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営業秘密に関する訴訟に勝つためにはどうすれば良いか?(その2 不正競争・情報漏洩)

カテゴリ : 
情報管理・不正競争

 

1 「秘密管理性」が争われた場合、約7割が負けてしまう? 
(1)前回“退職した元従業員に営業秘密(企業秘密)を持ち出されたら?”というコラムを書きました。今回は主に顧客情報(顧客名簿、顧客カード、顧客データ等)が持ち出された場合(情報漏洩の場合)を例に、訴訟でポイントとなる部分を前回よりも詳しく書きたいと思います。
   元従業員に顧客情報等の営業秘密を持ち出された場合、経営者の方の多くが激怒されているであろうことは容易に想像できるところです。既に顧客を奪い取られたとなれば絶対に許すわけにはいかないと感じるでしょう。社内秩序に影響するばかりか、持ち出された顧客情報を利用して更なる顧客奪取行為が行われる可能性もあるのですから当然のことです。
   そのため、経営者の方は早く勝訴したいと望むはずです。「顧客情報を持ち出されたのは明らかなのだから、早く訴訟提起を行えば勝訴は確実」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
 (2)しかし、前回も申し上げた通り、“顧客情報等の持ち出し行為が不正競争に該当しない”と判断されてしまった事例は枚挙に暇がありません。
   特に、顧客情報等が「秘密管理」されておらず、不正競争防止法上の営業秘密に該当しないと判断されている例が多いようです。
   経済産業省が作成している「営業秘密管理指針(改訂版)」によれば、平成221月末時点までの間に「秘密管理」されているかどうかが争点となった81件の裁判例のうち、「秘密管理」されていると認定されたものは、たったの23件しかないそうです。
   即ち、元従業員に顧客情報等を持ち出されたから訴訟提起したにもかかわらず、「秘密管理性」が否定されてしまった裁判例は約7割強にも及ぶということです。
   「秘密管理性」が否定されれば、営業秘密としても認められないことになります。そのため、「秘密管理性」が争われた場合、約7割強は営業秘密に関する論点で負けてしまうことになります(実際はその他の論点も争っているでしょうし、工夫して争うことは可能ですから全面的に敗訴したかどうかまでは不明です)。
 
2 「秘密管理性」とは何か?
 (1)それでは、「秘密管理性」とはどのようなものなのでしょうか。
   「営業秘密管理指針(改訂版)」では、裁判例において、「情報の秘密保持のために必要な管理をしていること(アクセス制限の存在)、「アクセスした者にそれが秘密であることが認識できるようにされていること(客観的認識可能性の存在)」が重視されていると指摘されています。
   分かりやすく言い換えますと、‐霾鵑縫▲セスできる従業員が制限されており、秘密情報であることを従業員が認識できるようなシステムになっているかどうかがポイントになります。
   「営業秘密管理指針」では、それ以外にも「営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法」を具体的に列挙しています。
   経済産業省では、「営業秘密管理チェックシート」も公開していますので、御社の営業秘密管理体制がどれくらいしっかりしたものになっているのかについて是非チェックして頂きたいと思います。
(2)営業秘密管理体制を構築するための制度として、「ISMS適合性評価制度」或いは個人情報に関する「プライバシーマーク制度」があります。これらの制度はコンプライアンス体制の整備という意味でも重要なので一考の価値はありますが、経済面でも時間面でもコストが高くなります。
   そのため、あらゆる企業が利用するというわけにはいかないでしょう。コストを低く抑えたい場合、まずは「営業秘密管理指針」や「営業秘密管理チェックシート」に従って営業秘密管理体制を構築する準備が必要です。
 
3 勝訴するための戦略を立てる必要があります 
訴訟において「秘密管理性」が争われた場合、約7割が負けてしまっているというデータを重視して頂きたいと思います。
元従業員に顧客情報等を持ち出されたにもかかわらず負けてしまうなどということは法律の専門家でない経営者の方々には到底理解できないかもしれません。しかし、実際に負けてからでは“あとの祭り”です。
もっとも、「営業秘密管理指針」に挙げられている項目の全てを満たしている会社ばかりではありません。むしろこれらの項目を満たしていない会社の方が圧倒的に多いでしょう。これらの項目を全て満たしていないから勝訴できないというのでは、殆どの会社が営業秘密を持ち逃げされてしまうということになりかねません。
そうならないために重要なのは、普段から着実に営業秘密管理体制を構築し、訴訟提起する場合には的確な証拠を提出して裁判所に理解してもらう戦略を立てることです。
怒りにまかせて拙速な訴訟提起をしてしまうようなことがないよう、しっかりと分析して戦略を立てることが必要です。
営業秘密や情報漏洩に関する訴訟を提起したいと考えていらっしゃる経営者の皆様、訴訟を提起する前に是非一度、当事務所にご相談にいらっしゃってください。
 
       (今回の記事は岡本直也弁護士が担当しております。)

 

 

 

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