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新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 最新エントリー

1. 平成30年1月26日、大手仮想通貨取引所であるコインチェックから、5億2300万XEM(580億円相当と報道されておりました。NEMの通貨記号はXEMです。)が不正に流出したとの報道がなされました。
該当するNEM(ネム)の保有者は約26万人いること、コインチェックが約463億円という巨額の返金を自己資金で実施すると発表したことからも、仮想通貨の凄まじさを感じる出来事です。
補償時期については検討中のようですし、流出したNEM(ネム)の行方はどうなるのか等、不透明な部分はありますが、ここでは仮想通貨に関して被害に遭った場合の法律論を検討してみたいと思います。
 
2. まず、顧客が仮想通貨取引所に仮想通貨を預けている場合が一般的のようです。
そのような場合、顧客には、仮想通貨取引所に対して、仮想通貨の返還を求める権利があると考えることができます。
そのため、仮想通貨取引所が顧客に対して仮想通貨を返還することが不能になった場合、顧客は仮想通貨取引所に対して損害賠償請求することができると判断できます。
コインチェックがNEM(ネム)を返還することができない場合、顧客は損害賠償請求できると考えることが可能なわけです。
 
3. この点について、MTGOX(マウントゴックス)事件の際、「ビットコインについてその所有権を基礎とする取戻権を行使することはできない」と判断した裁判例(東京地裁平成27年8月5日判決)を根拠に、仮想通貨取引所に対して仮想通貨の返還を求めることはできないという意見もあるようですが、仮想通貨取引所が破産手続を取っていない状態であれば、事情が異なると考えることができます。
上記判決は、仮想通貨取引所が破産になった場合でも破産手続によらずにビットコインを取り戻すことができるかという争点について、「ビットコインは所有権の客体にならない」ことを理由に否定したにすぎない判決と判断できるからです。
 
4. 次に、事件発覚後に取引が停止してしまい、取引が停止している最中に仮想通貨の価格が下落してしまった場合に損害賠償請求する事例を検討してみます。
この点について、例えば、コインチェックの利用規約には、ハッキングによって資産が盗難された場合にはサービスの利用の全部又は一部を停止又は中断することができ、その場合に顧客に生じた損害については一切の責任を負わないという条文があります。
もっとも、仮に消費者契約法が適用される場合、このような条文は、消費者契約法8条1項1号により、無効になると判断できる可能性があります。事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除する条項は無効になると規定されているからです。
 
5. その場合、仮想通貨取引所に、発生した損害との間で相当因果関係が認められる債務不履行があるかどうかが問題になります。
資金決済に関する法律(いわゆる資金決済法)63条の8には、「仮想通貨交換業者は、内閣府令で定めるところにより、仮想通貨交換業に係る情報の漏えい、滅失又は毀損の防止その他の当該情報の安全管理のために必要な措置を講じなければならない。」と規定されていますが、具体的にどのような措置を講じるべきなのかは不明です。
ネム財団副代表によると、コインチェックがマルチシグ(複数の署名)を実行していなかったのが良くなかったということのようですが、マルチシグを実行していなかったから本件が起きたといえるのかは今のところ不明です。
もっとも、コインチェックのホームページを見ると、コインチェックは、MTGOX(マウントゴックス)のコールドウォレットの管理について完全なオフライン状態で行われていなかったため安全性が確保されていなかったこと、そのためコインチェックでは預り金のうち流動しない分に関しては秘密鍵をインターネットから完全に物理的に隔離された状態で保管しているという旨の記載をしています。
ビットコインに限った記載にも見えますので微妙ではありますが、コインチェックが遵守すると記載しているJADAのガイドラインには「コールドウォレットの整備」と記載されています。
コインチェックはNEM(ネム)についてコールドウォレットを実施していなかったということのようですので、この点について債務不履行(要するに約束違反のことです)になると判断することも可能かもしれません。
 
6. いずれにしましても、仮想通貨が盛り上がる中でこのような事件が起きてしまったことは非常に残念です。
   約26万人の方が被害に遭われているということのようですので、本コラムが、少しでも法律論を理解するための材料となれると幸いです。

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1. 前回のコラムの終わりに、次回は「粉飾決算」を題材にして事件の複雑な側面を紹介し、会社事件が弁護士の優劣を判断する側面も出てくることを書きたいと思って結びました。
しかし、有期労働契約者が無期の労働契約に転換することに関し、昨年末より突然、多数の相談を受けるようになりました。本年4月より適用される予定の、有期契約労働者による「期間の定めのない無期契約」への転換申し込み労働者が出てくることに対する相談です。
平成24年、法改正によって労働契約法第18条が新設されました。有期契約の労働者が、本年4月1日には、5年間ルールの適用により期間の定めのない労働契約に変じることを心配されての相談であります。その期限が迫っておりますので、最近お受けするご相談等を紹介し、今回のコラムで取り上げさせていただきます。
 
2. ご相談の内容は、多種多様であります。
   去年の相談の多くは、有期契約者にはパートタイマーの女性も入りますか?というような法律の入口の相談が多かったのです。
   それが、短時間労働者が正社員と同じ労働条件になってしまうのですか?というように、多少契約の内容に踏み込んだ質問に変化し、最近は、正社員と比較した上での、無期労働者に変化した際の労働条件の内容に関する相談に変わってきました。  しかも今年になってからは更に踏み込んだ相談になっております。無期契約の社員になってもらってもいいが、では正社員と同じ定年の適用はあるのか、従来予定になかった配置転換はできるのかというように具体的な相談になり、就業規則の新設に発展した相談も出てきております。
   そして急成長をしている上場企業からは、まさしく事業譲渡を受ける際のM&Aの相談を受けました。M&Aとは、企業の合併・買収に関係する相談で、弁護士にとっては「高値の花」の相談のように思われております(当事務所は報酬形態がタイムチャージ制度ではありませんので、それ程ありがたくもありませんが・・)。つまり事業譲渡を受ける際に、有期契約労働者に対する使用者の地位に関する相談で、労働契約法第18条を回避したいという相談です(回答自体はそんなに難しくもありません)。
   煮詰まった質問がくるようになってきたという感想です。
 
3. 就業規則の変更・新設や労働組合との協議等によって解決させるかどうかに限らず、事前に準備することは非常に多いのです。しかも有期契約社員の種類もびっくりするほどあります。しかも、会社によって当該種々の社員の必要性も様々であり、一律の解決案は出せません。
でも、放置状態のまま推移するなら、本年3月、或は4月になって、有期契約の更新自体をしないと決意する会社や、事前に有期契約社員を解雇する会社が頻出することは明白であります。有期契約社員が、景気調節弁の役割を担っている場合、或は低賃金での労働条件となっている場合に、上記結論を採用せざるをえないなら、いずれ訴訟になって敗訴する可能性は高いと言えるでしょう。その際、会社の損失は計り知れないものになると推測されます。
このような泥沼状況を回避するためにも、有期契約の更新拒絶が否定された有名な東芝柳町工場事件を紹介しておきます。昭和49年のずいぶん昔の判決ですが、労働法の勉強をする者にとっては常識に属する事件であります。すなわち「雇用期間2カ月の労働契約が五回乃至二三回にわたって更新を重ねた場合、実質上期間の定めのない契約が存在し、その雇止めは解雇の意思表示に当たるというべく、経済事情の変動等特段の事情の存しない限り、期間満了を理由に雇止めをすることは、信義則上許されない」とされております。労働契約法第19条は、有期労働契約の更新について更に厳格に規定しました。上記判例は古いのです。
会社経営者の皆様には、もっと根本的な問題を指摘しておきましょう。今回取り上げた労働契約法第18条の無期転換ルールと共に規定された第20条ですが、その条文は「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」と名付けられております。条文の引用は煩瑣ですから要約しますが、要は、期間の定めのある労働者と正規の社員との労働条件に関し、それら社員の間で不合理な労働条件の相違を認めないというものです。短時間労働社員やパートタイマーなどと名付けされた御社の契約社員に対する労働条件を、正規社員のそれと比較してください。
 
4. 労働の現場が大きく舵を切って変わろうとしていることは、新聞等でも報じられております。その典型は、安倍総理大臣の「働き方改革実現会議」でもあります。働き方改革の主要なテーマは、『同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善』なのです。
労働人口の減少、高齢者や女性の働き方改革、或は外国人労働者、人件費の高騰等切り込み口は多種多様ですが、労働の現場で経営者と共に悩む我が事務所においても、『働き方改革実行計画』に負けないタイムスケジュールをもって会社、否、社会に貢献することが明日への希望であります。
当事務所は、経営者の方から残業代請求事件や雇用に関係する事件を多数任されてきました。更に、当事務所は、副所長が中心となって、社会保険労務士の先生ともタッグを組んでゼミや合同法律相談に取り組んでおります。社員の種類が数種類以上もある会社では、日常的なフォローなくして将来成長を続ける会社たり得ないと判断し、専門家チームを作って会社を支援しております。
未経験の、このターニングポイントを乗り越え、社員のやる気を十分に引き出す会社になっていただき、共に成長いたしましょう。

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1.  平成28年12月に下請法(正確には「下請代金支払遅延等防止法」)の運用基準が改正されてから既に1年が経過しますが、まだ浸透しきっているとは言えないようです。
   大きな会社(親事業者)からも中小企業(下請事業者)からも様々なご相談があります。
   そこで、本コラムにおいては、下請法について説明したいと思います。
 
2.  下請法は、独占禁止法を補完する法律と言われています。
   もともと優越的な地位を濫用する行為を取り締まっている独占禁止法という法律がありますが、独占禁止法は様々な事情を総合的に考慮して違法かどうかを判断することになるため、判断が容易ではありません。
そこで、親事業者と下請事業者の資本金を形式的に比較し、下記表のような状況にある場合には、下請法が適用されることとし、いわゆる「下請けいじめ」を迅速かつ効率的に取り締まれるようにしたものが下請法です。
 
3.  平成28年12月に下請法の運用基準が改正された理由は、アベノミクスです。“アベノミクスによって一定の恩恵を受けたのは大企業だけで、中小企業は恩恵を受けていない”という批判を受け、中小企業(下請事業者)を保護することにしたわけです。
   そのため、改正内容は、中小企業(下請事業者)に有利な内容が多く、大きな会社(親事業者)が今までの現場のやり方を続けていると、違法として処罰される事柄も多くなっています(公正取引委員会のホームページに会社名と勧告内容が公表されることもあります)。
   具体的には、例えば、大きな会社(親事業者)が自らのコスト削減目標を達成するため、中小企業(下請事業者)の言い分をしっかり聞かずに下請代金を定めた場合、違法になります。
   中小企業(下請事業者)から大きな会社(親事業者)に対して、原材料や労務費などのコスト高騰による単価の引き上げの要請があったにもかかわらず、十分な協議をせずに単価を据え置いた場合も違法になります。
   また、下請事業者に製造を委託している品物について、量産が終了し、補給品としてわずかに発注するだけで発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず、一方的に、大量発注時の低い単価のままにしている場合も違法です。
要するに、下請法の運用基準を改正することによって、大きな会社(親事業者)が一方的に価格を決定している現状を見直したい、及び、大きな会社(親事業者)のコストを中小企業(下請事業者)に押し付けている現状を見直したいしたいという国の考えを理解して頂けると思います。
その他にも、国は、支払条件を改善したいとも考えています。下請法の運用基準と同時に「振興基準」というものも改正されているのですが、その中には、手形サイトは120日(繊維業においては90日)を超えてはならないことは当然として、将来的に60日以内とするよう努める、とされています。
振興基準独自の内容については、今すぐできていないからと言って直ちに違法として処罰の対象になるわけではありませんが、注意が必要です。
 
4.  下請法の運用基準を改正することによって中小企業(下請事業者)の地位を向上させようという試みは、国策と言って良いものです。
大きな会社(親事業者)からすれば、「下請けいじめ」のレッテルを貼られて評判を落とすのは避けたいところです。とはいえ、中小企業(下請事業者)に問題があるにもかかわらず減額や返品ができないのでは困ってしまいます。下請法違反だという疑いをかけられないように適法に減額や返品を行うことは、それほど容易なことではありません。必ず弁護士に相談すべきです。
中小企業(下請事業者)からすれば、大きな会社(親事業者)との間に上下関係があるわけですからなかなか意見を言えないものの、絶対に譲れない一線というのもあるはずです。何でもかんでも自分たちで負担しなければならず、その挙句に一方的に取引を終わらせられてしまうようなこともあります。そのような場合に備えて準備をする必要性は低くありません。この準備についても必ず弁護士に相談すべきです。 
当事務所は、大きな会社(親事業者)からの相談に対しても、中小企業(下請事業者)からの相談に対しても、最も依頼者の方にとって有利になるようなお話しをさせて頂いておりますので、是非一度ご相談ください。

 

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1. 大林組の会社犯罪が毎日のように報道されております。私の叔父が、戦前、日本大学建築学科卒業後、大林組で働いていたこともあって関心をもって見ております。大林組は、10年以上の昔、談合事件との決別宣言まで出したのに不思議だなと、その経緯を見ております。
今回の事件は、リニア中央新幹線関連工事を巡る偽計入札妨害事件とのことです。この犯罪は、談合罪と同じ内容をもつものですが、発注者がJR東海という東海旅客鉄道株式会社という一部上場企業であり、公的団体でないことから、刑法第96条の3にいう「競売等妨害事件」として立件しているのであろうと推測されます。
私も昔、ゼネコンの談合事件を受任したことがあります。スーパーゼネコンを含む100社に及ぶ談合事件で、審判事件は、公正取引委員会が入るビルの最上階の大講堂で行われました。何回も続く審判手続き中、きちんとした発言及び書面が評価されたのか、我々は後ろの席から、どんどん前の席に移動を命じられ、スーパーゼネコンと並ぶ席に移された後、最後は審判長の面前の席に移動させられました。また、審判の山場では、大手弁護士事務所を差し置き、盟友比佐守男弁護士と私が、新聞記者から追っかけをされるほどになりました。でも活躍したなどという気持ちは全くありません。依頼者の気持ちに寄り添ったのみです。
上記事件も、今回の大林組の事件も、会社犯罪の典型例であります。 
別に珍しいことではありませんが、当事務所も新しい弁護士を迎えました。せっかくなら、弁護士業務とは何なのか、弁護士道とは何なのかを考えるきっかけになればいいと思いました。従って、今回から暫くの間、相手方としてではなく、そもそも依頼者内部で対立せざるをえない事件を紹介してみたいと思います。
つまり、弁護士は、依頼者が誰であろうと、依頼者の内部で全く逆の立場にたって物事を考える必要が生じる事件を紹介し、弁護士業務とは何なのかを問いかけしてみたいと考えました。「依頼を受けた人に寄り添うとは何か・・」が考えられるようなコラムに挑戦します。

2.  実は、上記事件の直後、スーパーゼネコンで、高い地位(○○支店長)にある友人から、有名な談合事件の相談を受けました。その友人は既に他界しているため、このコラムを書けるのですが、当時の超有名事件における私の弁護士業務を評価して相談に来てくれたと思っていたら、実は、会社における自分の身の保全でした。依頼者には、会社利益に相反する助言しかできないことがすぐに分かりました。
     その友人には、談合をした部下から事情を聞き取り、友人に不利益が及ぶかどうか確認させました。報告書など公的な書面は当然として、パソコン、電話受信記録等の一切を調査しました。その結果、会社の体質も含め、会社が友人を犠牲者にして処理する可能性が非常に高いと判断されました。友人は、会社責任者として、会社に対する被害を最小限に抑えたいという気持ちと、自分が犯罪者にされるであろうという会社の在り方に対する批判的な認識との間で揺れておりました。刑事罰も怖いですが、談合罪の課徴金も高いのです。課徴金は、売上金の10%から数%ですから(今回の大林組の契約額は約90億円ですから、課徴金は数億になる可能性がある)大変な額になります(この具体的な金額を書いたら、私なら、すぐに何の事件か推測できます)。
     そもそも前項にて紹介した私の事件では、地方公共団体の職員が一人自殺をし、何人かが逮捕されているのです(超巨大事件では、自殺者が出ることは珍しくありません。故に事件名は 推測できないはずです)。私は、無料にて、何回も彼と相談しました。会社が依頼している大手の法律事務所は信じるな。大手事務所弁護士は「平然と君を裏切るぞ」と具体例を教えました。最後に、私と打合をせした以外のことはしないと約束させました。結果、友人が危機を乗り切ったことは言うまでもありません。今になって思うことは、大学時代の共通の友人である奥さんにこの話をしてもよかったということです。
 
3. 受任に至らなかったとはいえ、事件の詳細を本コラムで書くことができない事件も経験しております。
     自殺した社員の家族の方から、談合事件で悩んでいた子供が自殺してしまったという相談を受けたことがあります。事案を詳細に聞き取り、当人の日記帳やメモを精査しました。私の法的な結論は、パワーハラスメント事件と認定されると申し上げました。当然、私は家族に寄り添いますから、談合事件での責任を彼一人にしわ寄せする会社は許せないという結論をもって、今後の進行スケジュールをお教えしました。
       つまり内容証明による会社に対する責任追求、同時に報道に対しての公表及び記者会見、そして労働基準監督署及び刑事の告訴、損害賠償請求訴訟等です。私の意見が会社社長に伝わり、社長から家族に、直に謝罪がありました。家族は、会社を思う息子の日記帳を全員で何回も読まれたそうです。会社の対応が真摯なものに改まったこともあり、このまま終わりにされることに落ち着きました。直後、家族の方々がお礼に見えられ、私の家族に寄り添う気持ちが、こんな意外な結論になったと申されました。私には「こんな意外な結論」という言葉が報酬になりました。
 
4. 今後のコラムの流れを、次のように考えております。次回は、やはり会社犯罪「粉飾事件」を紹介します。その後は相続財産管理人申立の破産管財事件です。裁判所が依頼者ですが、真の依頼者は誰なのでしょうか。そして、離婚事件の際、弁護士が年金分割の申立てを行わず2年が経過してしまったという事件です。内部の敵に弁護士が登場するという順番で、本コラムを書きたいと考えております。

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1. これまで宇宙に関係するコラムを何度か書いてきました。でも、宇宙の話しに深入りすると、人類のためという社会的意義だけでなく、途方もない話に呆れたり、逆に、暗くなったりします。
   今回は、かなり落ち込んだ宇宙関係の本を紹介しましょう。今年の2月に発行された本で、夏に読んで、立ち直る迄に大分時間がかかりました。題からしてショッキングです。「宇宙に終わりはあるのか」(吉田伸夫著 講談社)と題されております。私たちの地球は12億年後、灼熱地獄になって人類が住めなくなるだけでなく、50億年程度で(40億年という本もある)、私たちの生存する天の川銀河は、アンドロメダ銀河と衝突して合体するらしいのです(ところで今年のノーベル物理学賞受賞者は、ブラックホールの合体により生じた重力波を初めて観測した研究者3名でしたね)。
   そもそも遠い将来、ブラックホールに銀河が飲み込まれる銀河崩壊時代が到来し、その後、物質消滅時代を迎えることになるというのです。これを無の世界といい、猛烈な大質量を誇るブラックホールですら、ホーキングの言う熱放射で蒸発するというのですから、先ずは信じられません。この宇宙の終末を「ビッグウィンパー時代」と言うのだそうです。ビッグウィンパーの時代では、新たな構造形成の可能性が全くなく、これを宇宙の終末と表現されています。
 
2.  宇宙の始まりを「ビッグバン」ということに習って、宇宙の終わりも「ビッグ」を最初に付けるのが宇宙論研究者の習わしらしいです。ところで「ウィンパー」と言うのは「すすり泣き」という意味なのだそうですが(「weeper」が「泣く人」なのは分かりますが・・誤記じゃないの?)、イギリスの詩人T・S・エリオットは“すすり泣きと共に”「これが世界の終わり方だ」と歌っているらしいのです。学術的な話と一緒に、こんな詩的な話を絡められると誰しも落ち込みます。
   今年12月に弁護士として当事務所に来てくれる室賀さんと食事をした際、宇宙終末の「すすり泣き」の話をしたところ、直ぐに分かってくれました。当時は、宇宙論の話をするのが辛い時期でしたので、室賀さん、中途半端でごめんなさい。
    仕方がないので、ホーキングが量子宇宙論でも有名なことから、ホーキングが関係しない量子論の本を漁って読みまくりました。笑ってしまいます。タイムトラベルも可能であるとか、パラレルワールドが存在するとか奇想天外な話のオンパレードです。しかも、ある量子論の本では「量子論を真に理解している人は一人もいないだろう」などと堂々と書くことができる学問領域なのです。少しの事実で次々と想像を膨らませる学問なのですね。
   つまり量子宇宙論は、これからの学問だと分かっただけでも気が楽になりました。
 
3. 私は、平成21年に発行されているサイモン・シンの「宇宙創成」(上下 新潮文庫)もかなり前に読んでいます。同書は、ピタゴラスの座右の銘である“万物は数なり”で表されるように、実に科学的で説得力のある書物でした。当然、私は、宇宙を知るためには事実に基づく科学的方法によって探求するという姿勢に共感していたのです。
   私は、常々「弁護士道の極意」は、事実の掘り起しにあるのだから「宇宙創成」の書にも通じるなどと話して、“読むといいよ”などと勧めておりました。今回分かったことは、宇宙論も、原子や電子や量子等の世界に入ると、分からないことがあまりにも多く、現在判明する僅かな事実から想像力を駆使して、量子論と言う学問を進歩させてきたのだということが判りました。本当に科学の進歩は凄まじく、宇宙の実態が、多少でも理解できる時代として、リーチがかかる少し前ということなのですね。
 
4. 新宿の紀伊国屋書店4階に行き、量子論について書かれた本を探しに行きました。驚きました。棚には、すごい種類の本が大量に並べてあるのです(皆さん、勉強されているのですね)。新聞でも、“弁護士の皆さんが宇宙に関係する新しい仕事を探している”というような紹介記 事も何度か読んでおりますが、量子論まで勉強しないといけないとは考えておりませんでした (新聞による宇宙部会の先生方、当然そこまで研究されているのでしょうね)。
   そこで、「図解 量子論がみるみるわかる本」(佐藤勝彦著 PHP研究所発行)を紹介しますが、本当に、安直に量子論を理解するいい入門書です。10次元の世界とか、パラレルワールドとか、タイムトラベルとか出てきますが、まだ我慢ができます。だって、納得して読めることに意味があると思うからです。
 
5. 宇宙ビジネスの民間参入が、日々新聞を賑わしております。弁護士も新たな世界に参入して、独立独歩の業態に変化させたいと腐心されておられるのでしょうが、そんなに甘いものではないと考えております。私は、20年程前、日本の草分け的な宇宙開発を担った会社の顧問業務をしながら、最後は破産させざるをえなかった悲しい経験があります。宇宙開発のために日本国籍まで取得され、世界を相手に、厳しい会社経営に人生をすり減らされた社長の姿がよぎります。でも火星に移住する日を思い、別の上場企業の新年会で“火星に人は住める”という話しをしたこともある位、宇宙の開発には関心をもっております。タイムオーバーにならないうちに、早くリーチをかけて、あがりたいですね(「あがる」という内容は不明ですが)。

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1. これまでもいくつかのコラムの中でお話ししている通り、当事務所は、元従業員(退職者)の不法行為や不正競争行為に関して様々な法的手段を行い、東京地方裁判所や知的財産高等裁判所で勝訴判決を得るなど多数の成果を挙げています。 

2.  当事務所にご相談いただいている案件数も非常に増えておりますが、その中でも元従業員(退職者)が競業行為を行っている或いは行いそうだという相談が非常に多くなっています。

   そこで、近時において請求が認められた裁判例をご紹介することに致します。裁判所がどのような事案で会社勝訴の結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが弁護士の能力の一つだと思いますし、当事務所が様々な依頼者から喜ばれている理由の一つともいえますので、是非ご参考にして下さい。

損害賠償請求
平成28年5月31日東京地裁判決
295万
8798円
 
元従業員は虚偽の事実を会社の仕入先に伝えていた。その上で、原告会社が購入するはずであった商品を元従業員の設立した会社で購入した行為について、不法行為であると判断した。
もっとも、会社が購入予約していなかった商品を元従業員の設立した会社で購入した行為については、不法行為を認めなかった。
退職金返還請求
平成28年3月31日東京地裁判決
1008万円
 
同業他社に転職した場合は退職加算金を返還する旨の合意に違反した事案。転職が禁止される期間や同業他社の地域等に限定が付されていなかったが、退職加算金制度を利用するか否かは従業員の自由な判断に委ねられていること、従業員に対して同業他社に転職しない旨の義務を負わせるものではなく、従業員が同業他社に転職した場合の返還義務を定めているにすぎないこと等を理由に退職加算金の返還請求を認めた。
退職金返還請求
平成28年1月15日東京地裁判決
1157万
1805円
 
会社が実施した早期退職制度に応募して退職した後に、在職中及び退職後の競業避止義務に違反して競業行為を行ったことが発覚した事案。優遇措置の存在などを理由に退職後の競業避止義務の有効性を認めるとともに、元従業員が主体となって行ったものではないとしても、他社の利益となる行為であること等を理由に競業避止義務違反を認めた。
損害賠償請求
平成27年9月29日東京地裁判決
263万
7150円
会社在職中に知り合った技術者と共に、競業する事業を目的とする会社を設立したこと、元従業員は現場の責任者的な立場であったこと、会社の従業員に対して元従業員が設立した会社の名刺を渡すなど勧誘ともとれる行為をしていることなどを理由に雇用契約上の誠実義務違反を認めた。
競業行為の差し止め等
損害賠償請求
平成27年3月12日大阪地裁判決
競業行為の差し止め
992万
3145円
 
退職後2年間の競業避止義務を定めている就業規則に違反することが認められた事案。
代償措置は講じられていないものの、半径2km以内に限定されていること(判決は、会社が学習塾であり、2kmを超えると小中学生にとって通塾に適さない程度の距離と思われることも判断理由の中に挙げている)、上記圏内であっても、競合他社において勤務することは禁じられていないこと等を理由に有効であると判断し、営業の差し止め及び損害賠償を認めた。
損害賠償請求
平成27年2月12日東京地裁判決
900万円
元従業員が、会社の従業員又は顧問の地位にあったことを利用して集中的に顧客と接触を図り、“会社には不透明な決算がある、巨額な支払遅延の発生により会社の業務に不履行が生じた、従業員の多くが退職予定であり、以後の業務遂行には重大な懸念がある”こと等を内容とする説明を主導的に行っていること、顧客の担当者(会社の現従業員)と協力して上記説明を行っていること等を理由に、不法行為を認めた。
損害賠償請求
平成25年11月14日東京地裁判決
24万
0874円
元従業員が退職する際に、元従業員が使用していたパソコンやサーバーに入っていた“元従業員らが作成したデータ”を消去したことについて不法行為を認めた。
元従業員は、在職中に競業会社を設立しているが、この行為について、競業避止義務違反は認められなかった。
損害賠償請求
平成24年6月11日東京地裁判決
8万0401円
(その他に会社の所有物であるフォームの使用料相当額として5000円)
会社の就業規則上、退職後の競業避止義務について定めた条項が無かったにもかかわらず不法行為が認められた事案。
会社の印刷用フィルムを流用することにより、元従業員の設立した会社が業務を行うことが可能となったものであり、他社の所有する印刷用フィルムを無断で使用することを前提として、受注を勝ち取ったものとみることができることを理由に、不法行為を認めた。

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1.    依頼している弁護士に不安や不満を感じた場合、どうすれば良いでしょうか。
答えは簡単です。他の弁護士に聞いてみれば良いのです。いわゆるセカンドオピニオンです。

2.    当事務所では、これまでセカンドオピニオン業務を積極的には行ってきませんでした。他の弁護士の仕事を邪魔するようで「品が無い」ように感じていたからです。
 もっとも、最近、セカンドオピニオンに関する相談が急増しております。当事務所において、他の弁護士が第1審で敗訴した事件を控訴審から受任して逆転勝訴したり、他の弁護士に敗訴すると言われた事件について勝訴したり、という事件も少なくなくなってきました。

3.    このような相談が増えている理由は、弁護士が増加していることとも関係しているように思います。
 収入が減少した弁護士が数多くの事件を抱えるようになった結果、一つの案件にかける時間が減少し、仕事が雑になっているのかもしれません。
 あるいは、そもそも能力不足の弁護士が増えているのかもしれません。

4.    セカンドオピニオンの相談にいらっしゃる方々は、口を揃えて、「こちらが主張してほしいことを主張してくれない。」「重要だと思っている話をしても、無関係だと言われて話を聞いてくれない。」等と仰います。
 確かに、相談者のお話の中には、法律論から考えるとあまり意味のない話も少なくありません。そのような話を主張しても、裁判官の心証が悪くなるだけで、良いことは何もありません。
 しかし、相談者の方々は、弁護士よりもよく「事実」を知っているのですから、重要な話をしていることも多いのです。
 それにもかかわらず、相談者の方の話を法律論として主張する能力を弁護士が持ち合わせていなかったり、面倒臭がって証拠を収集しなかったりするので、敗訴してしまったり不利な形での和解になったりしてしまうのです。

5.  弁護士から、「書面はすっきりしている方が良い」と言われた場合は要注意です。
確かに、多忙な裁判官にこちらの主張を十分理解してもらうためには、すっきり分かりやすい論理で書面を書く必要があります。

 そのため、すっきり分かりやすい論理の書面になっているかどうかは弁護士が最も気にすることの一つではあります。
 しかし、「すっきり」ではなく、「スカスカ」では意味がないのです。
 短いページで勝てるなら良いですが、短いページの書面で負けてしまったのでは、後悔が残るだけです。

6.    セカンドオピニオンの相談を弁護士にする場合に注意すべきこともあります。
 弁護士が他の弁護士の仕事を批判するのは簡単だということです。
 極端なことを言えば、セカンドオピニオンの相談に来られる方々は今の弁護士に不安や不満を持っていらっしゃるわけですから、相談者の意見に同調すれば、相談者の方に気に入ってもらえます。
 しかし、それでは、相談者の方の利益に適っていると言うことは到底できません。
 今の手法が悪いわけではないにもかかわらず、弁護士に対する不安感だけを煽っても意味がありませんし、仮に裁判の途中で弁護士が変わることになった場合には、「依頼者がおかしなことを言っているから弁護士が途中で辞めたのかな」などと余計な推測を裁判官に行わせることになり、逆に相談者にとって不利益になり得るからです。

7.    そのため、当事務所では、セカンドオピニオン業務が無責任な結果にならないよう、相談者の方に記録のコピーを一式用意して頂き、一通り読ませていただいた上で、具体的な相談をさせて頂くことにしています。
 全く関与していない従前の記録を一式読むということは、弁護士にとって相当な業務量になり時間もかなりかかるので、弁護士としては大変なのですが、セカンドオピニオンに関する相談をお受けするにはやむを得ないことだと思っています。
 状況次第ではお断りさせていただくこともありますが、依頼している弁護士に不安や不満を感じている方は、是非一度、当事務所にお問い合わせ頂けると幸いです。

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1. 平成29年9月14日、経済産業省は、「ベビーカーは歩道を通行出来ます」というタイトルの「釈明文」のような文章をインターネット上に掲載しました。
   経済産業省の公表したある文章がインターネット上で議論され、「炎上」とも言いかねないような状況に陥ったからです。
 
2. そもそもの発端は、平成29年9月7日、経済産業省が、「電動アシスト付ベビーカーに関する道路交通法及び道路運送車両法の取扱いが明確になりました〜産業競争力強化法の『グレーゾーン解消制度』の活用〜」という公表を行ったことにあります。
   この経済産業省の公表を流し読みすると、「電動アシスト付ベビーカー」は歩道を通行できず、車道を通行しなければならないかのように読めてしまいます。 ベビーカーは車道を通行しなければならないと役所から言われれば、幼い子供を持つ親は激怒するに決まっています。そんな危ないことを経済産業省は言うのか、と。その結果、インターネット上の議論が盛んになったわけです。
   もっとも、実際のところは、経済産業省の公表の仕方が説明不足だったこととインターネット上の情報が錯乱しただけのことであり、ベビーカーが一律に歩道を通行できないというわけではありませんでした。
 
3. 本コラムでご紹介したいのは、今回の騒動のもととなった「グレーゾーン解消制度」という制度です。
   産業競争力強化法という難解そうな名前の法律に基づき創設された制度ですが、ベンチャー企業などにとっては画期的な制度です。この制度は、経済産業省にとっても「肝入り」の制度であるため、力を入れて周知に努めていたところ、思ってもいなかった形で広まってしまいました。
 
4.  新事業を行いたい方にとって、今までは、「新しい事業を始めようと思っているが、適法か違法かが分からない」「新しい事業を適法な形で始めたい」等と思っていたとしても、良い制度がありませんでした。  所管の省庁に聞こうにも「役所に聞いたら逆に目を付けられてしまうかもしれない」「役所に潰されてしまうのではないか」などという不安があったため、なかなか聞くことができませんでした。その結果、新事業を開始する際に様々な検討が必要となり、コストも時間もものすごくかかってしまっていました。コストと時間ばかりかけて、曖昧なまま進めざるを得なかったり、リスクを考えて断念してしまったりすることも多かったと思います。
   しかし、グレーゾーン解消制度を利用すれば、経済産業省が会社の立場に立って相談に乗ってくれた上で、所管の省庁と折衝や調整をしてくれます。
   しかも、1カ月後には回答が出るというスピーディさです(もちろん延長になることもありますが、1ヶ月ごとに理由を教えてもらえることになっています)。
   このような制度を利用することを検討しないのは本当に損だと思います。
 
5. もっとも、グレーゾーン解消制度は、法律に詳しくない方にとっては、それほど簡単に行うことができるというものではありません。
    グレーゾーン解消制度の照会書には、産業競争力強化法施行規則のどの要件に満たしているのかを記載しないといけませんし、どの法律のどの文言が問題になるのかを指摘しなければなりません。会社は、法律に違反しないと判断している理由を、法令の文言や規制官庁が示している逐条解説での見解等を参考にしながら、論じなければなりません。
   そのため、「新事業を始めたいが、もしかしたら違法になってしまうかもしれない。」「違法になってしまうかもしれないが、どの法律のどの条文が問題になるのかが分からない」と漠然に考えていらっしゃっている会社にとっては利用のハードルが高いですし、「違法ではないと思うが、逐条解説等を読んでもどのように論理構成をすれば、適法だと主張できるのかが分からない」という場合も利用しづらいです。
   そのような場合には、照会書の書き方も含め、弁護士に相談するしかありません。
 
6. 当事務所は、ベンチャー支援(いわゆるベンチャー企業も、既にしっかりとした会社になっているもののベンチャー事業を行う会社も含みます。)にも力を入れています。  いかなる会社であっても弛まぬ努力をしなければ生き残っていけないでしょうが、新規性のある事業を行う場合には必ず法律の壁が立ちふさがってしまいます。法律の壁が立ちふさがるからといって、法律を無視したのでは、コンプライアンス違反のブラック企業の仲間入りになってしまい、従業員や株主の方々が会社に対して誇りを持てなくなってしまいます。
   当事務所は、長いお付き合いをして頂ける顧問会社(顧問料は月5万円以上です)の場合には、「新事業を開始するにあたりどのような点が法律問題になり、適法になり得るかどうか」に関するアドバイスについても、顧問料の範囲内で、無料で行っています。
   新事業を行いたいが適法なスキームになっているかが心配だという会社さんは、是非とも当事務所にご相談くださいますと幸いです。

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1.      証人尋問の劇場性に関係するコラムで、書き残したことがあります。 裁判が、「劇場性のあるショー」のように楽しめるものかどうかという視点で、本コラムを書いてきましたが、日本の裁判が「ショー」としては不適切であろうと何度かお話ししてきました。

 しかし、弁護士が弁護士活動をしていて、「劇場的」とも言えるような刺激的場面がなかったかというと、優秀な弁護士の方は「たくさんあった」と言われるはずです。私もそんな刺激的な場面、「劇場のショーのような一幕」の場面は、いくらでも思い出せます。

 言い残したことがあると言いますのは、その刺激的場面が「劇場性」に通じるとも言えることから、今回のコラムでは、その刺激的場面が、どのような場面で発生するのかを書いてみたいと思ったのです。

2.      説得するべき相手は誰か?ということは弁護士にとって常識です。 陪審裁判であれば判断権者は陪審員ですから、陪審員への説得が必須であり、この証明過程が劇場的だったのですね。

 でも通常、訴訟の判断権者は、裁判官になります。争う双方の主張のいずれが正しいのか、誰が判断する立場にあるのかということに尽きます。その判断権者が、今迄言っていたことと違って、全く逆の結論に判断を変えてしまったのであれば、必死で依頼者の主張を続けてきた弁護士にとって、それは劇的な勝利です。刺激的な場面であることは間違いがありません。依頼者がその一部始終を見ていたなら、自分の主張が入れられたことによって、感動を受けない訳がありません。

 裁判官と論争になって、当方有利な証拠を示しながら40分以上議論して、結局、逆転し、勝訴判決を得たこともあります。その際に、私が示す証拠を私の説明に従って、次々と裁判官の面前に示すという、離れ業のような作業をしてくれた副所長の事件に対する理解の深さにも感心しました。依頼者は、一部始終を見ておられ、本当に喜ばれました。

 或は、証人尋問中、真正な登記名義の回復について相手弁護士が不勉強で意味不明の質問を連発したことから、裁判官が、我々に軍配をあげて論争を終わりにさせました。このような経緯から、その後の証人尋問も当方有利に運び、証人尋問に出ておられました依頼者は、明らかに裁判官の思考が逆転したことが分かったとまで感想を述べられました。

 この件も、当方が勝訴同然の和解にて決着しております。 これらの裁判歴はいくらでも示せますが、判断権者である裁判官を説得することができた事実等を示すことによって、誰かを不愉快にさせるのは、私の趣味に合いません。

3.      裁判で決着がつくことを予測して、今後の予測を立てるのは常識だと説明するのは馬鹿々々しい。そもそも法律家は、要件事実論に従い、無意識に判断しております。それは裁判にならなくとも、弁護士双方が、要件事実論による分析と当該事件における事実を徹底的に洗い出しして、有利・不利の分岐点を探り、事件の解決に臨むのです。

 弁護士になった当初は、このように事件の分岐点を推理するという当然のことが、困難なようですね。要件事実論を勉強したのかという弁護士もいますから・・。

 もちろん、裁判が当然の前提ではあっても、それより有利に解決できると判断して、他の制度、例えばADR・裁判外紛争解決手続を利用したこともあります。

 裁判における事件の分岐点を整理していて、私的調停制度を利用するほうが、当方にとって有利になるという次の高等戦術に進むのです。

4.      その事例を一つあげてみます。

 当コラムの「金融取引」の項目でも紹介しました全国銀行協会による私的な裁判外紛争解決機関(ADR)によるあっせん申立てでは、このような高等戦術を使わせていただきました。

 この事例は、銀行が十分な説明もしないで「為替デリバティブ取引」をさせて、多くの市民に損害を与えた事件です。大手町に開設されたばかりのADRに行って、あっせん委員を説得しました。

 事件は、二つの銀行に対する申立てでした。一つ目の事件は、超大手銀行が「儲かります」としか言っておらず、中途解約時の費用の説明もなく、詐欺行為の一種という認定が働く事案でした。もう一つは別の超大手銀行によるもので、当方依頼者は、前の取引で知恵がついており、説明不足とまで言えない事案でした。

 訴訟にすれば、第一の事件では勝訴するが、第二の事件で多額の敗訴判決を受ける恐れがあったのです。であるなら、二つの事件を一挙に解決し、しかも第一の事件を有利に使う方法がないかどうかを考慮の一つにしたのです。

5.      この調停では、銀行側関係者から当事務所に対し、ずいぶんお褒めの言葉をいただきました。

 そもそもあっせん委員は、公正に選出されると言っておりますが、全国銀行協会側で選ばれるのですから、今、流行りの「忖度の精神」によって、銀行にとって最悪の解決(裁判による大手銀行全面敗訴)は、できるだけ避けようとするはずです。

 一社は、明らかに違法ですから、何とか上手に二つの事件を纏めるためには、適法と判断される一社に対し、当方有利な解決案を提案しない限り、私は和解しません。適法だと判断している他方の金融機関に妥協をしてもらうしかないのです。

 見事!実に、当方有利に和解が成立しました。銀行側の関係者が、何度も「例がない」と発言した和解で終わりました。

 当事務所の若い弁護士先生が、感激して、直後にレポートを出してくれました。「無い袖は振れない抗弁」(払いたいが、お金がなくて払えません)の見事さを褒めてくれました。しかし、それは違います。先ず、第一事件である金融機関の詐欺に迄発展しかねない不法な経緯の立証が完璧であったこと(これは副所長作成の長文の申立書です)、そして、不利な和解を回避するため、二つの金融機関の事件を、一挙に申立てをするという知恵(当事務所の見通し力)を褒めて欲しかった。

 ところで、依頼者代表者は、ご夫婦揃って、その一部始終を見ておられました。大感激していただき、大手町からの帰途、高級レストランでランチコースをご馳走になりました。

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1.      前回、証人尋問の劇場性について書きましたが、書いた後、面白い社会現象に気づきました。

我が国で、裁判員裁判制度の導入が具体的になった頃、裁判所の内部を案内する業者のような方が出てきたと噂になりました。当時、新たなビジネスが生まれたと驚いたものです。しかし、今では、このような業者の方の話が出てこなくなりました。つまり、裁判員裁判制度が導入されたからと言って、外国の陪審裁判のように「ショー」になる要素は殆どありません。裁判所内部の見学は、司法制度の勉強にはなっても、劇場性もなく、面白味が全くないからです。日本で裁判所巡りをするより、観光地巡りのほうが面白いと言われるのは心外です。

従って、今回は、誰でも参加できた30年程前の“陪審裁判の模擬法廷”のお話しをし、当時は「ショー」としての側面も楽しんでもらうため、一生懸命頑張っていた昔の話をしてみたいと思います。  平成16年5月28日、「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」が成立し、やっと我が国にも国民の司法参加が可能な裁判員裁判制度が実現することになりました。法曹界で、国民の司法参加が強く主張されるようになったのは、それ程、昔のことではありません。第一東京弁護士会で、そのための「下働き」を一番長く続けたのは私であると自負しております(この経緯に詳しい人なら反対する人はいないでしょう)。ですから当時のエピソードを紹介できる適役だと思っております。

2.      ここで申し上げておかねばならないことがあります。私は、我が国の裁判を「ショー」或は劇場性のあるものにしようなどと思ったことは絶対にありません。

その証明というには大袈裟ですが、原体験の一つをお話しします。

司法試験合格後、司法研修所における最初の刑事裁判での授業のことでした。その最初の授業で“陪審裁判について考察しよう”と問題提起されました。クラスの皆さんは、陪審裁判を無批判に受け入れるか、チンプンカンプンのようでした。私は、敢えて“民主主義が徹底してから陪審裁判を考えればいい”と自己の体験と参審員裁判を念頭に置いた所信を述べました。今でもその考え方は正しいと判断しております。

その意味としましては、私は、あくまで主権者である我々(皆さま)が司法制度に参加できるようにし、官僚一色の、しかも悪弊はびこる日本の司法制度に問題提起をし、風穴を開けたかったのです。

当時、模擬陪審裁判に参加していた多くの弁護士も、私と同じ思いであったと信じます。

3.      早速紹介ですが、関係者を含め数百人規模の、且つ賑々しい模擬陪審裁判は、東京では二回ありました。この二つの模擬陪審裁判については、当時出版された本がありますので(現在では入手不能です)、それに基づいて紹介しましょう。

一つ目は、平成6年(1994年)9月30日、銀座ガスホールで開催しました。第一東京弁護士会と第二東京弁護士会の共催です。

当時、小さな模擬陪審法廷を開催することには飽きてきておりました。しかも劇場性においても工夫がなくなっておりましたので、新宿御苑にある青年劇場と、舞台監督として有名な宮崎監督にもお願いし、銀座ガスホールを借り切ったのです。失敗は許されませんよね。

私は、一万円を盗んだ被告人の役を演じました。その基本となる無罪事件の発掘は、シナリオチームの優秀な岩崎先生が選定されたように記憶しております。私は、「無罪」色が強すぎるシナリオに疑問を持ち、「有罪」色を強めるため、即ち劇場性を強めるために、当該事件を扱われた千葉県の弁護士さんに突然電話をして、指導を受けたことが鮮明に記憶に残っています。

でも「ショー」としてはもう一つだったのです。

当時、出された「模擬陪審裁判の実践と今後の課題」には、陪審員として参加された方の直後のアンケートが残されておりました。その方は、次のように述べておられます。「被告人の人柄が良過ぎて初めから心証が良かった、もう少し品のないキャストにしたほうが良い」と記載されているのです。

笑ってしまいませんか。私は俳優失格です。しかしながら、この本には、私の息子である中学生時代の副所長が参加してくれたアンケートの記録がありました(中学生の参加者は、一人のみとの記録あり)。今回始めて、中学生時代の副所長の心構えを知りました。

4.      もう一つは、弁護士会館竣工記念として平成7年(1995年)10月14日、できたばかりの弁護士会館3階、大講堂「クレオ」にて開催しました。この模擬陪審裁判は日本弁護士連合会と東京3弁護士会の4者共催で行いました。私は、事務局次長として、「第8章 広報・総務チームの総括」として、如何に報道に関心を持たせる工夫をしたかをメーンに、一番長い報告書を書いております。

 この模擬陪審裁判も劇場性において失敗しております。弁護士役の先生が、大反省をされておりますので紹介しましょう。

「しかし、やってみると、自分は分かりやすくやっているつもりなのに、全然わからないと、練習中に随分演出の先生に言われまして、そういうものなのか、知らず知らずに私たちは業界の言葉で染まっていたんだなというのを改めて感じました」。ショーは、難しいのです。

5.      今回は「弁護士の能力」というテーマから大分離れました。でも優秀な弁護士は、模擬陪審裁判でもその能力を発揮しておられます。つまり、弁護士としての優秀さは、その時の「見極め」にあるのです。

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