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当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 202011のエントリ

1 調査委員会の活躍の場は、会社関係に限る訳ではありません。学校内の不祥事などで調査委員会が設けられることは、皆様、既にご存知ですね。しかし、調査委員会のその殆どが、会社 の不祥事に際して、その原因調査や、今後の適正な業務環境の構築のために立ち上げられるこ とが通常です。
 当事務所でも毎年の如く調査委員の業務を受任しております。その都度、猛烈な調査活動を し、不祥事の実態と原因の調査、そして当該不祥事に対する再発防止策等まで検証して、依頼 主に数十ページ程度の調査報告書を作成、提出しております。
 ところで、今回、調査委員会に関係したコラムを書こうと思った理由から申し上げましょ  う。以下に述べます判例紹介が、皆様の関心を呼ぶであろうと思われること、しかも、会社の ために行う株主代表訴訟や、会社の訴訟参加(補助参加と言います)というような専門的な法 律制度の紹介にも適していると考えたからであります。

2 では判例紹介から入りましょう。
 近時発行された判例時報2442号に、2017年に発生した「地面師詐欺事件」に関係する判例 解説(大阪高裁令和元年7月3日、民事6部決定、抗告棄却確定)が載せられておりました。
 判例評論として付けられた題を、そのまま引用します。
「株式会社の社外役員で構成される調査委員会作成に係る調査報告書が『民事訴訟220条4号  二』にいう『自己利用文書』に該当しないとされた事例」と記載されています。
 判例時報では、会社の名前については慣例により伏せてありますが、理由中に大手ハウス  メーカーと記載され、事件発生時の年月日や所在地等、事案の内容等がそのまま記載されてい るのですから、あの有名な地面師詐欺事件の事例であることは直ちに判明します。

3 では、この文書提出命令の前提となる事件の紹介から入りましょう。つまり、上記命令の前提として、大手ハウスメーカーの株主が、地面師詐欺により生じた損害55億5900万円余を、 当時の代表取締役社長及び副社長に対して責任追及の訴訟を提起したことに端を発しておりま す。このように株主が、不祥事を起こした会社経営者らに対して責任追及する訴訟(損害賠償 請求訴訟)を株主代表訴訟と言います(会社法第847条)。この事件の大報道を契機に「地面 師」という用語も定着しました。
 上記株主代表訴訟に対し、会社は、被告らを補助するため当該訴訟に参加しました。会社法 第849条第1項により、会社は、訴訟参加をすることが可能です。このような制度を法律上「補 助参加」と言います(民事訴訟法第42条も参照)。
 訴えていた株主は、補助参加した会社に対し、当時の調査報告書の提出を求めました。不祥事の原因を追究して会社経営者に損害の補填を要求しているのですから、当時の調査報告書の提 出を求めることは当然の成り行きです。ところが、この調査報告書の提出について、会社は、 自己利用文書であることを理由に提出を拒否したのです。民事訴訟法第220条4号ニで「専ら文 書の所持者の利用するための文書」は、文書提出命令を拒むことができるとされているので  す。
 今回、紹介する大阪高裁の決定では、会社の主張する自己利用文書であることを否定し、当 該調査委員会作成の報告書の提出を命じました。何と、裁判所は、イン・カメラ手続きと言わ れる制度(民事訴訟法223条6項)を利用して、自ら当該調査報告書を読了した上での結論で  す。

4 そもそも、調査委員会の報告書は会社の不祥事が暴露されるものですから、不祥事を防御できなかった会社組織の弱さや矛盾、そして、それに潰されるサラリーマンの悲哀が読み取れる ものが少なくありません。
 私の好きな小説作家池井戸潤の企業小説の世界が展開されていると感じられる場合もあるの です。
 もっとも、調査委員会には、本件のように会社関係者で構成される社内調査委員会のような 場合もありますが、全く外部に委託する「第三者委員会」と呼ばれるものもあります。会社が 調査報告書をどのように利用しようと考えているかで、委員の構成の仕方が変わります。
 このように会社の考え方により調査委員の構成の仕方が変わりますから、企業べったりだと いう批判も絶えません。「第三者委員会の欺瞞」という本まで発行されておりますし、「第三 者委員会報告書格付け委員会」なる組織もあり、報告書の採点をしております。

5 ところで、このコラムを掲載したくなった理由は、もう一つあります。
 この地面師詐欺事件は、目黒川沿いにある古い旅館の土地購入を巡る事件でした。実は、昨 年、当事務所の顧問先が建てたマンション立ち上げに際して、目黒川沿いのマンション建築現 場に臨場させていただきました。当該マンションのベランダから見下ろす目黒川の風景は、本 当に絶景でした。春の桜並木に彩られる目黒川を想像すると、大手ハウスメーカーの当該社長 でなくとも、是非、当該マンションを購入したくなると思ってしまいました。
 この気持ちを当事務所の面々に話したところ、目黒川沿いの高級飲食店にまで、話が盛り上 がりました。

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