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高額な立ち退き料と低額な立ち退き料の分かれ目

カテゴリ : 
借地借家

  以前「正当事由と立退き料の事例紹介」というコラムを掲載致しましたが、その際皆様から大きい反響を頂きました。今回は、最近の裁判例がどのような判断を下しているのかについて一部を追加して紹介しておこうと思います。皆様が直面している案件について、高額な立ち退き料になるのか低額な立ち退き料になるのか判断する際の参考にしてください(借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」も併せてご覧ください。)

 
 
 ところで、下品な言葉で言うなら、当事務所は業者の皆様からいわゆる「地上げ」の段取りや相談を継続的に行ってまいりました。しかし、先日当事務所のホームページを見て来所されたお客様に、当事務所で是非とも立ち退き料を獲得してほしいと懇願され、やむなく賃料の約200ヶ月分を取得した事例が発生致しました。
  この事例につきましては今後当コラムにて掲載するかどうか検討しておりますが、いずれにしましても紙数に限りがございますので、今回は最近の裁判例を紹介させて頂くことにしたいと思います。
 
  具体的な事案でどれくらいの立ち退き料になる可能性があるのかご相談されたい方は当事務所までご連絡ください。
 

 

立ち退き料
(平成23年
1月17日判決)
6000万円
本件建物は朽腐しているとまではいえず緊急な耐震工事は必要ないが、遠からず建て替えか大規模修繕が必要になる。そのため、銀座6丁目という立地からすれば、本件建物の機能的、経済的な耐用年数はほぼ満了していた。他方、借主は66歳で、唯一の収入源としてとんかつ屋を営業していた。借主が代替物件を確保できないとまではいえないことなども総合考慮して、立退き料の支払いにより正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月18日判決)
4億2800万円
貸主は投資運用業を営む特定目的会社であり、投資物件として本件ビルを購入したが、耐震性に問題がある等の診断が出たため、建て替えが必要だった。また、本件ビルは相当程度老朽化していた。他方で、借主はスポーツ用品の輸入販売を営む会社で、原宿竹下通り沿いで32年にわたり営業を続けていた。借主の年間売り上げは約3億5000万円だったこと、本件ビルの立地が好条件だったことは認められるものの、本件ビルでなければならない事情はないこと等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月2日判決)
6850万円
貸主は資産管理等を目的とする特定目的会社で、借主は占い業を営んでいる。借主にとって原宿竹下通りという商業用ビルの立地が好条件であるものの、移転しても占い業が廃業するとまでは認められない。本件ビルは築後約32年を経過していること、本件ビルの他の賃借人の明け渡しが相当程度進んでいること等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月22日判決)
2200万円
本件テナントビルは築後約30年経過していること、テナントの状況、不動産事情の厳しさ、周辺地域からの事情からするとテナントが借主だけしか残っていない本件建物について建替えを行う一定の必要性はある。他方、借主は歯科医院を営んでいるが、本件貸室の借家権鑑定評価額である2200万円の申し入れなどを理由に正当事由を具備していると判断した。
立ち退き料
(平成23年
3月10日判決)
2億5000万円
借主は、東京駅八重洲中央口徒歩5分の本物件で10年以上にわたりサウナ浴場を営んでいた。数10名の従業員もおり、借主が本件建物を使用する必要性は相当高い。また、本件ビルの耐震強度に問題があること、借主の利用方法に形式的な違反があることは確かであるが、本物件を利用する必要性は借主の方が格段に高い。そのため、正当事由が不足しており、補完事由としての立退料の提供が必要であると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月25日判決)
400万円
貸主が再開発を行う必要性は認められるが、最終計画までは策定されておらず、他の建物利用者の退去も完了していない。被告は婦人用洋服店を営業して生計を立てていたため、貸主の建物利用の必要性は若干弱い。他方、貸主は著しく低額の賃料に甘んじていたこと、築後約50年が経過しており耐震性が低く倒壊の可能性が高いこと等を考慮して、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。(なお、借主は収入に関する証拠の提出を拒んだため、適正賃料との差額1年分を営業上の損失の填補と認定している。)
立ち退き料
(平成23年
4月14日判決)
372万円
貸主の資金繰りが苦しく本件建物等を売却して借入金を返済することが急務であると顧問税理士が述べていること、金融機関からも本件建物等の売却を求められていることからすると貸主が本件建物の明け渡しを受ける必要性は高い。他方、中古自動車販売業を営む借主の業態及び土地使用状況からすると、借主が本件建物を使用する必要性はそれほど大きくない。立退料が提供されるのであれば、正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
6月23日判決)
 
150万円
本件建物は築39年の木造アパートで老朽化していることに加え再開発計画があるため貸主には本件建物を利用する必要性がある。他方、借主は足腰が悪く2階以上に住めないこと、満67歳で生活保護を受給していることなどからすると、貸主が利用する必要性はやや弱い。しかし、2年半以上かけて引っ越し先を多数紹介するなど誠実な対応をしたこと、他の入居者が全員退去していること、賃料30カ月分の立退料を申し出ていること等からすると、正当事由があると認められると判断した。
正当事由なし
(平成23年
1月28日判決)
 
貸主は3060万円の立退料を申し入れたが、建物の使用を必要とする事情を主張しなかった。他方、借主は本件建物を転貸して差額賃料を収益とする事業を行っていた。貸主は賃料が低額であると主張するが、賃料が低額の部分については賃料増額請求権を行使すれば良いことなどから、立退き料の申し入れによって正当事由が具備されることにはならないと判断した。(サブリース事案)
正当事由なし
(平成23年
2月24日判決)
 
貸主は本件マンションに関して再開発の目的を有していた。本件マンションは築後約30年経過しているものの、耐用年数は10年程度残っており、長期間にわたり居住の用に耐えうる。借主の妻は不眠症及び相当重い心臓病を患っており、住み慣れた本件マンションから転居するストレスによって病気が悪化する可能性も否定できない。貸主は借家権価格を大幅に超える200万円の立退き料を申し入れたと主張するが、正当事由を具備したことにはならないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
3月11日判決)
 
貸主及び妻は75歳と高齢で、貸主は脳梗塞後遺症により歩行困難などの既往症がある。そのような理由で長男との同居を望んでいることからすれば、貸主にとって本件土地利用の必要性がないわけではない。しかし、貸主には他にも不動産があり本件土地に住むことが唯一無二の選択ではない。他方、借主は統合失調症により近所の病院で治療を受けており、無職で障害年金を受給中で、転居等は病状に悪影響を及ぼす可能性が高い。借主が本件土地を利用する必要性は極めて高く、立退き料の提供があったとしても正当事由はないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
6月9日判決)
 
貸主は本件建物について自己使用の必要性があると主張するが、貸主はテナントを管理しているにすぎず、自己使用とは評価できない。他方、借主は本件建物の5階部分を自ら使用するとともに、1階から4階部分をサブリース業者としてテナントに賃貸することで会社運営している。借主が本件建物を使用する必要性は相当大きく、正当事由があるとは認められない。(サブリース事案)

 

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