新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 201512のエントリ

 

一 この一年間の感謝の言葉
 
   皆様、本コラムを読んでいただき、本当にありがとうございます。
   年末、いろんな方々から私のコラムを「読んでいるよ」というお言葉と感想をいただきました。正直なところ、このような反響は想像もしておりませんでした。よく考えてみますと、昨年、毎日新聞の「週刊エコノミスト」の記者からコラムを読んだとして執筆依頼があったことに続き、メデイアから種々取材のあったことから推測して、読者の皆様の存在に気付くべきであったのです。
私のコラムがそんなに読まれているなどと思いもせず、そろそろコラムを卒業し、違う形のものを書きたいと考えていました。「不動産の放棄のコラム」については、出版社から原稿依頼があったこともあって、他のことができないかと、いろいろ模索しておりました。でも、私の思いを楽しんでくださっている方々がたくさんいらっしゃることに初めて気づきました。
感謝の気持ちで一杯です。
 
二 相続事件の多様性
 
1  これから暫くは「相続関係」に想いをはせようと考えております。 
       我が国の老人人口の伸び率は凄いものがあります。現在4人に一人が高齢者という人口構成では、今後、どんどん社会のひずみが表面化してくるのは当然のことです。
老人国家に移行するにつれ、当事務所における受任事件も「老人社会問題へ移行」(?)しております。相続関係事件が日々増大し、その急激な伸びには当事務所副所長も驚いております。
 
2   相続に関係した事件を大量に取り扱っておりますと、深刻な家庭内紛争にも出会い、相談しているだけでも落ち込みます。そして気づきますことは、単純に相続事件と言いましても、実に多様性を示す事件が多いということです。
       今回は、30年近く前、自殺されたことが、相続法理としてどのような法律構成ができるのか悩んだ事件を紹介しましょう。
内容は「家出をして行方不明になっていた認知症気味の父が、賃借アパートで自殺したため、大家さんから、相続人である妻とお子さん宛に動産撤去、原状回復、滞納分家賃の請求、誰も借りてくれないことによる損害を賠償するよう請求されている」というものでした。
 
3    当時、自殺に触れた判例はありましたが、アパート経営者に大打撃を与えることを前提に、全面的に認容した判決は見当たりませんでした。ましてや賃借物件であるマンションに居住していた者の自殺が、相続事件として取り扱われるものは見聞できない状況でありました。
しかし、そもそも民法は、896条で「被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する」とされています。亡くなった方の「一切の権利義務」というのですから、その幅は確かに広い。自殺しないことが契約上の義務なのか一般不法行為なのかを別にして、損害を請求する大家さんの気持ちは分かります。そうすると、貸せなくなったことによる損害は契約責任なのかどうかも弁護士の関心の的になります。不法行為として構成する電車投身自殺を思い出してください。
 
  賃貸マンションでの自殺
 
   私が弁護士になった頃、売主である著名な一部上場企業を相手にし、自殺について説明しなかった説明義務懈怠を理由に損害賠償請求をしたことがあります。当時は売買契約についても、売買目的物での自殺について種々議論があり、認容を前提とした判例はありました。しかし確定とまで言える状況ではありませんでした。売主である一部上場企業のエリートサラリーマンも、証人尋問で自信を持って証言しておりました。その意味で本判決は、今弁護士のあいだで流行の「不動産売買と自殺」シリーズ、弁護士コラムの草分け的な存在です。当時は判例の取扱いが慎重だったように思います。あの勝訴判決はどうなったのでしょうか?判例集に載せたければ、低い損害賠償金額に拘らず、契約の解除まで主張すればよかったのかもしれません。でも依頼者は、転売目的で購入された業者でしたから、解除まで希望されておりませんでした。
 
2  本題です。相続人は自殺した方の何を相続するのでしょうか?
       自殺者は死なれた瞬間この世におられません。大家さんは、何故損害賠償請求できるのかの法律構成ができなければ相続人に対して請求できません。もちろん不法行為構成も可能ですが、これは契約関係に基づく法理ではありません。不法行為ですと、大家さんには賃借人の過失に関する立証責任が課されます。前記相談事例の行方不明の父が認知症で意思(責任)能力がなく、しかも行方不明ということですから妻やお子さんに監督できない状況があります。これは請求が難しい。
手っ取り早く判例を見てみましょう。自殺事件では、必ず引用される東京地方裁判所判例を紹介します(平成19810日付判決)。
「賃貸借契約における賃借人は、賃貸目的物を・・返還するまでの間、賃貸目的物を善良な管理者と同様の注意義務をもって使用収益する義務がある(民法400条)。・・自殺により・・心理的な嫌悪感が生じ、一定期間、賃貸に供することができなくなり、(賃料が低下することは)常識的に考えて明らかであり・・自殺しないように求めることが加重な負担を強いるものとも考えられない」としているのです。
 
3  抽象的な規定である善管注意義務違反を相続するのですね。私も当時、賃借人には使用貸借準用の「用法義務違反」とは考えておりましたが・・。「悩む法律家はまどろっこしい」と思われますか?

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一  当事務所が数多くの立退き案件を取り扱っていることは、これまでいくつかのコラムの  中でお話しした通りです。
 
二  当事務所は、主として貸主又は不動産業者の立場から受任することで多くの成果を挙げておりますが、借主から依頼を受けることもあります。
    以前のコラムにおいて、借主から依頼を受けた事案で賃料200ヶ月分の立退き料を獲得した事案を紹介いたしましたが、つい最近も賃料100ヶ月分を超える立退き料を獲得した事案もございます。
    近時の裁判例は、耐震性に関して貸主の立場である正当事由の認められる可能性を増大させているように見受けられます。
   注意されねばならない論点が増えております。
 
三  近時、開発案件などで立退きのご相談を頂く機会が増えておりますので、改めて立退き料の動向についてご紹介させて頂きます。

立退き料
平成26年12月19日東京地裁判決
3237万3000円
耐震性能不足に起因する本件建物の取壊しの場合、賃貸人だけに負担させるのは相当でない。立退料は、賃料差額を1344万円(〔月額新規支払賃料206万円−月額実際支払賃料150万円〕×補償期間24か月)、一時金運用益を32万8000円(〔新規月額賃料206万円×10か月−本件賃貸借契約の保証金1240万円〕×運用利回り2%×2年)、新規契約に関する手数料等及び移転費用、営業補償費、内装費補償費、広告宣伝費等を1860万5000円とした合計額とする。
立退き料
平成26年12月10日東京地裁判決
3318万9825円
(賃料の36ヶ月分超)
立退料は、移転までの空白期間について、本訴提起前の交渉経過とほぼ同程度の期間である約1年半程度と想定し、その間の賃料等相当額に直接剰余を加えた程度の額とする。
立退き料
平成26年7月1日東京地裁判決
5120万円
5215万円
180万円(賃料約2年分)
立退料は、移転実費、借家権そのものが有する財産的価値(借家権価格)及び営業上の損失に対する補償額を考慮した上、そのうち立退料以外の事情による正当事由の充足度を踏まえた一定額とする。
左記はいずれも異なる店舗である。借主が平成25年8月以降営業を行っていない状況を考慮している。
立退き料
平成26年4月17日東京地裁判決
124万8000円
(賃料6ヶ月分)
借主は既に本件建物での営業をやめているのに対し、貸主は道路拡幅工事のための用地買収に応じるために本件賃貸借契約を解約して本件建物を取り壊す必要がある。
賃貸人からの解約申入れの猶予期間が本件賃貸借契約において6か月間と定められていたことなども考慮している。
立退き料
平成25年12月11日東京地裁判決
215万円
借主が家財を搬出して退去する費用相当額、新たな賃貸物件等住居を確保するために要する費用相当額、相当期間についての当該物件の賃料と借主が本件貸室について支払っていた賃料との差額相当額を考慮している。
立退き料
平成25年6月14日東京地裁判決
4130万円
耐震補強工事に代えて建替えを行うことは貸主にとっても費用対効果上メリットであること、建替えが結果的にもたらす敷地の高度利用化という利益も専ら貸主が取得することなどを総合考慮し,借家権価格(鑑定の結果)の半分相当額とする。※賃料月額315万円
立退き料
平成27年3月20日東京地裁判決
0円
木造住宅であり、少なくとも増改築前の部分についてはその建築から50年を優に超えていること、貸主は現在67歳の単身生活者であること、50年を超える長期にわたって本件建物の所在地を生活の本拠とし今後も本件建物を建て替えて同所で生活する意思を有していることなど貸主側の立場を考慮している。
他方で、借主における本件貸室の用途は専ら経理関係の書類等の保管にすぎないことを考慮している。
立退き料
平成25年1月23日東京地裁判決
0円
耐震性能を現行法の水準にまで高める工事をすることは建物所有者として合理性を有する。本件建物の耐震性能は相当低く、倒壊する危険がある。残寿命は10年程度であり、本件建物を取り壊して新たな建物を建築する等する必要性の高いことを考慮している。
他方で、借主は、本件建物を居住用に使用しているわけではなく、現在は転借人もいない。借主は自ら賃貸物件を多数抱える不動産業者であり、新たな物件の調達にさしたる困難があるともいえないこと等を考慮している。
請求棄却
平成25年9月17日東京地裁判決
正当事由なし
 
建物の倒壊の危険性から取壊しを要すると主張する以上、貸主は本件建物の倒壊の危険性を具体的に立証することが必要であるが、本件建物の耐震性について耐震判断審査を行っていない。なお、貸主は立退き料を支払わないと明言していた。

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