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書評 宇宙漫画 「プラネテス」 幸村誠著

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書評
1 前回コラム書評で、日本経済新聞、元日版「宇宙でごみ掃除。誰もやらないから面白い」と報道されていることを紹介しました。
この記事は、日本の民間会社社長が、将来、宇宙のゴミ拾いを民間ビジネスにするというもので、2017年にも自社開発の衛星を打ち上げ、衛星やロケットの残骸を片付けるというものでした。しかも女性社長の紹介記事なのです。
この記事を読んで、次回の書評は、宇宙のゴミ拾いを職業とする未来の若者たちを描いた漫画「プラネテス」しかないと思いました。

2 昔、宇宙開発会社の顧問をさせていただいていた当時、「思い出を宇宙に飛ばそう」という企画 に関し、私の友人弁護士から「宇宙にゴミを撒いて大丈夫なの」と質問されて以来、心の傷でした。でも、それから30年近く、宇宙開発事業は冬の時代であり、実際にその会社も整理になりました。しかるに近時の報道には多少呆れる思いです。
  昨年暮れから本年1月20日頃まで見ましても、宇宙の記事が掲載されまくりです。日本経済新聞でも、年末27日「欧州ロケット首位維持に総力」、同28日「中国、宇宙開発3強狙う」、今年になっても「宇宙システムに防衛指針」、「電柱サイズロケット公開」、「低コスト競争出遅れも」、「ミニロケット失敗」等と凄まじい勢いで宇宙ビジネス関連の報道です。他の新聞も同じだと思います。
新春の日経ビジネス「2017年宇宙商売ビックバン」も、表紙の題名のわりに新聞報道の枠を大きく出るものでもありません。でも纏まった状態にされた報道は全体を見るのに便利です。

3 これらの記事を書かれている記者の皆様は、40年以上前から宇宙開発に携わってきた民間企業の前人未到の開発、そして営業努力、しかもどれほどの苦難があったかを知っていらっしゃるのでしょうか。
笑ってしまう話ですが、弁護士の世界でも「宇宙弁護士」で売り出そうという企画があるそうです。でも宇宙関係の法律は、まだ「宇宙法」というほど充実していません。宇宙関係の会社も、従来の会社経営の法律相談が中心であり、宇宙関係の法律はその「付けたし」の段階です。宇宙旅行の契約書と言っても「専門性」を言うほどのものではありません。1月26日、TBSから報道された「人間観察モニタリング 宇宙旅行に当選したら?」をご覧になった方もいらっしゃるでしょう。契約書も話題になっておりましたが、専門性を問われるほどのものではないのです。でもこの当選を知ったお父さんの喜びぶりは、「騙し」だけに本当に可哀想でした(面白かったですね!)。

4 漫画「プラネテス」幸村誠著 講談社(4巻)の紹介をしましょう。
 2001年発行のこの漫画はいろんな賞をとっていて有名です。宇宙のごみ掃除(ごみを「デブリ」と言います)を職業とする若者の青春群像を、宇宙という途方もない大きな世界に対比して「生きる意味」を問うという、いわば青春小説です。
描かれる世界は、現在の数十年後を舞台にしております。従って、現在とは大違いに宇宙法も発達しております。漫画の世界では、宇宙のごみ問題に関する取り決めもあり、或は「宇宙葬」も禁止された後の世界として描かれるのです。もちろん月には衛星都市が作られ、月面地下に都市が存在しております。

5 宇宙ごみを拾うという過酷な労働であっても、高賃金ということで衛星に乗り地球軌道を回って働く青年が、いろんな人と葛藤し、初の木星探査乗組員として成長していきます。父親も火星に何度か行った「船乗り」なのですが、同様に葛藤の対象です。確かに無重力で空気のない世界に行けば、人類つまり人間とは何か?神っているのか?といろいろ考えざるをえないのでしょうね。空気もないのですから。
主人公は悩みが多すぎるようにも思います。しかし経験のない世界に行くと当然このようになるのかなとも思います。いずれにしても宇宙と比較し、地球上の懐かしい風景がしっくりと馴染むのです。これこそ絵を主体とする漫画の醍醐味です。
本作品は「愛」がテーマなのですね。4巻目のラストで遂に木星に到着した主人公が人類へのメッセージに際して「愛し合うことだけが どうしてもやめられない」と話したのに対し、木星探査責任者が「気安く愛を口にするんじゃねエ」とつぶやくところなど、これは論評の枠を超えていますが、面白ければいいのです。

6 近時、「宇宙」或は「ロケット」と聞けばすぐに買って読んでしまう癖がつきました。例えば、昨年9月10日第一刷発行の「売国」真山仁著(文春文庫)も「ロケット」が題材と知って直ぐに読みました。
真山仁作品では「ハゲタカ」など好きな小説です。最近では原発のメルトダウンを題材にした「ベイジン」も読んでいましたので、期待して読みました。
でも今回紹介する漫画「プラネテス」のほうが断然面白かった。「売国」はロケット、つまり宇宙関係の取材が不足ではないのかと感じてしまう。特に、主人公の女性八反田遙は夾雑部のようで、特捜検事の世界と馴染まず、私には構成不足と感じました。

7 宇宙物の作品を紹介しておりますと、何か作り物めいた、偽の社会を紹介しているような違和感が残ります。
故に、次回は完全な取材ルポ作品である「わたしを宇宙に連れてって 無重力生活への挑戦」(メアリー・ローチ著)を紹介しましょう。著者は、実際の無重力空間が如何に人間になじまないものかについて、取材しまくって書いております。
  宇宙に関する法の紹介が遅れておりますね。

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