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強制執行費用の具体例(その7)

カテゴリ : 
強制執行

 

一 当コラム掲載の「強制執行費用」
 
1   最初に示しましたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例は、私の事務所と懇意な業者の方にお願いし、当方から条件をつけて見積もってもらったものであることは、既に説明しました。
説明する段取りとしては、一回目の明渡催告の執行と二回目の明渡断行の執行の二つに分けるのが通常でしょう。しかし、最もお知りになりたいはずの上記計算書から説明するのも面白いと思います。 
この計算書では、執行前に納付が必要な執行予納金(民事執行法141)も記載しております。一方、執行補助者については、執行手続に関与されることにより発生する別途の費用です。事例によってまちまちで、イメージしていただくだけで十分です。
 
    計算書第一の事例
      典型的なワンルームマンションの居住用借家です。
      家賃7万円で、二回分の執行費用は相当な金額になります。本計算書は懇意の業者
   さん作成ですから、割引きされているのですね。
      面白い費用として、ペット業者費用という項目がありますね。
      ペットかどうか疑問ですが、番犬として秋田犬を飼っていた事例では、役所で「野良犬」
    を捕まえる業務についていた方が執行補助者としてスタンバイしていました。猛烈に吠
    えていた恐ろしい秋田犬も一瞬でからめ捕られ、柱に繋がれました。
ピアノがあった断行執行事例では、ピアノ調教師の方が動員されており、そこまでしないといけないのかと驚きました。
 
3 計算書第二の事例
よくある事例として営業店舗の明渡事例に関し、全体として見積もってもらいました。
魚屋さんで、20坪程度のもので神棚があるという設定にしました。かつて地方の執行で、子供地蔵を祭るお社があったのですが、執行官は、神主を呼んでお祓いをしないといけないと強く主張されました。やむなく神主を呼んでお祓いをしたことがあったことから、このような設定にしてみました。
この設定では、現場に残された魚等の生鮮食品、ショーケース等の備品に注目してください。これらは執行申立した債権者が買い受けてしまうのが手っ取り早いのです。後日に改めて競売をすることもあるのですが、それでは保管費用等で債権者の持ち出し分が増えます。
補注に示された「神棚の相当期間の任意保管」と「しかるべき場所への移転」という記載。これには困りますね。保管とあれば、倉庫代が発生するのです。
 
二 強制執行の手順
 
1 一回目の明渡執行
一回目については既に説明しておりますが、明渡催告と言って占有状態の調査を兼ねて執行するものです。後に述べますが、出て行ってくれるように催告するのです。
計算書に「催告日」と記載されている費用と「断行日」のものとを区別して見てください。これまで見てきましたとおり、断行執行までするとなると多大な費用がかかることが分かります。20坪の営業用店舗で経験的に判断して数十万円を優に超えるはずです。
一回目の執行がかなり重要だという認識のない弁護士には、何とか任意に退去してくれる工夫をお願いしてみてください。つまり一回目の明渡執行は、相手方に任意に退出していただく一番急所になるものだと考えられます。実際に、この一回目でけりがつくこともあります。
例えば、その筋の方は、暴力を生業にされているのですから、実力で追い出されることは、その方のメンツが立ちません。その筋の方は二回目の断行執行予定日の23日前に出て行ってくれることが多いのです。でも話し合いが必要です。その話し合いも大変です。私たちが床に座らされ、債務者は椅子に座るという上から目線の話し合いを強制されたこともあります。これは実際に体験するとかなり辛いです。
ところで、一回目の催告執行は予告しません。不在の場合も考慮して鍵屋も連れて行きます。不在の場合が多いのですが、執行官は明渡猶予期間を設けて催告してくれます。つまり“突然あなたの不在中に鍵を開けて入りました”ということが分かる文書(公示書)を見える所に貼ってくれるのです。債務者に連絡をとる機会にもなりますね。
 
2 二回目の断行執行
計算書の「断行日」の欄を見てください。
断行は2時間を目途にして行われます。したがって作業員が10名、トラックが3台も用意されております。一回目の催告で割合正確な見積もりができますので、断行は驚くほどスピーディに終わります。
執行日、債権者は決断することが多いので、弁護士が執行現場に臨席するべきです。
 
三   強制執行
強制執行のコラムは7回にも及びました。しかし、これでも十分に強制執行の体験談を述べたことにはなりません。
単なる法律講義のつもりはなく、体験談を中心に書きたいと思いましたので、法律書を漁って説明することはしておりません。
占有移転禁止の仮処分についても、前回の法改正で弁護士にやりやすくなっております。これらについて触れても「面白いな」というコラムになりませんので、詳細は解説書に譲ります。

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