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第三者委員会 (株主総会 その4)

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株主総会
一 第三者委員会の報道は面白い

1 前回のコラムで、形式的或いは権威主義的な株主総会は嫌いだと書きましたが、まさしく「第三者委員会」はその象徴ですね。
  特に笑ってしまったのは、東京都前知事舛添さんが「第三者の弁護士に厳しい調査を依頼した」という直近の事例です。記者会見に登場された弁護士、特に通称「蝮の善三さん」の記者会見は傑作でした。形式的な返答に終始し、最後は開き直り。これで舛添さんの得になったのか疑問でした。最初は腹を抱えて笑い、そのうちに本当に困ったことだと頭を抱えることになってしまいました。
報道陣の質問も紋切り型でしたが、そもそも「第三者の弁護士」としか言っておらず、第三者委員会ではないのですね。2名の弁護士では日弁連のガイドライン3名以上の枠組みにも反します。
「蝮の善三さん」については、私の関係した会社の不祥事の際、第三者委員会委員として登場していただいたこともあるため、余計に関心が高くなるのです。

2 第三者委員会とは、日弁連のガイドラインの要約によりますと、企業や組織において犯罪行為、法令違反、社会的非難を招くような不正・不適切な行為等が発生した場合或いは発生が疑われる場合に、企業や組織から独立した委員のみで調査をし、原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言する委員会とされています。
私は、日弁連が第三者委員会ガイドラインを出す相当前、ある顧問会社から第三者委員会の体裁をとって、不祥事で紛糾する株主等のステークホルダー達を押さえてもらえないかという依頼を受けたことがあります。この会社は外国人が社長をされておられ、第三者委員会のような紛争解決策をよくご存知でした。
私は悩みました。
だって、第三者委員会といえば聞こえはいいのですが、徹底的に会社の不正を暴くことを希望されている訳ではありません。むしろ会社の実態の何処までを話せばステークホルダー達に納得してもらえるかの限界点、即ちその調和点を探すことが使命なのです。そもそも会社が第三者委員会委員に金を支払って、会社が潰されるようなことを期待する訳がありません。深く考えなくとも当然のことです。
最終的に私が顧問から外れることのデメリットを考えていただきました。結論として、今の会社体制で今後も経営できることを前提とし、不祥事については徹底して謝罪し、企業活動を害さない範囲で役員を変更し、その他情報開示を行うとういう方針にて解決しました。

二 「蝮の善三さん」という弁護士

1 「蝮の善三さん」は、多くの第三者委員会委員をされておりますが、上記の点に関する理解力は悪い意味で素晴らしいと判断できます。
第三者委員会の報告書に関して「格付け委員会」(私的な検討委員会)なる組織もありますが、そのホームページを見ますと各報告書について点数も付けられております。ここで厳しく批判されている報告書は、社長のような最終権威者を庇うような形での決着、或いは組織存続を図るため一番重要なことは調査から外すというような種々の工夫をごらんいただけます。
「蝮の善三さん」は上記のテクニックに長けておいでで、ネットでも“汚職の守り神”のように書かれております。

2 ここで「東芝 粉飾の原点」という本を紹介しましょう。
「東芝 粉飾の原点」は日経ビジネスの記者が東芝の不正会計の構図を暴いた本で、次々と粉飾が暴かれる呆れた本です(日経BP社発行)。本コラム作成時、東芝は特設注意市場銘柄から外れるかどうかという瀬戸際にあります。株式投資に興味を持たれている方の中には、東芝株は今が買い時かどうか悩んでおられる方もおいででしょう。
でも“買い”に入るべきでないことがこの本で分かりました。ウエスチングハウスに関する粉飾は、第三者委員会報告書提出後4カ月も経過して、やっと“パンドラの箱”が開いたのだそうです。5000億円を投じて買収した東芝子会社、アメリカの原子力機器大手ウエスチングハウスの赤字の実態について詳細を知ると“買い”ではないですね。しかも将来展望として、東芝が原子力発電所の受注規模を、発表毎に順次縮小しつつも、現在も連結で45機(15年間で)、ウエスチングハウス単体で64基(同)の受注というのは先ず無理だと思います。
おっと!違いました。この本では、第三者委員会がウエスチングハウスについては調査しないことになっていたという暴露に驚いてほしかったのです。投資の話ではありませんでした。立て続けの粉飾が、最後ウエスチングハウスというのでは本当にひどい話です。子会社は調査をしないと約束したうえでの第三者委員会の報告書だと言われては、東芝に関係する利害関係者、ステークホルダーは何を信じればいいのでしょうか。

三 形式的第三者委員会にならないための対策

1 形式化した第三者委員会報告書に対する対策として、その前提事項を確認する必要があります。先ず、私と同様の悩みを持たないような弁護士とはお付き合いいただかないことです。“誠意”という人間としてあるべき姿が見えません。
もちろん不祥事の発生原因に関する調査と言いましても、企業にとって紛争解決にならないのでは、お金を支払って第三者委員会に依頼する意味がありません。この矛盾に悩まない弁護士に、利害関係人にとって納得される報告書など書ける訳がない。
現在、日弁連が指導する第三者委員会も、私が煩悶した当時と同様、日弁連ガイドラインとして、会社から時間給の形で報酬をもらえることになっております。

2 そこで違う形での対策を提案してみようと思います。
一つとして、企業不祥事の際に備えて第三者委員会委員に対する保険による仕組み造りです。私は複数の外部取締役もしておりますが、会社代表訴訟等に備えた保険に入っております。それと同様の保険による仕組み造りはどうでしょうか?
次に、上場企業の場合には、証券取引等監視委員会などの公的な立場からの依頼という形にしてはどうでしょうか。対象会社からは課徴金プラス第三者委員会委員分の報酬を上乗せして追徴する制度を作るのです。このような制度の検討は、ひいては上記保険の仕組み造りにも進展していくのではないでしょうか。
第三者委員会委員報酬の仕組みを変えない限り、形式的第三者委員会で終わるのは無理のないことだと思います。
今はその過渡期ともいえます。

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