにしましても紙数に限りがございますので、今回は最近の裁判例を紹介させて頂くことにしたいと思います。
 
  具体的な事案でどれくらいの立ち退き料になる可能性があるのかご相談されたい方は当事務所までご連絡ください。
 

 

立ち退き料
(平成23年
1月17日判決)
6000万円
本件建物は朽腐しているとまではいえず緊急な耐震工事は必要ないが、遠からず建て替えか大規模修繕が必要になる。そのため、銀座6丁目という立地からすれば、本件建物の機能的、経済的な耐用年数はほぼ満了していた。他方、借主は66歳で、唯一の収入源としてとんかつ屋を営業していた。借主が代替物件を確保できないとまではいえないことなども総合考慮して、立退き料の支払いにより正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月18日判決)
4億2800万円
貸主は投資運用業を営む特定目的会社であり、投資物件として本件ビルを購入したが、耐震性に問題がある等の診断が出たため、建て替えが必要だった。また、本件ビルは相当程度老朽化していた。他方で、借主はスポーツ用品の輸入販売を営む会社で、原宿竹下通り沿いで32年にわたり営業を続けていた。借主の年間売り上げは約3億5000万円だったこと、本件ビルの立地が好条件だったことは認められるものの、本件ビルでなければならない事情はないこと等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月2日判決)
6850万円
貸主は資産管理等を目的とする特定目的会社で、借主は占い業を営んでいる。借主にとって原宿竹下通りという商業用ビルの立地が好条件であるものの、移転しても占い業が廃業するとまでは認められない。本件ビルは築後約32年を経過していること、本件ビルの他の賃借人の明け渡しが相当程度進んでいること等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月22日判決)
2200万円
本件テナントビルは築後約30年経過していること、テナントの状況、不動産事情の厳しさ、周辺地域からの事情からするとテナントが借主だけしか残っていない本件建物について建替えを行う一定の必要性はある。他方、借主は歯科医院を営んでいるが、本件貸室の借家権鑑定評価額である2200万円の申し入れなどを理由に正当事由を具備していると判断した。
立ち退き料
(平成23年
3月10日判決)
2億5000万円
借主は、東京駅八重洲中央口徒歩5分の本物件で10年以上にわたりサウナ浴場を営んでいた。数10名の従業員もおり、借主が本件建物を使用する必要性は相当高い。また、本件ビルの耐震強度に問題があること、借主の利用方法に形式的な違反があることは確かであるが、本物件を利用する必要性は借主の方が格段に高い。そのため、正当事由が不足しており、補完事由としての立退料の提供が必要であると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月25日判決)
400万円
貸主が再開発を行う必要性は認められるが、最終計画までは策定されておらず、他の建物利用者の退去も完了していない。被告は婦人用洋服店を営業して生計を立てていたため、貸主の建物利用の必要性は若干弱い。他方、貸主は著しく低額の賃料に甘んじていたこと、築後約50年が経過しており耐震性が低く倒壊の可能性が高いこと等を考慮して、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。(なお、借主は収入に関する証拠の提出を拒んだため、適正賃料との差額1年分を営業上の損失の填補と認定している。)
立ち退き料
(平成23年
4月14日判決)
372万円
貸主の資金繰りが苦しく本件建物等を売却して借入金を返済することが急務であると顧問税理士が述べていること、金融機関からも本件建物等の売却を求められていることからすると貸主が本件建物の明け渡しを受ける必要性は高い。他方、中古自動車販売業を営む借主の業態及び土地使用状況からすると、借主が本件建物を使用する必要性はそれほど大きくない。立退料が提供されるのであれば、正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
6月23日判決)
 
150万円
本件建物は築39年の木造アパートで老朽化していることに加え再開発計画があるため貸主には本件建物を利用する必要性がある。他方、借主は足腰が悪く2階以上に住めないこと、満67歳で生活保護を受給していることなどからすると、貸主が利用する必要性はやや弱い。しかし、2年半以上かけて引っ越し先を多数紹介するなど誠実な対応をしたこと、他の入居者が全員退去していること、賃料30カ月分の立退料を申し出ていること等からすると、正当事由があると認められると判断した。
正当事由なし
(平成23年
1月28日判決)
 
貸主は3060万円の立退料を申し入れたが、建物の使用を必要とする事情を主張しなかった。他方、借主は本件建物を転貸して差額賃料を収益とする事業を行っていた。貸主は賃料が低額であると主張するが、賃料が低額の部分については賃料増額請求権を行使すれば良いことなどから、立退き料の申し入れによって正当事由が具備されることにはならないと判断した。(サブリース事案)
正当事由なし
(平成23年
2月24日判決)
 
貸主は本件マンションに関して再開発の目的を有していた。本件マンションは築後約30年経過しているものの、耐用年数は10年程度残っており、長期間にわたり居住の用に耐えうる。借主の妻は不眠症及び相当重い心臓病を患っており、住み慣れた本件マンションから転居するストレスによって病気が悪化する可能性も否定できない。貸主は借家権価格を大幅に超える200万円の立退き料を申し入れたと主張するが、正当事由を具備したことにはならないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
3月11日判決)
 
貸主及び妻は75歳と高齢で、貸主は脳梗塞後遺症により歩行困難などの既往症がある。そのような理由で長男との同居を望んでいることからすれば、貸主にとって本件土地利用の必要性がないわけではない。しかし、貸主には他にも不動産があり本件土地に住むことが唯一無二の選択ではない。他方、借主は統合失調症により近所の病院で治療を受けており、無職で障害年金を受給中で、転居等は病状に悪影響を及ぼす可能性が高い。借主が本件土地を利用する必要性は極めて高く、立退き料の提供があったとしても正当事由はないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
6月9日判決)
 
貸主は本件建物について自己使用の必要性があると主張するが、貸主はテナントを管理しているにすぎず、自己使用とは評価できない。他方、借主は本件建物の5階部分を自ら使用するとともに、1階から4階部分をサブリース業者としてテナントに賃貸することで会社運営している。借主が本件建物を使用する必要性は相当大きく、正当事由があるとは認められない。(サブリース事案)

 

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執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください。

  1. 執行補助者のご厚意により下記実例について、各々の執行費用を見積もってもらいました。もちろん弁護士費用は入っておりません。
  2. 以下の見積もりは皆様に予想していただくためにお願いしたものであり、実際にはこの通りでない場合もあります。
  3. 執行費用として、事前に裁判所に予納金の支払が必要ですが、下記表には基本金額として記載されております。それ以下にて記載の費用は、執行補助者費用、運搬費用、倉庫保管費用等で支払先が異なるものです。

ワンルームマンションの事例

居住用借家で広さは20平方メートル

家賃は月7万円、2年契約

入居者は25歳会社員で室内犬1匹がいる場合です。

項目 数量 単位 単価 金額
申立日 動産執行予納金       3万5000円
申立日 明渡執行予納金       6万5000円
申立日 申立印紙代、予納郵券       別途
催告日 執行補助者費用 1 2万円 2万円
催告日 解錠技術者費用 1 2万5000円 2万5000円
断行日 執行補助者費用 2 2万5000円 5万円
断行日 解錠技術者費用 1 2万5000円 2万5000円
断行日 鍵交換費用 1 箇所 1万円 1万円
断行日 執行作業員費用 5 2万円 10万円
断行日 執行準備・養生・材料費等諸経費 1 4万円 4万円
断行日 搬送用車両(2トン) 1 3万5000円 3万5000円
断行日 遺留物件の保管費用(1カ月) 1 4万5000円 4万5000円
断行日 ペット業者費用※ 1 3万円 3万円
合計 消費税       1万9000円
税込み合計       49万9000円

室内犬は、執行日に現場売却します。1週間くらい保管が必要と予想されます。

廃棄処分費用は別途かかります。

営業用店舗の事例

広さ60平方メートルのマンション1階部分で魚屋を営業する店舗。

賃料は月20万円で保証金6カ月 契約期間は3年の場合。

借主は50歳の男性とします。

特別に注意するべき事項として、室内に神棚、ショーケースがあるものとして見積をお願いしました。

項目 数量 単位 単価 金額
申立日 動産執行予納金       3万5000円
申立日 明渡執行予納金       6万5000円
申立日 申立印紙代、予納郵券       別途
催告日 執行補助者費用 1 2万円 2万円
催告日 解錠技術者費用 1 2万5000円 2万5000円
断行日 執行補助者費用 2 2万5000円 5万円
断行日 解錠技術者費用 1 2万5000円 2万5000円
断行日 鍵交換費用 1 箇所 1万円 1万円
断行日 執行作業員費用 10 2万円 20万円
断行日 執行準備・養生・材料費等諸経費 1 7万円 7万円
断行日 搬送用車両(2トン) 3 3万5000円 10万5000円
断行日 遺留物件の保管費用 1 13万5000円 13万5000円
  消費税       3万2000円
  税込合計       77万2000円

魚等の生鮮食品については、執行当日、現場売却となります。代理人の買受が通常です。

神棚は、相当期間は任意保管して、しかるべき場所へ移転します。

ショーケース等の移動できない物は現場保管となり現場での売却が通常です。

廃棄処分費用に関しては、別途かかります。

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賃貸借契約の期間満了時、更新せずに契約を終了させたいと希望される方。

賃貸に出していたが自分で使いたいという事情のある方。

「正当事由」の裁判例を見てどのように判断されるのか勉強しましょう。

事例を紹介します。

その前に復習です(ホームページ「借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」もあわせてご覧ください)。

「正当事由」とは、旧借地法、借家法上においても「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」と規定があり、新借地借家法でも双方の事情を比較考量するほか、「財産上の給付」も評価の対象としております。土地所有者の事情ばかりでなく、借主の事情として投下資本の回収、借主の積極損失(移転費用、営業損失等)或いは公益、社会上の諸般の事情をも含めて総合判断するのです。

最高裁判例も従来より「立退料の提供は正当事由の有力な事情」とし、その判断要素としておりますから裁判事例をあたってみることは必要です。

1 自己使用に関する裁判例

立退き料 0 マンションに住む貸主が、家族と住むには手狭になった。借主側は、借地上の居宅を既に使用していなかった。更に借主は明け渡しの約束を何度かしていた。立退き料なしで認定した(借地)。
立退き料 200万 貸主が賃貸から10数年後転勤から戻ってアパート暮らし。

借主には転居する経済的能力あり。借主の移転先を探す仲介料や敷金、引っ越し代などの立退料で正当事由が補完されると認定した(借家)。

立退き料 750万 マンションに住む貸主は家族と住むには手狭になった。借主側は借地上の居宅を既に使用していなかった。(借地)
正当事由なし   貸主には別に居住の場あり。貸地の返還を受けて長女夫婦と同居するための新居を建てる必要ありと主張。借主は家族とともに同居していたことや店舗を営んで生計を立てていたことから正当事由はないと認定された(借地)。
正当事由なし   貸主は身体障害者の子の居宅を建築する必要があるとして立退き料300万を提供する旨申し出たが、借主は多数の家族の居住場所にしていたため正当事由を認めず(借地)。

2 自己使用が「営業目的」に関する裁判例

立退き料 6450万 新聞販売店を営んでいた貸主は、従業員宿舎のビルを建築する必要があるとして賃借人に土地の返還を申し出た。

立退料6450万円で正当事由ありと認定された(借地)。

立退き料 8億 貸主は本社社屋の建築に必要と主張。借主は20年以上パチンコ店を経営しており、明渡せば廃業となる。裁判所は、借地権価格、借主の営業利益、権利金なし等を総合考慮して立退き料の提供により正当事由を認めた(借地)。
正当事由なし   貸主は隣接地に居住。本件土地に養子を居住させて老後の面倒をみさせるため借地権買取価格での立退き料2504万円を提供する旨申し出たが、賃借人は倉庫、資材置き場として使用する必要があるとして異議申出する。正当事由の補完を認めないと認定した、(借地)。

3 居住と営業がセットになっている裁判例

立退き料等 650万 貸主は、自己の子が居住し自動車整備事業を経営するため本件土地が必要であるとし、借主に対して使用継続に異議を述べ、立退き料及び利害調整金として計650万円の提供により、明け渡しが認められた(借地)。
正当事由なし   貸主は隣接地で理髪業を経営。理髪業及び居住に手狭として明渡し要求。借主は商品の保管場所に必要として争う。

貸主は信頼関係の破壊も合わせて主張したが認められず(借地)。

4 再開発事業・有効利用・高度利用に関する裁判例

立退き料 6500万 貸主は、都市の再開発事業を手掛ける不動産業者。再開発事業を効率的に進めるため立ち退き交渉を行い、立退料の提供により、正当事由が具備されると認定された(借家)。
正当事由なし   ホームページ「借地借家の秘訣」に掲載した事例をあわせてご覧ください。

5 建物の老朽化に関する裁判例

立退き料 8億 建物が老朽化して耐震性で危険。補強にも高額の費用が要する状況にあるが、場所が銀座で、土地の高度利用、有効活用が望ましいとして高額の立退き料を補完事由として正当事由を認めた(借家)
正当事由なし   賃貸人は、現行家賃の4年以上の家賃に相当する金額の立退き料を支払うと申し出たが、老朽化については貸主のせいであるとして正当事由は認められないと認定した(借家)。

判決が面白いので説明を加える。

判決;「賃貸人は老朽化に至るまでに恒常的な修繕」などをしていない。故に、建築後30年以上を経過しているものの、建物が老朽化したとはいえず、今後数年の使用に耐えうるものと認定した。

老朽化による裁判例には、建物の建て替えが必要であるとして、隣接ビルとの併合の事例、修繕に過大費用がかかることを理由とする事例など、立退料の提供を補完事由として正当事由が認められた事例は多数あります。

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