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自救行為或いは自力救済(その1 弁護士の仕事は危ない)

 

一 侵害された権利の回復
 
1 はじめに
(1) これまで「危ない思い」をしたことがありますか?と言う質問は多い。弁護士には「危ない仕事」は本当に多いのです。
  お腹に新聞紙を巻いてナイフ等から身を守る事前準備をしたというような単純な「危ない事件」も確かに多々ありました。しかし、これは私の自慢話に通じるし、馬鹿馬鹿しいので致しません。
でも今回から何回か、私の依頼者の要望或いは言動で「危ない思い」をしたという経験等について話してみましょう。
 
(2) 自救行為乃至自力救済と言う言葉の法律論は終わりで説明しますが、ここでは「裁判手続きを経ないで自分で侵害された権利を回復することを言い、一般的には許されない」と理解しておいてください。
 
2 私の気質
(1) 今までの経験からして、危ない仕事の一つ「自救行為・自力救済」に巻き込まれる弁護士は、その方の気質に原因することが多いと思います。しかし、本心を言うと、その先生は自己の気質に注意をすればいいだけだと思います。依頼者の要望に悩みもしないで初めから自救行為を避け、依頼者と正面から向き合わない弁護士活動をされる先生が多いが、私はその先生を絶対に尊敬しません。そのような先生は誰からも喜ばれないし、何の社会貢献もないサラリーマン弁護士です。危ない仕事で悩む先生こそ素晴らしい気質を持っておられるのです。
 
(2) そこで私の気質について説明しましょう。私は、依頼者の方に対し、ポンポン言っているようであっても依頼者に喜ばれる弁護士足らんとする傾向が猛烈すぎるそうです。
私の事務所の副所長から、このように批判されています。
「所長は『報酬はきちんと貰え!』、『依頼者に迎合的な弁護士活動をするな!』、『人権擁護などという用語は使うな、そんな用語は我々に関係ない!』などと発言するくせに、自分が一番妥協的な「安い」金額で引き受ける、受任後も依頼者に寄り添いすぎて人権擁護なんて言葉以上に弁護士活動をする。そんな逆向きの発言は、若い弁護士に誤解されるし、根本で誤った教育になる。そんな言い方は止めなさい」と何度か注意されたことがありました。事務所副所長は私の気質や発言の本質を直ちに汲み取る本当に優秀な弁護士ですが、でも、その指摘には、「なるほど私は危ない気質を持っていて、それを自覚していないな」と改めて気づき、反省したこともありました。
     こんな私ですから依頼者が自衛行動を主張される場合には本当に「危ない橋」を渡る 
     ことになります。
 
二 自救行為乃至自力救済による「危ない事例」
 
1 典型的な借家明渡事件
(1) 弁護士になりたての頃ですが、賃料不払の方を追い出してほしいという依頼を受けました。依頼者の方はお年を召したご婦人で、きちんとした方でありました。
私は若い先生方に賃料不払による明渡請求事件など、法律論としては本当に簡単な事件だと説明しております。しかし賃料収入で生活されている依頼者にとっては明渡に経費をかけることは経済的に合理性がありません。毎月の安い賃料収入に比して経費のかかる弁護士・裁判費用では収支が合いません。明渡事件は分かり切った手順を踏むだけなのですが、しかし、その手順は法律通りでなければなりません。
 
(2) 依頼事件の賃借人は何か月も賃料を滞納しておりましたが、社会的に問題のある「その筋」の末端構成員の方でありました。こんな方であっても、経費をかけたくない依頼者に配慮して内容証明による解除通知後、出ていってくれるよう訴訟提起前に打診をします。危機管理はきちんとしますが、その筋の方々に恐怖したことは一度もありませんので「危ない話」は、そんなことではありません。「末端の方」に聞いたところ、金はないので滞納金は払えないが、近いうちに引っ越しをするという話でした。
ところが、その「末端の方」は出ていく直前に行方不明になりました。どうも警察に捕まってしまったらしいと依頼者は話されており、どこの警察かも分からないという事案でした。
 
(3) それからの依頼者の要望は苛烈でした。本件の契約書には解除後、残されている動産の放棄条項或いは動産は賃貸人で搬出・処分できる条項を不動産業者のアドバイスでわざわざ入れているのだから直ぐに搬出してください。裁判をして長期化したり、新たな費用をかけたりしないで、一刻も早く新しい賃借人から賃料をとれるようにしてほしいというものでありました。
 裁判所の手続きを経ない動産搬出を自力救済と言うのですが、家具等の動産類を勝手に搬出すると、持ち出された相手方から利用できなかったことを理由にして損害賠償請求される危険性があります。それに動産が壊れたとか或いは無くなったとして器物損壊罪や窃盗罪等の犯罪だと言われる危険性もあると説明しました。依頼者が強調される動産搬出条項を事前に入れておいても判例は厳しい態度をとっており、法的に認められない可能性が高いことも説明しました。
 
(4) 新しい反論が出ました。連帯保証人の立ち合いで搬出してくれればいいというのです。連帯保証人に連絡して賃借人の状況について聞いてみたところ、連帯保証人は賃借人の兄貴分ということではありましたが「俺たち下っ端が、組の重要事項をお前らに話せると思うか」と逆に脅かされる始末です。   ここで次回に続きとします。

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