コラム
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弁護士法人岡本(岡本政明法律事務所)
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不動産業者から立ち退きを求められた場合や不動産業者が立ち退きを求める場合に発生する立退料の金額
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2022-11-08T11:11:53+09:00
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1. 当事務所は数多くの立退き事件を取り扱って解決しています。
詳細は、様々なコラムを参考にして頂けると幸いですが、借地借家法が存在しているため、家賃滞納がなく、定期借家契約でもない場合、明渡しの条件として、立退料の支払いが必要になることが一般的です。
もちろん、当事務所においては、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決したこともありますので、一般論が全て当てはまるわけではありません。
2. 賃借人の立場に立って解決する場合であっても、不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、具体的に裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
借主からすれば、立退きを求められたとしても、しっかりと準備をすれば自らの利益を守ることができますし、貸主からすれば、しっかり準備をしないといつまでも明け渡してもらえないということになります。
いずれにせよ、具体的な事案によりますので、早めに当事務所にご相談いただくことが肝要だと思います。
立退きが認められず
平成30年5月29日東京地裁判決
正当事由なし
貸主が主張する耐震診断では、補強計画は含まれておらず、耐震補強によって耐震性能を高められる可能性があることを否定することはできないこと、貸主は自らが居住するわけではなく、新たに賃貸マンションを建築して収益を上げる方法で有効活用を図ることを目的として、借主に対し本件建物の明渡しを求めていること、借主は、貸主らが本件建物を含む土地建物を購入する以前から、本件建物を賃借し、同所で土地家屋調査士業を営んでいたこと等から正当事由が無いと判断した。貸主らの経済的利益のみを優先して従前からの賃貸借契約関係を終了させる結果とすることはできないとも判断している。
立退き料
平成30年5月30日東京地裁判決
77万円
当該敷地の借地権価格及び建物の価格に、一定の割合による借家権割合を乗じて求められる借家権価格と転居に伴う支払賃料の差額、一時金及び移転費用等から求められる損失補償額を調整する方法(との平均値を算出)により算定するのが相当として77万円を立退料とした。
立退きが認められず
平成30年7月20日東京地裁判決
正当事由なし
家賃差額補償、移転費用、営業補償、内装等の造作補償、広告・宣伝費を全額補償する必要があると判断した上で、その合計額を1156万1000円と判断した。当該金額は、貸主の申出額の約5倍にも上る金額であるため、正当事由がないと判断された。
立退料
平成30年8月28日東京地裁判決
2億円
本件賃貸借契約の終了により喪失することになる借家権価格相当分と、本件建物部分の明渡しに伴い生ずる営業補償等の損失補償分とを合算して立退料を算定するとした上で、借家権価格(対価補償)、借家人補償(賃料差額補償)、店舗内部造作補償額(内装・設備工事費、設計管理料、消費税相当額)、工作物補償額(工作物移設等工事費、消費税相当額)、営業補償額(収益減の補償額、得意先喪失の補償額、固定的経費の補償額、従業員に対する休業手当補償額、店舗移転に伴うその他費用の補償)、その他の通常損失補償額(動産移転料、移転先選定に要する費用、その他雑費)を考慮して2億円を立退料と判断した。
立退料
平成30年9月7日東京地裁判決
9273万8000円
ホテル計画が実現すれば、貸主は、本件土地を極めて有効に利用することができるようになり本件土地から得られる利益も長期的に大きくなること、本件店舗が借主において重要な位置付けを占めていることは事実であり、その移転に伴う補償としては通損補償の額に一定の上積みをすることも必要といい得ること等から、本件店舗の立退料としては、本件鑑定により算定された通損補償の額に借家権価格の額を加算した9273万8000円が相当と判断した。
立退料
平成30年9月14日東京地裁判決
8300万円
本件のように賃貸人から建物の明渡しを求められ、借家人が不随意の立退きを強いられる場合には、その補償額が総額において現実的な費用面から検証した移転補償額としての試算価格を下回るべきではないこと、貸家控除法は飽くまで理論上の価格であり、控除差額の配分割合によって左右されがちなものであることなどが考慮された上、本件における立退料としては、移転補償額としての試算価格である8300万円を採用すると判断された。
立退きが認められず
平成30年9月28日東京地裁判決
正当事由なし
貸主は、自己が居住して使用する必要性ではなく、できるだけ高額で売却して現金化しておきたいという経済的な理由によるところが小さくないことからすると、借主が本件各建物を賃貸(転貸)して経済的利益を得ているにすぎないとしてもそのことを軽視すべきではない等として、正当事由が認められないと判断された。
立退きが認められず
平成31年1月21日東京地裁判決
正当事由なし
貸主らは、1600万円までであれば立退料として支払う余地があるとするが、営業損害が3000万円という水準の場合、貸主らの支払可能額を大きく超過すること等から、正当事由が認められないと判断された。
立退料
平成31年1月22日東京地裁判決
250万円
立退料に相当する金額は、近隣地区への転居に伴う引越費用、転居費用(仲介手数料、礼金等)及び近隣地区における同規模の賃貸住宅の賃料の相当期間分に加え、転居により借主本人に生じる上記負担を補うに足りる額であることが必要であるとして、立退料を250万円とした。
立退きが認められず
平成31年1月29日東京地裁判決
正当事由なし
賃借人の自己使用の必要性が極めて高いのに対し、賃貸人の自己使用の必要性がほとんどないこと、本件建物は、もともと店舗として賃借することが予定された収益物件であり、本件建物の利用状況もこれに合致するものであったのに対し、賃借人に背信行為と評価されるような行為があったとは認められないこと等を理由に正当事由が認められないと判断した。
立退きが認められず
平成31年1月31日東京地裁判決
正当事由なし
貸主らにおいて本件各建物を使用する必要性が高いとはいえないのに対して、借主にとって、明渡しは、本件理容室及び本件美容室の経営に深刻な事態をもたらす死活問題であることから、本件建物が一定程度老朽化していることを考慮しても、本件解約申入れに正当事由があるとは認め難いこと、少なくとも借主が本件理容室及び本件美容室を移転するために負担を余儀なくされる諸費用、代替店舗の確保に要する費用、移転に必要な期間の休業補償、移転先での営業が軌道に乗るまでの期間の減収分の填補等を考慮した立退料の金額でなければ、正当事由の補完としては十分とはいえないこと等を理由に正当事由が認められないと判断した。
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
以 上
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退去を求められた場合に貰える金額と明渡し請求をする際にかかる費用(立退料の相場)
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=223
2021-03-01T17:26:34+09:00
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当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話ししています。
借地借家法が存在しているため、家賃滞納がない普通借家契約の場合、明渡しの条件として、立退料の支払いが必要になることが一般的です。
もちろん、当事務所においては、賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の数百ヶ月分を受領して解決したこともありますので、一般論が全て当てはまるわけではありません。
今回も近時の裁判例を紹介しておきますが、貸主とすれば、しっかり準備をしないといつまでも明け渡してもらえないということになりますし、借主からすれば、立ち退きを求められたとしても、しっかりと準備をすれば自らの利益を守り、立退料を請求することができます。
いずれにせよ、早めに当事務所にご相談いただくことが肝要だと思います。
立退料
平成29年7月18日東京地裁判決
972万5636円
建物について地震により倒壊する危険性があり、建替後の建物の一部については原告代表者の家族又はその親族が自己使用する理由があること、借主が本件理髪店として自己使用する必要性が高いこと等を理由とした上で、固定資産税評価額を基準に、借家権価格を647万2892円と算定した。また、平均利益の3年分の利益相当額である325万2744円を営業補償額とした。そして、それらの合計額を立退料とした。なお、設備及び什器備品等については、減価償却を終了しているので、立退料に含めなかった。
立退きが認められず
平成29年10月19日東京地裁判決
正当事由なし
賃借人は、本件建物において約15年間にわたって洋服のリフォーム店を経営して収入を得ていること、一定数の固定客を有し、周辺住民等に店の存在が認知されていることが推認できること、年齢や経営規模を考えると、移転により経営上相当の負担を負うこと、駅に近く、国道に面しているという本件建物の立地が、洋服のリフォーム店という業態にとっても客を呼び込む上で有益であること等を理由に、明渡し請求を認めなかった。
立退料
平成29年12月25日東京地裁判決
601万7000円
本件店舗の移転補償等の額を積算した移転補償額と、本件店舗の借家権価格をそれぞれ算定し、これらを比較検討して適正な立退料額を決定した。
移転補償額の算定に当たっては、公共事業の損失補償基準(用対連基準)を援用して、本件店舗の契約形態に即して動産移転費用、内装・設備の工作物補償、比準賃料との差額賃料の2年分相当額、敷金等の移転一時金、移転雑費、移転に伴う2か月分の営業休止補償をそれぞれ算定して積算し、移転補償額を498万8000円と査定した。
借家権価格の算定に当たっては、敷地価格に建物価格を加算した積算価格に借家権割合を乗じた額により算定する割合法と、上記積算価格から収益価格を控除して算定する自建貸家差額法の2方式により本件店舗の借家権価格を試算し、各算定手法の特性等を検討した結果、割合法を重視して借家権価格を601万7000円とした。
立退料
平成30年1月26日東京地裁判決
50万円
建築後40年以上が経過していること、本件共同住宅の耐震性その他の状況から、新規の賃借人を募集することができないでいること、そのまま放置すると、貸主の損害が拡大する可能性があり、損害の拡大を防ぐために、本件共同住宅を取り壊すことを計画していること、借主は、サービス付き高齢者向け住宅に実質的な生活の本拠を移しており、本件建物を居住として使用していないこと、本件共同住宅の近隣において、本件建物と同程度の賃料、床面積、設備(トイレ付き)の建物は、他にも存在することが認められること等から、立退料を50万円と判断した。
立退きが認められず
平成30年2月14日東京地裁判決
正当事由なし
賃借人である自己使用の必要性が極めて高いのに対し、賃貸人の自己使用の必要性がほとんどないこと、相応の経年劣化が見られるとしても、建て替えの必要性が生ずるに至っているということはできず、せいぜい近隣に位置する建物と同程度であるか、仮にそれより劣るところがあっても、その原因は建物の保守管理を十分に行ってこなかった賃貸人側にある以上、これを賃借人側に不利益な要素として過大評価するのは相当ではないこと等を理由に、明渡し請求を認めなかった。
立退きが認められず
平成30年2月21日東京地裁判決
正当事由なし
本件コーポはもともと共同住宅として賃借することが予定された収益物件であったのに対し、賃借人による本件建物の使用上、契約上の賃借条件(居住用限定、居住専用)と異なる使用(事務所としての使用)を一部含むものの、その使用実態は、コーポの他の居室の居住目的による使用収益を損なうようなものではなく、当時の賃貸人の承諾も得ていたのであるから、本件賃貸借契約上の用法違反があったと評価することはできず、本件建物の明渡請求の正当事由とすることはできない(貸主の請求は認められない)と判断した。
立退料
平成30年2月22日東京地裁判決
802万1000円
以下〜の合計額を立退料とした。
家賃差額補償67万1000円
近隣の賃貸事例をもとに試算した代替建物の賃料12万2000円の1年分と本件賃貸借契約の賃料10万3000円の1年分との差額である22万8000円に複利年金減価率2.9410を乗じたもの
一時金補償46万円
代替建物の賃貸借契約締結時の敷金として賃料12万2000円の5か月分から現在の敷金15万円を差し引いたもの
移転費用補償405万円
設計・監理料、新規内装工事費用、新規什器等購入費用、引越費用等を合算したもの。
設計・監理料については1当たり1万円と、新規内装工事費用については1当たり4万円とした上で、被告賃借部分の面積33を乗じて算出したもの、新規什器等購入費用については、同業種の新規開業に関する資料をもとに算出したもの、引越費用は業者からの見積り等をもとに算出したもの
諸経費の補償57万2000円
仲介手数料、弁護士費用、登記費用、移転通知費用及び各種届出費用等の概算額
営業補償(移転に係る営業損失)226万8 000円
過去3年の理容店の差引金額378万円に営業損失として20%を乗じた上でその3年分として算出したもの
立退料
平成30年3月7日東京地裁判決
1556万4000円
借家権の取引について、一般的とはいいがたいといった事情も踏まえると、本件の立退料の算定に当たり、借家権価格を加えることは相当といえないとした上で、収益減補償299万円、得意先損失補償703万7000円、固定経費補償2万4000円、従業員の休業補償49万5000円、移転費用等の補償費501万8000円の合計額を立退料とした。
立退き
平成30年5月18日東京地裁判決
1730万円
借家権価格1200万円と移転費用等の雑費530万円(内訳:動産移転料(引越費用)26万8500円、内部造作等の移転料300万円、移転通知・移転旅費等の補償額150万円、移転先選定に要する費用22万3290円、法令上の手続に要する費用8万2245円、移転に伴う就業不能による損失補償額20万2400円、消費税等相当額2万4220円)合計額を立退料とした。
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
以 上
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貸している建物の明渡しを求める場合や借りている部屋の退去を求められた場合に考えること(立退料の相場)
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2021-02-15T17:21:45+09:00
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当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話ししています。
借地借家法が存在しているため、家賃滞納がない普通借家契約の場合、明渡しの条件として、立退料の支払いが必要になることが一般的です。
もちろん、当事務所においては、賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の数百ヶ月分を受領して解決したこともありますので、一般論が全て当てはまるわけではありません。
もっとも、裁判例を良く知っていただいた上で、法的にどのように判断されるかを知っておくことは非常に重要なことです。
貸主とすれば、しっかり準備をしないといつまでも明け渡してもらえないということになりますし、借主からすれば、立ち退きを求められたとしても、しっかりと準備をすれば自らの利益を守ることができます。
いずれにせよ、早めに当事務所にご相談いただくことが肝要だと思います。
立退料
平成28年9月6日東京地裁判決
0円
築50年以上で外観も「おんぼろ」、階段の壁もガタガタでアパートの老朽化は著しく、取り壊し・建て替え等の必要性が高いこと、正当な交渉にも応じず、不合理な行為を繰り返していること等を理由として、立退き料0円で明渡しを認めた。
立退きが認められず
平成28年12月8日東京地裁判決
正当事由なし
賃借人は、本件建物を唯一の活動拠点としてテナント料(転借料)による収入を収益として事業活動を行っており、本件賃貸借契約が終了した場合には、その唯一の収入源が断たれること等を理由として、立退料9727万9920円の提供を申し出ていることを考慮しても、明渡し請求を認めなかった。
立退きが認められず
平成28年12月20日東京地裁判決
正当事由なし
大地震時に倒壊する可能性が高いほか、老朽化が進み、断熱機能を失い、建物が傾斜するなどしていること等からすると、建物全体としての経済的効用が相当程度失われており、建替えの必要性が高いものの、借主はピアノを指導することで生計を維持してきたこと、ピアノの指導により生計を維持するとの前提で転居先を探すことが困難であること、立退料が170万円にとどまること等を理由に、明渡し請求を認めなかった。
立退料
平成28年12月22日東京地裁判決
350万円
築後約43年が経過しているが、現在における耐震基準や耐火基準を満たしていないこと、土地の建蔽率及び容積率、並びに、本件土地上に8階建ての相当規模のマンションを建築することが可能であると見込まれていること等を理由に、引越料その他の移転実費、転居後の賃料と現賃料の差額の2年分程度を基準に立退料を算出した。
立退料
平成29年1月17日東京地裁判決
200万円
建築後44年余りが経過していること、アパートの収益からすると相当多額の修繕費が必要となっていること等を理由にした上で、借主及びその配偶者がうつ病に罹患しており、転居に際しては相当な負担となること、本件建物よりも相当程度多額な賃料を要する建物に転居する必要がある可能性が高いこと等を理由に、立退料を200万円と判断した。
立退きが認められず
平成29年3月28日東京地裁判決
正当事由なし
本件建物の建替えの場合(費用1億円)よりも容易かつ安価に本件建物の耐震性能の向上を図ることが可能であること、補強案であっても本件建物の効用を害することはないこと等から、本件建物の耐震性能が不十分であることをもって、本件建物の明渡請求の正当事由とすることはできない(貸主の請求は認められない)と判断した。
立退料
平成29年5月11日東京地裁判決
900万円
建替えの必要性は認められるものの、借主は、本件店舗の営業による収益以外に収入がなく同収益で生計を立てており、本件建物を使用して営業する必要性が高いこと、焼肉店という業種に鑑みても、煙、油や臭いが発生するとの理由で本件店舗の代替店舗の確保は容易でないこと等を理由とした上で、差額賃料の2年分240万円、移転契約費用として2か月分の賃料60万円、引越費用30万円、現状の本件店舗の内外装を移転する費用600万円の合計額から若干の減額をした900万円を立退料と判断した。
立退きが認められず
平成29年5月16日東京地裁判決
正当事由なし
築60年近く経過していること、耐震性にも相当の疑問があるものの、明渡しを求めるほどの必要性は無いこと、借主は30年近くにわたり本件貸室において生活をしており、その生活の基盤も同所において形成してきたこと等を理由として、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退きが認められず
平成29年5月29日東京地裁判決
正当事由なし
シロアリによって一定程度、腐食、劣化していることが認められるものの、築20年未満であること、上記腐食等の程度が、本件契約について解約をして修繕をしなければならないほどの程度に達していると認めるに足りる証拠はないこと、立退料186万円程度では足りないこと等を理由として、明渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退料
平成29年6月23日東京地裁判決
6180万9800円
貸室1について差額方式に基づく価格が1070万円、控除方式に基づく価格が4500万円、割合方式に基づく価格が4360万円とした上で、これらの価格を平均した3310万円を借家権価格とし(貸室2についても同様に算定し借家権価格を1040万円とした)、営業補償額としては、借主が調剤薬局を19店舗展開しており、新規出店の立地調査や出店後の経営ノウハウ等について相応の蓄積があるというのが相当であるので、本件貸室1の24か月の賃料である894万2000円と認めるのが相当であるとした上で、内装費、移転費用、仲介手数料を加算して、立退料を算定した。
なお、賃料差額については、借家権価格に含められると判断している。
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
以 上
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裁判例から見る立退料の相場
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=211
2020-08-12T14:10:00+09:00
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一 当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話しした通りです。
二 そして、立退料に相場が無いということもお伝えしている通りです。
このことは、当事務所において、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決したこともあること等からご理解頂けると思います。
三 不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、賃借人の立場に立って解決する場合であっても、具体的に近時の裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
裁判所がどのような事案でどのような結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが、良い結論を導き出す要因の一つだと言えるからです。
今回のコラムにおいては、貸主側の主張が認められず、立退きが認められなかった事例や立退料に6億円以上もかかった事例が出てきます。
貸主とすれば、しっかり準備をしないと大変なことになるということを示していますし、借主からすれば、立ち退きを求められたとしても、しっかりと準備をすれば自らの利益を守ることができるということを示しています。
いずれにせよ、早めに当事務所にご相談いただくことが肝要だと思います。
立退料
平成28年8月26日東京地裁判決
500万円
築45年程度が経過しており、耐震性調査の結果、震度6ないし7程度の地震が発生した場合に中破又は大破となる可能性が指摘されていること、補強工事費用は5000万円を超えること、借主は公認会計士・税理士事務所であり、使用の継続が必須ではないこと等を考慮した。貸主の不動産鑑定が立退料相当額を442万円と評価し、借主の鑑定は1244万5000円としているが、借主の鑑定を採用しないこととし、500万円を立退き料と判断した。
立退料
平成28年7月14日東京地裁判決
200万円
貸主は、85歳で介護の必要があり、長男夫婦と同居する必要があるのに対し、借主は、がん治療を継続し、不眠であるため、転居には負担があるものの、代替物件もある。そこで、引越費用相当額と賃料(月7万3000円)の2年分を立退料とした。
立退きが認められず
平成28年7月26日東京地裁判決
正当事由なし
貸主は退職後に飲食店を営むために建物が必要であると主張するが、飲食店経営を準備している等の事情が存在しないこと、それに対して、借主には景品交換所の経営上必要であるという事情から、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退きが認められず
平成28年9月23日東京地裁判決
正当事由なし
貸主が建物を使用する具体的な必要性が乏しいこと、借主がパチンコ店として使用しようとしていること等からすると、貸主が立退料算定のための鑑定申出をしていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退きが認められず
平成28年10月28日東京地裁判決
正当事由なし
貸主は、仲間たちと運営する喫茶店を兼ねた大人の趣味のための教室を開く計画を進めているものの、客観的必要性が高いとは言えないこと、他方で、借主は昭和53年から居住し、美容室の経営に携わっていること等から、貸主よりも借主の方が必要性が非常に高いので、明け渡しをさせる正当事由がない(貸主の請求は認められない)と判断した。
立退きが認められず
平成28年12月8日東京地裁判決
正当事由なし
借主が本件建物を唯一の活動拠点としてテナント料(転借料)による収入を収益として事業活動を行っていること、本件建物の建て替えが具体的に計画されているわけではないこと等を理由として、貸主が立退料9727万9920円の提供を申し出ていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退きが認められず
平成28年12月8日東京地裁判決
正当事由なし
貸主の必要性は、専ら経済的利益であること、借主は店舗を運営しており、代替物件も限定されること、築31年が経過しているというだけでは強度不足による倒壊等の危険性が生じているとまでは言えないこと等からすると、貸主自身の依頼した鑑定評価における借家権価格である9220万円に若干の増額を加えた1億円を立退料として申し出ていることを考慮しても、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退きが認められず
平成28年12月20日東京地裁判決
正当事由なし
本件建物は昭和31年12月に建築されており、大地震時に倒壊する可能性が高いものの、高齢の借主はピアノ指導で生計を立ててきており、転居先を探すことが困難であること、貸主の申し出た立退料が170万円にすぎないこと等から、明け渡しをさせる正当事由が認められない(貸主の請求は認められない)と判断された。
立退料
平成29年1月19日東京地裁判決
35万円
築48年を経過した耐震性に問題のある建物であり、その耐震補強を行うには本件アパートの建て替えと同程度の費用を要すること、本件アパートの借主以外の入居者らは既に本件アパートから退去している一方で、生活保護者である借主が引越に要する費用の支払いを受ければ、当該建物を引き続き使用する必要性は低いので、立退料を35万円とした。
立退料
平成29年2月17日東京地裁判決
6億2723万8000円
立退料の算定には、移転補償額としての試算価格及び貸家控除法による試算価格(3億5000万円)を用いる。本件においては、借家権の取引慣行は無いので、借家権割合法による試算価格は参考程度とする。
の内訳は、新店舗との差額家賃等の補償額(損失補償基準細則別表第5により、補償期間3年間、3億0901万6000円)、移転費(200万円)、内装工事費(坪30万円、2億1040万円)、営業補償費(青山地区で代替物件を探しにくいこと等から、休業期間を6ヵ月とすると9780万円)、移転事務費(売上の1%で802万2000円)の合計6億2723万8000円が立退料になると判断された。
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立退き料に関する取材
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=197
2019-11-22T22:59:01+09:00
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当事務所弁護士である岡本直也のコメントが「東洋経済ONLINE」の「不動産会社vs.テナント、「立ち退き料」の経済学 大規模な再開発の陰で立ち退き訴訟が増加中」という記事に掲載されました。
https://toyokeizai.net/articles/-/315440?page=3
ご覧頂けると幸いです。
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立退料の相場はいくらなのか
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=172
2019-01-16T12:14:58+09:00
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一. 当事務所が数多くの立退案件を取り扱っていることは、これまで様々なコラムでお話しした通りです。
二. そして、立退料に相場が無いということもお伝えしている通りです。
このことは、当事務所において、不動産業者などの賃貸人から依頼された際には立退き料0円で解決していることもありますし、賃借人から依頼された際には立退き料として月額賃料の200ヶ月分で解決したこともあること等からご理解頂けると思います。
三. 不動産業者などの賃貸人の立場に立って解決する場合であっても、賃借人の立場に立って解決する場合であっても、具体的に近時の裁判例がどのように解決しているのかを知ることが最も重要です。
裁判所がどのような事案でどのような結論を取っているのかを知り、依頼者にとって有利になるように裁判例を使いこなすことこそが、良い結論を導き出す要因の一つだと言えるからです。
そこで、本年も、近時の裁判例をご紹介することに致します。
立退き料
平成28年5月12日東京地裁判決
1億3313万円
本件ビルは老朽化しており、耐震強度も低いから、補強工事或いは建替えの対象と考えられ、耐震工事に2億円程度の費用と7か月程度の工期を要する。
しかしながら、本件ビルの建替えを等価交換方式で行い、敷地はディベロッパーに売却することを予定していることを考えると、上記の事由のみで正当事由があるとはいえない。
内装費2010万1000円、家賃増額分の補填分4276万8000円、営業補償1557万2496円、借家権価格5290万円とした上で、そのうち約9割を賃貸人が負担して立退き料を支払う必要があると判断した。
立退き料
平成28年3月18日東京地裁判決
3000万円
大地震時に崩壊する可能性が高く、非常に危険であること、補強工事を施しても、一時的な安全が保持されるに留まり、耐震性の問題が解決されないにもかかわらず、2億4000万円以上の費用を要すること等から、営業休止補償、工作物補償などを立退き料とした。
立退き料
平成28年5月23日東京地裁判決
2500万円
本件建物は地震の震動等に対して倒壊する危険性が高いところ、本件建物について耐震補強工事を実施することは経済的合理性を欠くと判断した。
工作物補償1562万円のほか、“移転後の店の売上げが現在の水準に回復するまでの間に発生する減収分に相当する金額”の営業補償を認めるべきであり、その金額は、店の1年間の営業利益の25%をもって相当とする等と判断した。
立退き料
平成28年1月12日東京地裁判決
1000万円
消防法違反行為が債務不履行解除に該当しないと判断した。
本件ビルは、平成25年の時点で建築後48年余りが経過し、鉄筋コンクリート造の建物であることを考慮しても残存する耐用年数はわずかであると認められると判断した。
不動産鑑定士が本件建物の老朽化に伴う立退料について、鑑定評価額を705万円としたこと、賃借人が本件建物以外の場所において本件店舗と同様の営業をする場合、相当額の営業上の損失及び移転費用を要することが見込まれること等の諸般の事情を考慮して、立退き料を1000万円とした。
立退き料
平成27年10月15日東京地裁判決
840万円
立ち退くにあたって必要となる費用のうち、帰責性の割合として7割に相当する部分について、賃貸人が立退料として提供することが必要であると判断した。引越に伴って生じる実費として950万円、移転に伴って生じる人件費として250万円と判断した。
立退き料
平成27年12月16日東京地裁判決
530万円
耐震上の危険性の高い建物であること等から、借家権価格を立退料として補償する必要があるとまではいえないと判断した。移転費用を276万4300円、移転に伴い就業できなくなると見込まれる日数は5日程度と認めるのが相当であるとした上で、就業不可に伴う損失補償33万9000円、収益減補償は36万円等を認めた。
立退き料
平成28年3月15日東京地裁判決
60万円
最も高い月額4万5000円の物件を基準とし、本件部屋の賃料月額3万3000円との差額の月額1万2000円を2年程度補填するものとし、新契約に要する敷金礼金を各1か月程度として積算した上、これに転居費用等を合わせ、立退料を60万円と判断した。
立退き料
平成27年11月4日東京地裁判決
正当事由なし
賃貸人は立退き料600万円を提示していたものの、賃貸人の孫の転居は、賃借人の退去が確定してから計画を具体化するものであり、喫緊の必要性があるとまでは認められないのに対し、賃借人は、3世代5人の家族とともに、現に本件土地を生活の本拠とし、他に不動産を所有していないこと等から、立退きを認めなかった(地代:月1万3988円)。
立退き料
平成28年1月28日東京地裁判決
正当事由なし
賃貸人は、立退き料8億円を提示したものの、耐震性の問題については、補強工事によって対応できること、再入居の提案がなされなかったこと、賃借人にとって、知名度を上げ、会社全体の営業規模を将来にわたって拡大する上で無くてはならない店舗であり、他では代替し難いものであること等を理由として、立退きを認めなかった。
請求棄却
平成27年9月25日東京地裁判決
正当事由なし
賃貸人が本件建物を使用する必要性(賃貸人自身が生まれ育った本件建物に戻り、離婚して生活の苦しい親族と同居するという事情)は、一応は認められるものの、それが緊急性を有する程度までに至っているとはいえない反面、賃借人が本件建物を使用する必要性は、賃借人における投下資本の内容(1300万円)や本件建物からの収益(月50万円)、本件建物の代替建物確保の不確実性等の事情に照らしても、強く保護されるべきであること等から、立退きを認めなかった。
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
以 上
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近時認められた立退き料の金額
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=84
2015-12-07T09:00:00+09:00
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一 当事務所が数多くの立退き案件を取り扱っていることは、これまでいくつかのコラムの 中でお話しした通りです。
二 当事務所は、主として貸主又は不動産業者の立場から受任することで多くの成果を挙げておりますが、借主から依頼を受けることもあります。
以前のコラムにおいて、借主から依頼を受けた事案で賃料200ヶ月分の立退き料を獲得した事案を紹介いたしましたが、つい最近も賃料100ヶ月分を超える立退き料を獲得した事案もございます。
近時の裁判例は、耐震性に関して貸主の立場である正当事由の認められる可能性を増大させているように見受けられます。
注意されねばならない論点が増えております。
三 近時、開発案件などで立退きのご相談を頂く機会が増えておりますので、改めて立退き料の動向についてご紹介させて頂きます。
立退き料
平成26年12月19日東京地裁判決
3237万3000円
耐震性能不足に起因する本件建物の取壊しの場合、賃貸人だけに負担させるのは相当でない。立退料は、賃料差額を1344万円(〔月額新規支払賃料206万円−月額実際支払賃料150万円〕×補償期間24か月)、一時金運用益を32万8000円(〔新規月額賃料206万円×10か月−本件賃貸借契約の保証金1240万円〕×運用利回り2%×2年)、新規契約に関する手数料等及び移転費用、営業補償費、内装費補償費、広告宣伝費等を1860万5000円とした合計額とする。
立退き料
平成26年12月10日東京地裁判決
3318万9825円
(賃料の36ヶ月分超)
立退料は、移転までの空白期間について、本訴提起前の交渉経過とほぼ同程度の期間である約1年半程度と想定し、その間の賃料等相当額に直接剰余を加えた程度の額とする。
立退き料
平成26年7月1日東京地裁判決
5120万円
5215万円
180万円(賃料約2年分)
立退料は、移転実費、借家権そのものが有する財産的価値(借家権価格)及び営業上の損失に対する補償額を考慮した上、そのうち立退料以外の事情による正当事由の充足度を踏まえた一定額とする。
左記はいずれも異なる店舗である。借主が平成25年8月以降営業を行っていない状況を考慮している。
立退き料
平成26年4月17日東京地裁判決
124万8000円
(賃料6ヶ月分)
借主は既に本件建物での営業をやめているのに対し、貸主は道路拡幅工事のための用地買収に応じるために本件賃貸借契約を解約して本件建物を取り壊す必要がある。
賃貸人からの解約申入れの猶予期間が本件賃貸借契約において6か月間と定められていたことなども考慮している。
立退き料
平成25年12月11日東京地裁判決
215万円
借主が家財を搬出して退去する費用相当額、新たな賃貸物件等住居を確保するために要する費用相当額、相当期間についての当該物件の賃料と借主が本件貸室について支払っていた賃料との差額相当額を考慮している。
立退き料
平成25年6月14日東京地裁判決
4130万円
耐震補強工事に代えて建替えを行うことは貸主にとっても費用対効果上メリットであること、建替えが結果的にもたらす敷地の高度利用化という利益も専ら貸主が取得することなどを総合考慮し,借家権価格(鑑定の結果)の半分相当額とする。※賃料月額315万円
立退き料
平成27年3月20日東京地裁判決
0円
木造住宅であり、少なくとも増改築前の部分についてはその建築から50年を優に超えていること、貸主は現在67歳の単身生活者であること、50年を超える長期にわたって本件建物の所在地を生活の本拠とし今後も本件建物を建て替えて同所で生活する意思を有していることなど貸主側の立場を考慮している。
他方で、借主における本件貸室の用途は専ら経理関係の書類等の保管にすぎないことを考慮している。
立退き料
平成25年1月23日東京地裁判決
0円
耐震性能を現行法の水準にまで高める工事をすることは建物所有者として合理性を有する。本件建物の耐震性能は相当低く、倒壊する危険がある。残寿命は10年程度であり、本件建物を取り壊して新たな建物を建築する等する必要性の高いことを考慮している。
他方で、借主は、本件建物を居住用に使用しているわけではなく、現在は転借人もいない。借主は自ら賃貸物件を多数抱える不動産業者であり、新たな物件の調達にさしたる困難があるともいえないこと等を考慮している。
請求棄却
平成25年9月17日東京地裁判決
正当事由なし
建物の倒壊の危険性から取壊しを要すると主張する以上、貸主は本件建物の倒壊の危険性を具体的に立証することが必要であるが、本件建物の耐震性について耐震判断審査を行っていない。なお、貸主は立退き料を支払わないと明言していた。
お電話でのお問い合わせ:03-3341-1591
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高額な立ち退き料と低額な立ち退き料の分かれ目
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=21
2012-08-09T09:00:00+09:00
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以前「正当事由と立退き料の事例紹介」というコラムを掲載致しましたが、その際皆様から大きい反響を頂きました。今回は、最近の裁判例がどのような判断を下しているのかについて一部を追加して紹介しておこうと思います。皆様が直面している案件について、高額な立ち退き料になるのか低額な立ち退き料になるのか判断する際の参考にしてください(「借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」も併せてご覧ください。)
ところで、下品な言葉で言うなら、当事務所は業者の皆様からいわゆる「地上げ」の段取りや相談を継続的に行ってまいりました。しかし、先日当事務所のホームページを見て来所されたお客様に、当事務所で是非とも立ち退き料を獲得してほしいと懇願され、やむなく賃料の約200ヶ月分を取得した事例が発生致しました。
この事例につきましては今後当コラムにて掲載するかどうか検討しておりますが、いずれにしましても紙数に限りがございますので、今回は最近の裁判例を紹介させて頂くことにしたいと思います。
具体的な事案でどれくらいの立ち退き料になる可能性があるのかご相談されたい方は当事務所までご連絡ください。
立ち退き料
(平成23年
1月17日判決)
6000万円
本件建物は朽腐しているとまではいえず緊急な耐震工事は必要ないが、遠からず建て替えか大規模修繕が必要になる。そのため、銀座6丁目という立地からすれば、本件建物の機能的、経済的な耐用年数はほぼ満了していた。他方、借主は66歳で、唯一の収入源としてとんかつ屋を営業していた。借主が代替物件を確保できないとまではいえないことなども総合考慮して、立退き料の支払いにより正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月18日判決)
4億2800万円
貸主は投資運用業を営む特定目的会社であり、投資物件として本件ビルを購入したが、耐震性に問題がある等の診断が出たため、建て替えが必要だった。また、本件ビルは相当程度老朽化していた。他方で、借主はスポーツ用品の輸入販売を営む会社で、原宿竹下通り沿いで32年にわたり営業を続けていた。借主の年間売り上げは約3億5000万円だったこと、本件ビルの立地が好条件だったことは認められるものの、本件ビルでなければならない事情はないこと等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月2日判決)
6850万円
貸主は資産管理等を目的とする特定目的会社で、借主は占い業を営んでいる。借主にとって原宿竹下通りという商業用ビルの立地が好条件であるものの、移転しても占い業が廃業するとまでは認められない。本件ビルは築後約32年を経過していること、本件ビルの他の賃借人の明け渡しが相当程度進んでいること等を総合考慮の上、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
2月22日判決)
2200万円
本件テナントビルは築後約30年経過していること、テナントの状況、不動産事情の厳しさ、周辺地域からの事情からするとテナントが借主だけしか残っていない本件建物について建替えを行う一定の必要性はある。他方、借主は歯科医院を営んでいるが、本件貸室の借家権鑑定評価額である2200万円の申し入れなどを理由に正当事由を具備していると判断した。
立ち退き料
(平成23年
3月10日判決)
2億5000万円
借主は、東京駅八重洲中央口徒歩5分の本物件で10年以上にわたりサウナ浴場を営んでいた。数10名の従業員もおり、借主が本件建物を使用する必要性は相当高い。また、本件ビルの耐震強度に問題があること、借主の利用方法に形式的な違反があることは確かであるが、本物件を利用する必要性は借主の方が格段に高い。そのため、正当事由が不足しており、補完事由としての立退料の提供が必要であると判断した。
立ち退き料
(平成23年
1月25日判決)
400万円
貸主が再開発を行う必要性は認められるが、最終計画までは策定されておらず、他の建物利用者の退去も完了していない。被告は婦人用洋服店を営業して生計を立てていたため、貸主の建物利用の必要性は若干弱い。他方、貸主は著しく低額の賃料に甘んじていたこと、築後約50年が経過しており耐震性が低く倒壊の可能性が高いこと等を考慮して、立退き料の支払いによって正当事由を補完すると判断した。(なお、借主は収入に関する証拠の提出を拒んだため、適正賃料との差額1年分を営業上の損失の填補と認定している。)
立ち退き料
(平成23年
4月14日判決)
372万円
貸主の資金繰りが苦しく本件建物等を売却して借入金を返済することが急務であると顧問税理士が述べていること、金融機関からも本件建物等の売却を求められていることからすると貸主が本件建物の明け渡しを受ける必要性は高い。他方、中古自動車販売業を営む借主の業態及び土地使用状況からすると、借主が本件建物を使用する必要性はそれほど大きくない。立退料が提供されるのであれば、正当事由を補完すると判断した。
立ち退き料
(平成23年
6月23日判決)
150万円
本件建物は築39年の木造アパートで老朽化していることに加え再開発計画があるため貸主には本件建物を利用する必要性がある。他方、借主は足腰が悪く2階以上に住めないこと、満67歳で生活保護を受給していることなどからすると、貸主が利用する必要性はやや弱い。しかし、2年半以上かけて引っ越し先を多数紹介するなど誠実な対応をしたこと、他の入居者が全員退去していること、賃料30カ月分の立退料を申し出ていること等からすると、正当事由があると認められると判断した。
正当事由なし
(平成23年
1月28日判決)
貸主は3060万円の立退料を申し入れたが、建物の使用を必要とする事情を主張しなかった。他方、借主は本件建物を転貸して差額賃料を収益とする事業を行っていた。貸主は賃料が低額であると主張するが、賃料が低額の部分については賃料増額請求権を行使すれば良いことなどから、立退き料の申し入れによって正当事由が具備されることにはならないと判断した。(サブリース事案)
正当事由なし
(平成23年
2月24日判決)
貸主は本件マンションに関して再開発の目的を有していた。本件マンションは築後約30年経過しているものの、耐用年数は10年程度残っており、長期間にわたり居住の用に耐えうる。借主の妻は不眠症及び相当重い心臓病を患っており、住み慣れた本件マンションから転居するストレスによって病気が悪化する可能性も否定できない。貸主は借家権価格を大幅に超える200万円の立退き料を申し入れたと主張するが、正当事由を具備したことにはならないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
3月11日判決)
貸主及び妻は75歳と高齢で、貸主は脳梗塞後遺症により歩行困難などの既往症がある。そのような理由で長男との同居を望んでいることからすれば、貸主にとって本件土地利用の必要性がないわけではない。しかし、貸主には他にも不動産があり本件土地に住むことが唯一無二の選択ではない。他方、借主は統合失調症により近所の病院で治療を受けており、無職で障害年金を受給中で、転居等は病状に悪影響を及ぼす可能性が高い。借主が本件土地を利用する必要性は極めて高く、立退き料の提供があったとしても正当事由はないと判断した。
正当事由なし
(平成23年
6月9日判決)
貸主は本件建物について自己使用の必要性があると主張するが、貸主はテナントを管理しているにすぎず、自己使用とは評価できない。他方、借主は本件建物の5階部分を自ら使用するとともに、1階から4階部分をサブリース業者としてテナントに賃貸することで会社運営している。借主が本件建物を使用する必要性は相当大きく、正当事由があるとは認められない。(サブリース事案)
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執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください。
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=1
2012-06-05T11:00:00+09:00
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執行費用に関し、実際の事例に即した計算書をご覧ください。
執行補助者のご厚意により下記実例について、各々の執行費用を見積もってもらいました。もちろん弁護士費用は入っておりません。
以下の見積もりは皆様に予想していただくためにお願いしたものであり、実際にはこの通りでない場合もあります。
執行費用として、事前に裁判所に予納金の支払が必要ですが、下記表には基本金額として記載されております。それ以下にて記載の費用は、執行補助者費用、運搬費用、倉庫保管費用等で支払先が異なるものです。
ワンルームマンションの事例
居住用借家で広さは20平方メートル
家賃は月7万円、2年契約
入居者は25歳会社員で室内犬1匹がいる場合です。
項目
数量
単位
単価
金額
申立日
動産執行予納金
3万5000円
申立日
明渡執行予納金
6万5000円
申立日
申立印紙代、予納郵券
別途
催告日
執行補助者費用
1
名
2万円
2万円
催告日
解錠技術者費用
1
名
2万5000円
2万5000円
断行日
執行補助者費用
2
名
2万5000円
5万円
断行日
解錠技術者費用
1
名
2万5000円
2万5000円
断行日
鍵交換費用
1
箇所
1万円
1万円
断行日
執行作業員費用
5
名
2万円
10万円
断行日
執行準備・養生・材料費等諸経費
1
式
4万円
4万円
断行日
搬送用車両(2トン)
1
台
3万5000円
3万5000円
断行日
遺留物件の保管費用(1カ月)
1
式
4万5000円
4万5000円
断行日
ペット業者費用※
1
名
3万円
3万円
合計
消費税
1万9000円
税込み合計
49万9000円
※室内犬は、執行日に現場売却します。1週間くらい保管が必要と予想されます。
※廃棄処分費用は別途かかります。
営業用店舗の事例
広さ60平方メートルのマンション1階部分で魚屋を営業する店舗。
賃料は月20万円で保証金6カ月 契約期間は3年の場合。
借主は50歳の男性とします。
特別に注意するべき事項として、室内に神棚、ショーケースがあるものとして見積をお願いしました。
項目
数量
単位
単価
金額
申立日
動産執行予納金
3万5000円
申立日
明渡執行予納金
6万5000円
申立日
申立印紙代、予納郵券
別途
催告日
執行補助者費用
1
名
2万円
2万円
催告日
解錠技術者費用
1
名
2万5000円
2万5000円
断行日
執行補助者費用
2
名
2万5000円
5万円
断行日
解錠技術者費用
1
名
2万5000円
2万5000円
断行日
鍵交換費用
1
箇所
1万円
1万円
断行日
執行作業員費用
10
名
2万円
20万円
断行日
執行準備・養生・材料費等諸経費
1
式
7万円
7万円
断行日
搬送用車両(2トン)
3
台
3万5000円
10万5000円
断行日
遺留物件の保管費用
1
式
13万5000円
13万5000円
消費税
3万2000円
税込合計
77万2000円
※魚等の生鮮食品については、執行当日、現場売却となります。代理人の買受が通常です。
※神棚は、相当期間は任意保管して、しかるべき場所へ移転します。
※ショーケース等の移動できない物は現場保管となり現場での売却が通常です。
※廃棄処分費用に関しては、別途かかります。
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正当事由と立退き料の事例紹介
https://www.okamoto-law-office.com/modules/d3blog/details.php?bid=2
2012-06-05T11:00:00+09:00
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賃貸借契約の期間満了時、更新せずに契約を終了させたいと希望される方。
賃貸に出していたが自分で使いたいという事情のある方。
「正当事由」の裁判例を見てどのように判断されるのか勉強しましょう。
事例を紹介します。
その前に復習です(ホームページ「借地借家の秘訣(時系列に沿った事例紹介)」もあわせてご覧ください)。
「正当事由」とは、旧借地法、借家法上においても「自ら使用することを必要とする場合その他正当の事由ある場合」と規定があり、新借地借家法でも双方の事情を比較考量するほか、「財産上の給付」も評価の対象としております。土地所有者の事情ばかりでなく、借主の事情として投下資本の回収、借主の積極損失(移転費用、営業損失等)或いは公益、社会上の諸般の事情をも含めて総合判断するのです。
最高裁判例も従来より「立退料の提供は正当事由の有力な事情」とし、その判断要素としておりますから裁判事例をあたってみることは必要です。
1 自己使用に関する裁判例
立退き料
0
マンションに住む貸主が、家族と住むには手狭になった。借主側は、借地上の居宅を既に使用していなかった。更に借主は明け渡しの約束を何度かしていた。立退き料なしで認定した(借地)。
立退き料
200万
貸主が賃貸から10数年後転勤から戻ってアパート暮らし。
借主には転居する経済的能力あり。借主の移転先を探す仲介料や敷金、引っ越し代などの立退料で正当事由が補完されると認定した(借家)。
立退き料
750万
マンションに住む貸主は家族と住むには手狭になった。借主側は借地上の居宅を既に使用していなかった。(借地)
正当事由なし
貸主には別に居住の場あり。貸地の返還を受けて長女夫婦と同居するための新居を建てる必要ありと主張。借主は家族とともに同居していたことや店舗を営んで生計を立てていたことから正当事由はないと認定された(借地)。
正当事由なし
貸主は身体障害者の子の居宅を建築する必要があるとして立退き料300万を提供する旨申し出たが、借主は多数の家族の居住場所にしていたため正当事由を認めず(借地)。
2 自己使用が「営業目的」に関する裁判例
立退き料
6450万
新聞販売店を営んでいた貸主は、従業員宿舎のビルを建築する必要があるとして賃借人に土地の返還を申し出た。
立退料6450万円で正当事由ありと認定された(借地)。
立退き料
8億
貸主は本社社屋の建築に必要と主張。借主は20年以上パチンコ店を経営しており、明渡せば廃業となる。裁判所は、借地権価格、借主の営業利益、権利金なし等を総合考慮して立退き料の提供により正当事由を認めた(借地)。
正当事由なし
貸主は隣接地に居住。本件土地に養子を居住させて老後の面倒をみさせるため借地権買取価格での立退き料2504万円を提供する旨申し出たが、賃借人は倉庫、資材置き場として使用する必要があるとして異議申出する。正当事由の補完を認めないと認定した、(借地)。
3 居住と営業がセットになっている裁判例
立退き料等
650万
貸主は、自己の子が居住し自動車整備事業を経営するため本件土地が必要であるとし、借主に対して使用継続に異議を述べ、立退き料及び利害調整金として計650万円の提供により、明け渡しが認められた(借地)。
正当事由なし
貸主は隣接地で理髪業を経営。理髪業及び居住に手狭として明渡し要求。借主は商品の保管場所に必要として争う。
貸主は信頼関係の破壊も合わせて主張したが認められず(借地)。
4 再開発事業・有効利用・高度利用に関する裁判例
立退き料
6500万
貸主は、都市の再開発事業を手掛ける不動産業者。再開発事業を効率的に進めるため立ち退き交渉を行い、立退料の提供により、正当事由が具備されると認定された(借家)。
正当事由なし
ホームページ「借地借家の秘訣」に掲載した事例をあわせてご覧ください。
5 建物の老朽化に関する裁判例
立退き料
8億
建物が老朽化して耐震性で危険。補強にも高額の費用が要する状況にあるが、場所が銀座で、土地の高度利用、有効活用が望ましいとして高額の立退き料を補完事由として正当事由を認めた(借家)
正当事由なし
賃貸人は、現行家賃の4年以上の家賃に相当する金額の立退き料を支払うと申し出たが、老朽化については貸主のせいであるとして正当事由は認められないと認定した(借家)。
判決が面白いので説明を加える。
判決;「賃貸人は老朽化に至るまでに恒常的な修繕」などをしていない。故に、建築後30年以上を経過しているものの、建物が老朽化したとはいえず、今後数年の使用に耐えうるものと認定した。
※老朽化による裁判例には、建物の建て替えが必要であるとして、隣接ビルとの併合の事例、修繕に過大費用がかかることを理由とする事例など、立退料の提供を補完事由として正当事由が認められた事例は多数あります。