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コラム - 201109のエントリ

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1 奥さま付添いの法律相談

  労使紛争の相談で奥さま付添いはおかしいと考えるべきでした。

しかし、一般に法律相談の際、誰かが同伴されることはよくあることですし、社員10人程度の会社なら奥さまが経理を担当されるなどして一緒に相談されたいというのも全く疑問を差し挟む余地はないものです。

でも本件は奥さまが既に会社に関与されなくなって久しく、社長であるご主人が心配で同道されたということでした。

 

2 本件の発端

相談の内容は、会社の経営が傾いたのは社長のやり方が悪いとして、部長が職場を占拠し、他の社員に社長交代の呼び掛けをしており、社長である相談者は会社に出られない状況になっているというものでした。

ちょうど金曜日、顧問先からの紹介による緊急の相談でした。種々相談をした結果、緊急を要するということで直ぐに現場である会社に行くことにしました。会社は部長等の社員が職場占拠をしているため、当事務所の男性職員をも途中から同席させ、職場占拠を解除させる手段等種々相談をして、翌日の土曜日には現場に入ることにしました。

 

3 事件の急展開

翌日土曜日、地方都市に所在する会社に行きました。しかし土曜日が休みのせいか部長を始め従業員の誰もおらず、従って誰にも邪魔にされずに帳簿類等の持ち出しができました。その後、地方都市のターミナル駅喫茶店で奥さまと一緒に相談をしました。

  奥さまは「もういいじゃない」とご主人に話され、「部長に任せるか、破産の申立をしたらいい」とも提案されました。社長は悩んでおられましたが、帳簿類の検討からしても破産という選択も可能だと判断される事案ではありました。とにかく月曜日に結論を出すことになりました。我々は、月曜日約束の時間に事務所で待っておりましたが、来所されず、また電話もありません。午後になってやっと奥さまから電話がありました。その電話内容は「社長が亡くなった」というものであり、相談は後日ということになりました。

本件の結論は、事業については部長たちに任せるということで一件落着となった事案でありました。

 

4 ショックは男性事務員の告白です。

男性事務員は、当職事務所に来る前、有名学校の元有名教師であり、当時有名学校との労使紛争を抱えている立場にあったことからも、土曜日の相談の際、喫茶店で、社長に対して「仕事を続けたいなら、もっと頑張れ」と具体的にアドバイスをしておりました。社長の肩を落とした姿が印象的でありました。

ところで男性事務員には彼を慕う学生や仲間がたくさんいましたが、その仲間の一人が社長第一発見者であったことです。仲間からショックを受けたという連絡があり、会ってショックの内容を問い質したところ、相談を受けていた懸案の社長のことだと分かり、男性事務員は大変なショックを受けました。

彼は「不思議な縁」を語っておりました。

 

5 「職人に心を」

私にも重大反省を迫る事件でありました。どうしてもっと親身になって相談しなかったのか。社長の事業継続の夢と、奥さまアドバイスの断腸の思いに寄り添えなかったのかという反省です。

事件を見事に片付けるということではなく、弁護士という法律問題解決の職人が、あらゆる可能性に目を配るという基本姿勢の不十分さを思い知った事件でありました。職場占拠をどのように処理するのか、或いは部長にどのように事業承継させるのか、それができないならどのようにして会社を破産させるのかという問題解決の流れ以上に、配慮するべき不可欠のものがあったのです。

 

6 労使紛争は「悩みのるつぼ」

  労使紛争は、労使のどちらに正義があるかなどとは、容易に語ることのできない案件であります。角度を替えて経営者サイドからみるなら、企業人は、苦渋の決断を日々迫られ、悩んでも通常は決断できず、或いはやっと決断しても、ルーティンワークの業務と殆ど変りのない業務を実行していることが殆どであります。

  当事務所は、経営者サイドにて、今日まで弁護士業務を続けさせていただきました。当事務所は、弁護士というより職人を自負して業務に邁進してきましたが、労使紛争の主役は経営者であり従業員であります。経営者には企業存続の義務が、社員には家族を養い生き残る権利があります。

労使紛争には人間という生き様がそのまま反映していると考えて間違いはありません。

  

  次回は、話を替えまして「日本の労使問題は社会主義化していないか?」と題して、私の考えるところを述べてみたいと思います。

 

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