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会社支配権と破産手続(その3「債権者破産の申立」等)

カテゴリ : 
破産事件

 

1 具体的な事例紹介
 
(1)       パターン?の紹介
この原稿は早めに書いておりますが、「会社支配権と破産手続(その1)」において、掲載する事案をパターン化した当時、三井造船との合併を推進していた造船・重機業界第二位の川崎重工業の社長が臨時取締役会で取締役から解任されたという記事が報道されました。合併構想を阻止するための事実上の社内クーデターという報道内容でした。株主総会を直前に控えた経営トップの解任劇として注目に値する案件でした。
ところで、既に紹介しております?の事案も派遣等の特殊な労働者をいれると○万人以上を抱える親会社の経営支配権を巡る紛争により派生的に発生した破産事件といえます。
親会社の社長は伝説的な人物で、その方の死亡により親族内で経営支配権を巡る紛争が激化し、本件は、当時週刊誌に幾度も報道された数多くの訴訟事件の一つです。破産会社の出資者で、同時に多額の貸付けもしていた親会社は、当時、未上場企業であっても誰しもが知る有名な会社でした。親会社による債権者破産の申立をされた子会社社長は、現社長でない未亡人をその企業の継承者に押しましたので、経営支配権の行く末が定まれば、現社長に糾弾されるべきは当然のことでありましょう。親会社から返済期限が到来した貸付金の一挙返済を迫られれば、その会社は破産するより方法がなかった事案です。本来話し合いで解決されるべき案件でしょうが、紛争の経緯から懲罰的会社整理もやむをえないとも判断できます。
 
(2)       本件の処理
裁判所から私が保全管理人、その後に破産管財人として選任されました。本件は民事再生も事業譲渡の準備すらもできないまま、突然に会社を整理された案件です。
当事務所の事務員が、「在庫の宝石を勘定するだけでも一日以上かかる、重要な処理が何もできない」と言って、これらの在庫整理を親会社社員に任せっぱなしにしたのには頭にきましたが、それもやむを得ない程に慌ただしい終末整理でした。
いずれにしましても、破産管財人としては債務超過という破綻原因があれば、粛々と整理するしかございません。
破産会社は、親会社のある一部門を担っておりましたので、驚くような内容は種々ございますが、これ以上記載しますと当時を知る人には何の事件かも分かってしまいます。
2 債権者破産等の破産申立について
 
(1)  事例での紹介
パターン?の事案のような債権者破産の申立は、当時数多くありました。
議員等に対して、債権者破産の申立が頻発したのも当時のことではなかったかと思います。そもそも破産者になると議員としての資格がなくなることを逆手にとり、国会議員等に対して破産の申立をして借金返済を迫ることが、手っ取り早い債権回収の手法であるとして相談を受けたことも多々ありました。下品だなと思いながら、返済されない場合には債権者破産の申立をしますとの趣旨を記載した内容証明は出しておりますね。当時は、本当にひどい議員が多かったのですが、著名な本にはこのような方法は破産法の本来の趣旨に反すると批判されています。
 
(2)  債権者破産の申立方法
債権者破産の一般的な説明をしておきましょう。難しいことは、支払不能の証明です。金を支払ってくれないというような債務不履行事由だけでは裁判所は破産原因と認めてくれないからです。パターン?は親会社ですから、会計帳簿一切を持っていました。支払不能の証明は容易な事案でした。
次の難しい論点は裁判所に予納する費用が、少額管財事件より多額になるということです。既に少額管財事件は法人にも適用され、予納金は20万程度で認められます。しかし、従来は債権者破産の申立には100万円単位の予納が常識でした。これは最近の話ですが、若い弁護士が「申立費用は、財団債権として申立債権者に必ず戻される」と確定的な説明を債権者にしていたため、財団形成のない返還困難事案であったことから、裁判所をまじえて混乱したことがあります。破綻会社の財産状況について、都合のよい説明をすることは危険ですから、若い先生はリスク管理を自覚して下さい。もっとも私の扱った事件では、上記を除き、そのほとんどを債権者に返金しています。
 
(3)   準自己破産の申立(代表者がいなくなった場合)
 随分昔の事件を思い出しました。破産事件の受任翌日、代表者が自殺された案件です。受任した翌日、会社の状況調査のため、朝一番で会社所在地に行ったところ、警察の車が多数止まっておりました。直ぐに理解できましたが、ご遺体の傍で警察の方から渡された私宛の遺言書を読んだのが忘れられません。
この時に一番困ったことは代表者の他に取締役がいなくなっていたことです。債権者破産だと費用負担に耐えられません。関東の北部にある裁判所が管轄でしたが、申立権のない監査役である親族の上申書等を添付して準自己破産として取り扱っていただきました。
昔はこのような深刻な事件が多かったですし、裁判所のほうも現在よりも機械的ではない「暖かい気持ち」があったように思います。

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