新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

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コラム - 201401のエントリ

 

一 劣悪不動産は減らない
 
 劣悪不動産が問題になる背景として容易に考え付くその一つは、高齢化社会と都市一極集中があるでしょう。65歳以上の老人が4人に一人という我が国の人口構成も皆さまご存知の話です。最近では、限界集落は都心部にまで及び始めたという新聞記事も出ております。新宿区にある戸山団地が事例として挙げられることもあります。都心一等地ですが、不思議な光景だという人もいます。
そもそも日本に存在する現在の家屋の数は、日本の世帯家族数以上に多く、余っている住宅ストックは所帯数より16%多いといわれております。劣悪不動産は増加せざるを得ないです。
 
  土地に対する取り返しのつかない汚染等も劣悪不動産と認定される時代になりました。人の健康に害がある化学合成物や薬品等で利用困難な土地も出ております。
「産業廃棄物に関する条例」等も現在はポピュラーな話になりました。ほんの少し前のことですが、中山間地域の山道を車で走ると、道端や崖に、やたらとごみや家電製品が捨てられていたのは見ておられますね?このような通常の光景も、最近はだいぶ変わってきたように思います。地方公共団体の取り組みが効果的であった事例ですし、皆様の意識がそれを許さない文化度に成熟しているのです。
これは中国のブラックユーモアです。「北京では窓を開ければただでタバコが吸える(PM2.5ですね)、上海では蛇口をひねれば豚のスープが飲める(川に豚の死骸6000匹が流れる)」という中国の文化度と比較すれば、言わずもがなの話です。
 
3 似たような話のとどめは、東北大震災による福島第一原子力発電所事故でしょう。これこそ土地を持っていても利用できない典型であります。災害復興まちづくり支援機構の議長まで務めさせていただいたので、話せばきりがありません。
その一部を紹介します。今回のコラムは不動産の話なので、土地の面積が変わってしまったという話です。この話は阪神淡路大震災当時に聞いており不思議でした。新潟県中越沖地震の際にも、地震発生直後、確か越後湯沢からバスに乗り換えて震災現場に入りました。ここでも土地の面積が変わってしまったという話を聞いております。土地は永久の財産のように思っていましたし、前のコラムでもそんなニュアンスで書いていますが、それも事実に反するのですね。
今回の東北大震災において建物の耐震基準の程度について、今までは震度5を超えた地震で工作物が壊れ、それで他者に損害を与えたとしても損害賠償責任はないなどと言っておりました。しかし最近では震度6を基準にするように、などと言っております。
災害に厳しい対応を求められる皆さまの認識が、劣悪不動産の基準を変えるのです。裁判所の判例だって同じですよ。
 
   しかしながら自分を振り返ってみますと、劣悪不動産が減少しない原因は、なかなか変わらない自らの意識(変わりそうで変化していない自らの不動産信仰)にもあると思います。幼いころからの刷り込み、つまり不動産は儲かるという認識はすさまじいのです。
    あなただって同じだと思いますよ。例えば、あなたが限界集落に不動産を持っていたとして、都市に生活場所を移すにしても直ちに誰かに安く譲るという発想が出ないのではないですか?そのうち、もてあまして建物としても機能しないまでになってしまいます。この時、取り壊して空き地にしてしまえばいいものの、土地の固定資産税が跳ね上がると聞くと撤去することにも躊躇するでしょうね。しかし、この税制については、議論はありますが変わらないと思います。住居用なら固定資産税を安くするという政策は大切でしょうから、この税制を前提にして考えましょう。
 
       ところで今回、住まない建物の取り壊しに対して、国から100万円程度補助を出す立法がされると聞いております(この原稿がホームページに載るのは半年後ですから、そのつもりでお読みください)。
政策が一歩前に出ることになり、劣悪不動産を残さない政策も取られているということです。具体的な話が必要な方は、税理士の先生に聞いてみてください。

 

 二 不動産に対する我々の意識の変化
 
  しかし不動産に格差があり、どうしようもないものもあるという認識は、根本的には、不動産に対する価値観が変わったという前提があります。つまり、我々が生活するこの社会の変化によって、我々の意識にも変化が起きざるをえなかった、ということが真実でしょうか。
突き詰めて考えれば、不動産の所有者責任が当然のように認識される世の中になったということも大きく影響していると思います。
瑕疵ある不動産による被害が発生した場合には、民事の損害賠償だけでなく、刑事責任もあるという意識の変化です。「不動産持ちの方は金持ち」という意識も変わり、或いは、このような方が危険不動産を所有されていても、厳しく責任追及ができうる(逆にいえば「される」)文化の進展によって私も変わってきたのだと考えております。
結論は、我々の文化度・価値観の変化によって「不動産神話の崩壊」に繋がったのです。
 
   今後の研究で民法制定時に不動産の放棄がどのように議論されたのかが明らかになる時代が来るかもしれません。そしてその際、不動産の放棄については触れないでおこうという、当時の民法制定時の理由が明らかになるかもしれません。

 

三 「不動産格差」のコラムを終わるにあたっての感想
 
 最初のコラムを思い出して下さい。アメリカの格差社会と私たち弁護士の格差の増大を述べましたが、不動産における格差の進行も似ていると思いませんか。我が国は、50年もしないうちに人口が3分の1減少し、揺るぎなき?老人国家になります。あらゆる場面において、益々格差が広がるとしか予想できません。これらの格差の発生・増大は、我々の生活、社会秩序そのものを破壊することは間違いないのです。
このような社会状況の中で、不動産の格差増大を防止するには、その重要な一つの対策として「地域社会の復権」があると思います。
不動産の格差というような限定された議論でなく、我が国がアメリカのような格差社会(アメリカの貧困)にならないためには、地域社会の復権しかないという政治家や学者の方の意見も聞くようになりました。また「地域主権国家」を目指すしかないという難しい論調の学者もおられます。不動産格差社会への対策と結論が似ていますので、その提案の一つだけでも紹介しておきましょう。
「グローバリズムと老人国家に変貌する明日の我が国において、その夢を託すには『開かれた小国化した地域社会のイメージ』にある」という趣旨のものです。
このような内容を書いた本等の紹介をするのは、弁護士のコラムとして業務から拡散しますので、ここらへんで止めます。
業界紙のニュースに、再生不動産を主要な業務とする会社も出始めたと書いてありました。村おこし、町おこしなどの地方復活の頑張りを、このような会社とリンクさせるとか、その他あらゆることを試して、「地域社会の復権」をなしてほしいものです。

 

今回のコラムは、一度に6回分を書きましたが、分割して掲載します。

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一 劣悪不動産所有者からの相談に対するその対策
 
 1  相談者の方は、先ず劣悪不動産を放棄したいということから始められます。
      当然、既にご承知のとおり、不動産の放棄はできないという法律の話をしますが、なかなか納得されないのですね。
 
2 困り果てられた相談者は、次に、国や地方公共団体に寄付したいと相談をされることが多いです。懸案不動産が、道路部分などであれば建築基準法42条などで検討しましょうとも言いますが、そもそも劣悪不動産ですから道路などに用立てられるような物件ではないのです。
ところで地方公共団体では、昔は不動産の寄付を割合受け付けてくれたように思います。最近は否定的な話ばかりです。確かに、劣悪な不動産で管理費用がかかるだけであれば、地方公共団体の財政を圧迫してしまいます。最近では、地方公共団体でも寄付基準を作成しているところが多いと思います。換価できる等、何か利用価値のある不動産でなければ寄付を受け付けてくれません。
NPO法人等に対する寄付は話にも出てきませんね。これは税金面や諸費用を心配され、既に検討済みだからではないでしょうか。
とにかく「劣悪不動産の所在する地方公共団体に行って聞いてみてください」と申し上げることにしております。
 
  整理回収機構(いわゆるRCC)で行っていたことを紹介しましょう。
整理回収機構では、破綻した金融機関の劣悪不動産を多数所有していたことは既にお話ししました。何とか処分しないと整理回収機構に終わりがやってきません。預金保険機構の子会社ですから、国の業務を代行している訳です。とにかく処分して所有者でなくならねばなりません。
あまり大きな声で言ってはいけない部類に属することかもしれませんが、結論としては、多くの不動産を纏めて、一括売却の手続をするしかないということになりました。
確かに、劣悪不動産を有する会社からの相談で、一括購入したことから発生した相談もありました。メリットのある不動産と劣悪不動産を一緒に購入したが、残った劣悪不動産をどう処理するのかで頭を痛めているという相談でした。整理回収機構と同じ処理をしている会社も多いことが分かります。
 
二 顧問会社の社長が実践されていたこと
 
1 相続財産制度の利用に関する珍しい相談も紹介します。
この方は私が弁護士になったと同時に顧問契約をしていただいた30年来の私の大切な方であります。あまりプライバシーをお話ししたくもないのですが、社長さんは、資産家で、不動産の評価には大変厳しい鑑識眼を有しておられます。当然に多くの不動産もお持ちです。
しかし、不動産の放棄ができないことを知られたときには、大変驚いておられました。社長は、故郷から無一文で大阪に出てこられ、大成功をおさめられ、チェーン店を何店舗も持つ成功者であります。ご両親は、山深き田舎に土地を持っておられましたが、劣悪不動産で苦労されたようです。
ちょうどお母さんが亡くなられ、この話になりました。社長は、劣悪不動産を子孫に残す必要はないので、今回相続はせず、残る不動産については相続財産管理人を選任するとまで言われました。何故ですかと聞き返した私は、まだ不動産神話を信用する古い体質があるのでしょうか。私は「思い出はないのですか?」とか、質問する自分に疑問を感じつつ、相談に乗った記憶があります。
 
2 この社長さんには、まだ驚いたことがあります
雑草除去条例も制定されていない地方で、趣味を活かす別荘をお持ちでした。その趣味は省きますが、とにかく成長すさまじい雑草には大変悩まされておられたそうです。近所に第三者がお住まいの家もあったようで、毎年ひどい伸びの雑草対策に苦労されたようです。
いろいろ悩やまれたのでしょう。社長さんは、管理人を置くより手数がかからないとして、この土地に鉄板を敷きつめ雑草が生えないようにしたというのです。当然、風で飛ばないかなり重い鉄板を置き、その上に鉄板と分からない工夫をしているというのです。
前回紹介した地方公共団体の雑草除去条例が頭をよぎりました。しかし、一度行って見てみたいとまでは思いませんでした。
 
三 原野商法は劣悪不動産入手の典型
 
 1 今回は自分の反省事例を紹介しましょう。
      私が、破産管財人として選任され始めた頃の昔の話ですので、20年以上も前の事例です。
          破産管財人として、破産会社の破産整理と同社社長の財産を換価していたのですが、担保のついていない北海道帯広の山林が残りました。帯広の土地を買ってくれるような人はいないのかと社長に聞くと「その土地はリゾート開発されるということで購入したが、今回の破産で不義理していて買ってくれそうな人はいない」という話でした。私は何でも調べるのが基本だと思う弁護士ですから、厚かましく帯広の司法書士の先生にまで電話を入れて聞きまくりました。その話では「そこは原野商法の土地です。現地にいらっしゃると言ってもヒグマしか生活していませんよ。その土地は一坪何円の評価が出ればいいほうでしょう」というのです。担保物でないので強制競売もありません。
 
   驚きましたね。女性の裁判官は何とか処分しろと言い続けるのです。不動産を残したままでは終わりにできないというのです。勿論反論はしました。「原野商法の被害者を増やせとおっしゃるのですか?」、「原野商法の片棒を担げとおっしゃるのですか?」と。
       破産管財人において換価処分できなかった不動産は、「財団から放棄」して債務者に所有権を戻してしまうのですが、裁判官はそれにも納得しないというのです。当時は原野商法の第二次被害も言われていない時代だったのです。私は最後の手段として、本当に親しい当事務所お抱えの不動産屋さんに、泣いて買っていただきました。
今にしてみると反省しきりですが、当時は破産者の財産(特に不動産)を財団から放棄することが許されない時代背景もあったのです。
 
3 最近、原野商法の被害者に再度電話がかかってくるようになったと聞いております。今頃、詐欺電話があるなんて不思議ですが、一度騙された方は再度騙されるというのがその業界の常識なのです。買い取ってくださった不動産屋さんに申し訳ないという気持ちで一杯です。
 
  本項でのまとめ
     これまで話してきましたとおり、劣悪不動産を処分する良い方法はありません。原野商法の被害者にならないよう警告することはできますが、遺産の中に劣悪不動産があれば問題が違います。その場合には、相続放棄を検討するしか方法はないでしょうね。遺産の価格を厳密に計算して不動産の価格と管理費用等を比較し、損得を判断するしかないでしょう。それでも、ご両親の思い出の不動産を放棄することなどできないことも多いでしょうね。
困りました。
不動産の放棄に関する抜本的な法律制定もないと思います。国が、劣悪不動産を国の費用で管理しないといけないような法律制度は容認されないと判断できるからです。条例の時のコラムと矛盾しますね。


 

 

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