新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 201511のエントリ

1    当事務所が病院やクリニックの顧問弁護士を務めさせて頂いており、様々な形で医療に関与する事件を取り扱っていることは当ホームページをご覧いただいている方には既にご存知のことと思います。
そのような中で、近時、厚生局等から保険診療に関する個別指導や監査があった際に、保険医等が弁護士を同席させることが多くなったという話を良く聞きます。

2    保険医等が個別指導・監査を受けた場合、最悪の場合には保険医指定取消にもつながり得るものですが、過去には行き過ぎた個別指導・監査により保険医が自殺したのではないかと取り沙汰されたこともありますし、国会で取り上げられたこともあります。
東京歯科保険医協会は、平成19年10月4日付けで、個別指導・監査に関連して抗議文を出しております。
そして、当該抗議文には、「一年にわたる長期間の指導を受けたうえ、監査直前に本会会員のM先生は心身ともぼろぼろになり、あげくの果て自殺にいたった。」「最初の個別指導では『こんなことをして、おまえ全てを失うぞ!』『今からでもおまえの診療所に行って調べてやってもいいぞ、受付や助手から直接聞いてもいいんだぞ!』など『恫喝で終始』した。その後も指導時の技官の態度について『なぜあそこまで人権を無視したことを言われなければいけないのか』と涙ながらに訴えていた。」「一回目の指導中断から再開まで九ヶ月もかかり『今まで経験したことのない苦しい時を』過ごし精神的に追いつめられていた。苦しみ抜いたうえでの自殺である。」という衝撃的な内容が掲載されています。

3    医師や歯科医師らからは、弁護士会に対して個別指導・監査の在り方に関して人権救済申立がなされ、平成26年8月26日、日本弁護士連合会は、厚生労働大臣及び都道府県知事に対し、「健康保険法等に基づく指導・監査制度の改善に関する意見書」を提出しています。
日本弁護士連合会は、「手続の不透明性」や「指導の密室性」に問題点があると指摘し、保険医等の適正な手続的処遇を受ける権利を保障するため、改善等を求めています。

4    保険医の方の中には、個別指導・監査の際には必ず弁護士の帯同をした方が良いとおっしゃる方もいるようです。
そして、平成23年10月26日付けで厚生労働省保険局医療課が発行した「事務連絡」には、「地方厚生(支)局が第三者たる弁護士の個別指導等への帯同を認めることはあり得る」と明記されています。
要するに、個別指導に弁護士が同行することも可能ですので、保険医の先生が一人で悩む必要性はありません。個別指導にどのように対応すれば良いのか不安な保険医の先生方は是非一度弁護士に相談して頂いた方が良いと思います。

5    弁護士は医療の専門家ではないとはいえ、法的な立場からアドバイスを差し上げ、場合に応じて個別指導に立ち会うことにより保険医の方々の権利を守ることの手助けになると考えております。

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一.     はじめに

1.       毎月配送される判例時報を纏めて見ておりますが、最高裁判所は、昨年3月6日付にて「(第一審で付加金の支払いを命ずる判決が出されたにも拘わらず)控訴審の口頭弁論終結前に未払割増賃金等の全額を支払って(使用者における)義務違反の状況が消滅したときには、裁判所は付加金の支払いを命ずることができなくなる」旨の判決を出しております。
 上記判例は、従来の最高裁判決で疑問になっていた部分に関し、明白にしたものです。つまり、控訴審という第二審であっても口頭弁論終結前であれば、未払い割増賃金等を支払って義務違反の事実をなくしてしまえば、制裁である倍返しのルールが適用されないということを明らかにしたものです。

2.       そもそも付加金という倍返しのルール、即ち労働基準法114条「付加金支払」条項については、若かりし時代より特別な思いで対応してまいりました。私の過去などお話ししたくもありませんが、弁護士になって数年で一弁人権擁護委員会副委員長或はその後すぐに日弁連人権擁護委員会委員となった私にとって、倍返しのルールには敏感でありました。テレビドラマ「半沢直樹」シリーズで有名なせりふ「倍返し」ではありませんが、左翼を称される弁護士の世界?では、付加金命令を取ったことがあるかどうかは自慢の種になったものです。その「自慢大会」?に知らぬまに参加したこともあるくらいです。

3.       付加金とは、解雇手当、休業手当、割増賃金、有給休暇の際の平均賃金を支払わない使用者に対して、裁判所は、それらの未払い金のほか、更にそれと同一額の金額を労働者に支払うように命じることができるというもの(法律学辞典引用)で、法律を守らない使用者に対する制裁として裁判所が付加する裁判であります。付加金が訴えの対象となる訴訟物として計算に入れるのか議論したことが思い出されますし、裁判所の命令なので労働審判事件では審判の対象にならないのですが、でも通常裁判に移行する場合も考えて、付加金の申立ても同時にされる弁護士もおられます。

二.     付加金と固定残業代

1.       付加金に関係する残業代といえば、労働基準法に規定のない「固定残業代」をテーマにするのが自然でしょう。必然的に、今回も優秀な社会保険労務士の先生とタイアップして対応しなければならないという結論になってしまいます。
 そもそも固定残業代とは、一定の時間外割増賃金(残業代)を毎月の賃金などに加算して固定的に支給する制度です。固定残業代とすることについては判例も認めておりますが、しかし判例が指摘してきた要件をみたす必要があるのです。
 通常、残業代を基本給の一部に含まれるものとして支払われている場合、経営者の方は当社は固定残業代として法律通りに定めていますと説明されます。しかし、実際のところ、判例の基準から外れていることが多いというのが実状です。社会保険労務士の先生など専門家に聞いた上で作っていると仰っている会社でも、判例の基準から外れた規定になっていることが、あまりにも多いので驚きます。

2.       仮に、判例の基準から外れた規定をしていた場合、経営者の方からすれば既に支払っていたつもりの残業代をプラスし(それも残業代を含む高い支給基準の基本金額を計算基礎とする)、更に付加金として二重に支払わなければならないことになります。場合によっては1000万円以上支払う金額になることもあり、労働基準法上の刑事罰すらありうるのです。
 平成2438日付最高裁判決、櫻井裁判官の補足意見の要旨「固定残業代の定めがなされている場合、雇用契約上もそれが明確にされている必要がある。支給時、支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され、且つ時間を超えて残業が行われた場合には、その所定の支給日に別途上乗せして支給する旨もあらかじめ明らかにされている必要がある」からも分かりますが、固定残業代には今後も厳しい判断が続くものと思われます。

三.     訴訟にしない準備と訴訟になった場合の対応策

1.       残業代請求事件は、いつでもどのような企業でも起こりうる事件です。
従業員に愛を傾けておられる経営者の方に申し上げます。紛争が起きる前に、優秀な社会保険労務士・弁護士等の専門家を入れて事前の検討を行い、「ブラック企業」などと呼ばれない準備が必要です。

2.       仮に、不幸にも訴訟になってしまった場合、労働者側の主張が正しいのかどうかを徹底的に検証して、不当なのであればしっかりと反論していくことが重要です。残業代請求事件は労働者側が有利という前提のため、会社側の大雑把な反論を見受けることも少なくありません。しかし、残業代請求事件における基本的な主張・立証責任は労働者側にあります。会社側で十分に証拠を収集して反論することで、労働者側の主張を弾劾できることも少なくありません。
 その例ですが、残業代請求事件において、使用者側の抗弁により、東京高裁で認められた金額と東京地裁で認められた金額に合計1000万円以上の差があったという裁判例を紹介します(東和システム事件 判例タイムズ136749頁)。
 結論として、ポイントを押さえた主張・立証活動と、しかも粘り強い丁寧な反論が必要であるということです。

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