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コラム - 情報管理・不正競争カテゴリのエントリ

 このたび、当事務所は、下記のアドレスにて、営業秘密に関するホームページを開設しました。

主に弁護士費用をご確認頂くことにご利用いただけると幸いです。

http://okamoto-law-office.net/

各企業にとって情報の価値が高まる中で法的サービスを提供すべき状況が増えていると思いますので、本ホームページとともによろしくお願いします。

 

 

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一 以前紹介した経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック 〜企業価値向上に向けて」(平成28年2月8日公表)というハンドブックのうち、今回は有効な競業避止義務契約を締結するための基準を紹介したいと思います。
 
二 これまで本コラムでも紹介しております通り、従業員退職後の競業避止義務規定を定めることについては、職業選択の自由を侵害し得るため、判例上制限的に考えられております。
   具体的には、?守るべき企業の利益があるか、?従業員の地位について、?地域的な限定があるか、?競業避止義務の存続期間、?禁止される競業行為の範囲について必要な制限がかけられているか、?代償措置が講じられているか、が重要な基準になると考えられております。
   経済産業省のハンドブックにおいては、上記?〜?について裁判例がどのように判断しているかを詳細に検討しておりますので、ご紹介します。
 
三 まず、守るべき企業の利益について、経済産業省のハンドブックは、不正競争防止法上の「営業秘密」とまでいえなかったとしても、営業方法や指導方法等に係る独自のノウハウについては、企業側の利益があると判断されやすい傾向があるとされています。
   実際に当事務所が対応している案件において良くある反論として、あくまで従業員が個人的に人的関係を構築して営業活動を行っていたので会社の財産ではない、というものがあります。
もっとも、経済産業省のハンドブックは、「人的関係の構築が企業の信用や業務としてなされたものである場合には、企業側の利益があると判断されやすい」としていますし、実際に当事務所で対応している経験からしましても企業の業務の一環として構築された人的関係の場合には会社側の主張が認められ易いように感じております。
 
四 従業員の地位について、経済産業省のハンドブックは、合理的な理由なく全従業員を対象にした契約、特定の職位にある者全てを対象にしている契約は有効になりにくいとしています。
    言うまでもないことですが、使用者が守るべき利益との関係で当該従業員の具体的な業務内容が重要であるといえなければ、競業避止義務は有効になりにくいと言わざるを得ません。
 
五 地域的限定について、経済産業省のハンドブックは、「地域的限定について判断を行っている判例は少ない」とした上で、「地理的な制限がないことのみをもって競業避止義務契約の有効性が否定されている訳ではない」としています。
   もっとも、地域的制限ができるのであれば、制限をしておいた方が競業避止義務契約の有効性が認められ易くなることは言うまでもありません。
 
六 期間について、経済産業省のハンドブックは、「1年以内の期間については肯定的に捉えられている例が多い」とした上で「近年は、2年の競業避止義務期間について否定的に捉えられている判例がみられる」としています。
   当事務所が実際に相談を受けている印象としても、一般的に2年の競業避止義務を課している契約書や誓約書等が未だに多いと考えられますので、注意が必要だと考えています。
 
七 禁止行為の範囲について、経済産業省のハンドブックは、「禁止対象となる活動内容や職種を限定する場合においては、必ずしも個別具体的に禁止される業務内容や取り扱う情報を特定することまでは求められていないものと考えられる」としています。
    もっとも、一般的・抽象的にしか規定されていなければ有効性が認められない可能性が高いわけですので、実際に契約を締結する場合には注意が必要です。
 
八 代償措置について、経済産業省のハンドブックは、「代償措置と呼べるものが何も無い場合には、有効性を否定されることが多い」とした上で、「みなし代償措置」のようなものでも肯定的に判断されているとしています。
   実際に当事務所で相談を受けている事案を考えてみても、代償措置がなされていないケースが極めて多く、競業避止義務契約を締結する際には工夫が必要です。
 
九 以上の通り、有効な競業避止義務契約を締結するために必要な考え方を紹介しましたが、実際にどのような契約を行えば良いかどうかについては非常に微妙な判断が必要になりますので、是非一度ご相談ください。

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一 以前紹介した経済産業省の「秘密情報の保護ハンドブック 〜企業価値向上に向けて」というハンドブックのうち、今回は従業員に向けた具体的な情報漏洩対策を紹介したいと思います。
 
二 従業員に向けた具体的な対策として一般的によく挙げられるのが、秘密情報を閲覧・利用することができるアクセス権者の範囲を適切に設定し、アクセス制限を行うことです。
   このことは、不正競争防止法上の「営業秘密」に該当するかどうかを判断する際の基準としてもよく挙げられる基準であり、非常に重要と考えられています。
   具体的には、書類等については施錠された書庫等に分離して保存した上で入退室を管理することが重要ですし、電子データについてはアクセス権を有する者のIDのみからアクセスできるようにすることが重要です。
   経済産業省のハンドブックでは、小規模企業でも行える施策として?ペーパーレス化や?電子化された秘密情報のうち、印刷できるデータの内容を限定すること等も挙げられています。
 
三 秘密情報の持ち出しを困難にさせる施策も重要とされています。
具体的には、秘密情報が記載された会議資料等に通し番号を付けて出席者と関連付けして把握した上で会議が終了した際に全て回収して管理すること、従業員の私物USBメモリなどの持ち込みを禁止すること等です。
   また、実際に当事務所が扱っている事件においては、刑事告訴した際に、警察などから「社内のパソコンについてUSBメモリ等の外部記録媒体への書き込みができない設定にしているか」という点を問題にされることも少なくありません。
   そこまでの対応は大企業でなければ難しい場合が少なくないと思いますが、せめて電子データを暗号化するなど可能な限り従業員が秘密情報を持ち出せないようにする施策を講じる工夫が必要です。
 
四 仮に秘密情報の漏洩を行ったとしてもすぐに見つかってしまう状況になっているということを従業員に認識させることも重要とされています。心理的効果によって、故意による秘密情報の漏洩を防止できるからです。
具体的には、秘密情報が保管されている書庫や区域に「関係者以外立ち入り禁止」という掲示を行ったり防犯カメラを設置したりすること、情報システムにおけるログの記録や保存を行っていることを周知すること等です。
これらの対策は、実際に秘密情報の漏洩が発覚した後に証拠にもなり得ますので是非とも実施されることをお勧めします。
 
五 さらに、不正な行為を行った従業員に言い逃れをされないようにすることも重要です。
具体的には、可能な限り多くの従業員が参加している会議や朝礼などにおいて、何が秘密情報であり、どのようなルールになっているかを確認するなどして、従業員に秘密情報の取り扱いルールを周知したり、秘密保持誓約書等を締結したりすることが重要とされています。
   当事務所が扱っている案件においては、専門家による研修を行ったり、従業員の理解度を確認するためのテストを行ったりすることによって、言い逃れされないようにしている会社が見受けられます。
 
六 以上のような対策の他にも経済産業省のハンドブックには様々な対策が具体的に記載されていますし、従業員に向けた対策の他にも退職者、取引先、外部者に向けた対策を取ることも必要です。
   情報漏洩の具体的な対策を検討している方は気軽に当事務所にご相談いただければ幸いです。
 

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一 当事務所で秘密情報の漏洩に関する相談が増加しており、様々な案件に対応していることはこれまでも本コラムで記載してきたとおりですが、経済産業省は平成28年2月8日付けで「秘密情報の保護ハンドブック 〜企業価値向上に向けて」というハンドブックを公表しました。
   「大企業の約40%、企業全体の15%弱が、『自社の営業秘密の漏えいがあった若しくはそのおそれがあった』と回答」(平成26年経済産業省調査)しているにもかかわらず、「営業秘密の漏えい防止策について、企業全体の約35%、中小企業の約40%が『取り組んでいない』と回答」(平成26年帝国データバンク調査)しているとのことですから、このような現状を見るとまだまだ秘密情報の漏洩は続くものと判断せざるを得ません。
経済産業省としても上記ハンドブックを公表して秘密情報管理に関する啓蒙活動を行わずにはいられないということなのだろうと思われます。
 
二 秘密情報を管理することの重要性は改めてお伝えする必要がないかもしれませんが、一番大きいと思われるのは、競争力を失うことです。
   いうまでもなく、競合他社に対して秘密情報が漏洩すれば競争力を失い、競合他社に顧客を奪われてしまう可能性が強いでしょう。
   また、秘密情報を漏洩させてしまったという事実自体が、企業の社会的信用を低下させることにもつながりません。
   そればかりか、秘密情報が顧客情報の場合には、顧客情報を漏洩したことにより、顧客から訴えられる可能性も出てくるのです。
   このように、秘密情報の漏洩は企業にとって致命的な事態を及ぼしかねません。
 
三 経済産業省のハンドブックには、概ね、?秘密情報を決定する際の考え方、?漏洩対策の具体例、?秘密情報管理にあたっての社内体制、?紛争への備え、?漏洩事案への対応方法などが事細かに記載されております。
   また、当該ハンドブックには、?秘密情報管理に関する就業規則例、?情報管理規程例、?秘密保持誓約書例、?秘密保持契約書例なども細かく記載されており、実務にも大変役立つ内容になっています。
   もっとも、当該ハンドブックは100ページを大幅に超える大作であり、法律的な裏付けに基づいて記載されておりますので、軽く読んですぐに全てを理解できるというものでもありません。
   そこで、本コラムでは、数回にわたり、当該ハンドブックの内容を簡潔に紹介したいと思っております。
 秘密情報の管理に向けて社内規程の整備を検討されていたり、漏洩事案への対応を検討されたりしている場合には、当事務所にご相談いただければ幸いです。
   

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一  当コラムで何度もご紹介している通り、裁判で不正競争防止法の「営業秘密」に該当すると認めてもらうことはそれほど容易なことではありません。経済産業省のガイドラインを見て、諦めてしまっている会社も少なくないと思います。
     しかし、仮に不正競争防止法の「営業秘密」に該当しなくても、損害賠償請求が認められないというわけではありません。
    本コラムでは、当事務所で扱った事例で損害賠償請求が認められた案件をご紹介いたします。
 
二 その訴訟は、元従業員が競業会社と共謀して会社の顧客を奪い取ったという事例です。
(一)    具体的には、元従業員は、退職直前に会社の顧客情報等を大量にコピーしていました。元従業員は、退職直後に競業会社に顧客情報等を持ち込み、顧客に対して、今までの取引条件よりも安く契約するので競業会社と取引してほしいと働きかけたという事例です。
       元従業員が顧客情報等を持ち出したとはいえ、当該会社の顧客情報等は厳格に管理されておらず、不正競争防止法上の「営業秘密」には該当しませんでした。
      そのため、元従業員の行為が違法であると立証するのはそれほど容易ではありませんでした。
 
(二)    そこで、当事務所では、弁護士が、会社の担当者と共に協力的な顧客を一つ一つ訪問し、元従業員から契約変更を働きかけられた際の話を聞かせて頂くとともに陳述書を作成して頂くことで、元従業員の悪質な行為を立証することにしました。協力して下さるということであれば地方の顧客にも訪問しました。
当事務所が費やした時間は相当なものでありましたが、当該陳述書等が功を奏し、訴訟では、第一回口頭弁論期日から裁判官が当方に極めて好意的な意見を述べるという状態を作り出すことができました。
訴訟では一旦出来上がった流れが突然大きく変わるということはそれほど多くありませんので、その後も、当方に有利な流れで訴訟は進行し、証人尋問になりました。
反対尋問では、元従業員も最初は言い逃れをしていましたが、最終的には当方の追及に耐え切れず、在職中から会社の情報を利用して顧客を奪う準備をしていたこと等を認めるに至りました。
      当方が勝訴を確信した瞬間です。
 (三)    当事件では、元従業員が数多くの顧客に働きかけていましたが、大部分の顧客は
   取引を変更しなかったため、会社の実損害はそれほど多くない事例でした。
      そのため、逸失利益(本来であれば得られたであろう利益)が争点となりましたが、
   結論としては逸失利益も認められました。
             当方が勝訴となる判決文を作成済みであることは裁判官が明言していましたが、元
      従業員が高額の解決金を支払うことを約束したことや元従業員との関係性などを考慮
        して、最終的には当方の勝訴的和解で決したという事例です。
 
三  このように、仮に経済産業省のガイドラインなどをチェックしてみて、「営業秘密」とは認められなさそうだな、と思ったとしてもすぐに諦める必要性はありません。
     元従業員や競業会社が自由競争の範囲を逸脱するような悪質な行為をしていれば損害賠償請求が認められる可能性は十分あります。
     まずは当事務所にご相談いただければ幸いです。
                                               

 

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一 (元)従業員らに営業秘密を持ち出された場合の法律相談としてはいくつかバリエーションがありますが、刑事告訴を要望される経営者の方が多いことも事実です。従業員に裏切られるわけですから、当然といえば当然の反応といえるでしょう。
   もっとも、一般の方が警察署に行って不正競争防止法に基づく刑事告訴をしようとしても容易でないことも事実です。
 
二 そのような中、平成27年1月28日付けで、経済産業省から営業秘密管理指針の全部改訂(以下「全部改訂版」といいます)が公表され、従前の解釈がだいぶ緩やかになりました。会社にとってみれば、喜ばしい改訂であると考えられます。
   全部改訂版によれば、「改訂に当たっては、『知的財産推進計画2014』(平成26年7月知的財産戦略本部決定)で、『一部の裁判例等において秘密管理性の認定が厳しいとの指摘や認定の予見可能性を高めるべきとの指摘があることも視野に入れつつ、営業秘密管理指針において、法的に営業秘密として認められるための管理方法について、事業者にとってより分かりやすい記載とするよう改める』と記載されたことを踏まえ」とされ、「秘密管理性要件については、企業が、ある情報について、相当高度な秘密管理を網羅的に行った場合にはじめて法的保護が与えられるべきものであると考えることは、次の理由により、適切ではない」と記載されております。
    「次の理由」の中には、「営業秘密が競争力の源泉となる企業、特に中小企業が増加しているが、これらの企業に対して、『鉄壁の』秘密管理を求めることは現実的ではない。仮にそれを求めることになれば、結局のところ、法による保護対象から外れてしまうことが想定され、イノベーションを阻害しかねないこと」という記載もなされていますから、全部改訂版は従前の営業秘密管理指針に比べてかなり踏み込んだ内容になっていると考えることが可能です。
 
三 このような影響もあるのでしょうか。「営業秘密」に関する刑事事件としては、本年に入ってから、既に複数の事件がマスメディアに取り上げられています。
   例えば、本年1月14日付け各紙によれば、大阪府警は、家電量販大手エディオンの「販促スケジュール案」などのデータを不正取得したという疑いで、エディオンから転職した上新電機の元部長を不正競争防止法違反容疑で逮捕したとのことです。さらに、2月4日付け各紙によれば、同容疑者の元部下についても逮捕したとの報道もなされています(以下「エディオン事件」といいます)。
   報道によれば、エディオン事件においては、職場に共用パソコンが存在していたこと、遠隔操作ソフトのインストールが可能であったこと、退職後90日間にわたり退職者のID及びパスワードが依然として有効なままであったことなど「秘密管理性」を否定する方向に推認し得る事実がいくつか存在するようですが、大阪府警は「営業秘密」として認められるという判断をしているようです。
   また、本年2月14日付け各紙によれば、神奈川県警は、日産自動車に在職中、日産本社のサーバーにアクセスし、モーターショーでの車の配置や照明の当て方などに関するデータ8件を自分のUSBメモリーなどに複製して不正に持ち出したという疑いで、日産自動車の元社員を逮捕したとの報道もなされています。
 
四 今後は、全部改訂版に従った「営業秘密」の管理をしておくことによって、従前と比較して、刑事処罰による従業員に対する抑止を行い易くなり得ると考えられます。
   そのために重要なことの第一は、各会社の実情に合わせて規則等を定めることです。
また、万が一、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合には、会社の実情に応じて当該データ等が「営業秘密」に該当するかどうかを法的に検討する必要があります。
   当事務所では、営業秘密管理指針に適合する規則等を整備するばかりでなく、(元)従業員にデータ等を持ち出されてしまった場合、不正競争防止法上の規定に加え、各種刑罰法規に該当しないかどうかを様々な角度から検討し、刑事告訴等を行っております。
一度ご相談くだされば幸いです。
                                                                                                                                                                      

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1 会社の利益と職業選択の自由のせめぎあい
(1)    安倍政権が安定し、今後の政治課題として雇用改革が論点の一つになってくると考えられています。終身雇用制が崩れ、雇用が流動化していくことになるのでしょうか。
      会社としては「問題社員」に辞めてもらいやすくなることは好ましいでしょうが、優秀な社員まで退社してしまうのは考え物でしょう。優秀な社員であればあるほど退社後は今までのキャリアを生かして同じ業種で一旗あげたいと考えるはずです。
      今後、退職後の競業避止義務特約を締結するかどうか十分な検討を必要とする例が増えてくると思われます。
 
(2)    もっとも、みなさんご存知の通り、退職後の社員には職業選択の自由があります。職業選択の自由は憲法に規定されている人権です。
     そのため、会社と元社員が退職後の競業避止義務特約を締結したとしても簡単に有効になるわけではありません。
 
2 裁判例の考え方
(1)    不正競争防止法で規定されている範囲内のことを定めたにすぎない場合(例えば「営業秘密」の持ち出し)の特約は原則として有効になると考えられます。(不正競争防止法の具体例については以前より当コラムで紹介しておりますので、ちらをご覧ください)
      問題は、不正競争防止法で定める範囲を超えて新たに競業避止義務を作り出してしまったような場合です。
      このような場合、裁判例の考え方からすれば、使用者の確保しようとする利益と労働者が受ける不利益とを比較して、制限の範囲が合理的だと判断される限度でしか有効だと認められません。
      具体的には、退職前の地位と役職(地位が高いか)、競業行為の態様(地位を利用しているか)、競業が禁止される職種・業種の範囲、期間、地域が限定されているか、代償措置の有無などを基準にして判断されることになります。
 
(2)    会社の方に、期間や地域が限定されている必要があります、というお話をすると、では何年なら良いのか、と聞かれることがあります。
       しかし、競業避止義務を退職後2年に限定している例について、長いと判断した裁判例も短いと判断した裁判例もあります。
       もちろん、短ければ短いほど特約の有効性は高まりやすくなることになりますが、裁判例はそれだけで判断しているわけではないということです。
 
(3)    退職後の競業避止義務を有効と判断した主な裁判例を挙げると次の通りです。
          東京地裁平成19年4月24日判決(ヤマダ電機事件)は、元従業員が全社的な営 業方針、経営戦略等を知ることができる地位にいたことなどを重視していると一般的に考えられています(期間は1年間)。
東京地裁平成16年9月22日決定(ト―レラザールコミュニケーションズ事件)は、代表者に次ぐ高額給与を支給されていたことや会社のノウハウが利用されてしまえば価格競争を展開することで取引を奪うことが容易であることなどを判示しています(期間は2年間)。
東京地裁平成14年8月30日判決(ダイオーズサービシーズ事件)は、市場支配するためには相応の費用を要することなどを判示しています(退職後の秘密保持義務を前提として、期間は2年間、区域は隣接都道府県、職種はマット・モップレンタル類のレンタル事業、態様は顧客収奪行為に限定)。
東京高裁平成12年7月12日判決(関東ライティング事件)は、長時間経費をかけて営業して始めて利益を得られる業態であることなどを判断の要素としています(期間は6ヶ月、対象は得意先に限定)。
 
(4)    以上の裁判例からわかることは、裁判所は決して2年間なら無効だが1年間なら有効というように画一的に判断しているわけではなく、会社が当該競業避止義務特約を必要とする理由と元従業員の不利益を比較考量して判断しているということです。
 
3 会社の対策
(1)  会社の対策で重要なこととして、まずは、退社時に有効な競業避止義務特約にするよう努力することです。
      何も考えず単に競業避止義務を負わせたとしても無効になることは火を見るよりも明らかです。
      後で使えるものにするためにも実態に合わせて作成する必要があります。
 
(2)    仮に裁判をせざるを得ないような事情になったときは、当該競業避止義務特約が必要な理由をしっかりと立証していくことです。2年で短いから有効です、などという主張だけしていてもあまり意味がないと思います。
      特約の必要性と比較して元従業員の不利益がそれほど大したものではないと立証できるかどうかがポイントです。
 
(今回の記事は岡本直也弁護士が担当しております。)

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1 貴社の就業規則規定は無効の可能性があります。
 
(1) これまで、当コラムにおいて、元従業員に営業秘密を持ち出された場合の対処法を書きました。営業秘密において「秘密管理性」の要件を満たすことがいかに重要なのか分かって頂けたと思います。
    今回は、裁判例上の「秘密管理性」の基準を満たすほどしっかりと営業秘密を管理していなかったけれども、“元従業員が競業会社を設立してけしからん!”という場合の対処法について書いてみたいと思います。
 
(2) 皆さんの中には、“我が社は就業規則で退職後の競業避止義務を定めているから大丈夫”と思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
    しかし、退職後においては、職業選択の自由が認められています。そのため、裁判例においては、競業制限の期間、場所的範囲、制限対象となっている職種の範囲、代償措置の有無などから見て不合理な場合には、競業避止規定が無効になると判断されています。
    実際、裁判例の基準に当てはめると、極めて多くの会社の競業避止義務規定が無効になると考えられています。
    当然ですが、競業避止義務規定が無効ということになれば、退職後の競業を禁止していても完全に砂上の楼閣です。
    貴社の就業規則規定が有効であると言い切れるでしょうか。
 
2 競業会社の設立が違法になるのはどのような場合か?
 
仮に貴社の競業避止義務規定が無効だったとしても、それだけで気落ちする必要は   ありません。
裁判例上、「自由競争を逸脱した違法な行為」であることが認められれば、元従業員の行為を違法と認定することができるからです。
では、「自由競争を逸脱した違法な行為」とは、どのようなことをいうのでしょうか。
実は、この点については、裁判例上も明確な基準があるわけではありません。そのため、詳しくは当事務所まで問い合わせて頂きたいのですが、次のような例を挙げることができます。
例えば、元従業員がA社在職中から新会社の設立を企図し、突然にしかも一斉にA社を退職して新会社を設立し、A社の得意先に対してA社と同一または類似の商品を販売開始した場合です(東京地判昭和511222日)。
また、元従業員が顧客に対して、新会社が事業を承継したかのような誤解を生ぜしめる通告をした場合にも、営業妨害行為として違法であると判断されました(横浜地判昭和591029日)。
 
3 勝訴するために重要なことは何か。
 
(1) 元従業員が競業会社を設立した場合に損害賠償を請求したいと考えるのであれば、最も重要なことは競業避止義務規定を有効なものに変更することです。
競業避止義務規定が有効の場合、元従業員に対して損害賠償請求をするばかりか、元従業員の競業行為を差し止めることまで認めた裁判例も存在します(大阪地判平成31015日)。
当事務所にご相談に来て頂ければ、貴社営業の実情がどのようになっているのかを十分に把握した上で、有効な競業避止義務規定をご提案致します。決して貴社の実情を無視して、法律上の建前を無闇に押しつけるようなことは致しません。
 
(2) 仮に競業避止義務規定が無効のまま元従業員が競業会社を設立してしまった場合、元従業員の行為態様がどのようなものなのか十分に検討する必要があります。
    先述したような営業妨害行為があれば、元従業員の行為が違法であると認められる可能性が高まります。
    また、そもそも貴社在職中に顧客に対して新会社と取引を行うよう勧誘していたような場合には、違法行為であると認められる可能性が高くなります(東京地判平成21714日)。
    そればかりか、元従業員が貴社に対する信用毀損行為をしていれば、不正競争防止法上の違法行為になる可能性もあります。実際、当事務所では、信用毀損行為を行っていた元従業員に対して損害賠償請求訴訟を提起し、勝訴しています。
    元従業員に対する訴訟を提起したい場合、証拠からどのような認定ができるのかを緻密に分析した上で、就業規則上の競業避止義務規定に捉われず、広い視野で元従業員の行為が違法ではないかを検討する必要があります。
元従業員の競業行為に悩まされている経営者の皆様、是非一度、当事務所にご相談にいらっしゃってください。
                    (今回の記事は岡本直也弁護士が担当しております。)
 
 

 

 

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1 「秘密管理性」が争われた場合、約7割が負けてしまう?
 
(1) 前回“退職した元従業員に営業秘密(企業秘密)を持ち出されたら?”というコラムを書きました。今回は主に顧客情報(顧客名簿、顧客カード、顧客データ等)が持ち出された場合を例に、訴訟でポイントとなる部分を前回よりも詳しく書きたいと思います。
     元従業員に顧客情報等の営業秘密を持ち出された場合、経営者の方の多くが激怒されているであろうことは容易に想像できるところです。既に顧客を奪い取られたとなれば絶対に許すわけにはいかないと感じるでしょう。社内秩序に影響するばかりか、持ち出された顧客情報を利用して更なる顧客奪取行為が行われる可能性もあるのですから当然のことです。
    そのため、経営者の方は早く勝訴したいと望むはずです。「顧客情報を持ち出されたのは明らかなのだから、早く訴訟提起を行えば勝訴は確実」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。
 
(2) しかし、前回も申し上げた通り、“顧客情報等の持ち出し行為が不正競争に該当しない”と判断されてしまった事例は枚挙に暇がありません。
   特に、顧客情報等が「秘密管理」されておらず、不正競争防止法上の営業秘密に該当しないと判断されている例が多いようです。
   経済産業省が作成している「営業秘密管理指針(改訂版)」によれば、平成221月末時点までの間に「秘密管理」されているかどうかが争点となった81件の裁判例のうち、「秘密管理」されていると認定されたものは、たったの23件しかないそうです。
   即ち、元従業員に顧客情報等を持ち出されたから訴訟提起したにもかかわらず、「秘密管理性」が否定されてしまった裁判例は約7割強にも及ぶということです。
   「秘密管理性」が否定されれば、営業秘密としても認められないことになります。そのため、「秘密管理性」が争われた場合、約7割強は営業秘密に関する論点で負けてしまうことになります(実際はその他の論点も争っているでしょうし、工夫して争うことは可能ですから全面的に敗訴したかどうかまでは不明です)。
 
2 「秘密管理性」とは何か?
 
(1) それでは、「秘密管理性」とはどのようなものなのでしょうか。
    「営業秘密管理指針(改訂版)」では、裁判例において、「?情報の秘密保持のために必要な管理をしていること(アクセス制限の存在)?アクセスした者にそれが秘密であることが認識できるようにされていること(客観的認識可能性の存在)」が重視されていると指摘されています。
    分かりやすく言い換えますと、?情報にアクセスできる従業員が制限されており、?秘密情報であることを従業員が認識できるようなシステムになっているかどうかがポイントになります。
    「営業秘密管理指針」では、それ以外にも「営業秘密の管理のために実施することが望ましい秘密管理方法」を具体的に列挙しています。
    経済産業省では、「営業秘密管理チェックシート」も公開していますので、御社の営業秘密管理体制がどれくらいしっかりしたものになっているのかについて是非チェックして頂きたいと思います。
 
(2) 営業秘密管理体制を構築するための制度として、「ISMS適合性評価制度」或いは個人情報に関する「プライバシーマーク制度」があります。これらの制度はコンプライアンス体制の整備という意味でも重要なので一考の価値はありますが、経済面でも時間面でもコストが高くなります。
そのため、あらゆる企業が利用するというわけにはいかないでしょう。コストを低く抑えたい場合、まずは「営業秘密管理指針」や「営業秘密管理チェックシート」に従って営業秘密管理体制を構築する準備が必要です。
 
  
3 勝訴するための戦略を立てる必要があります
 
訴訟において「秘密管理性」が争われた場合、約7割が負けてしまっているというデータを重視して頂きたいと思います。
元従業員に顧客情報等を持ち出されたにもかかわらず負けてしまうなどということは法律の専門家でない経営者の方々には到底理解できないかもしれません。しかし、実際に負けてからでは“あとの祭り”です。
もっとも、「営業秘密管理指針」に挙げられている項目の全てを満たしている会社ばかりではありません。むしろこれらの項目を満たしていない会社の方が圧倒的に多いでしょう。これらの項目を全て満たしていないから勝訴できないというのでは、殆どの会社が営業秘密を持ち逃げされてしまうということになりかねません。
 そうならないために重要なのは、普段から着実に営業秘密管理体制を構築し、訴訟提起する場合には的確な証拠を提出して裁判所に理解してもらう戦略を立てることです。
  怒りにまかせて拙速な訴訟提起をしてしまうようなことがないよう、しっかりと分析して戦略を立てることが必要です。
営業秘密に関する訴訟を提起したいと考えていらっしゃる経営者の皆様、訴訟を提起する前に是非一度、当事務所にご相談にいらっしゃってください。
 
       (今回の記事は岡本直也弁護士が担当しております。)

 

 

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1 当事務所が勝訴を得た裁判例
 
  今回は“退職した会社の営業秘密を利用して不正競争を行った元従業員に対して損害賠償請求した”事案について紹介したいと思います。
  本件は既に第1審判決(平成23年11月8日東京地判)及び控訴審判決(平成24年7月4日地財高判)が言い渡されており、いずれも当事務所が勝訴を得ております。控訴審では、当事務所の行った附帯控訴によって、第1審判決よりも高額の認容額となりました。
第1審判決は従前の裁判例でなされていなかった重要な判断を下しており、裁判所のホームページにも掲載されております(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20111212185454.pdf)。
(なお、脱稿後、控訴審判決も裁判所のホームページ及び知財高裁のホームページに掲載されました。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120713165008.pdf
当事務所のホームページと合わせて裁判所のホームページもご覧頂ければ幸いです。
 
2 営業秘密を持ち出された場合の対処法
 
   企業が管理している技術・ノウハウ・情報の中には、外部には決して見せることのできない門外不出のものも少なくありません。これら営業秘密は、各企業が長年にわたり築き上げた財産であるとともに、企業活動を行う前提となっており、ライバル企業や新参企業にとっては喉から手が出るほど欲しいものです。
   そのため、元従業員が退職する際に持ちだした営業秘密を使って新しい会社を設立したり、営業秘密を“手土産”にライバル企業に転職したりすることさえあるようです。
   そのような場合、営業秘密を持ち出された企業が最初に検討するべきは刑事告訴の可否でしょう。営業秘密を持ち出した態様によっては10年以下の懲役に処せられる可能性もあります。
   また、当然のことながら、損害賠償請求訴訟を提起することもできます。販売の差止請求や謝罪広告の掲載を求めることもできます。
   もっとも、裁判において営業秘密と認められる範囲はそれほど広くありません。企業が営業秘密と考えているものであっても、?秘密管理性?有用性?非公知性の各要件が認められなければ営業秘密として認められず、不正競争防止法上保護の対象にすらなり得ません。
   単純に訴えれば勝てるというようなものではありません。
 
3 営業秘密と認定されるための証拠収集・整理
 
   本件訴訟においては、“業務で知り合った顧客の情報は会社と従業員のどちらに帰属するか”“顧客情報は秘密に管理されているか”“元従業員が顧客に対して虚偽事実を告知したか”など多様な論点が争点になりました。
   訴訟の初期段階において、会社担当者の方が、“当社はしっかり秘密として管理しているのだから営業秘密として認められて当然”と仰っていたのが印象的です。しかし、会社の方からすれば「当然」のことであっても、裁判所から見て「当然」というわけではありません。訴訟において重視されるポイントごとに的確な証拠を提出しなければ、勝訴することはできません。
   私は直接会社に行き、本件に関係がありそうなあらゆる書類を倉庫の中から出してきてもらいました。段ボール箱何箱あったかまでは覚えていませんが、あまりに大量の資料であったため、会社の打ち合わせ室を一部屋借りて膨大な時間をかけて整理しました。法律専門家ではない会社担当者の方では、どれが訴訟で必要とされる資料なのか区別するのは難しかっただろうと思います。
本件では資料を的確に整理して証拠として提出することができたため、“従業員が自己の所有する携帯電話や記憶に残したものも含めて顧客情報は会社に帰属する”と判断されるなど当方の主張がほぼ全て認容されました。
 
4 小結
 
   従業員が営業秘密を持ち出す行為は企業の根幹を揺るがしかねない問題であり到底許されるべきではありません。しかし、証拠を的確に使用しなければ、勝訴できるものも勝訴できなくなってしまいます。
   資料があるのに有効な使用方法が分からないということであれば、専門家によるアドバイスを受ける必要があるでしょう。
   また、“資料が残っていないため営業秘密としてすら認められなかった”ということがないように平常時より記録を残しておく必要もあります。
   当事務所では、平常時の営業秘密管理を始めとして、刑事告訴や訴訟提起を行う場合の的確な法的支援を行っております。
この機会に御社の「営業秘密管理システム」について、法的側面から見直されることをお勧め致します。
(今回の記事は岡本直也弁護士が担当しております。
   記事の中でもご紹介したとおり、私自ら会社に出向き会社の倉庫に保管されていた膨大な資料を整理しました。法的側面より「営業秘密管理システム」の構築に向けた支援を行っておりますので、ご相談がございましたら、ご一報ください。)
 
  
    

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