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会社支配権と破産手続(その4)

カテゴリ : 
破産事件

 

1 パターン?の事例紹介
    (1) 会社支配を巡る民事再生型パターン
 ここで紹介するパターン?の事案の場合も社長の解任を発端にしております。元社長派が貸している債権の返済のないことを理由にして債権者破産の申立をしました。?の事案と異なり、現社長は元社長のやり方では事業が継続できないとして叩き出したのですから対抗心むき出しです。破産手続中止の申立、多少遅れて民事再生の申立をしました。
私は当初より調査委員に任命され、主として再生計画を遂行できるかどうかの調査をしたことになります。民事再生を分かりやすく説明しておきますが、要は、「経済的に窮境にある債務者」(民事再生法第1条による)を建て直すため、再生手続開始決定後も、従来の役員が引き続き会社を経営して(このような民事再生を「DIP型」と言います)再生計画案に基づいて事業を継続して再生させることを認めた法制度なのです。こんなありがたい制度はないでしょう。調査委員は利害関係人の申立による場合もありますが、裁判所の裁量で決まります。
 
 (2)  パターン?の論点(再生計画の弁済率は低額)
現経営陣は何としても現在の経営を続けていきたいというものでありますが、弁済期 にある債務を返済できないなら債務不履行となり、裁判所は破綻原因と認定するしかありません。現経営陣の当初の見込みも空しく旧経営陣に対する返済金は集められませんでしたが、現金商売ができる見込みがたったことから民事再生の申立をしました。
民事再生は、各債権者に対して総債権額の一定割合による返済をすることで企業の存続を目的にする制度なのですが、旧経営陣は再生計画案を認めることはないのですから、難しい案件になります。
大雑把な講義になってしまいますが、民事再生では、返済するべき債権額に関し、本当に低い弁済率で、且つ何年にも分割にして返済計画案を作ります。債権者(議決権者)の出席過半数及び議決権総額の2分の1以上の賛成を得ないと認可されません。旧経営陣からの賛成は期待できませんが、でも皆さん、債権者集会での賛成率の実態を知られれば驚かれることでしょう。私の近時の経験では50パーセントぎりぎりの賛成しか得られない案件ばかりが続いております。薄氷を踏む思いとはこのことなのです。
本件も本当にぎりぎりで返済計画案が賛成されました。私の職務は3年間の監督により、そして債権者名簿を裁判所に提出して終了となりました。
 
2 パターン?の事例紹介
(1)  営業譲渡をする民事再生型パターン
 最後のパターン?の案件は、会社の支配権を巡り経営権を取得した現社長派が破産申立をしたが、解任された元社長グループは事業譲渡を内容とする民事再生の申立をして争った大変珍しい案件です。職種は申せませんが、世界的企業につながる業界でも有名な会社でした。
現経営陣は、破産申立直前に設立した別会社による事業の継続を図り、旧経営陣は新会社を設立して、その会社に対して事業譲渡(事業承継)を目論むという企業支配では通常考えられそうな典型事例でした。私は、調査委員、保全管理人そして破産管財人に順次任命されました。
当時、部の最も偉い裁判官から、営業譲渡までを想定した保全管理人による処理の仕組みを破産部の制度として作り上げたいとして依頼された経緯もありました。しかし、所詮、いずれの主張が破産法・民事再生法の理念に適合するかの調査・検討です。
双方が提起する諸条件を法律に従って調査・検討するのですが、双方の陣営の猛烈に緊張した熱い歓迎ぶりには、当事務所所属で私が代理人として選任した2名の若い先生方も刺激的な交渉だったと思います。
 
(2)  論点1(破産会社財産の取り込み)
先ず現経営陣グループの破産申立は、破産する会社の重要財産を別途設立した会社に殆んど取り込むという破産法にいう詐欺破産罪にも問擬しうる悪質さでした。経営紛争に起因する破産申立の場合、注意点はここにもあります。この会社は大会社でしたので珍しく関係ありませんでしたが、通常は、社長も破産申立を同時にします。社長も破産申立をしていたならば、本件では免責が得られなかったでしょう。免責制度は悪質な処理への歯止めとしても十分に機能しています。
私の財産取戻しは苛烈を極めたと思いますが、別会社の担当部長は最後には随分協力してくれたことが私の自慢であります。刑事告訴や損害賠償責任の追及にならなかったことだけでも、ましな結果だとご判断ください。
 
(3)  論点2(営業譲渡)
幾度も述べました事業譲渡が次の論点です。でも民事再生により行う場合、結論から言えば譲渡価格の適正性に尽きると断言できます。本件も著作権や無形の暖簾代が争点となりました。これらの財産は事業承継に不可欠なものですが、専門的な説明をしてもつまらないでしょうから省きますが、やはり「相当な価格」というのは高いですね。旧経営陣にも厳しい結果となりました。
裁判所から任命された私の職務は、双方のグループの思惑にまどわされることなく、法に従い適正に処理することです。双方が提起する条件を厳しく検討させていただき、営業譲渡後に破産決定を得て無事終了させました。偉い裁判官のご指示通り、東京地裁20部(破産部)のみの関与にて決済されたことになります(この運用は前々回のコラムを読んでいないと分からないだろうな?)。
 
3 破産事件コラムの感想 
法をまとっても思惑は人の欲望に忠実であります。言葉を換えればその思惑は単純明快であります。パターン?の事件では迷惑を受けた者として別々の会社に区分される結果となった従業員「労働者としての苦渋」を書きたかったのですが、またの機会にしたいと思います。つまり破産関係のコラムは刺激的でもありますが、ちょっとした人としてのユーモアやアイロニーも少なく、味わいも「ギトギト」し過ぎて詰まらないと思うようになりました。
次回からは私が単なる「イケイケドンドン」の弁護士ではないことを示したいと思います。事件の関係者は繊細であり、事件処理に限っても「イケイケドンドン」だけでは通用しません。そもそも細やかな配慮と熱心に事件に向き合うこととは矛盾しないのです。
従って、学術的な側面も加味して「不動産の格差社会・不動産は放棄できるのか?」を論点として書こうと思っております。

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