新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。
コラム - 最新エントリー
一. 今年ほどパワハラに関する報道が多い年もないのではないでしょうか。史上初のオリンピック4連覇を果たした伊調馨選手に対するパワハラにはじまり、ボクシング協会や体操協会においてもパワハラの問題が大きく報道されています。企業にとっても無視できるような社会情勢ではなく、パワハラを行っていたという報道がなされた企業が「炎上」してしまうこともしばしばです。
「炎上」してしまえば、会社としての信用力を大きく失墜させ、良い人材が集まらなくなり、企業としての競争力も低下させてしまいます。
法的にも、会社には職場環境に配慮する義務があり、損害賠償義務を負う可能性がありますが、それ以上にパワハラを甘く見ていると大変な目に遭う時代になってしまいました。
二. ところで、そもそもパワハラとは何でしょうか。
これほど大きく報道されている割に正確に理解している人は極めて少ないように感じます。
平成24年1月に厚生労働省のワーキンググループは、「同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為である」と定義しました。
ここで重要なことは、キャリアや技能に差があり、実質的な影響力があれば、同僚の間や、部下から上司に対してであっても、パワハラが成立し得るということです。また、「職場」といっても、打ち合わせをする飲食店や宴会においてもパワハラが成立します。
三. 他方で、業務上必要な指導の場合、相当性を欠かない範囲であれば、相手がどのように感じたとしてもパワハラには当たらないということも非常に重要です。会社がパワハラ問題に対応しようとするときに、一番難しい問題がこの点です。
仮に業務上必要な指導までパワハラであると言ってしまった場合、上司は何も指導ができないことになってしまいます。一生懸命指導してもパワハラだといわれるのであれば、リスクを避けるために指導をしたくない、なるべく見て見ないふりをするという上司が出てくるのは当然のことです。これではまともな人材は育たず、まともな会社になりません。
要するに、会社とすれば、単に「パワハラはいけません」と言うだけではなく、具体的にどのような問題がパワハラとして問題になるのかを適切に把握し、どのような指導をするべきかをしっかりと認識していかなければならないわけです。
四. 厚生労働省は、パワハラを以下の6つの類型に分けています。
�� 身体的な攻撃(暴行・傷害)
�� 精神的な攻撃(脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言)
�� 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)
�� 過大な要求(業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害)
�� 個の侵害(私的なことに過度に立入ること)
�� 過小な要求(業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)
の6つです。
何となく問題がありそうな内容が並んでいますが、通常、これだけ聞いても具体的にどのような場合にパワハラになり、具体的にどのように指導していけば良いのかはわかりません。
五. 会社がパワハラに対処しなかった場合のリスクが非常に高まっている以上、具体的にどのような場合にパワハラになるのか、どのような指導をしていけばよいのか、ということは顧問弁護士にしっかりと確認していく必要があります。
また、会社にはパワハラを防止するために策を講じる義務がありますから、弁護士にハラスメント研修の講師をしてもらい、管理職に正確な認識を持ってもらうということも重要です。
残念なことに既にパワハラの被害申告を受けてしまった場合には、当該行為が本当にパワハラなのかをしっかり調査した上で、適切な対応を行う必要があります。
冒頭でも述べましたが、パワハラを甘く見ると、会社が損害賠償義務を負うだけでなく、信用力も失墜し、とんでもない目に遭ってしまいます。
六. 当事務所は、顧問会社の実態に合わせ、顧問会社に出向いてハラスメント研修の講師を行ったり、パワハラの被害申告を受けた場合にも本当にパワハラなのかをしっかり調査確認した上で様々な対応を行なったりしております。
会社においてパワハラに関するリスクが非常に高まっていることを理解して頂き、一度当事務所に御相談頂けると幸いです。
「徳田氏と、氏に伴走して旧態依然たる医療をあらため、無人の荒野に病院の砦を築いてきた人たちにとって、徳洲会とは・・・、かなり長めの「青春」そのものだった。」
前回のコラムで、オウム事件を巡る朝日新聞の対応に疑問を呈しましたが、この本は、法律に抵触することなど厭わず、社会的な運動に身をかけた人たちについて「かなり長めの青春そのものだった」と言える著者の姿勢に驚いたからです。オウム事件との区別も、その線引きも必要ではないかと感じます。
2 先ず、この本を通じて知った徳田虎雄さんを紹介しましょう(まだご存命なので徳田さんと言います)。
徳田さんは、選挙では公職選挙法違反になることなど全く意に介さず、周囲を巻き込んで、違法な「どぶ板選挙」に邁進し、マネー戦争でも、多分税法や特別背任罪などの法的考慮も一切されなかったのでしょう、徳洲会のため必要な金を獲得することだけを目的にして、あらゆる手段を行使されたのですね。
でも金で買う一票は(一票などと言うレベルではないが・・)、民主主義の根幹に反します。私は許せません。また金儲けだけを考えて行われるマネーゲームも、読むに値するものでしょうか。
そもそも私は弁護士ですから、法に抵触する方々ともお付き合いをすることが前提です。また弁護士と言う以前に、自分の若かりし頃を思い出し、どこまでの違法が「青春」と言う美名?の上で許容されるのか、常々考え続けてきました。
つまり、どこまでの確信犯が、小説として読むに耐え、共感に値する範囲と言えるのでしょうか。
3 昔、私は、カンボジアの共産主義革命に絶望しました。でも常に関心を持っておりました。当時、カンボジアを描いた面白い本はなかったのですが、昨年夏、発刊された「ゲームの王国」上・下(著者小川哲 早川書房)というSF小説は、当時のカンボジアを題材としているため、直ぐに購入して読みました。
やはり衝撃的でした。この本も紹介したくなります。でも下巻は、脳波でコントロールするゲームの開発と言うように、近未来のSF小説になってしまうのです(私は上巻だけで充分です)。故に、カンボジアの歴史としてその要約を紹介します。
カンボジアの指導者となったポルポトは、毛沢東に憧れていることもあったのでしょうか、原始共産主義を目指したクメールルージュを組織しました。彼は、階級や格差のない原始共産時代の状態に戻すというスローガンの下に、邪魔になる富裕層や知識人を対象として100万人以上を殺害したとされています。共産主義であっても私有財産制度は廃止されないのですが、農本政治を行う限り、全ての私有財産が消滅してしまうのだということも、この本で十分に理解できます。マルクスの言う経済学はやはり理想論であって、特に農業を主産業とする発展途上国では学問的な理念など通用しないのですね。
しかし、何を理想にしようと、革命のためだと言って、人を殺害することなど許される訳がありません。オウムも、坂本弁護士一家虐殺は、オウムの唱える理想国家創造のためだというでしょう。こんな単純で明らかな事実・犯罪を「オウム事件の闇」などと呼ばないでほしいのです。オウム事件が「みんなの責任」だとする朝日新聞の論調がおかしいと思う私の認識もこれに尽きます。如何なる説明をしようとも、人を殺めることが理想実現の手段として許される訳がありません。「みんなの責任」などである訳がない。
朝日新聞の論調は、逆にオウム関係者を甘やかすことになりませんか?と言うのが私の結論なのです。
4 「神になりたかった男」は、聞取り風のルポルタージュになっておりますが、読み飽きません。そもそも医療は、私たちの生命に直結しています。徳田さんは「命は平等」を唱え、先ず休日・夜間の救急患者の受け入れから始めます。そして医療空白地域に病院の進出を図ります。当初は、病院建設費用等の金策、そして進出地域を管轄する旧態依然たる医師会との闘い、その後は、医療行政の是正など、拍手喝采を送りたくなります。病院通いが絶えない私自身の関心事なのですから、「命は平等」なるスローガンには泣けますね。
この本を読んで、医療に対して違った側面から見られるようになったと思います。近時の新聞報道でも、不足する医師・看護師の実態、医療機関の休廃止・破綻の増加、或いは医薬分業制度や医療保険制度等枚挙にいとまがない程です。
結論ですが、徳田さんやその周りにいる人たちにとって、徳田さんの戦いは、やはり「かなり長めの青春」なのでしょう。
公職選挙法違反位で目くじらはたてられないか?
皆さん、読んでご判断ください。
「オウム真理教死刑判決で思うこと」
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- 所感
朝日新聞の署名入り記事の結論は、「集団の暴走を、なぜ私たちは許してしまっていたのか」というように私たちの責任論にしております。確かに私たちは坂本堤弁護士を救えませんでした。でも私たちの責任論にするなら、もっと人間のありように迫るべきです。
2 朝日新聞は、自分達が報道と言う社会的な意義を感じられる業務に埋没していることの自覚が全くありません。恵まれた職業に胡坐をかいていませんかと言いたいのです。そもそも社会のためにありたいという人間の根源的な願望は、人間社会がある限り無くなることなどない自明のことです。オウム真理教事件は、そのような根源的な人間の願望に根差している一面があることに無自覚すぎると私は感じます。
我々の社会は、これからも常に不平等や不満が渦巻くはずです。そのような社会にあって、みんなのためにと、燃える若者は常に出てくるでしょう。そして皆が幸せになるためなら、その手段を選んでいる余裕はないという若者(否、年配者でもいい)が永遠に出続けるでしょう。その要望を満たすための種々の方法、或いはその手段論を検討するような視点を述べないで「みんなの責任」と言いぱっなしにするのは中途半端ではないでしょうか。
結局は、民主主義の在り方や、社会のゆがみをどのように糺すのかという方法論にまでさかのぼるでしょう。報道が「みんなの責任」というのなら、先ず報道自身が、今現在有している「心地よい使命」を自らに問い直しして、自らを検証してほしいのです。
オウム真理教事件を「みんなの責任」で締めくくるのなら、このような視点も示さない限り、今後も発生し続けるであろう似たような事件を終わりにすることなどできないと私は考えております。
3 いづれにしても、私は坂本堤弁護士とお付き合いしてきました。奥さんも一緒に東京クルーズの船でお話ししたことが昨日のように思い出されます。坂本堤弁護士一家虐殺が「みんなの責任」などと言われると本当に腹がたちます。無責任で中途半端な論調は許せません。
坂本弁護士とは司法研修所の同期で、同じ班で勉強した仲間です。彼は、同期の中でも、社会の役に立ちたいという意欲が分かる珍しい修習生であり、修習後の進路も定まっておりました。そのことを隠そうともしませんでしたが、しかし、人付き合いもよく、バランスの取れた男で、班の人気者でした。
弁護士になって3年目の冬の夜、飲みにいく道すがら、オウム真理教と信者やその家族との争いで、自分の身に危険が及ぶかもしれないと私に語り掛けてきました。びっくりした私は、心配になって色々聞こうとしましたが、彼は、深入りした話しを避けようとしていることが明白になりました。私も自重して、質問を止めましたが、それが彼と交わした最後の会話になりました。実は、私は、学生時代、社会のためには多少悪いことをしても許されるという思想にかぶれていましたから、どうしてしつこく聞かなかったのかと、当時、自分を責めたものです。
4 彼と彼の家族が行方不明になってから、私たち班の仲間は、彼の行方について何度か話し合いをしました。
オウム真理教の何らかの行為によることは全員異論がなかったと思います。一人の友人が、彼は、上九一色村の監禁部屋で洗脳されている最中ではないかとの意見を述べたこともありました。私は、機会をとらえて日弁連の偉い先生に次のようなお願いをしました。つまり、弁護士を組織して、上九一色村に大挙して押しかけましょう、坂本弁護士に会わせろと抗議行動をしましょうと迫ったこともあります。でも私は、彼が社会的な意義に燃えてオウム真理教を攻撃しているのですから、自分たちの正義を信じるオウムが監禁して転向させようというような迂遠な方法はとらないとも思っていました。そのせいもあってか、弁護士による上九一色村への集団抗議の提案は立ち消えになりました。
それよりも検察庁の偉い方に陳情に行こうという、元検察官であった同じ班の仲間の提案にのりました。私は、真実を明らかにするためにも、オウム真理教に対する強制捜査をするしか方法はないと思っておりました。彼と二人で、決定権を有しておられる検察官に会いに行きました。皇居を見下ろす本当に広々とした執務室で、同僚と一緒に上九一色村の強制捜査をお願いしました。でも坂本弁護士が所属する横浜の法律事務所が話題になり、しかも証拠があまりにも不足しているとのことで立ち消えになりました。
あまりにも残念です。
5 実際に書いた私の原稿に対し、皆様から注意がありました。当コラムが炎上するなどの上品でない話は避けたほうが良いとの提案です。
残念ですが訂正版を掲載いたします。
「不動産は放棄できない」の法整備
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- 不動産の放棄
実は、昨年、親しくさせていただいている国交省の高官の方から、「役所でも、来年には(本年になります)、“不動産を放棄できるようにするための法整備”の準備を進めております」との内々のお知らせをいただいておりました。この高官の方とは、3年以上前の「不動産は放棄できない」ことを纏めた学術雑誌の掲載を縁に、本当に親しくお付き合いさせていただいております。当時、お会いした際には、これ以外の所用があったことから、お気持ちを頂いたのみで、それ以上の意見の交換までなしえませんでした。
ところが週刊誌(経済関係)の元編集長で、現在有名新聞にて編集に携わっておられる方からお電話をいただき、事務所でお会いしたところ、“不動産を放棄できるようにするための法整備”について真剣に悩んでおられることが判明しました。
この論点は本当に難しいのです。正解などないでしょう。
新聞社という報道機関において、法立法の相当性や妥当性を論じられることは本当に難しい業務になります。編集者が私有財産制度の根源にまで遡り、真剣に悩んでおられるその姿勢に、長くお付き合いしてきた私は、本当に感じ入ってしまいました。でも同席させていただいた若い先生にはあまり面白くなかったと思います。私が、若い先生に「つまらなかったんだろ?」と聞いたところ「はい」という回答でした。不動産の放棄に通暁する私の事務所に所属していても面倒な論点なのです。
そこで、国交省及び編集者の方の悩みを少しでも知っていただくために、このコラムを急いで書かねばならないと決意しました。
2 本年6月2日、日本経済新聞において、政府が“所有者不明土地の把握や抑制の仕組みづくりを急ぐ”として報じております。そして最も難解な問題は“土地所有権の放棄やみなし制度の導入”であるとして、やさしいものから順に、表入りで報じております。
法整備の準備に関し、その全体像を知っていただくため、「実現のしやすさ」に関する項目を表に従って挙げておきましょう。先ず一番やさしいものは、�‥亠�官に変則型登記の所有者を特定する調査権限の付与、次に実現しやすいものは、��国土調査法改正で地籍整備を加速すること、次に�E效牢靄榾,硫�正、�ち蠡嚇亠�の義務化、�ゥ泪ぅ淵鵐弌爾覆匹播亠�簿と戸籍の情報を連携させ、所有者情報を把握することとしております。最後に、“土地所有権の放棄やみなし制度の導入”になるのです。
どうして最も難しいのですか?
この疑問に答える前に、私は弁護士ですから、日本弁護士連合会の会報に不満を感じている点を申し上げておきましょう。前項で当事務所の若い先生を題材にしてしまったことも、同じ傾向を感じているからなのであり、決して傷つける意図などありません。
日本弁護士連合会発行の本年5月1日付会報には「所有者不明土地問題に関するワーキンググループの設立経緯等」なる特集を組んで報じております。しかし、相続放棄或いは相続人不存在の論点が壁になっており、正面から「不動産の放棄」について論じるものではありません。相続財産管理人が国庫に帰属させる手続きの困難さ等、既に私のコラムでも書いておりますが、相続財産管理人や破産管財業務等に通じている者なら自明の話しです。現在、これらの論点に関係して法整備がなされようとしているのですから、一歩前進ではなく、最も難しい論点にも挑み、これからなされる法政策について論じてほしいのです。まさしく法政策に関与する意思を示すべきではないでしょうか?
国交省の方や、取材に走り回っておられる編集者の方の悩みに通じる議論を、是非して頂きたいと思ってしまうのです。
3 “土地所有権の放棄やみなし制度の導入”の何が難しいのでしょうか。本コラムは、“論じる場”にしたくありません。そこで、編集者の方の疑問を私なりに、勝手に解釈して書いてみましょう。「不動産の放棄が自由に認められることはないでしょう。いらない土地をどんどん国に帰属させることができるとすると、やはり国庫が破綻する。そもそも個人の私有財産制度が他人に迷惑をかけるものであってはなりません。でも漏れ聞くところによると、不動産の放棄には一定の対価が必要との結論になりそうです。賦課金でも名称はどうでもいいのですが、そのような制度になれば、国の要求する対価より安い金額で、外国人に譲渡することになってしまう、そしてそのようなビジネスが新たに出てくるとまで考えてしまうのですが・・」(多分、編集者の方は、国家の存亡に関わると思っておられるのでは・・)。
4 最後に不動産の放棄に関する珍しい私の経験を話してみましょう。
数年前のことですが、私は、ある財界の方に、不動産の放棄に関する個人責任に関し、常々持ち続けていた疑問を口にしました。その財界人は次のように話されました。「それなら、私は、所有者責任を果たすために、ホームレスの方に無償で譲渡しましょう。所有権移転に関する費用等は、所有者である私がすべて負担します。無償で取得されることになるホームレスの方は、縄文時代と同じく竪穴住居を作って生活されればいい」と言われてしまったのです。確かに費用は、今回放棄に付加される賦課金より安く、竪穴住居ですから、土地の掘り返しも、草屋根も人力で可能で、重機も不要です。発想に驚きました。
落ちが笑い話みたいで失礼します。
破産管財事件の依頼者は誰か?(宗教法人の破産)
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- 破産事件
そもそも、前回コラムの私の最大の関心は、借地権という法的権利を有しておられる借地人です。しかし、借地人と申しましても、破産法上の位置づけは借地料を払うだけの債務者でしかありません。考えなしの破産管財人なら、ガンガン借地料を回収して、それでも支払わない借地人には、法的権利がないのだから保護に値しないと切り捨てるだけで終わりです。
家庭裁判所に破産の申立てをお願いされた国の税務署の立場は、何十億という相続税の回収、即ち破産法上の債権者そのものの立場です。しかし、本件に関与された心ある役人の方の関心は、借地人の将来をも見据えた解決策を希望されていたように判断できます。それも、近時評判の「町づくり」という行政的な関心をも示されていたのです。大分昔のことなのですから、本当に驚いていただきたい。
開発業者の方から、当事務所の事務方が作成した、本件に関与する者の何枚もの地図的なチャ
ート(借地人の分布を示すもの)を高価で買い取りたいと申し出されたときには、本当に管財人冥利に尽きると思いました。開発業者にとって宝の山だったのです。
2 前回のコラムで、破産法上における「債権者」という概念については、破産法第1条の全文を紹介して、法的権利者として第一位に考慮されるべきものであることを示しました。
債権者と言っても種々です。典型的な破産業務では、通常のビジネスで失敗した破産者から取引代金を回収しなければならない債権者が思い出されます。また通常の取引でない損害賠償請求もありますし、税金や離婚の際に生じる養育料などもあって、本当に種々様々です。
詐欺的取引の被害者という事例もあります。弁護士が被害者を集めた被害者救済の会のような破産事件もありました。私が、裁判所から任された被害者の会の事件では、弁護団の究明に耐え切れず、詐欺取引に走った会社が逆に破産の申立てをした事例もありました。
通常、弁護団が破産の申立てを行います。しかし、この事案では、弁護団が法的な手段を含め、種々の方法で会社を追い込んでいたようです。確かに、会社の末期には、目の見えない老人にファックス機を何台も売りつけるなど常軌を逸した商売をしておりました。
被害者の会は、裁判所が任命した破産管財人である私に協力的ではありませんでした。被害者の会が、私に面会を申し入れてきたのは2週間以上経過した後ですから、この被害者の会を軽蔑したくなる私の気持ちを分かっていただけるでしょう。2週間もあれば、できる破産管財人は、本店及び支店3カ所、倉庫程度であれば現状を押さえ、在庫等の商品の換価についても、遅くとも目途がたってきている段階です。
弁護団は、動産執行類似の法的ではない行動もされていたのでしょう。破産管財人の私達が倉庫に入ろうとすると倉庫管理業者の弁護士が“入庫を実力で阻止します”という訳の分からない抗議をしてきました(安心してください。破産管財人の私は“ワクワクして”、「警察に連絡するぞ」と言いながらドンドン入庫しました。この時は、若い肉体派の当事務所の先生も活躍してくれました)。
弁護団の弁護士先生は、女性先生を中心に来所されましたが、最初は批判的な姿勢でした。私の経過説明で批判のトーンが徐々にダウンしたことが不思議で、昨日のことのように思い出します。
3 既に30年近く昔のことになりますが、新興宗教法人の破産管財人になって財産整理をした経験もあります。この破産管財事件では通常想像できない経験をしました。この事件は、弁護団の先生方が大変に活躍されておりました。破産申立て時には、一般の債権者に対する支払いは終わり、何億もの現金をどう精算するかという段階にありました。
宗教法人の解散ですが、理由があって破産の道しかありませんでした。
信者の方の帰依により浄財が寄付され、通常の財産整理をしても残存する現金があまりにも多額でした。詳細を述べることはできません。当時の関係者の方の「心の平安」に影響することが予想されます。概略にとどめますが、関係者の皆様方の誠意ある対応及び破産事件の結末については、ご紹介するに値すると信じます。
先ずは、都庁や法務省等に問い合わせを行い、残財産を宗教法人の構成員である信者の皆様に配当することになりました。住所移転等により裁判所の破産通知書がつかないため住民票だけでも500通は取り寄せしました。土曜日及び日曜日は、事務所の数メートルの廊下を信者の方への連絡票で埋め尽くされました。電話連絡のために、特別チームを作って対応しました。
これほど頑張って連絡したのに、何と!殆どの方が信仰を理由にお金を受け取ることを拒否されたのです。本当に驚きました。いろいろ書きたいのですが、ここらへんで辞めさせていただきます。
4 宗教法人の構成員である信者の方々に受け取っていただけないとなると、本件破産管財事件は終わりになりません。破産事件ではありえない残現金の処理に煩悶の日々が続きました。弁護団の先生方の報酬か、破産管財人の報酬とするには高額すぎるし、あまりにも下品です。
再度の役所巡りの結果、当時、裁判所に出向されている大蔵省の役人の方とお話しして国庫に納めることで一件落着しました。
破産事件になるまでの経過は複雑ですが、結末は、本当に爽やかな話で終わるのです。
破産管財事件の依頼者は誰か?(その1)
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- 破産事件
- ここ何回かは、法的紛争に関して「弁護士が寄り添う」ことの意味について考えてきました。その続き物のコラムとして「破産管財事件では誰に寄り添うのか」と考えますと、紹介することが多すぎると直ちに分かります。題をつけた最初のところで、(その1)としてしまったほどなのです。
本コラムでも破産事件については幾度も紹介してきました。個別事案の紹介では、プライバシーに関係する詳細については話しておりません。しかし、それでも本コラムに関心を寄せていただいている方からは、破産事件のコラムも大変面白いとお聞きしました。
破産管財事件は、まさしく「弁護士が寄り添う」ことの意味について大変複雑な様相を呈するのです。種々の事件を処理しておりますと、私という弁護士は“少し変わり者なのか?”とも思ってしまいます。
- 弁護士のコラムですから、寄り添いの相手を考えるにも、やはり法律から考えねばなりま せん。破産法の条文第一条では、目的として次のように規定しております。「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」
先ず、上記条文で、寄り添わねばならない人たちが網羅されていることに驚いてほしいのです。破産法が配慮するべき人は、第一に債権者です。そして第二に債務者(ここでは破産者)。債務者の経済生活の再生の機会の確保が必要であるとされ、破産者に対する配慮を要請しております。でも「債権者その他の利害関係人の利害」と定められていることに驚いてください。 つまり「その他の利害関係人の利害」を明確に認識して対応しなければならないのです。破産の事例に接しておりますと、かかる認識のない破産管財人・弁護士はかなりおられます。
- 今回紹介する事件は、相続財産管理人が破産の申立てをされた破産管財事件です。破産管 財人として任命された私は、記録を取り寄せ、事案を検討して直ちに破産申立人である相続財産管理人の弁護士をお呼びしました。私よりかなり高齢の女性弁護士でしたが、会った最初で、種々配慮をされ、思いやりのある方だと好印象を持ちました。
事案も的確に説明されましたが、「事前に、大手町に行って国税からのお願いや説明を聞いてください。国税から強くお願いされています」と言われたのには驚きました。更に「調査の前に訪問されるのがいいと思います。本事案の特殊性もお分かりいただけるでしょう。」とのお願いでした。
大手町合同庁舎では、偉い役人の人が部下を連れて面会され、大変丁寧に応対していただきました。「本件は、東京大空襲の際、焼夷弾から逃れるため、川を渡って田畑に仮住まい小屋を建ててしまい、戦後、バラックを建てた人たちを借地人として取り扱ったことから、今回最終処理となる公売予定案件です。国税はもとより都税事務所も大変困っております」と話されたのには驚きました。「公売処分等をしたくとも、この場所に住む方々は、国に反感を持っておられ、十分な調査ができません」と話されたのには更に驚きました。その後、街づくりに関する貴重な話もありました。私は、まさしく、国税を含む行政の街づくりも利害関係があると思いました。私は、調査した結果について報告することを約束しました。帰途、エレベーターまでお見送りいただいたのは、官庁に来て初めての経験でした。
- 翌日から一週間程は現場巡りです。事務所からもベテラン二人を動員し、三人で広範囲の調査活動に入りました。
驚きました。都心のど真ん中なのに救急車も入れません。このような状況を打破したいと夢を語られた国税の高官の言葉通りのひどさです。座敷にいるお婆様が隣のうちのお婆様と道路を挟んで話しているのですが、道があまりにも狭くて誰も通れません。(私はどんどん入ります)。
このような方達が、国税や都税の調査官に対し、「国は、我々に何をしてくれたのか?」と言って調査に応じず、しかも殴りかかる人までいると聞いておりましたが、その通りです。私たち三人の聞き込みに対して、私たちを「詐欺師だ、詐欺師だ」と喚きながら、自転車でずっと追いかけまわしていた老人もいました。(驚きませんか?)
戦後に始まり、救急車も入れない場所で生活される方々こそ、破産法でいう利害関係人以外の何者でもありません。私は、この人達を、本件の最大の利害関係人であると位置付けました。確かに、この人たちは、借地料を滞納する借地人かもしれませんが、借地料回収と別途の配慮も必要です。その後、私は、このような人達を地域ごとに集め、将来の展開を説明しました。即ち、不動産業者は、喉から手が出るほど皆様の土地を欲しがっている、この機会を逃すな。皆様が生活されている土地は、戦後初めての急展開となる。皆様が団結し、協力して対処しないと、良い結果にならない等と演説しました。
- 更に現場廻りを続けますと、壊れた建物も数多く存在し、強風が吹けば負傷者が出かねない建物もかなり発見しました。
これらの不動産は、相続財産管理人の弁護士名義で登記されています。崩壊寸前の不動産が処理されず残ってしまった場合には、登記名義人である女性弁護士の管理責任すら生じかねません(私のコラム、「不動産は放棄できない」を読んでくださいね)。私は、相続財産管理人の先生も利害関係人と認識して破産管財業務に邁進しました。 (次回に続く)
粉飾事件の何が複雑か
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- 株主総会
- 粉飾事件の紹介が遅くなりました。
粉飾とは何かというところから始めましょう。
粉飾とは、不正な会計処理によって、故意に貸借対照表や損益決算書等を操作して、企業の財務状況や経営状況を実際よりも良く見せる操作を言うとされています。帳簿上の資産を増やすことが簡単な粉飾ですが、資産項目といっても種々ありますし、これらを説明していては面白い話になりません。例の東芝は、種々の資産項目をいじりました。特に、買収したアメリカの原子力会社「のれん代」を劇的に増加させたことは有名です。そもそも、東芝が粉飾に走る契機になったのは、バイセル取引と言われております。自分が発注する受託製造業者に原材料を高く売るなどの操作をしたとされます。
粉飾の実態が暴露されると上場企業の社会的信用は失墜し、株価も暴落します。社会が許すわけもありませんが、そもそも犯罪になります。通常、実行行為者が特別背任罪になることも常識の範疇です。 - 最初の大型粉飾事件に遭遇することになったのは、野沢社長が号泣して記者会見した天下の「山一證券」です。私は、会社の顧問弁護士としてではなく、第三者的な立場で調査をすることになりました。
20年経過しておりますが、私が受任した事件の内容は述べられません。その詳細を書きますと、関係者に不快に思われるのは嫌だからです。しかし、20年前、私が、実態調査のために、山一証券の本社に行ったことは昨日のように覚えています。茅場町の先、雪の積もった霊岸橋 を渡った際の記憶があまりにも鮮明なのです。山一證券は、当時、四大証券会社の一社と言われておりましたが、粉飾事件等で揺れる本社では何の威厳もなく、会社の顧問弁護士に同情したほどです。つまり、寄り添うべき依頼者によって、自分の立場が全く違ってしまうという認識を痛いほど感じました。
前回のコラムでもご紹介しましたが、粉飾と私との関わりは、会社の利益と相反する可能性のある相談、つまり粉飾を実行した従業員周辺からの相談から始まりました。会社のためを思いながらも、会社利益と鋭く対立する場面が必ず出てまいります。 - その後、外部委員として粉飾に関与する経験もしました。殆どが顧問先の粉飾で、数年前には、会社再建委員という外部委員に任命されたこともあります(近時、税務署からこの外部委員の説明を求められ、驚きました)。
経験して分かったことは、純粋な第三者委員会の委員は自分に向いていないということです。第三者委員会の委員と言えば聞こえはいいのですが、職人のように調べまくるのが中心的な作業で、現実に向き合う人がいないのです。検事のように強制調査権がある訳でもなく、しかも社会正義というのも中途半端です。想像される以上に地味な仕事です。 - 監査役の立場での経験もありますが、感想は複雑です。今流行りの「忖度」も分かりますが、それ以上に監査役の責任は難しい。私は、現在上場企業の監査役を複数勤めておりますが、現場で隠そうとして意図的に行っている粉飾を見つけることは本当に困難です。こんな事件でも役員に対する非難は浴びせられ、法的問題に発展するのです。
監査役では、楽しい経験もしております。30年以上前、ある弁護士先生に大変お世話になりましたが、10数年前、上場企業の監査役までご紹介いただくほど可愛がっていただいております。この監査役は今も続いており、毎年、顧問弁護士である先生と株主総会の仕事を一緒にやらせていただいております。こんな嬉しいことはありません。 - 粉飾事件の責任の根は、何処にあるのか考えてみましょう。
この問題は、本など読んで研究していただかなくとも、容易に想像できることです。オリンパス事件を書いたドキュメント「ザ・粉食(粉飾に群がる闇の人々)」(山口義正著 講談社 α文庫)や「東芝粉飾の原点(内部告発が暴いた闇)」(小笠原啓著 日経BP社)など著名な 粉飾ドキュメントを読みますと、会社経営者が自ら粉飾に走っている実態が暴かれています。
両ドキュメントでは、奇しくも内部告発で粉飾が暴かれていくのですが、そもそも内部告発者がいないと粉飾の事実はなかなか判明しないことも証明しております。
でも、両者の社長が、自らの名誉のためだけで粉飾に走るのは想像を越えます。通常は、地位だけでなく、お金や複雑な要因が絡まって行われるものです。第三者委員会の報告書や近時特集された日経新聞の記事からしても間違いがないようですが・・。この社長の弁護をさせられる弁護士にも寄り添いがなければなりません。この場合の業務は、会社に対する責任、株主に対する責任などの民事責任だけにはとどまりません。会社の顧問と違った立場での弁護活動が要求されています。 - 粉飾を発見することは本当に難しいと思います。公認会計士である井端和男先生が書かれている有名な専門書「最近の粉飾―その実態と発見法」によっても、その難しさはよく分かります。特に、「極地型」と言う言葉で書かれている子会社や関連会社を使った粉飾、或いは本社から遠く離れた支店等の出先機関になると、粉飾の実態が暴露されるまでに相当な時間を要することは必然です。
- 最後に、粉飾の防止策ですが、顧問弁護士の仕事として重要です。
先ずコンプライアンス研修等を工夫し、会社のカルチャー造りが大切です。社員の自覚を高める工夫ですね。このような工夫を日々の業務に取り入れ、弁護士など専門家を外部相談窓口に選任することです。2006年4月に施工された公益通報者保護法を下地にした内部通報制度を工夫する必要もあります。残念ながらページが尽きました。



