HOME  > コラム  > 不動産の放棄  > 「不動産は放棄できない」の法整備
アーカイブ一覧はこちら

「不動産は放棄できない」の法整備

カテゴリ : 
不動産の放棄
1 これまで本コラムでも、“不動産が放棄できない”ことについて何度も書いてきました。ところで、近時の新聞報道では、今回、“不動産を放棄できるようにするための法整備”が、やっと、なされるところまできたと頻繁に報道されるようになりました。
 実は、昨年、親しくさせていただいている国交省の高官の方から、「役所でも、来年には(本年になります)、“不動産を放棄できるようにするための法整備”の準備を進めております」との内々のお知らせをいただいておりました。この高官の方とは、3年以上前の「不動産は放棄できない」ことを纏めた学術雑誌の掲載を縁に、本当に親しくお付き合いさせていただいております。当時、お会いした際には、これ以外の所用があったことから、お気持ちを頂いたのみで、それ以上の意見の交換までなしえませんでした。
 ところが週刊誌(経済関係)の元編集長で、現在有名新聞にて編集に携わっておられる方からお電話をいただき、事務所でお会いしたところ、“不動産を放棄できるようにするための法整備”について真剣に悩んでおられることが判明しました。
 この論点は本当に難しいのです。正解などないでしょう。
 新聞社という報道機関において、法立法の相当性や妥当性を論じられることは本当に難しい業務になります。編集者が私有財産制度の根源にまで遡り、真剣に悩んでおられるその姿勢に、長くお付き合いしてきた私は、本当に感じ入ってしまいました。でも同席させていただいた若い先生にはあまり面白くなかったと思います。私が、若い先生に「つまらなかったんだろ?」と聞いたところ「はい」という回答でした。不動産の放棄に通暁する私の事務所に所属していても面倒な論点なのです。
 そこで、国交省及び編集者の方の悩みを少しでも知っていただくために、このコラムを急いで書かねばならないと決意しました。

2 本年6月2日、日本経済新聞において、政府が“所有者不明土地の把握や抑制の仕組みづくりを急ぐ”として報じております。そして最も難解な問題は“土地所有権の放棄やみなし制度の導入”であるとして、やさしいものから順に、表入りで報じております。
 法整備の準備に関し、その全体像を知っていただくため、「実現のしやすさ」に関する項目を表に従って挙げておきましょう。先ず一番やさしいものは、‥亠官に変則型登記の所有者を特定する調査権限の付与、次に実現しやすいものは、国土調査法改正で地籍整備を加速すること、次にE效牢靄榾,硫正、ち蠡嚇亠の義務化、ゥ泪ぅ淵鵐弌爾覆匹播亠簿と戸籍の情報を連携させ、所有者情報を把握することとしております。最後に、“土地所有権の放棄やみなし制度の導入”になるのです。
 どうして最も難しいのですか?
 この疑問に答える前に、私は弁護士ですから、日本弁護士連合会の会報に不満を感じている点を申し上げておきましょう。前項で当事務所の若い先生を題材にしてしまったことも、同じ傾向を感じているからなのであり、決して傷つける意図などありません。
 日本弁護士連合会発行の本年5月1日付会報には「所有者不明土地問題に関するワーキンググループの設立経緯等」なる特集を組んで報じております。しかし、相続放棄或いは相続人不存在の論点が壁になっており、正面から「不動産の放棄」について論じるものではありません。相続財産管理人が国庫に帰属させる手続きの困難さ等、既に私のコラムでも書いておりますが、相続財産管理人や破産管財業務等に通じている者なら自明の話しです。現在、これらの論点に関係して法整備がなされようとしているのですから、一歩前進ではなく、最も難しい論点にも挑み、これからなされる法政策について論じてほしいのです。まさしく法政策に関与する意思を示すべきではないでしょうか?
 国交省の方や、取材に走り回っておられる編集者の方の悩みに通じる議論を、是非して頂きたいと思ってしまうのです。

3 “土地所有権の放棄やみなし制度の導入”の何が難しいのでしょうか。本コラムは、“論じる場”にしたくありません。そこで、編集者の方の疑問を私なりに、勝手に解釈して書いてみましょう。「不動産の放棄が自由に認められることはないでしょう。いらない土地をどんどん国に帰属させることができるとすると、やはり国庫が破綻する。そもそも個人の私有財産制度が他人に迷惑をかけるものであってはなりません。でも漏れ聞くところによると、不動産の放棄には一定の対価が必要との結論になりそうです。賦課金でも名称はどうでもいいのですが、そのような制度になれば、国の要求する対価より安い金額で、外国人に譲渡することになってしまう、そしてそのようなビジネスが新たに出てくるとまで考えてしまうのですが・・」(多分、編集者の方は、国家の存亡に関わると思っておられるのでは・・)。

4 最後に不動産の放棄に関する珍しい私の経験を話してみましょう。
 数年前のことですが、私は、ある財界の方に、不動産の放棄に関する個人責任に関し、常々持ち続けていた疑問を口にしました。その財界人は次のように話されました。「それなら、私は、所有者責任を果たすために、ホームレスの方に無償で譲渡しましょう。所有権移転に関する費用等は、所有者である私がすべて負担します。無償で取得されることになるホームレスの方は、縄文時代と同じく竪穴住居を作って生活されればいい」と言われてしまったのです。確かに費用は、今回放棄に付加される賦課金より安く、竪穴住居ですから、土地の掘り返しも、草屋根も人力で可能で、重機も不要です。発想に驚きました。
 落ちが笑い話みたいで失礼します。

お問い合わせ

お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591

メールでのお問い合わせ:ご質問・お問い合わせの方はこちら

  • 閲覧 (215)