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新宿の顧問弁護士なら弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)

当事務所では、上場企業(東証プライム)からベンチャー企業まで広範囲、かつ、様々な業種の顧問業務をメインとしつつ、様々な事件に対応しております。

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コラム - 最新エントリー

 

1 サイト管理者に対する検索結果削除要請の頻出
 
(1)   ネット社会における変化のスピードは驚くほど早い。
つい最近まで、ネットのサイト管理者は、表現の自由・国民の知る権利を建前に、誰が見ても不都合と判断できる書き込みの削除など歯牙にもかけない対応を続けてきました。
しかしながら、近時、グーグルやヤフーのネット管理者は、自ら削除基準等を公表せざるを得ない社会状況になってきたことを認めております。もちろんその背景として、ネット社会に対し正面から対応してきた当事務所などの努力も評価してほしいものですが・・。
 
  (2) 裁判所もひどかったですね。唾棄すべき判決をいただいた(?)こともあります。
例えば、卑劣且つ虚偽だらけの事実をネットに書きこんだ者に対して損害賠償請求をするため、書き込んだ者の情報開示を求めてサイト管理者に提訴しましたが、東京地方裁判所女性裁判官は「当該書き込みは名誉毀損ではない」と呆れるような判断をし、書き込んだ者に関する情報開示請求を認めなかったのです。当然、東京高等裁判所で逆転勝訴しましたが、この一事をもってしても、時代の急激な社会的変化に追いつくことは、裁判官といえども大変なのです。
ところで法曹界の内輪話として聞いてほしいのですが、裁判官の世界では、上級審で逆転された裁判官には、今後厳しい裁判官人生が待っているというのが相場です。
 
(3) ネット関係の人権侵犯事件の激増を見るだけでも、上記事実は容易に理解せざるを得ません。
2チャンネル等に書きこまれた中傷(実際に相談を受けると衝撃です)や自分の個人情報、逆に安易な気持ちで書いてしまった投稿をインターネットから消したいという相談(そもそも事件)は本当に多いのです。でも、やっと裁判所も検索結果の削除を認める仮処分命令を出し始めた時代になってきました。でも、まだまだ裁判所の判断基準は厳しい。
 
2 「忘れられる権利」への関心
 
(1)  昨年末、「忘れられる権利」が、こんなに新聞記事になるとは思っておりませんでした。
そもそも今年の始め、一部上場企業の新年会の挨拶でこの権利を紹介しました。近年、海外に進出する企業の法律相談を受ける機会が増え、日本人の思考パターンが海外では通用しないこともある説明のキーワードとして紹介し、激励しました。
 
(2) 当時は、上記会社とは別の上場企業が中国進出に失敗し、相談にのってきた当事務所でも嫌な思いをしただけに、「忘れる文化」と「忘れない執念深い文化」とを比較したい気持ちもありました。
昔流行した映画「君の名は」の一節まで譬えに出しました。「忘却とは忘れ去ることなり。忘れえずして忘却を誓う心の悲しさよ」というものです。
「忘れるとは許すこと、私はこれを日本人の美徳と考えます」というような話をしたと記憶しております。ちょうどこの新年会の数日前に施行された、アメリカ、カリフォルニア州の「消しゴム法」の説明までしたかと思います。
 
(3) もちろんヤフーの削除基準の事例の一つとして「忘れられる権利」に関係する基準も出てまいります。
このような基準を公表するということは、ヤフーは、自らの法的責任(もちろんヤフーに対する損害賠償責任の追及です)についても受けて立つ決意をしたことになります。表現の自由や国民の知る権利を主張し、ネットサイト事業者は情報を機械的に集めているだけという無責任な姿勢はもはや時代遅れなのです。
 
3 忘れられる権利と検索結果の削除要請
 
(1)   紹介する判例の事案は、それ程多くありません。
欧州連合(EU)では裁判所が認め、法整備されて明文化されたなどと言われ、議論が始まりました。
日本では昨年109日、東京地方裁判所が検索結果の一部削除を認める仮処分の決定を出したのが最初となります。本件は、ネット検索すると、当該男性の犯罪への関与を連想させる単語の検索結果が出てくるということで、当該男性の生活が脅かされるという訴えでありました。アメリカ本社のグーグルに対し、どのように法的効果を与えられるのかと、当時疑問に感じたものですが、ネットによりますと、グーグルはその後自発的に削除したようです。
 
(2)   新聞によりますと、ごく最近、千葉地裁松戸支部やさいたま地裁がグーグルに削除の仮処分決定を出したようです。すごいですね。
事例が面白いので新聞報道を纏めてみましょう。松戸支部の事件は、グーグルが提供すする地図サービス「グーグルマップ」に事実無根の口コミが掲載されたというもので、医療機関からの削除申立です。これは忘れられる権利というより誹謗中傷の削除ですね。
さいたま地裁の事例は625日付ですが、「罰金の略式命令という過去の逮捕報道」が表示されるのは人格権の侵害だというものです。些細な事件ですから、知る権利より忘れられる権利の方に軍配は上がるでしょう。正確には分かりませんが、グーグルは前者の事例については異議申立てをしているようです。
 
 4 ネット社会に関するコラムは難しいですね。3回分を纏めて書くのが習慣なのですが、状況がすぐに変わってしまうので無理です。

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一 近時、各企業から当事務所に対して、情報システムやソフトウェア関連のご相談が非常に増えているという印象です。現在社会では、どのような商売を行うにせよ情報システムが不可欠になってきておりますので、それに伴って多くの紛争が生じることも当然のことなのかもしれません。
  しかし、情報システム関連の紛争に関しては極めて専門的な事項も多く、法律論についても全ての弁護士が詳しいという状況ではないようです。
 
二 情報システム関連の紛争の法律相談で一番多いものはシステム開発に関する紛争です。
  システム開発に関しては経済産業省がモデル契約書を公表しており、既に多くの議論がなされているところです。
  そのため、経済産業省が出しているモデル契約書やトラブル事例集を良く読んで取引をすれば紛争を予防できる場合はかなり多いと考えられるのですが、実際のところは、見積書と発注書程度の簡易な書面で契約が進んでしまっている場合が多いようです。
 
三  しかし、システムは、必ずと言って良いほど不具合が生じます。
  このような時に、最初の契約の際に事後のことまでしっかり決めておかないと、当事者間における考え方のズレが表面化し、紛争になってしまいます。
  このような紛争になった際、裁判所がどのように判断するのかについて理解しないまま協議をしていても、依頼人側は「こんなに不具合が多いシステムに金を払うのはおかしい」という主張になり、システム開発側では「過剰な要求ばかりされている」という主張になるため、いつまで経っても解決しないのです。
 
四  裁判例は多く存在するので、一つだけ取り上げておきますと、平成25年5月28日東京地裁判決は「一般に、コンピュータソフトのプログラムには不具合・障害があり得るもので、完成、納入後に不具合・障害が一定程度発生した場合でも、その指摘を受けた後遅滞なく補修ができるならば、瑕疵とはいえない。しかし、その不具合・障害が軽微とは言い難いものがある上に、その数が多く、しかも順次発現してシステムの稼働に支障が生ずるような場合には、システムに欠陥(瑕疵)があるといわなければならない。」と判示しています。
  このような裁判例が存在することを知っているだけでも、紛争になった際の対処法は大きく変わってくるはずです。
 
五 システム開発に関する紛争が訴訟になった場合、普通の訴訟に比べてかなり長時間かかることが多いです。
  訴えるにせよ訴えられるにせよ非常に大きなコストがかかりますので、事前に予防しておくことが不可欠です。
  システム開発に関する重要な契約を行う場合には必ず弁護士に相談して契約書を作成して頂きたいですし、仮に紛争になってしまった場合であっても弁護士の意見を聞きながら対処した方が会社にとって圧倒的に合理的です。
  当事務所にはコンピュータやシステムに非常に詳しい弁護士が所属しているため、場合によっては会社まで出張して調査をしておりますし、多くの案件を扱っておりますので、御社にとって有利な解決を導き出せるものと自負しております。
                                                

 

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一  当コラムで何度もご紹介している通り、裁判で不正競争防止法の「営業秘密」に該当すると認めてもらうことはそれほど容易なことではありません。経済産業省のガイドラインを見て、諦めてしまっている会社も少なくないと思います。
  しかし、仮に不正競争防止法の「営業秘密」に該当しなくても、損害賠償請求が認められないというわけではありません。
   本コラムでは、当事務所で扱った事例で損害賠償請求が認められた案件をご紹介いたします。 
二 その訴訟は、元従業員が競業会社と共謀して会社の顧客を奪い取ったという事例です。
(一)具体的には、元従業員は、退職直前に会社の顧客情報等を大量にコピーしていました。元従業員は、退職直後に競業会社に顧客情報等を持ち込み、顧客に対して、今までの取引条件よりも安く契約するので競業会社と取引してほしいと働きかけたという事例です。
   元従業員が顧客情報等を持ち出したとはいえ、当該会社の顧客情報等は厳格に管理されておらず、不正競争防止法上の「営業秘密」には該当しませんでした。
   そのため、元従業員の行為が違法であると立証するのはそれほど容易ではありませんでした。 
(二)そこで、当事務所では、弁護士が、会社の担当者と共に協力的な顧客を一つ一つ訪問し、元従業員から契約変更を働きかけられた際の話を聞かせて頂くとともに陳述書を作成して頂くことで、元従業員の悪質な行為を立証することにしました。協力して下さるということであれば地方の顧客にも訪問しました。
   当事務所が費やした時間は相当なものでありましたが、当該陳述書等が功を奏し、訴訟では、第一回口頭弁論期日から裁判官が当方に極めて好意的な意見を述べるという状態を作り出すことができました。
   訴訟では一旦出来上がった流れが突然大きく変わるということはそれほど多くありませんので、その後も、当方に有利な流れで訴訟は進行し、証人尋問になりました。
   反対尋問では、元従業員も最初は言い逃れをしていましたが、最終的には当方の追及に耐え切れず、在職中から会社の情報を利用して顧客を奪う準備をしていたこと等を認めるに至りました。
   当方が勝訴を確信した瞬間です。
三)当事件では、元従業員が数多くの顧客に働きかけていましたが、大部分の顧客は取引を変更しなかったため、会社の実損害はそれほど多くない事例でした。
   そのため、逸失利益(本来であれば得られたであろう利益)が争点となりましたが、結論としては逸失利益も認められました。
   当方が勝訴となる判決文を作成済みであることは裁判官が明言していましたが、元従業員が高額の解決金を支払うことを約束したことや元従業員との関係性などを考慮 して、最終的には当方の勝訴的和解で決したという事例です。
三 このように、仮に経済産業省のガイドラインなどをチェックしてみて、「営業秘密」とは認められなさそうだな、と思ったとしてもすぐに諦める必要性はありません。
   元従業員や競業会社が自由競争の範囲を逸脱するような悪質な行為をしていれば損害賠償請求が認められる可能性は十分あります。
   まずは当事務所にご相談いただければ幸いです。
                                               

 

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1 情報流出事件
 
(1)    ネット社会その1「マイナンバー制度」を本コラムに掲載した直後、日本年金機構の保有する100万人以上の個人情報が流出したことが発覚しました。さらに近時、早稲田大学の保有する個人情報が流出していたのに、その感染に気付くまで半年も分からなかったという報道もなされています。
 つい最近、顧問先が標的型メールによるサイバー攻撃を受け、当該メールが当事務所のパソコンにも送られてきました。しかし万全のセキュリティー対策が施されているため問題が生じませんでした。また当コラムに大量のトラックバックを貼られたこともあります。もちろん既に当コラムで紹介しておりますとおり、当事務所では、元従業員等の企業情報持出し事件等も多数受任しており、当事務所の弁護士が顧問先のパソコン、情報管理システム等の調査に出向くこともしばしばです。
 
(2)       問題は情報漏えいに対する対策と、漏えい後の処理です。
          当事務所は法律事務所ですから、当然、情報流出後の法的処理が専門です。そうして考えますと、68日、塩崎恭久厚生労働大臣の答弁はあまりにもお粗末です。塩崎大臣は、衆議院の決算行政管理委員会において、前項の流出した年金加入者情報が悪用されたとしても「金銭的な補償を行う考えは、今は持っていない」と質問に答えたというのです。呆れましたね。そもそも当事者の言うことか!
確かに、個人情報漏えいの損害賠償金額は低いです。
でも類似事件において、流出した個人情報の損害賠償金額について判断した最高裁判決もあるのです。やはり官邸の法的な事案把握及び処理能力の低さはお粗末としか言いようがありません。
 
2 流出した個人情報に関する法律相談
 
(1)   ネットに関係する相談を受けることは大変多いですね。
次項で判例を紹介しますが、企業情報の持出し等を除き、単なる情報流出事件であって実害が生じなければ賠償金額は低いです。
今回紹介する事案は、ネットと直接関係しませんが、ネット社会のコラムを書こうと考えていた当時の相談であり、且つ損害額の算定に関係する分かりやすい事案であります。重要事項は秘密とさせていただき、その一部を紹介致しましょう。
 
(2)  その方は、大掛かりな自宅改修工事を発注されました。その自宅は、大手建設会社から買われた建物でしたから、改修工事発注先もその著名な一部上場企業になります。補助金が出る工事もあったようで、契約書には実印の印鑑証明書付きで、自分の振込銀行口座も記載されるというような個人情報満載の契約書でした。自宅で契約したのですが、驚いたことに、後日、担当でない別の社員が来訪され、担当した社員は精神的な問題があって契約書及び印鑑証明書等の原本一切を紛失してしまったと説明したそうなのです。
 
(3)  「どう処理したらいいのか」という相談です。
早く再契約しないと工事の着工もできません。ちょうど、私は、コラム原稿の参考資料として、今年425日号の「週刊ダイヤモンド」、「あなたの情報はいくら?」という特集号を持参しておりました。精神的な慰謝料が安いことを、司法判断である法的処理から説明し、判例説明及び上記記事もお見せしました。即ち、実害が生じればその賠償額は請求できますが、そもそも損害が生じないように処理する工夫が大切だと説明しました。実害が発生しないための工夫を種々議論しました。
結論として、実印の変更(印鑑購入代を含む)や銀行口座解約手続等に要した費用は実害として相手会社に請求しました。精神的な負担は僅かでしかないので諦め、相手会社に恩を売ることしました。その結果、工事が順調に開始したと大変喜ばれたのです。相談者からは、ネットを含め多くの弁護士にあたったが、こんな分かりやすい説明・解決方法は初めてだと感激されました。
 
3 個人情報の値段に関係する判例
 
(1)     紹介する判例の事案は、今回の年金情報漏えい事件と似ておりま  す。この情報漏えいは、平成11年、京都府宇治市の住民基本台帳のデータ21万件以上が、委託している民間業者から外部に流出したものです。「宇治市住民基本台帳データ大量漏洩事件」控訴審判決と言われる本事件(大阪高等裁判所平成13年(ネ)第1165号損害賠償請求控訴事件)は、個人の基本4情報である氏名、住所、性別、生年月日が漏えいした場合の慰謝料が確定した初の判決と言われております。最高裁に上告されましたが、棄却され確定しております。判決で示された慰謝料は一人当たり、たったの1万円なのです。弁護士費用も一人当たり5000円ですから、訴訟による経済的合理性はないと考えた方が利口です。
 
(2)     注意を要しますが、本件は、これらの個人情報についてインターネット上で「購入しませんか」と広告まで出されていたという悪質な側面がありました。もちろん当判決では、「具体的に何らかの被害を、被ったことは、主張立証されていない」と判断しております。
 とするならば、実害が生じない場合の精神的な慰謝料は実際に行われている500円から1000円だと考えることも可能です。
 
 4   日本もマイナンバーが採用されます。官民共通番号仕様にしたアメリカで「成りすまし犯罪」が年間900万件だ、1000万件だと言われる実態は、絶対に避けてほしいものです。

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1 マイナンバー制度とネット社会
 
(1)   毎日のように新聞等を賑わせているマイナンバー制度は、ご存知 ですよね。
この制度は、国民全員に12桁の番号を付け、その番号で紐付けをすることによって、種々の分野で皆様の情報を統一管理し、適正な行政の運用を図ることを目的にしております。具体的には、社会保障や税制度の公平性・透明性を高め、その後、種々の分野で適用範囲を拡大させ利便性を高めるものとして鳴り物入りで採用されました。最終的には民間にも共通して利用させることを目指しているようです。
この制度は既に具体的な運用の段階になりました。今回、この制度を批判される論者の意見も随分読ませていただきました。しかし、皆様の関心が低いせいもあるのか?分析が不十分です。
 
(2)  マイナンバーは受け入れざるをえないにしましても、諸外国の実情から分析するこ
  とも重要だと思います。利用のされ方によっては個人情報の国家管理にも通じますし
  、アメリカ、韓国では「なり済まし」による犯罪被害も大量に出ております。
    ところで国の本制度に対する捉え方は、国家成長戦略を意識したものであって、社会保障や税制度の公平性・透明性だけでないことは明白です。例えば、529日、日経新聞一面の冒頭記事として、産業競争力会議(議長・安倍首相)で、マイナンバーの利用範囲を銀行預金口座と連携させるという内容での法案審議や証券口座の税務申告、更には戸籍に適用することも念頭に置き、年金、相続事務の簡易化、パスポート取得手続きにも利用するなどと推進に関する協議をしているようです。更に驚いたことには、政府はマイナンバー以外の分野でもIT(情報技術)の活用を広げるため法整備を進め、不動産取引における重要事項説明にも電子文書の閲覧という形で済ませるという記事が載っておりました。私は、不動産会社に勤務したこともありますが、一生に何度もない高い買い物をしているのに口頭説明もないというのは考えがたいことです。
いずれにしましても、マイナンバー制度について、政府が産業競争力会議という名前で議論していることからして、国民のためという側面もありましょうが、国家成長戦略と見ざるを得ません。
 
2 ネット社会に関係するコラム
 
(1)   ネットに関係するコラムを書くことについては、当初大変抵抗がありました。例えば「無能弁護士」とネットで検索にかけると、ネットで活躍された、ある特定の弁護士の悪口が氾濫しております。このようなネット社会の低俗さに呆れ、拒否反応がありました。
      しかし、会社情報の持ち出し(刑事事件)や、それによる不正競争事件等は、もはや顧問会社の通常事件として当事務所でも大量に扱っております。副所長が当コラム欄に「情報流出」に関係して事件紹介(閲覧数が多いのは驚きです)をしておりますが、これらは当事務所の通常業務にすぎません。
 
(2)  考えてみますと、あらゆる「モノ」をインターネットにつなぐという企業戦略「IoT」(インターネット・オブ・シングス)は既に我が国の国家成長戦略になっております。自動車やエアコンなど、ネットにつながる便利さは、今では常識的な話なのでしょうが、トヨタホームが販売する次世代省エネ住宅「スマートハウス」については驚きました。スマートハウスの情報が、場合によっては第三者によりアクセスできる可能性があったとして報じられたからです。つまり次世代省エネハウスはネットを通じて風呂のお湯張りや施錠が操作できるようになっていますが、悪意の第三者が利用した場合には盗難等危険な状態が生じることが分かったのです。
 
3 マイナンバー官民共通使用の国
 
(1)  マイナンバー官民共有の典型的な国としてエストニアがあげられます。近時も日経新聞記者がエストニアに取材に行った記事が掲載されました。でもエストニアはロシアという近隣大国を恐れ、仮に、ロシアに国土を占領されても電子上で行政を行えることを目指した国です。つまり仮想電子国家という状況を是認しているのですから、これは参考にはならないはずです。
 
(2)  では官民共通で採用している?北欧の国・スウェーデン等と、?アメリカ・韓国を比較してみましょう。
        当コラムでは、既に陪審と参審員裁判の併用をしている国としてデンマークを紹介したことがありますが、北欧の国では、個人の収入も開示されていることをご存じでしょうか。収入や課税が個人情報でないという状況について、あなたはどうお考えですか?
アメリカは北欧と同様官民共通して利用しております。14年前の同時多発テロを考えれば、アメリカが国民に対する監視の目を光らせる理由は納得できます。移住してくる外国人も多いですからね。そもそもアメリカが貧富差の著しい格差国家であることが北欧と根本的に違うのです(既に当コラムでも堤未果の著書等紹介済みです)。極端な自由競争社会(出生等の条件を考えると仮想です)ですから、格差は今後もどんどん拡大していきます。やはり個人情報を国が把握しているべき国家なのだと思われませんか。韓国も同じです。
 
 4 結論=日本はマイナンバーをドイツやフランスのように限定して利用しましょう。スウェーデンの裁判所の食堂で食事をしたとき、武装女性警察官が隣りに座りました。男性と区別がなく、日本に慣れた私には驚きでした。アメリカと北欧諸国を同列に論じることは誤りです。

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一 当コラム掲載の「強制執行費用」
 
1   最初に示しましたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例は、私の事務所と懇意な業者の方にお願いし、当方から条件をつけて見積もってもらったものであることは、既に説明しました。
説明する段取りとしては、一回目の明渡催告の執行と二回目の明渡断行の執行の二つに分けるのが通常でしょう。しかし、最もお知りになりたいはずの上記計算書から説明するのも面白いと思います。 
この計算書では、執行前に納付が必要な執行予納金(民事執行法141)も記載しております。一方、執行補助者については、執行手続に関与されることにより発生する別途の費用です。事例によってまちまちで、イメージしていただくだけで十分です。
 
    計算書第一の事例
      典型的なワンルームマンションの居住用借家です。
      家賃7万円で、二回分の執行費用は相当な金額になります。本計算書は懇意の業者
   さん作成ですから、割引きされているのですね。
      面白い費用として、ペット業者費用という項目がありますね。
      ペットかどうか疑問ですが、番犬として秋田犬を飼っていた事例では、役所で「野良犬」
    を捕まえる業務についていた方が執行補助者としてスタンバイしていました。猛烈に吠
    えていた恐ろしい秋田犬も一瞬でからめ捕られ、柱に繋がれました。
ピアノがあった断行執行事例では、ピアノ調教師の方が動員されており、そこまでしないといけないのかと驚きました。
 
3 計算書第二の事例
よくある事例として営業店舗の明渡事例に関し、全体として見積もってもらいました。
魚屋さんで、20坪程度のもので神棚があるという設定にしました。かつて地方の執行で、子供地蔵を祭るお社があったのですが、執行官は、神主を呼んでお祓いをしないといけないと強く主張されました。やむなく神主を呼んでお祓いをしたことがあったことから、このような設定にしてみました。
この設定では、現場に残された魚等の生鮮食品、ショーケース等の備品に注目してください。これらは執行申立した債権者が買い受けてしまうのが手っ取り早いのです。後日に改めて競売をすることもあるのですが、それでは保管費用等で債権者の持ち出し分が増えます。
補注に示された「神棚の相当期間の任意保管」と「しかるべき場所への移転」という記載。これには困りますね。保管とあれば、倉庫代が発生するのです。
 
二 強制執行の手順
 
1 一回目の明渡執行
一回目については既に説明しておりますが、明渡催告と言って占有状態の調査を兼ねて執行するものです。後に述べますが、出て行ってくれるように催告するのです。
計算書に「催告日」と記載されている費用と「断行日」のものとを区別して見てください。これまで見てきましたとおり、断行執行までするとなると多大な費用がかかることが分かります。20坪の営業用店舗で経験的に判断して数十万円を優に超えるはずです。
一回目の執行がかなり重要だという認識のない弁護士には、何とか任意に退去してくれる工夫をお願いしてみてください。つまり一回目の明渡執行は、相手方に任意に退出していただく一番急所になるものだと考えられます。実際に、この一回目でけりがつくこともあります。
例えば、その筋の方は、暴力を生業にされているのですから、実力で追い出されることは、その方のメンツが立ちません。その筋の方は二回目の断行執行予定日の23日前に出て行ってくれることが多いのです。でも話し合いが必要です。その話し合いも大変です。私たちが床に座らされ、債務者は椅子に座るという上から目線の話し合いを強制されたこともあります。これは実際に体験するとかなり辛いです。
ところで、一回目の催告執行は予告しません。不在の場合も考慮して鍵屋も連れて行きます。不在の場合が多いのですが、執行官は明渡猶予期間を設けて催告してくれます。つまり“突然あなたの不在中に鍵を開けて入りました”ということが分かる文書(公示書)を見える所に貼ってくれるのです。債務者に連絡をとる機会にもなりますね。
 
2 二回目の断行執行
計算書の「断行日」の欄を見てください。
断行は2時間を目途にして行われます。したがって作業員が10名、トラックが3台も用意されております。一回目の催告で割合正確な見積もりができますので、断行は驚くほどスピーディに終わります。
執行日、債権者は決断することが多いので、弁護士が執行現場に臨席するべきです。
 
三   強制執行
強制執行のコラムは7回にも及びました。しかし、これでも十分に強制執行の体験談を述べたことにはなりません。
単なる法律講義のつもりはなく、体験談を中心に書きたいと思いましたので、法律書を漁って説明することはしておりません。
占有移転禁止の仮処分についても、前回の法改正で弁護士にやりやすくなっております。これらについて触れても「面白いな」というコラムになりませんので、詳細は解説書に譲ります。

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一 執行官
 
  異色の公務員
昭和バブル経済絶頂期の朝、法廷に出るため午前一番の裁判に行くとき、東京地方裁判所の玄関前である桜田通りには黒塗りのハイヤーがずらりと列をなして停車しておりました。これだけ多くのハイヤーを誰が利用しているのか不思議に思って聞いたところ、執行官の専用車だというではありませんか。
当時は本当に儲かったようです。因みに執行官は執行官法に規定される公務員です。しかし、あまりにも儲けている執行官からの反対にあって(これは漏れ聞いた話です)、俸給性に切り替えることができず、いまだに手数料収入で生活される「異色の公務員」と言われていることは、殆どの方が知りません。
 
2 執行官の業務
我々には自力救済は禁止されておりますが、執行官は、我々に替わって実力を行使してくれます。
執行官の業務は民事執行法や執行官規則で定められておりますが、意外と多くの職務を負担しております。特殊な規定がありますので見ておきましょう。民事執行法61項です。「執行官は職務の執行に際し抵抗を受けるときは、その抵抗を排除するために、威力を用い、又は警察上の援助を求めることができる」とされております。
     国家権力を担って行う執行現場の総責任者なのですから、危険とも隣り合わせの業務です。私自身、執行官が室内犬にお尻をがぶりと咬まれた現場に立ち会いましたし、暴力をふるう債務者に毅然と対抗された執行官を幾度も目撃しております。
 
3 具体的な経験
    多くの占有移転禁止の仮処分もしましたが、その際、かつて「占有屋」と言われた方にも随分お会いしました。まるで宮部みゆきの小説の世界であります。
居住者不在の場合、執行官は、執行補助者である鍵屋を使って、室内に入ります。電気メーターやふろ場等の調査もしますが、置いてある手紙を見るため、手ではなく鉛筆を使ってひっくり返したり(ビニール手袋を使う執行官も見ました)、ゴミ箱の食物包装紙の日付を見て、居住の実態を調べる執行官もおられました。
ある執行現場で、大量のカレンダーが事務机の上に置いてあるのを見て、他の占有者の存在を明らかにしようとする職業意識の高さに感心したこともあります。この占有調査では、当該事務所を他の会社も利用していることが判明し、本案訴訟の相手方に加えました。
 
4 執行官になりたいという相談
整理回収機構(いわゆるRCC)時代、私の統括する不動産部からも、公募制を利用して執行官になりたいという話をされた方がおられました。執行官の地位や評価について熟知していた私は、それは素晴らしいと勧めた経験があります。
その方は今も執行官として活躍していらっしゃると思いますが、反面、国家権力を担って行う危険な執行現場の総責任者なのですから、大変であろうと案じております。
 
二 執行補助者
 
1 執行補助者
執行官以外にも、執行裁判所の命令により民事執行に関する職務を行う職業があります。通常「執行屋」と呼ばれる方々について紹介したいのですが、執行の際に、執行が適正に行われたどうかについて証人となる「立会人」とも異なる職業です。立会人は民事執行法7条に規定されておりますが、執行屋、即ち執行補助者は執行官法1014号に「労務者」と規定されているにすぎません。ですから、執行補助者は労務補助者と言うこともあります。
強制執行の申立をされる債権者の方は、通常、執行官にこれまで述べた関係者一切の選任を任せられます。しかし、私の事務所のように、手馴れた業者と懇意になっているような場合には、その方を指名して執行官と共同作業をこなしていただくことになります。執行官が数名臨場されるという巨大執行事件などを担当しますと、優秀な執行補助者なくして執行業務は困難だと分かります。
因みに、最初に示しましたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例は、その業者の方にお願いし、当方からよくある事例として限定をつけて見積もってもらったものを載せたにすぎません。
 
2 執行補助者は我々の味方
    執行補助者の方こそ我々の味方です。
       執行をしておりますと、PCB等産業廃棄物の処理や第三者との権利の調整も出てまいります。自動販売機や第三者の自動車等あげればきりがありません。これらの調整にも種々知恵を出してくれます。
暴力を売り物にされる職業の方にも、幾度か執行をかけておりますが、驚いたことは、その筋の方を執行補助者として要請されていたことが二度ありました。暴力を売り物にされる債務者と同様の方々が執行補助者に参加されているのですから、現場は緊張感一杯です。
若い弁護士の先生方、信頼のおける執行補助者を探し、良き関係を作って下さい。
次回は、コラムの「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という2事例を見て執行費用を考えましょう。

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一 「強制執行費用」と当コラム
 
1 昨年末、毎日新聞記者の訪問を受けて、「不動産の放棄」に関する私のコラムが多くの人に読まれていることを始めて知りました。この経緯については、今年の初め15日にコラムとして掲載しております。
その際、コラム欄のアーカイブ一覧(私のコラムの記録保管場所)を見たところ、三年前に書いたコラム「執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください」という欄が2万回をはるかに超えて読まれていることを知りました。しかも「執行費用」でネット検索しますと、私の上記コラムがヤフーの1ページ目に出てくるのも驚きです。
「不動産の放棄」と違って、「執行費用」は知識の断片にすぎません。皆さんの関心は何なのか?自信がなくなりますね。私がコラムを書こうと思ったきっかけは、私の体験談を書いて、少しでも面白いと思っていただきたいというものでした。
確かに若い弁護士の先生方から「執行費用のコラム、読ませてもらいました」というお礼の言葉は幾度かいただきましたが、それほど人気があるとは想像もしておりませんでした。
強制執行の費用に関する説明は細々としており、しかも単なる実務の説明でしかなく、私の当コラムに対する思い入れに反します。しかしこのような実務を何処まで面白く書けるのか、挑戦してみましょう。
 
  強制執行にかかる費用は様々
強制執行での必要費用を考えますと、大きく区分して、裁判所関係の費用、弁護士の費用と言うようになります。
弁護士費用については、もはや種々いろいろです。強制執行専門を宣伝される法律事務所のコラムなど何の面白味もありませんが、しかし、この弁護士費用は意外と高額なのです。執行を専門にされる法律事務所は、細かく種々の場合に区分され、受任される内容を段階別に分類して、その都度請求できるようにしていらっしゃいます。しかし最後の執行まで見越しますと本当に高いですね。
賃料で生活されている方にとって、賃料の何十倍という高額の費用がかかる明渡強制執行に躊躇されるのは当然のことなのです。
 
二 裁判所で必要な強制執行費用
 
1 強制執行費用
  弁護士費用は別にして、裁判所関係の費用について見ましょう。
強制執行には種々のものがあります。担保に取っている不動産を競売することもありますし、金銭債権を債務名義として強制執行することもあります。そもそも預金や動産等押さえるべき対象物によっても、強制執行の方法は変わります。
思い切って、土地明渡や家屋明渡のように、一般的に皆様がお考えになる明渡強制執行費用に絞って検討しましょう。皆様は不動産執行に関係する「執行補助者の費用」について多大の関心をお持ちだと想像できます。コラムも同様ですが、「執行費用」をご覧になる理由は、相当高額になる執行補助者の費用に行きつくと思われるからです。
 
2 裁判所の費用
裁判所関係の費用と言っても、申立費用が必要なことは前提です。
そもそも「強制執行の申立は書面で行う」と民事執行規則(第1条)にも定められておりますから、申立費用は当然かかります。しかし、皆様の関心を呼ぶほど高額ではありません。
今回は、確実な執行を行うために、強制執行の前提となる明渡に関する債務名義、即ち勝訴判決を取るところから説明します。そもそも土地の明渡や家屋明渡を内容とする判決が必要ですが、債務者が他に転貸したりしている場合、債務者だけの判決では強制執行できません。相手方が異なっている判決では強制執行できないのです。訴訟前、占有者の調査から始める場合もあるとご記憶ください。
確かに私のコラムで判決なくして強制執行をした事例も紹介しております。しかし、このような事例はよほどのことが無い限り困難です。判決なくして行う強制執行を「満足的仮処分・断行の仮処分」と言いますが、よほどの運(?)とそれに見合う弁護士の実力()がないとできることではありません。当然執行費用もかかります。私が行った満足的仮処分では執行費用だけで1000万円、担保としてもそれに近い金額を要しました。
 
3 占有移転禁止の仮処分(民事保全法621項)
通常、訴訟前に行う占有移転禁止の仮処分は、裁判の相手方を誰にするかについて調査することも兼ねております。この仮処分で占有者を特定し、その後、転貸などで占有者が変わったとしても最終執行できるようにする必要があります(当事者恒定効といいます)。
この手続きには、担保と言う保証金が必要になります。通常の居住用マンションなどでは、賃料の3か月分から6か月分、事業用の店舗などですと6か月以上となりますから、この費用を惜しまれる方も多いのです。でも、この手続きを通じて債務者と直接交渉できる余地も生まれます。任意の明渡を促す効果もあるのです。寧ろこのような事前の手続きにより債権者の決意を示し、任意の明渡が可能となる機会作りを検討しましょう。
裁判所関係の費用ということで、担保と言う費用を説明する必要があると思い書いてみましたが、この仮処分でも皆様ご期待の執行官や執行補助者にお世話になります。故に、次回は、執行官や執行補助者について、次々回は執行補助者の費用等、具体的に見てみましょう。

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一.    (元)従業員らに営業秘密を持ち出された(情報を漏洩された)場合の法律相談としてはいくつかバリエーションがありますが、刑事告訴を要望される経営者の方が多いことも事実です。従業員に裏切られるわけですから、当然といえば当然の反応といえるでしょう。
 もっとも、一般の方が警察署に行って不正競争防止法に基づく刑事告訴をしようとしても容易でないことも事実です。

二.     そのような中、平成27年1月28日付けで、経済産業省から営業秘密管理指針の全部改訂(以下「全部改訂版」といいます)が公表され、従前の解釈がだいぶ緩やかになりました。会社にとってみれば、喜ばしい改訂であると考えられます。
 全部改訂版によれば、「改訂に当たっては、『知的財産推進計画2014』(平成26年7月知的財産戦略本部決定)で、『一部の裁判例等において秘密管理性の認定が厳しいとの指摘や認定の予見可能性を高めるべきとの指摘があることも視野に入れつつ、営業秘密管理指針において、法的に営業秘密として認められるための管理方法について、事業者にとってより分かりやすい記載とするよう改める』と記載されたことを踏まえ」とされ、「秘密管理性要件については、企業が、ある情報について、相当高度な秘密管理を網羅的に行った場合にはじめて法的保護が与えられるべきものであると考えることは、次の理由により、適切ではない」と記載されております。
 「次の理由」の中には、「営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、これらの企業に対して、『鉄壁の』秘密管理を求めることは現実的ではない。仮にそれを求めることになれば、結局のところ、法による保護対象から外れてしまうことが想定され、イノベーションを阻害しかねないこと」という記載もなされていますから、全部改訂版は従前の営業秘密管理指針に比べてかなり踏み込んだ内容になっていると考えることが可能です。

三.     このような影響もあるのでしょうか。「営業秘密」に関する刑事事件としては、本年に入ってから、既に複数の事件がマスメディアに取り上げられています。
 例えば、本年1月14日付け各紙によれば、大阪府警は、家電量販大手エディオンの「販促スケジュール案」などのデータを不正取得したという疑いで、エディオンから転職した上新電機の元部長を不正競争防止法違反容疑で逮捕したとのことです。さらに、2月4日付け各紙によれば、同容疑者の元部下についても逮捕したとの報道もなされています(以下「エディオン事件」といいます)。
 報道によれば、エディオン事件においては、職場に共用パソコンが存在していたこと、遠隔操作ソフトのインストールが可能であったこと、退職後90日間にわたり退職者のID及びパスワードが依然として有効なままであったことなど「秘密管理性」を否定する方向に推認し得る事実がいくつか存在するようですが、大阪府警は「営業秘密」として認められるという判断をしているようです。
 また、本年2月14日付け各紙によれば、神奈川県警は、日産自動車に在職中、日産本社のサーバーにアクセスし、モーターショーでの車の配置や照明の当て方などに関するデータ8件を自分のUSBメモリーなどに複製して不正に持ち出したという疑いで、日産自動車の元社員を逮捕したとの報道もなされています。

四.     今後は、全部改訂版に従った「営業秘密」の管理をしておくことによって、従前と比較して、刑事処罰による従業員に対する抑止を行い易くなり得ると考えられます。
 そのために重要なことの第一は、各会社の実情に合わせて規則等を定めることです。また、万が一、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合(情報漏洩されてしまった場合)には、会社の実情に応じて当該データ等が「営業秘密」に該当するかどうかを法的に検討する必要があります。
 当事務所では、営業秘密管理指針に適合する規則等を整備するばかりでなく、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合、不正競争防止法上の規定に加え、各種刑罰法規に該当しないかどうかを様々な角度から検討し、刑事告訴等を行っております。
一度ご相談くだされば幸いです。

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一 財産開示手続の必要性
 
1 苦労の末、勝訴判決を得ても相手方が一円も払わない事例は多い。日本弁護士連合会が過去調査した報告によると、最近3年間に確定判決による債務名義を取得しながらも、債権回収できなかった事例に接した弁護士は79%にもなるとのことです。
これでは「絵に描いた餅」と言わざるを得ません。
前のコラムで自力救済について書きましたが、自力救済をしては駄目です。話し合いすら拒否する債務者に対しては、法的手続である強制執行をして債権回収するしか方法はないのです。
 
 では何に強制執行をすればいいのでしょうか?
信頼関係のない債務者は、貴方からの強制執行を恐れて、預金は別の銀行に移したり、不動産には多額の担保権を偽装するなどして財産隠しをする事例まであります。
でも、そもそも貴方が債務者と人間関係がない場合には、債務者の財産状況など全く分からないですよね。自力救済を否定し、債務者の財産を裁判手続のなかで明らかにできないとすると、強制執行制度は意味のないものになります。
 
3 言葉を変えて言いましょう。
法律で、裁判手続に則って債権を回収しなさいという法治主義を唱えるなら、判決結果を実現する手段をも法は保証しなければなりません。実効性のある執行制度を実現しないと、自力救済の蔓延、力の強い者の勝ちとなります。(自力救済のコラムが生きてきますよね)。
上記事情に配慮して、財産開示の制度が立法され、平成1641日に施行されました。評判通り、使いにくい半端な制度です。しかし、顧問業務を中心に受任しております当事務所では、法制定時より、財産開示制度を利用して依頼者の要望に応えられるよう努力してきました。もちろん費用倒れになる場合には依頼者に説明して行いません。
 
  財産開示制度とは?
 
  私のコラムは若い弁護士の方が多く読まれています。
このように考えますと、民事執行法第19711号と2号の要件の違い、限定説乃至非限定説、そして通常行う2号に基づく探索必要説乃至探索不用説、或いは二重基準論等解説したい論点は多々あります。しかし深入りしても「つまらない解説書」にしかなりません。
故に、当事務所で通常行ってきました同条2号が中心になります。実際にも、財産開示手続は年間1,000件前後にとどまり、その殆んどが同条2号による申立てであるとされています。
 
2  同条1号は「強制執行又は担保権の実行における配当等の手続」が前提とされております。預金の差押えをして、仮に少額の預金があったとしても、配当手続を受ける時間的なロス等を考えますと、当初より意識的に同条2号「知れている財産に対する強制執行を実施しても、申立人が当該金銭債権の完全な弁済を得られないことの疎明があったとき」として申し立てる方が実益に叶うのです。そもそも裁判官は財産の探索を厳しく要求することが多く(探索必要説)、同条2号の要件を満たすことで随分労力や費用を要します。従って、当事務所では最初から強制執行を意識して事件を進行させます。具体的には当初より預金差押のための情報収集を積極的に行うのです。預金差押の失敗事例を裁判所に示し、2号要件を満たすことに注意しております。
 
3 財産開示手続は、裁判所が財産を見つけ出してくれるというような制度になっておりません。しかも裁判官の運用も厳しく、これでは国が裁判を受ける権利を保障し、反面、自力救済を禁じる趣旨に反します。財産開示の制度が憲法的価値を有するという学者もいますが、かかる運用には憲法違反を主張する実務家はいるのでしょうか。
   当事務所では財産開示手続をうまく使って、債務者に和解を納得していただくなど、中途半端な制度を逆利用、つまり裁判所と言う舞台を上手に利用することで、その効果を期待しております。
 
三 どの様に財産開示手続を利用するのか?
 
1 財産開示手続では、事前に当方より質問事項書を提出しますが、これに基づいて裁判官が債務者に対して質問してくれます。この質問事項書の質問事項を工夫しましょう。個人と法人に分けて考察します。
 
2 個人は給料債権が中心でした。就職先、給料の振込先、退職金の有無等聞くことは多いのですが、無職と答える債務者もいます。それを真に受けてはいけません。保険関係の質問で就職していることを明らかにしたこともあります。保証人でない父の財産を聞いて、裁判官に止められ、意識的に裁判官に抵抗しました。しかし、これを契機に債務者は、父を保証人とする和解に納得してくれました。
そもそも債務者は財産目録の提出をしなければなりません。しかし郵貯銀行の預貯金が意外と漏れております。生命保険関係や最初の就職先である旧第一勧銀の給与振込銀行支店を聞くこともコツですね。
 
3 法人に聞くコツもたくさんあります。このような債務者法人は、通常、事務所は賃貸です。質問事項書には保証金、敷金と記載して裁判官或いは貴方が質問する場合に裁判官の理解を得なければなりません。従来の取引銀行は事前に差押えしておりますので、現在の給料、取引先の利用銀行も聞きましょう。この質問の際、債務者会社の対応に頭にきて、債権者は「債権者破産の申立をしたいと言っているが、それでもよいか」と質問をしたら、裁判官に止められました。後日、債権者破産の申立を検討しておりますと連絡したところ、和解になった事例があります。財産開示手続は、法律論の話しにならないのです。

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