コラム
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弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
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納骨堂での“寛ぎ”
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2024-03-01T15:45:28+09:00
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1. 今回の題名には本当に悩みました。納骨堂で“寛ぐ”など不謹慎だと言われても、それはそれで当然のことでしょう。最近、頻繁に不幸に接し、何度か納骨堂や火葬場に行くうち、そのロビーから見える広々とした近隣の景色に何故かホッとする気持ちを感じたのです。多少ではありますが、寛ぎの気持ちを感じた状況に自分でも不思議に思いました。
これらの施設では多少時間がかかることは当然ですから、その間、ロビーに座って、外に広がる周囲の景色を見ているしかありません。周りを取り囲んだ山や、その下の人家や田地や川を見ているうちに、落ち込んだ気持ちから、多少寛ぎの気持ちが湧いてくることに気づきました。本当に周囲の眺めがよく、その自然の中に人の生きている気配が漂ってくるのです。
2. 早速、納骨堂や火葬場に関する法律の調査を始め、「墓地、埋葬等に関する法律」(昭和23年法律第48号)を読みました。規定は、たった26条しかないのですが、丁寧な規定の仕方に感心しました。
第一条「目的」の項は次のように規定されています。
「この法律は、墓地、納骨堂又は火葬場の管理及び埋葬等が、国民の宗教的感情に適合し、且つ公衆衛生その他公共の福祉の見地から、支障なく行われることを目的とする。」
第二条では「火葬」、「改葬」、「墳墓」、「墓地」、「納骨堂」、「火葬場」等の定義があり、国民の宗教感情等に配慮しながら、施設の設置には都道府県知事の許可を軸にしております。
3. 次に、納骨堂の経営の許可に関する最高裁判決(令和5年行ヒ150号 令和5年5月9日付第三小法廷判決)を見てみましょう。納骨堂や火葬場の多くが、市街地から多少離れて建築され、建物の周囲が開けた場所に設けられている理由が分かります。
事案の要旨は次のようなものです。
大阪市は「墓地、埋葬法等に関する法律」を受けて「大阪市墓地、埋葬等に関する法律施行細則」を定めております。その内容によりますと、市長は、上記墓埋法10条の規定による納骨堂の施設の変更等の許可申請があった場合、当該申請の墓地等の所在地が、学校、病院及び人家の敷地から概ね300メートル以内の場所にある時は、当該許可を行わないものと規定しています。しかしながら、但書きで、市長が、当該墓地等の付近での生活環境を著しく損なう恐れがないと認めるときは、この限りではないと規定しているのです。
上記解釈を前提にして、本件納骨堂から100メートル以内に居住する住民から、本件の大阪市長の許可の取り消しを求める訴訟提起がなされた事案です。
上記最高裁判決は、周辺住民の原告適格は認めましたが、大阪市長の許可については是認した判決となりました。
取り消しを求める原告適格が争われた事案でしたが、納骨堂や火葬場等の場所決定について大変勉強になりました。良いタイミングで最高裁の判決に遭遇したことになります。
でも現場に行って周辺環境を勉強もしないで判例を紹介することには忸怩たる思いがあります。問題となっている納骨堂で「寛ぎの気持ち」が味わえるかどうか、実地調査をしたくなりました。
4. これまで、納骨堂や墓地等の存在が原因で、紛争になるなど考えたこともありませんでした。寧ろ、寛ぎの場所として争いごとから回避されるものとして考えていたように思います。
ところが、本コラムにおいて何度も紹介してきました濱嘉之氏の小説「プライド 警官の宿命」、第二巻となる「プライド2 捜査手法」を読みますと、宗教施設である霊園用の土地が紛争の対象として問題となった事件も紹介されております。
その事例として、反社会的勢力が、東京と神奈川を間にする霊園用の土地を買い占め、様々な宗教施設や霊園を作っていることから発生した事件の紹介もありました。これに宗教に関係する組織がからむのですから、大事件に発展することは私でも理解できます。
この二つの小説は、警察の捜査手法や組織を詳細に紹介するものですが、小説というより事実の紹介という内容です(そうでなければゴメンナサイ)。
警視庁の組織構成や、捜査の仕方が事実に即して詳細に述べられております。特に、「プライド 2」の警視庁の組織の詳細な紹介には関心がない人には読み切ることが難しいほどの内容です。私は濱さんのファンですから、面白く読みました。警視庁の内部の様子や事件捜査の内容を知って驚いております(国や警察、特に警視庁と揉めないのか?などという感想は不要でしょうね)。
納骨堂で感じた気持ちが、このように随分違った内容になったことに自分でも驚いております。
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「マンションの管理業務について」その2
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2023-12-15T11:11:25+09:00
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1. 前回は、マンション管理の大枠について、事例をあげて説明しました。今回は、その続きとなります。
意外と揉めた事案の紹介ですが、マンションに付属して設けられた駐車場を巡る案件です。
随分昔の話ですが、大型マンションの建設に際して、規模の大きな駐車場が設定されていました。当時は車社会の少し前のことでしたから、駐車場に空きがあったのです。この駐車場が、近隣の車所有者の駐車場としても貸出しされていました。ところが、日本経済の爆発に際し、殆どのマンション入居者が車を利用するようになってきました。マンション居住者が、マンションに付随する当該駐車場を利用できないなんておかしいと苦情が出るようになるのは当たり前の話と考えられます。
私は、管理組合から、今回開かれる管理組合総会が駐車場利用方法を巡って炎上しそうなので、弁護士として出席してほしいとの依頼を受けました。
難しい問題は、駐車料金が外部貸し出しでは、入居者貸出より高額になっており、その収入が管理組合のためにも利用されていたのです。管理組合の打ち合わせ費用としても使用されておりました。これらの費用が管理組合の費用として利用されることに何の問題もないのですが、それが減少することは管理組合の理事者にとって大変な問題でした。
入居者の主張も当然のことですから、総会は大変でした。
2. 振り返ってみますと、何人もの私の友人が管理人の仕事を行っていたことを思い出しました。
私が受験した当時の司法試験は本当に難しい試験でした。3パーセント程度の合格率と言われた時代でしたから、管理人をしながら受験に挑む友人も何人もいました。
受験との両立を考えると管理人は適当な職業だったのでしょうか?
実は、友人が勤務する宿直室を訪ねたことが何度かあります。懐中電灯を持って見回りをしたり、箒を持って歩いたり、来客の応対をする友人の仕事を見ていると、「大変だな、自分は良かった」と感傷に浸りました。
でも最近でも受験勉強との両立を考えて管理人をする人がいらっしゃるのです。管理人の現場を見る機会が時々あるのですが、そのような方々をみると「頑張れ」とエールを贈りたくなります。
3. マンション管理人を辞めさせたいとの相談を受けたことも何度かあります。
居住者から“管理人が業務をきちんとやっていない”として苦情が出ることも多いのです。“ゴミが散らかっている”、“ポストから郵便物がはみ出し、第三者が取り出せる”、“口の利き方が横柄”などという苦情が意外と多いのです。受験者のアルバイトのため、プロ意識が欠如しているせいでしょうか?
横柄な対応も多くあるようで、管理組合も放置できなくなる事案もありました。受験勉強をやっているからというのは言い訳になりません。当方は弁護士ですから、何度指導しても業務が適正に遂行されないなら、解雇もやむをえないと応じざるをえません。
管理人業務は片手間でやっているという管理人に味方するわけにはいかないのです。
4. マンション管理人の論点に行き着きました。
マンション管理人は立派な職業ではありますが、マンション管理人に特別の資格は不要です。しかし、マンション管理人に関連する資格の種類をお聞きになると、きっと驚かれる方が多いと思います。「管理業務主任者」、「マンション管理士」、「マンション管理員」等の資格があり、そのための試験があるのです。
「管理業務主任者」、「マンション管理士」の資格は国家資格で、一般社団法人マンション管理業協会と公益財団法人マンション管理センターが指定試験機関となっております。
「管理業務主任者」は、管理会社に所属し、マンション管理のマネジメントを行い、管理組合をサポートしたり、管理人を束ねたりするのが役割です。「マンション管理士」は、マンション管理のエキスパートと呼ばれる人たちで、マンションの管理規約や大規模修繕の計画を策定したりして、管理組合の立場に立ってマンション管理のサポートをする役割を荷っております。
これまで上記試験についての詳細までは知りませんでした。でも友人が司法試験以外に上記の試験を受験していた関係で存在自体は聞いておりました。
5. 今回は、昔の友人を思い出す良い機会になったと思います。
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「マンションの管理業務について」 その1
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2023-06-29T11:45:17+09:00
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1. 近時、マンション管理に関する報道が多いですね。
新聞報道で多いものは、マンション管理に関する組合総会の議決権の不合理に関係するものが目につきます。
「マンション管理適正化法の改正概要」が、その内容の中心ですが、その内容を分かりやすく言うと、マンションの共有部分の修繕や建て替えを容易にしようというものです。確かに、これまでのマンション管理組合総会の議決権の縛りは、きついものがありました。例えば、共有部分の修繕決議をするためには、これまで所有者の過半数の賛成が必要で、欠席者は提案に対して反対とみなしていますから、共有部分の修繕決議はなかなか難しいものがありました。
タワーマンションでなくとも、部屋ごとに所有者がいらっしゃるとしますと、大変な数の所有者になります。しかも、その所有者の方が賃貸収入を期待される投資家であるとしますと、費用のかかる修繕議案なら欠席される確率が高くなるでしょう。
相当、昔のことですが、共有部分である廊下の手すりが、壁の一部とともに破損した事案で、老人や子供が手すりに触ると危険な状況になっていたマンションがありました。居住されている人から、管理組合に修繕依頼をされていましたが、議決権数が厳しくて修繕が放置されている事案でした。その方は、管理組合総会に出席されて厳しく修繕依頼を申し立てされていましたが、それでも対応が不十分でしたので、当該マンションの管理会社である会社の株主総会にまで出席されて不満を訴えられたのです。管理会社も修繕すべきであると管理組合に申し出をされていましたが、その方が、上記返答に納得される訳がありません。株主総会は大荒れになりました。管理会社の要請で株主総会に出席していた私は、大変な思いをしました。
2. 今回のようなテーマですと、書くことが大変多いのです。従って、初回は、実際の管理会社の実務的な側面から紹介しましょう。
管理会社は、マンションに常駐する管理人を派遣するのが通常でしょう。現場に常駐して日々の管理業務をするということは大変なことなのです。マンション居住者のために、マンションの入り口から郵便受け等をチェックすることなど常識でしょう。掃除をして、水撒きをしていたら、自転車に乗った通行人にかけてしまった事例がありました。内容証明で損害賠償を請求されましたが、そもそもマンションの建物内部の水撒きでしたから、謝罪をして済みました。
マンションの建物内部の事案ということで思い出しました。
当該マンションは巨大で、ビルの中ほどに潜り通路を設け、公園のようになった構造になっておりました。この通路に、近所の方が愛犬と散歩をされるたびに一休みされるのですが、居住者が、この犬に度々吠えられるという事案がありました。管理人は、近所の方に休憩しないでほしいと告げたことから問題が生じました。そもそも、この通路はマンションの居住者のための憩いの場所ですから、居住者でない方の愛犬の休憩場所とならないということで解決した事案がありました。
本当に、近隣の方との付き合い方も問題になります。大きなマンションですから、植木も多く「葉を刈るように」などという苦情も多く、近所の方との関係から、随分前になりますが、カメラの設置を巡る紛争もありました。
最近の問題ですが、この管理人の成り手が不足しているのです。厳しい労働に見合うだけの給与も低く、人材確保で苦労しているという新聞報道もありました。定年後のシニア世代の応募が減少しているとの内容でした。
3. 管理会社の業務として、居住者の監督のような業務もあります。
部屋の中で、犬や猫を大量に飼っておられる居住者がおられました。隣や下の居住者から苦情が絶え間なく、交渉をしても解決の目途が立ちません。管理費すら支払われなくなりました。裁判所の許可を得て立ち入り検査をした事例がありました。大勢で立ち入り調査をした際、窓から逃げ出す猫達を目撃して、複雑な思いをしたことが忘れられません。
また、居住者との連絡が取れず、周囲から変な臭いがするという苦情もありました。警察同伴で鍵を開けて入室したことが何度もあります。管理会社の担当社員がどんどん入っていき、勝手に書類を見たりすることで注意したこともあります。事件の可能性があるから、現場の保存や、余計な指紋を残さないようにというような基本的な注意力がないことに驚きました。つまり、民間の管理会社ですから、事件或いは犯罪というような可能性に思い至らないのですね。
次回もご期待ください。
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自治体の経営するアンテナショップ
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2023-04-24T14:10:35+09:00
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1. 本年、元旦の新聞で「自治体アンテナ店、初の減」という記事が掲載されていました。自治体アンテナ店とは(通常、「アンテナショップ」と言います)、日本の各地域での名産品が各自治体の創意工夫により、種々展示されているのです。各地域の宣伝活動を目的として経営されているのです。
私の故郷である兵庫県のアンテナショップには、これまで何度も通っておりました。でも、これは、私の個人の趣味でしかないと思い、コラムの材料としては、皆様にあまり関心をもってもらえないだろうと勝手に考えておりました。
ところが、日本弁護士連合会の今月のメールマガジンには、日弁連の副会長の方のエッセーが掲載されておりました。
「旅先?美味探訪」と題して「東京に居ながら、各地の特産品を味わうことができる」という興味深い内容でありました。アンテナショップの紹介をされており、私と一緒だと嬉しくなりました。
2. 実は、私は、有楽町駅前「東京交通会館」にあった兵庫県のアンテナショップ「兵庫わくわく館」に行くのが趣味の一つでした。弁護士会館から歩いてもいける距離です。元気な頃は、弁護士会館から日比谷公園を横切って、何度も通いました。
昨年の夏、病後の症状も改善し、久しぶりに弁護士会に行った帰り、有楽町まで足を延ばしてアンテナショップを訪問したのです。ところが、有楽町の駅を出たところにあった兵庫県経営のアンテナショップは閉鎖されてしまって無いのです。ショックでした。
冒頭で紹介しました元旦の新聞報道によりますと、昨年の春、閉鎖されたようです。
3. 兵庫県のアンテナショップでは、私の生まれ故郷である但馬の名産品を見たり買ったりしておりましたが、淡路島の名産品が大量に置いてあり、つい買ったこともあります。
皆様、淡路島のイメージとしては、瀬戸内海の島という感じで、海産物の名品を想像されませんか?もちろん、海産物も置いてありましたが、玉葱などの農産品も多くてびっくりした記憶があります。確かに、淡路島と言っても広さは但馬と変わらないでしょうから、島の中に入れば農作業が中心の生活になるのでしょうね。
淡路島には、兵庫県人として一度は行ってみたいと考えておりました。神戸から「神戸淡路鳴門自動車道」を使って明石海峡を渡り徳島まで足を延ばすのですが、鳴門海峡を通過すると言えば、鳴門の渦潮は是非見たいと思っておりました。
私は、何度も当コラムで紹介しております、武市半平太の子孫である武智先生の故郷、高知まで足を延ばしたいと何度も考えておりました。高知には若い時代、一度だけしか行ったことがなく、それも仕事で行ったために何も見る余裕がありませんでした。
種々の報道によりますと「神戸淡路鳴門自動車道」を使って高知に行くのにそんなに不便ではないようです。
4. 実は、淡路島をよく知るためには良い機会と考え、司馬遼太郎著作「菜の花の沖」6巻を読みました。
江戸時代の終わり頃、淡路島の庶民として生まれた高田屋嘉兵衛(函館までの海の航路を開拓し、函館市の生成に寄与した海の商人です)を主人公とする物語です。高田屋嘉兵衛が淡路島の生まれと聞いて読書意欲が掻き立てられたのですが、出生地である淡路島の「都志の浦」(「つしのうら」と読みます)を探すのに大変苦労しました。場所を地図で特定するだけでも大変でした(小説だから文句言えないよね)。
淡路島を知ってもらうために「菜の花の沖」の4巻の最初の部分、1ページ目を紹介しましょう。
「淡路の島々は、ちぬの海(大阪湾)をゆったりと塞ぐように横たわっている。北にむかうほど長く細く、逆に南へむかえば地がひろく、野がひろがり、水田が空の色を映している。北端の岩山は感覚として触角のように鋭い。わずか一里のむこうに本土の車馬の往来するのが見え、そのあいだを明石海峡の急流が流れており、本土に変化があればすぐさま響いてしまう。」
5. 最後になりますが、淡路島の実際を知るためには、ゆっくり、旅をするしかないことが分かりました。
そもそも、神戸から「神戸淡路鳴門自動車道」を使って明石海峡を渡り、徳島まで足を延ばすとということは変わりなくやってみたいのです。でも、このコラムを書いていてネットで調べてみると、淡路島は島全体が観光地と言っていいのではないでしょうか(つい私の故郷と比較してしまうのですが・・)。
この自動車道は、淡路島の中心を走っております。ネットを調べる前は、南あわじ市で、世界最大の渦潮を見たいと考えていた程度でしたが、このコラムを書き終わるころには、もっとゆっくり、観光するべきであると、反省しております。観光スポットが、たくさんあることが分かったからです。
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「宇宙開発の報道が一挙に増えました」
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2023-02-20T16:42:27+09:00
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1. 昨年暮れから宇宙開発に関係する報道が盛んです。
このコラムを書こうとして準備した朝の新聞では、日本が打ち上げようとした新型ロケット「H3」の 打ち上げが失敗したと報道されていました。
残念ですが、宇宙開発そのものには、支障はないという感じなのですが・・。日本が活躍しなくとも宇宙開発に影響がないという側面から考えると、逆の意味で本当に残念です。
このコラムでも既に紹介しておりますが、30年以上も前、私自身が宇宙開発を夢見ておりました。顧問先の会社に宇宙開発の会社があり、私も宇宙開発に燃えておりました。当時は、宇宙開発に関係する民間の会社は本当に少なかった。
でもアポロ計画によって、アームストロングが月面を歩いたのは1969年のことなのです。50年以上も昔のことなのですよ。当時は、月面を、月に住んでいる白ウサギと一緒に歩く自分を想像し、夜の空に浮かぶ月をよく眺めました。
2. 昨年、宇宙開発を一緒に夢見ていた会社の社員の方と話した際、「宇宙開発は本当に遅れているよね、新聞も報道が少ないよね」と嘆きあいました。昨年の夏ごろは、宇宙開発に関係する新聞報道が少なく、我々の会社が潰れたのが大昔のことにように感じておりました。でも昨年末より一挙に報道が増えました。
我々の会社は無くなりましたが、社長は、その後も、宇宙空間に飛ばすロケット開発に関与され、夢を諦めておられませんでした。事情があって連絡しておりませんが、うらやましい限りです。もうお年なので、今回は、種子島宇宙センターには行っておられないと思いますが・・。
この会社の運営が困難になっていた頃、新規の事業として、「お骨を宇宙に飛ばして供養をしよう」という案も検討しました。私も、自分が死んだら、宇宙を飛ぶのかと興奮したものです。
でもスペースデブリ(宇宙のゴミ)の問題が出て諦めることになりました。当時は、スペースデブリの問題も今ほど言われておりませんでした。今になってみると大変良い決断だったのですね。
ところで、宇宙のゴミは、10以上で2万個、1ミリ程度で1億個飛んでいると言われているようです。しかも、このごみはピストルの弾丸より早く飛んでいると聞いております。人工衛星に当たったとしても大変な被害が出るようです。
宇宙遊泳を夢見ておりましたが、弾丸が飛び回っていると思うと躊躇しますよね。
3. 最近の報道ですが、日米安全保障条約に、宇宙も適用すると掲載されていて大変驚きました。
今年初めのことですが「日米両政府は、米国による日本の防衛義務を定めた日米安全保障条約第5条が、宇宙空間にも適用されると確認する方針を固めた」と新聞に掲載されました。
確かに、宇宙空間から発せられる情報は大変なものがあります。電波などだけでなく、地球上の様子は宇宙から見られてしまいます。スマート農業に関係して掲載した当コラムでも、宇宙からの情報で、農業も種々のメリットを受けていると書きました。何度も書くような最新情報なのでしょうね。
ところで、近時新聞を賑わしております撃ち落とされたバルーンによる偵察活動について、人工衛星も同様なのかと疑問に思いました。米国に侵入したバルーンを米国は撃ち落としましたが、衛星情報を流す人工衛星はどうなるのでしょうか?
このような視点から日米安全保障条約を適用して、「人工衛星を攻撃されれば、これに反撃できるよう」に検討しているのでしょうが、戦争になるようなら大変です。
4. 宇宙から地球を見た宇宙飛行士野口聡一さんの言葉が大好きです。
野口さんは宇宙滞在日数344日に及びますが、宇宙船の外に出て活動もされています。
野口さんが、宇宙空間から地球を見て感じられた内容を引用します。
「間違いなく、この星でしか私は生きられないし、そこに帰っていって死ぬ。先祖も、今後生まれてくる子孫もすべて、この球体の中で生まれ、死んでいく。
三次元の空間的広がりだけでなく、概念ではとらえきれないほどの時間の広がりがそこにあるのに、それを私が見ているのはこの一瞬というアンビバレントさ(私の注・「相反する感情や考え方を同時に心に抱く」ような状態)と尊さがあります」。
今回は、新聞でも宇宙情報が多く掲載されるような状況から、昔から感じていたことを書いてみようと思いました。申し訳ありません。
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「アイヌ民族の権利の保障」
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2022-09-29T13:16:01+09:00
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1. 私達弁護士の強制加入団体である日本弁護士連合会「8月号会報」を見て驚きました。
今月(9月)29、30日、旭川市で開催される第64回人権擁護大会において、決議される決議案の一つとして「アイヌ民族の権利の保障を求める決議案」が掲載されていたからです。
私は、昔から北海道に旅行する都度、アイヌ民族の展示物を見て回っておりました。釧路や帯広に行った際には、何とか日高地方に行って、アイヌの博物館等(アイヌ文化伝承地)を見て回れないかと検討したほどです。2006年の釧路市で行われた人権擁護大会には妻と出席し、種々検討したのですが、予定が取れませんでした。
2. アイヌ文化の保護に関する事例として、私にとって一番印象が深いものは、1997年の「二風谷ダム建設差し止め訴訟」判決です。
この訴訟は、アイヌ民族の聖地とされる「二風谷(にぶたに)地区」にダムが建設されることになり、紛争が継続した結果、提起されたものです。アイヌの人々の生活の場が奪われることに対して、北海道開発局も補償金の支払等種々努力をしたのですが、結論として、土地収用法に基づく強制収用となりました。このことから、札幌地裁にダム建設差し止めの行政訴訟が提起されたのです。
札幌地裁は、工事のための土地取得等は、アイヌ民族の文化保護などをなおざりにして収用を行ったことになり、土地収用法第20条3号の裁量権を逸脱しているとして違法性を認めました。しかしながら、土地収用裁決を取り消さなかったという珍しい判決なのです。
認定と逆の結論になるとは、当時予想できませんでした。
3. 逆の結論を導き出せることになった行政事件訴訟法第31条第1項を見てみましょう。長いですが、本当に面白い条文なのです。
「取消訴訟については、処分又は裁決が違法ではあるが、これを取り消すことにより公の利益に著しい障害を生ずる場合において、原告の受ける損害の程度、その損害の賠償又は防止の程度及び方法その他一切の事情を考慮したうえ、処分又は採決を取り消すことが公共の福祉に適合しないと認めるときは、裁判所は、請求を棄却することができる。この場合には、当該判決の主文において、処分又は裁決が違法であることを宣言しなければならない。」
この判決の主文においても、行政側の処分又は裁決が違法であると認めておきながら(アイヌの方に旗をあげながら)、土地収用を是認するなど残念でなりません。
4. では最初に戻り、今月末、第64回人権擁護大会において、提議される「アイヌ民族の権利の保障を求める決議案」の内容を見てみましょう。私の感想を抜きにして、そのまま引用させていただきます。長いですが、私見を述べるよりましでしょう。
「アイヌ民族は、北海道などに住んできたアイヌ語を母語とする先住民族であり、自然の恵みを享有し、伝統的な宗教的儀式や祭事等を行うなど、独自の文化を育んでいました。
しかし、明治政府による同化政策等を経て、自然環境を維持管理する権利を始め、アイヌ民族の人々が各地で伝統的に形成してきた自治的集団(アイヌコタン)としての権利や、アイヌ民族の人々が公の場でアイヌ語を使用する権利、アイヌ語教育を受ける権利等は、現在も保障されていません。
日弁連は、国及び北海道に対し、固有の伝統の尊重及び文化的・精神的な権利を認め保証すること、アイヌ語教育を受ける権利等の保障、進学や就職状況の改善を始め社会的地位を向上させること、日本が既に批准した国際条約において先住民族の集団としての権利が認められていることを確認し、ILO169号条約の批准の検討及び国内法の整備を行うことを求めるとともに、アイヌ民族の権利の保障に力を尽くす決意です。」
5. アイヌ関係の本や小説は、昔から、かなり読んできました。
日弁連の会報を読む前、偶然、川越宗一氏著作の「熱源」を読んだところでした。会報の内容が具体的に盛り込まれた内容ですが、当然、同化政策に反抗する主人公の姿が印象的でした。
最初はサハリンが舞台で、近時のプーチン大統領の政策を見ていると、ロシアの恐ろしさが実感されました。でも、小説の主人公は、最後、南極大陸の探検に「犬使い」として参加するという内容になっており、その展開に驚きました。
6. 今回のコラム作成に際して、もっとアイヌ関係の紹介本や小説を読みたいと思い、ネットを見て驚きました。アイヌ関係の小説がブームのようだと書かれているのです。川越宗一氏著作の「熱源」は直木賞受賞作ということもあるのでしょうか?
ネット調査の結果、船戸与一氏著作の「蝦夷地別件」と池澤夏樹氏著作の「静かな大地」を買いたいと考え、紀伊国屋書店に行きました。何とないのです。売り切れなのかどうか・・。
残念です。
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「高齢化社会−その2」
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2022-07-28T09:59:21+09:00
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1. 前回のコラム掲載以前から高齢化する社会に関心をもっておりました。特に、近時、高齢者の財産が活用できなくなることをテーマにした報道が増加しております。
高齢者の判断能力が低下すると、預貯金等の金融資産が凍結されるという状況や不動産の処分が困難になるという状況についても関心を持っておりました。
昔の友達から❝;自分一人で住んでいる土地家屋について、どうしたらいいだろうか?子供たちは都会に出てしまい、将来、自分たちで使う予定はない。でも、老後資金の都合で売却も考えている❞;という相談もありました。確かに、相当の広さの土地と立派な家屋でした。当時は信託法(施行平成19年9月30日)が施行されたばかりでしたが、友達の年齢もそれほどではなく、判断能力も十分でした。私は、「もう少し様子を見て、信託するかどうか考えるのがいいと思うよ」と回答しました。
2. でも近時の新聞等の報道をみておりますと、そろそろ友達も今後の方策を考えるべき時期に来ているように思います。
先日の新聞で、三井住友信託銀行が公表した「認知症高齢者が保有する資産額」の数字を読んで驚きました。
2020年時点で、認知症高齢者の金融資産が約175兆円、不動産(住宅と土地)が約80兆円で資産総額は約255兆円だそうですが、2040年には資産総額約349兆円になりそうだというのです。これらの資産所有者は、認知症により判断能力がないとみなされるのですから、当然、凍結され、処分できないことになります。
私は、これまで高齢者に不動産の処分ができない理由の「調査及びその判断基準」について不思議に思っておりました。今回、この初歩的な疑問も解決したように思います。
これらの判断能力の有無に関する発見の端緒は、認知症であると診断されることの他に、高齢者の金融機関(銀行)での対応にあるのですね。キャッシュカードの紛失や訳の分からない要求等をきっかけとして、金融機関の担当者により、当該高齢者の判断能力が低下していると考えられると金融資産の処理は「凍結」されるようです。そして、金融機関での取引が「凍結」されることによって、当然不動産取引も判断能力が劣化しているとして停止されることになるのですね。
金融機関によって、「凍結」の判断が分かれる例もあるとの指摘があり、驚きました。
3. 不動産に関心があるものですから、高齢者の判断能力の低下によって、自宅の売却が困難になるという数字に関係した新聞報道についてもご紹介します。
昨年8月の新聞報道ですが、以下、引用させていただきます。
第一生命経済研究所が、住宅・土地統計調査や世帯数将来推計、年齢別などの認知症有病率から試算したものだそうです。認知症の人が所有する住宅は2018年時点で210万戸、2021年時点で221万個、何と2040年には280万個に増えるようです。
絶望的な数字ですね。老人の経済状況の心配だけでなく、日本経済そのものが心配になります。
やはり認知症に対する対策を事前に立てておくべきなのです。
高齢者に認知症等を予測した対策を立てていただくようにお願いすることが第一です。新聞報道でも結論は同じようです。特に、自宅は、最後まで住み続けるだけでなく施設に入所する費用の捻出等にも関係します。高齢者の生前処分ですから、死んでから効力を発揮する遺言書ではまかないきれないのです。
私的には、昔から受け継いできた山林や農地の処分にも、同時に関心をもっていただきたいと考えております。
4. では、遺言書以外にどのような処理が適当なのかについて考えましょう。遺言書は本人が亡くなられてからの取り決めですから、今回のように認知症になっても頑張って生きている人には向きません。
先ず成年後見人制度ですが、法定後見と任意後見との二つを考える必要があります。
法定後見人制度は、従来より民法に規定があり、私も何度も関係させていただきました。でも先ず後見開始の審判を受け、その後、別の裁判体である家庭裁判所によって、後見人が選任されるという面倒な手続きが必要です。しかも選任された後見人に関して不服申し立てもできないのです。
次に、任意後見人制度についてみてみましょう。平成12年施行「任意後見契約に関する法律」です。
第2条「一 任意後見契約 委任者が、受任者に対し、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分な状況における自己の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務の全部又は一部を委託し、その委託に係る事務について代理権を付与する委任契約・・」とされています。利用者が種々の方策を検討できることが素晴らしいですね。
5. 平成19年9月30日施行の「信託法」も見逃せません。
この法律は家族信託とも言われ、前回のコラムで、ネット等を点検すると、家族信託に関係した宣伝が相当数挙がっている状況も説明しました。
高齢者の方の事情もありますが、家族信託の方法も有意義な選択だと信じます。是非、専門家に相談されるのが良いでしょう。
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「高齢社会化で考えられること」
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2022-06-29T11:30:27+09:00
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1. 明日の日本が高齢化社会になることは常識のようなことです。
でも「高齢化する我が国の明日」を書くことは、論点が多すぎます。読まれる方も何が書いてあるんだろうと不審に思われますよね。やはり弁護士として相談される内容に絞って書きましょう。
私の友人達も私と一緒に年をとってきました。友人からの相談は、典型的には、やはり老人としての財産保全或いは遺言の相談が多いですね。今流行りの信託、「家族信託」などの質問も増えてきました。でも友人ですから、弁護士として質問されているのか、友人として質問されているのか分からないような内容のものも多々あります。投資や株の話をされると、さすがに「弁護士としては答えられない」と限定付けして会話をしております。
2. 感心した質問から紹介しましょう
その一つは、アパート経営をする友達からの相談でした。
「老人に賃貸する場合に気を付けるべきこと」について聞かれたのです。このようなことは、間に立つ不動産屋さんに聞くべきことで、弁護士に聞く内容ではないとも思いましたが、でも感心しました。
友人に「老人に貸すなんて偉いね」と、先ず驚いた事実を告げました。友人は「俺も老人になったからね。老人に貸さないアパート経営者が多いらしいが、困ったものだと思ってきたのだ」と自分の気持ちを率直にあかしてくれました。
私からのアドバイスは、契約書の内容について詳細に規定するべき事項等に及びましたが、寧ろ、面倒を見てくれる人の存在や不動産屋や友人から定期連絡ができるのか等の質問をしました。そして何よりも重要なことは、地域社会の老人見廻り等の在り方についての質問になってしまいました。地域社会の高齢者に対する接し方が何より重要だとアドバイスしたことを記憶しております。
3. 私は、かつて「放棄できない不動産制度」を紹介して、その法制度の在り方を問題にしてきた弁護士です。当コラムでも何度も書いたテーマですので、皆様ご存じでしょう。
このような経緯から、私は、相談される方の所有される不動産が山林など、価値のないものかどうかについて、すぐに心配してしまうのです。私の友人達には、先祖代々の不動産を持っている方も当然いますが、これまで具体的な相談は避けてきました。
ところで、当コラムで問題にして以降、不動産の国庫帰属の方策が検討されてきたのです。
その結果、「相続土地国庫帰属法」が、昨年成立しました(施行は令和5年です)。でも成立したばかりの「相続土地国庫帰属法」も随分条件が厳しいのです。しかも費用もかかるのですね。なかなか、山林などの相続財産を持て余している友人に対して喜ばれる回答はできないでしょう。でも友人には、この法律についての説明の電話はしてあげるつもりです。
4. 地方都市の農村で生活する叔母さんの相続について相談を受けたこともあります。
相続財産の調査から話が始まりましたが、相談者は、叔母が生活されている自宅の写真を持ってきておられました。写真を見て驚きました。本当に立派な邸宅だったのです。しかし、相談者は一文にもならない家だとおっしゃるのです。
私は、近くの町の不動産屋さんに行って査定をとるようにお願いしました。躊躇されていたので、私は「叔母の土地を売りたいけど値段が付くの」と聞くだけでもいいですよとアドバイスしました。近傍の不動産屋さんなら、不動産の査定がすぐできると経験上知っているからです。
その他の財産調査は登記簿謄本等の資料だけでなく、借金等の調査が必要です。預金はないと仰っておりましたが、やはり調査をお願いしました。
その結果、ある程度の財産があることが判明し、叔母さんに後見人を付けるのか、遺言書を作るのかという議論に進展しました。
5. 最近のネットを見てみますと、家族信託に関係した宣伝が相当数挙がってきます。
平成19年施行された「信託法」により、高齢者の新たな財産管理方式ができたのです。相談される方も、遺言だけでなく、財産管理の方法(後見制度や信託制度)を理解されるために相談をされる人が増えたように感じます。確かに、制度の関係と自分の希望される状況に関して、どの制度を採用するのがいいのか疑問を持たれるのは当然だと思われます。
これまでは禁治産制度は別にしましても、財産管理の方式として後見制度を理解されていればよかったのですが、財産信託の方法も増えて混乱されるのでしょうね。
老人になり、自らの財産管理もこなし、遺言書の通りに人生を終えたいという方の相談は増えております。
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「探偵業の業務の適正化に関する法律」
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=242
2022-05-24T15:02:33+09:00
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1. 「探偵業の業務の適正化に関する法律」の内容を読んで、今まで不思議に思っていたことがスッキリしました。この法律は平成18年に施行されていますが、これまで内容を読んでいなかったのです。
実は、私は、小説をよく読んでおります。探偵に関する小説も大量に読んできました。しかも弁護士を辞めざるを得なくなって、探偵稼業に転身したという小説もありました。二つの稼業が絡み合う場面は面白いですね。
ところで、弁護士は、逆に探偵業に関係するような行動をすることもあると、当コラムでも書いてきました。でも、弁護士業務ができなくなるということは、弁護士会内部での懲戒処分や刑法上の刑罰を科されることがあったためです。弁護士業務ができなくなったため、止む無く転身したというのが常識的な判断です。つまり、弁護士業には社会的な評価がありますから、その社会的な地位を放棄して、探偵稼業に簡単に転身する理由がないからです。
小説の進行具合に不思議に思ったこともありましたが、今回、探偵業には「探偵業の業務の適正化に関する法律」で拘束されていると勉強して色々と分かってきました。本当に厳しい法律です。でも、小説は小説として楽しめばいいのです。
2. 早速、「探偵業の業務の適正化に関する法律」の内容を見てまいりましょう。
「探偵業務」の定義があるのでびっくりしました。
第2条で「探偵業務」とは、「他人の依頼を受けて、特定人の所在又は行動についての情報であって当該依頼に係るものを収集することを目的として面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行い、その調査の結果を当該依頼者に報告する業務をいう」とされています。
探偵業務が、面接による聞込み、尾行、張込みその他これらに類する方法により実地の調査を行うことであるとする直接的な定義に驚きました。離婚事件で裁判の行われた直後、本人や探偵等の尾行に注意して弁護士業務を行ってきたことも当コラムでも書きましたが、正しい行動だったのですね。尾行がはっきりしている事件では、裁判官にお願いして、依頼者とともに裁判官通路(法廷の裏側にあります)を使わせていただいたのは賢明な判断だったのです。
小説では、探偵業務というものには才能が必要であるとしていますが、少しがっかりしました。資料の収集等弁護士の秘密業務と比較し、単純に肉体的な調査であることに少し興ざめしたのです。
でも欠格事由という第三条を読んで、探偵業の厳しさに驚きました。
破産者や罰金刑を受けた者など欠格事由に該当し、非常に厳格に規定しています。暴力団の欠格事由もあり、驚きました
書面による契約方式、名簿の備え付け、届け出書面の掲示等珍しい規定が一杯あります。取締機関が公安委員会であるのも驚きました。本規定の罰則も厳しいですね。
3. 小説では、届け出をしない探偵業者の話も頻繁に登場します。或る小説では、届け出しない探偵業者との争いを面白く展開する話もありました。実は、私は、届け出しない臨時の探偵業者や、臨時雇いの探偵業者の話もよく聞いておりました。
随分前になりますが、優秀な会社員であった社員が会社を退職して探偵になる(なった?)という話を聞いたことがあります。彼の友人に会う都度、探偵業の届け出をしたのかと聞いておりましたが、届け出をしていなかったのでしょうね。
今回、法律を勉強して、このような法律違反の探偵を探偵などと言ってはいけないことが分かりました。
小説ではこのような探偵が出てくる背景を深堀りしたものもありました。或いは、探偵になるための学校を作った探偵業者の話もありました。
4. 離婚事件や相続事件では、探偵業者に依頼せざるを得ない事件も受任します。浮気の事実や別居後の住所(子供の所在)を知りたいと判断されることも多々あるのです。或いは、過去の暴力事件が、現在の紛争に有利に使える可能性のある事件も存在します。どちらにしましても、当事者に抜き差しならぬ紛争が現存し、当事者同士が現実に会うと危険な状況になるという事件はかなりあります。
離婚事件であるなら、読者の皆様も探偵を付けて浮気の現場を押さえようとしているなと想像されるでしょうが、相続事件でも、刑事事件でも調査が必要な事件は多々あります。
近隣紛争ですが、私の現地調査に関係して、後追い調査をされたこともありました。事務所を出るところから後を付けられ、会う人の調査をされたため、後日、依頼者から苦情を言われたこともありました。
でも後を付けられても、気付く人は少ないでしょうね。今回、小説を読んでおりまして、追尾する人の前に出る追跡調査方法や、複数の者による追跡調査方法も勉強しました。住んでいる家に面した借り家で、ベランダに定点カメラを設置して何日も調査する方式の小説も読みましたが、本当に調査方法にはきりがないですね。
5. 以上のような事件のために、自分自身が注意深くなるだけでなく、事務所の戸締りや、面会申し込みに対して、事務所の全員が意識して注意するようにしたこともあります。
今後とも、以上を肝に銘じて邁進します。
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前回のコラム「SDGs(持続可能な開発目標)」の続き
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2022-02-28T13:17:16+09:00
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前回のコラム「SDGs」について書いた後、いろんなところで「SDGs」の語を目にし、聞くようになりました。「SDGs」については、小学校の授業でも教えることがあると聞いて自分の勉強不足を反省しております。しかし、そもそも「持続可能な開発目標」という日本語の説明もあまりいいとは思いませんが・・。
先日、日本経済新聞で、3面も使って奈良の鹿達との交流について「SDGs」の側面から説明しているのに驚きました。
10年以上前になりましょうか?私も奈良の鹿を見たくて、妻とともに泊りがけで奈良に行ったことがあります。鹿との付き合い方を勉強して、春日大社と公園を歩き、鹿と遊んだことがあります。この春日大社とともに鹿が神聖視されるようになったと聞いておりますので、人と鹿との交流は1200年以上の付き合いということなりますね。
新聞記事によりますと、奈良の町の民家が鹿を守るために「ならまち格子」という独特の風情のある太い格子を使っていると写真入りで説明がありました。奈良に行ったのに、風流な町家だなと思うだけで、その理由まで詮索しませんでした。残念なことです。
奈良の町の何が「SDGs」なのか?新聞記事で紹介されている奈良教育大学准教授中沢静男氏の論を紹介しておきます。
「奈良公園の芝はいつもきれいに刈られ、鹿の糞もいつの間にかなくなる。これは公園では鹿が芝を食べるので芝刈りをする必要がなく、糞はさまざまな種類の糞虫が分解し、それを肥料に芝がまた育つからだ。持続可能な循環があるからだ。」
「奈良は鹿の立場で制度やシステムを作ってきたからこそ、共生が可能になった。」
昨年夏から、体験型ツアー“奈良「SDGs」学ぶ旅”を始められたそうです。
以上のような分析を読んでいて気付きました。私が農業に思い入れを持ち、農業に関係するコラムを、何回も書いてきました。これらの有機農業や工夫された農業も「SDGs」としての持続可能な開発から論じられるように思います。
「SDGs」、すなわち持続可能な開発目標は、私たちの身近にあるのではないかと思うようになりました。
前回のコラムで「SDGsアクションプラン」の内容を紹介しましたが、私が自分のこととして非常に衝撃を受けたことからお話ししましょう。それはの「年齢や性別、人権、民族、出自、宗教或いは経済的地位等で差別しない社会を作る」という項目で、性別で差別してはならないというものに該当します。
私が、司法試験に合格後、司法研修所というところで2年間修業した時期のことです。当時の司法試験の女性合格者は1割程度でありました。この将来の法曹界を荷われる女性合格者の一人が、既に結婚はしているが名字を変更することに反発され、戸籍入籍はしていないということに衝撃を受けました。私もすでに結婚していて、彼女の疑問に素直に答えられる精神状態ではありませんでした。このような制度や慣習に何の疑問も抱かなかったというのが正直なところでした。
この方は、今も事実婚のままで夫婦共に大活躍されています。
コラムにも書いておりますが、この当時の司法修習生の間で、「女性差別を論じるという集まり」が作られておりました。男性仲間達に懇願され一回だけその議論に参加しました(上記の事実婚については、この議論の後、その方と面識を得てから知ることになるのですが)。当時の議論は、民法第772条の「嫡出子推定規定」や同733条の「再婚禁止期間」等も話題となっていたと記憶しております(民法772条では、前夫の子と推定されるため、これを拒絶して無戸籍となる)。
今回やっとこれらの民法規定が見直されようとしておりますが、これらの民法規定は明治時代から続く因習のような決まり事です。私たちの意識の変革も求められていると考えております。
当時、問題になったことの一つとして、無戸籍者の問題もありました。
4年前、2018年11月26日及び12月25日掲載の当コラム(「この1年間で出された濱義之さんの本 その1」及び「同 その2」)において、無戸籍者の問題について書いております。当時は、民法772条関係だけに及ばず、外国人と言われるが日本人と同様に暮らす人々にも関心がありました。このことが題材になっている濱さんの出版された小説「爆裂通貨」、「最恐組織」を紹介したいという思いもあったのでしょう(今読んでも面白いですよ)。
ただ一つ注意するべきことがあります。
今回の民法改正に際して報道されている無戸籍者の人数が大きく違っているのです。私が4年前のコラムでは無戸籍者1万人程と書いているのですが、今回の民法772条改正関連では僅か825人となっているのです(法務省発表数字とのこと)。
法務省は、海外の人たちで日本人と同様に生活する人々は統計に取っていないのでしょうね。当時は、このような方々の日本における取り扱いが焦点になっていた側面もありました。当時のコラムでは、私が他国の戸籍について裁判をした事例も掲載しております。
今回は、いろいろと目にされるであろう「SDGs」活動について、再度書かせていただきました。
できれば、私が希望を託す農業に関係した「SDGs」活動も目にしたいと念願しております。