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破産管財事件の依頼者は誰か?(宗教法人の破産)

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破産事件
1 前回は、破産法上配慮されねばならない複雑な立場の利害関係人について書きました。第二次世界大戦にまで、遡って考えねばならいことに驚いていただけたでしょうか。
 そもそも、前回コラムの私の最大の関心は、借地権という法的権利を有しておられる借地人です。しかし、借地人と申しましても、破産法上の位置づけは借地料を払うだけの債務者でしかありません。考えなしの破産管財人なら、ガンガン借地料を回収して、それでも支払わない借地人には、法的権利がないのだから保護に値しないと切り捨てるだけで終わりです。
 家庭裁判所に破産の申立てをお願いされた国の税務署の立場は、何十億という相続税の回収、即ち破産法上の債権者そのものの立場です。しかし、本件に関与された心ある役人の方の関心は、借地人の将来をも見据えた解決策を希望されていたように判断できます。それも、近時評判の「町づくり」という行政的な関心をも示されていたのです。大分昔のことなのですから、本当に驚いていただきたい。
 開発業者の方から、当事務所の事務方が作成した、本件に関与する者の何枚もの地図的なチャ
ート(借地人の分布を示すもの)を高価で買い取りたいと申し出されたときには、本当に管財人冥利に尽きると思いました。開発業者にとって宝の山だったのです。

2 前回のコラムで、破産法上における「債権者」という概念については、破産法第1条の全文を紹介して、法的権利者として第一位に考慮されるべきものであることを示しました。
 債権者と言っても種々です。典型的な破産業務では、通常のビジネスで失敗した破産者から取引代金を回収しなければならない債権者が思い出されます。また通常の取引でない損害賠償請求もありますし、税金や離婚の際に生じる養育料などもあって、本当に種々様々です。
 詐欺的取引の被害者という事例もあります。弁護士が被害者を集めた被害者救済の会のような破産事件もありました。私が、裁判所から任された被害者の会の事件では、弁護団の究明に耐え切れず、詐欺取引に走った会社が逆に破産の申立てをした事例もありました。
 通常、弁護団が破産の申立てを行います。しかし、この事案では、弁護団が法的な手段を含め、種々の方法で会社を追い込んでいたようです。確かに、会社の末期には、目の見えない老人にファックス機を何台も売りつけるなど常軌を逸した商売をしておりました。
 被害者の会は、裁判所が任命した破産管財人である私に協力的ではありませんでした。被害者の会が、私に面会を申し入れてきたのは2週間以上経過した後ですから、この被害者の会を軽蔑したくなる私の気持ちを分かっていただけるでしょう。2週間もあれば、できる破産管財人は、本店及び支店3カ所、倉庫程度であれば現状を押さえ、在庫等の商品の換価についても、遅くとも目途がたってきている段階です。
 弁護団は、動産執行類似の法的ではない行動もされていたのでしょう。破産管財人の私達が倉庫に入ろうとすると倉庫管理業者の弁護士が“入庫を実力で阻止します”という訳の分からない抗議をしてきました(安心してください。破産管財人の私は“ワクワクして”、「警察に連絡するぞ」と言いながらドンドン入庫しました。この時は、若い肉体派の当事務所の先生も活躍してくれました)。
 弁護団の弁護士先生は、女性先生を中心に来所されましたが、最初は批判的な姿勢でした。私の経過説明で批判のトーンが徐々にダウンしたことが不思議で、昨日のことのように思い出します。

3 既に30年近く昔のことになりますが、新興宗教法人の破産管財人になって財産整理をした経験もあります。この破産管財事件では通常想像できない経験をしました。この事件は、弁護団の先生方が大変に活躍されておりました。破産申立て時には、一般の債権者に対する支払いは終わり、何億もの現金をどう精算するかという段階にありました。
 宗教法人の解散ですが、理由があって破産の道しかありませんでした。
信者の方の帰依により浄財が寄付され、通常の財産整理をしても残存する現金があまりにも多額でした。詳細を述べることはできません。当時の関係者の方の「心の平安」に影響することが予想されます。概略にとどめますが、関係者の皆様方の誠意ある対応及び破産事件の結末については、ご紹介するに値すると信じます。
 先ずは、都庁や法務省等に問い合わせを行い、残財産を宗教法人の構成員である信者の皆様に配当することになりました。住所移転等により裁判所の破産通知書がつかないため住民票だけでも500通は取り寄せしました。土曜日及び日曜日は、事務所の数メートルの廊下を信者の方への連絡票で埋め尽くされました。電話連絡のために、特別チームを作って対応しました。
 これほど頑張って連絡したのに、何と!殆どの方が信仰を理由にお金を受け取ることを拒否されたのです。本当に驚きました。いろいろ書きたいのですが、ここらへんで辞めさせていただきます。

4 宗教法人の構成員である信者の方々に受け取っていただけないとなると、本件破産管財事件は終わりになりません。破産事件ではありえない残現金の処理に煩悶の日々が続きました。弁護団の先生方の報酬か、破産管財人の報酬とするには高額すぎるし、あまりにも下品です。
 再度の役所巡りの結果、当時、裁判所に出向されている大蔵省の役人の方とお話しして国庫に納めることで一件落着しました。
 破産事件になるまでの経過は複雑ですが、結末は、本当に爽やかな話で終わるのです。

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