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会社支配権と破産手続(その2 「思惑と東京地裁の運用」)

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破産事件

 

1 破産手続利用の思惑と実態
 
(1) 末期的状況での事業譲渡の思惑
  事業譲渡を考察の中心にしますと、少しでも金に変えたいという切羽詰まったものを除き、民事再生を含む破産手続を利用される方々の意図は、次のように把握されるでしょう。要は会社が赤字で破産手続をとらざるを得ないものの、ある部門を営業譲渡して本体は民事再生により企業再生を図る通常の場合、或いは破産会社の中心的な部分を別会社に移して別会社で営業を継続したいというずるい意図が見え隠れするもの。つまり企業の看板となる会社名、人材、ノウハウ、特許権、一部の営業部門或いは重要設備等何でも営業譲渡できます。ですから営業譲渡をコラムの中心にしても経営権を巡る紹介材料に事欠きません。しかし経営の継続ではなく、労働環境の保全のみを考えて事業譲渡をした事件も経験しております。
以前、本コラムでも紹介しましたが、私が顧問であった中規模の病院を、そっくりそのまま全国的に展開する大医療機関に対して営業譲渡した事案は、看護師等多数の労働者の職場環境の維持が目的でした。経営者はきれいさっぱり破産により清算されました。本事案は産業再生機構の公開ネットにて事業譲渡の見本として閲覧できるようになっていると以前コラムで紹介しておりますが、上記の目的まで記載されていて驚きます。
 
(2) 事業拡大という思惑
他方事業譲渡を受ける全国的な大医療機関にとっては、まさしく事業拡大というMAそのものです。同じく関与するのなら、MAをする側にいたいと「変なアカデミック」志望の方には喜ばれるコラムになるのではないかと邪推(?)しておりますが、とんでもない。弁護士の業務としては事業譲渡をする側の業務こそ圧倒的に難しく、且つ弁護士の関与の仕方だけで事件の成否を分けます。MAの契約書チェック作業などは面倒なだけのつまらない実務作業だと思います。
 
(3) 逆に会社破綻の懸念がなかった珍しいパターン
パターンで紹介した?の案件は、会社破綻の懸念はなかったと言っても過言ではない破産事件です。しかし「思惑」と言う意図が、あからさまで「会社支配権の意味」を強く認識させられる事件です。
親会社(巨大企業)である関係会社からの資金援助は厚く、従来の資本構成からは一括返済を迫られる状況などありませんでした。整理する側の主張される建前は不採算部門の整理でした。しかしそうであるなら、会社法などの法的手段により、穏健に話し合いでなされるのが常識的で、通常そのようにして整理されます。その意味では、?のパターンは特殊であり、週刊誌の格好の標的にもならざるをえない側面がありました。すなわちこのような珍しい案件は、親会社の経営権を巡る深刻な紛争の渦中にあって、商法による穏当な手法を採用できない煮詰まった状況があったのです。?の事案は、次回再度紹介しますが、破産手続によって、やみくもに整理してしまった案件です。
他の弁護士先生がお書きになる企業小説に出てくるような悲喜こもごもの話もありました。就職面接に来てくれた方々の興味には応えられそうです。巨大企業といえども所詮人が経営するものですから、紛争の根の深さとして事実は小説よりも奇なりと言えましょう。
 
2 破産手続と民事再生手続の区分
 
 (1) 東京地裁運用の詳細説明
営業を継続することを目的とする場合には、民事再生の申立により会社を存続させて手続を進めるのが無難な方法であります。営業している会社を譲渡するのですから、破産申立のように申立と同時に営業の停止をしては企業価値を損ねるだけです。もちろん事前に譲渡相手との交渉があったとしましても債権者から詐害行為或いは破産の申立をされるなどのリスクが残り、問題は残されたままです。前回のコラムでは書きたいことが多すぎて、東京地方裁判所の運用の紹介が不十分でした。当該案件は、営業譲渡を前提にして、最終的には破綻会社を破産にして会社清算をするが、その場合であっても企業価値を損ねないように営業活動を存続させる必要があった特殊な場合であります。東京地裁の取扱いはこのような事案は破産部(20部)でなく商事部(8部)とするのが慣行です。前回、調査委員として任命され、破産と民事再生双方の申立を検討後、保全管理人の任命という破産手続のみで進行させる方法の紹介をしました。結論として、破産となるのですから、この運用のほうが実際に適しております。本事案は、民事再生と破産という二つの申立が併存し、両陣営のそれぞれの思惑が見え隠れする特殊な案件ではありました。私は、裁判所の意向に従い、破産法による保全管理人制度にて事件を終了させました。
 
(2) 保全管理人制度
保全管理人制度の紹介をしましょう。保全管理人は破産法でも民事再生法でも法律に規定されている制度であります。しかし民事再生法でも保全管理は事業継続が困難となり破産に移行することを前提とした制度と言えます。そもそも民事再生においては会社の業務活動は会社に任せられており、私は単に監督業務を行うだけでしかありません。監督委員は主体的な財産保全業務は行わないのです。つまり最初から、破産法上の保全管理人が財産処分をし、その後破産管財人になるなら、商事部に移管する必要もないのです。
実際の実務の理解がないと、裁判所の運用も理解困難ですが、これでも難しいですかね?

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