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破産管財事件の依頼者は誰か?(その1)

カテゴリ : 
破産事件
  1.  ここ何回かは、法的紛争に関して「弁護士が寄り添う」ことの意味について考えてきました。その続き物のコラムとして「破産管財事件では誰に寄り添うのか」と考えますと、紹介することが多すぎると直ちに分かります。題をつけた最初のところで、(その1)としてしまったほどなのです。
      本コラムでも破産事件については幾度も紹介してきました。個別事案の紹介では、プライバシーに関係する詳細については話しておりません。しかし、それでも本コラムに関心を寄せていただいている方からは、破産事件のコラムも大変面白いとお聞きしました。
    破産管財事件は、まさしく「弁護士が寄り添う」ことの意味について大変複雑な様相を呈するのです。種々の事件を処理しておりますと、私という弁護士は“少し変わり者なのか?”とも思ってしまいます。
     
  2.  弁護士のコラムですから、寄り添いの相手を考えるにも、やはり法律から考えねばなりま せん。破産法の条文第一条では、目的として次のように規定しております。「この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。」
       先ず、上記条文で、寄り添わねばならない人たちが網羅されていることに驚いてほしいのです。破産法が配慮するべき人は、第一に債権者です。そして第二に債務者(ここでは破産者)。債務者の経済生活の再生の機会の確保が必要であるとされ、破産者に対する配慮を要請しております。でも「債権者その他の利害関係人の利害」と定められていることに驚いてください。 つまり「その他の利害関係人の利害」を明確に認識して対応しなければならないのです。破産の事例に接しておりますと、かかる認識のない破産管財人・弁護士はかなりおられます。
     
  3.  今回紹介する事件は、相続財産管理人が破産の申立てをされた破産管財事件です。破産管 財人として任命された私は、記録を取り寄せ、事案を検討して直ちに破産申立人である相続財産管理人の弁護士をお呼びしました。私よりかなり高齢の女性弁護士でしたが、会った最初で、種々配慮をされ、思いやりのある方だと好印象を持ちました。
       事案も的確に説明されましたが、「事前に、大手町に行って国税からのお願いや説明を聞いてください。国税から強くお願いされています」と言われたのには驚きました。更に「調査の前に訪問されるのがいいと思います。本事案の特殊性もお分かりいただけるでしょう。」とのお願いでした。
       大手町合同庁舎では、偉い役人の人が部下を連れて面会され、大変丁寧に応対していただきました。「本件は、東京大空襲の際、焼夷弾から逃れるため、川を渡って田畑に仮住まい小屋を建ててしまい、戦後、バラックを建てた人たちを借地人として取り扱ったことから、今回最終処理となる公売予定案件です。国税はもとより都税事務所も大変困っております」と話されたのには驚きました。「公売処分等をしたくとも、この場所に住む方々は、国に反感を持っておられ、十分な調査ができません」と話されたのには更に驚きました。その後、街づくりに関する貴重な話もありました。私は、まさしく、国税を含む行政の街づくりも利害関係があると思いました。私は、調査した結果について報告することを約束しました。帰途、エレベーターまでお見送りいただいたのは、官庁に来て初めての経験でした。
     
  4.  翌日から一週間程は現場巡りです。事務所からもベテラン二人を動員し、三人で広範囲の調査活動に入りました。
       驚きました。都心のど真ん中なのに救急車も入れません。このような状況を打破したいと夢を語られた国税の高官の言葉通りのひどさです。座敷にいるお婆様が隣のうちのお婆様と道路を挟んで話しているのですが、道があまりにも狭くて誰も通れません。(私はどんどん入ります)。
       このような方達が、国税や都税の調査官に対し、「国は、我々に何をしてくれたのか?」と言って調査に応じず、しかも殴りかかる人までいると聞いておりましたが、その通りです。私たち三人の聞き込みに対して、私たちを「詐欺師だ、詐欺師だ」と喚きながら、自転車でずっと追いかけまわしていた老人もいました。(驚きませんか?)
       戦後に始まり、救急車も入れない場所で生活される方々こそ、破産法でいう利害関係人以外の何者でもありません。私は、この人達を、本件の最大の利害関係人であると位置付けました。確かに、この人たちは、借地料を滞納する借地人かもしれませんが、借地料回収と別途の配慮も必要です。その後、私は、このような人達を地域ごとに集め、将来の展開を説明しました。即ち、不動産業者は、喉から手が出るほど皆様の土地を欲しがっている、この機会を逃すな。皆様が生活されている土地は、戦後初めての急展開となる。皆様が団結し、協力して対処しないと、良い結果にならない等と演説しました。
     
  5.  更に現場廻りを続けますと、壊れた建物も数多く存在し、強風が吹けば負傷者が出かねない建物もかなり発見しました。
       これらの不動産は、相続財産管理人の弁護士名義で登記されています。崩壊寸前の不動産が処理されず残ってしまった場合には、登記名義人である女性弁護士の管理責任すら生じかねません(私のコラム、「不動産は放棄できない」を読んでくださいね)。私は、相続財産管理人の先生も利害関係人と認識して破産管財業務に邁進しました。       (次回に続く)

 

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