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労働紛争の様変わり

カテゴリ : 
労働事件

 

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1 過去の労使紛争
 
  新しい年を迎えたことでもあり、労使紛争を通して将来を考えてみましょう。
私は、労使紛争には社会の鏡の側面があると何時も考えています。
私が労働組合の労働者側の支援者として労使紛争に参加していた時代と、現在の労使関係は全く様相を異にしています。
私が経験した1960年の半ばから1970年代の前半は、まだまだ社会的に不安定な時代でした。その時代の労使紛争は、都心の一等地であっても、いわゆる暴力団の介入もあり、ピケ破りや集会破壊のための殴り込みも頻発し、労働者が自分の権利を守るためには実力が伴う時代でありました。
昔話をさせていただくなら、神田で行なわれた書籍販売会社の労働組合集会に対する暴力団の殴り込みを阻止するべく、文字通りボディガードのように体を張って守った経験や、或いは社長の自宅にデモを組織したこともあります。デモの時は機動隊に阻止され、雨の中での乱闘になり、この予想外の展開には驚き、警察の対応に怒りを覚えたものです。当時は体を張って労働者の立場にたつことに何の躊躇もありませんでした。つまりそのように明白な対立構造を示す時代だったのです。
 
2 現在の労使紛争
 
  現在は随分様相を異にしています。
労働者とはいえ、実力で自己の要求を伝えることにも合理的に制限があると認識されるようになり、それなりの法整備もなされてきました。これまで述べてきた労働法制や、或いは労働者の主張を経営者側で吸い上げる仕組み作りもなされ、法的に限界を超えると判断される実力行使が非民主主義的な行動として考えられ、しかもそれが受け入れられる時代になったと言えます。
昨年5月、生コンクリート製造会社の工場に押し掛けた労働組合の幹部ら12名が威力業務妨害容疑で逮捕されたという記事を記憶されている方もおられると思います。この事例は工場の出荷妨害になった行為が威力業務妨害にあたるというものであり、また会社や元社長の自宅に対する街頭宣伝活動そのものが差止めされた東京高等裁判所判決も存在します(平成17629日東京高等裁判所街頭宣伝活動禁止等請求控訴事件)。これらの事例が違和感のない時代になっているということは過去の労働組合活動からは想像もできないことです。
 
3 これからの労使紛争
 
世界は狭くなりました。
ギリシャの経済危機が欧州債務危機となって瞬時に我が国の経済に影響を及ぼす時代になりました。円高はまだ続くのでしょうか?
昨年は日本の負債が900兆円を超えていると幾度も報道されました。皆さん気づかれないでしょうが、格差社会が進行を始めたと考えられる兆候は我が事務所の事件からでも見通すことができます。
そもそも紛争解決手段として、昔経験した実力による労使紛争が物理的に合理的なものでないことは明白です。これらが、人を大切にする民主主義の理念に反することは争いようがありません。逮捕という上品な(?)結末以上に、怪我をすることくらい止むを得ないものとする当時の労働組合活動に何のメリットがあるのでしょうか。
精神的には勿論、物理的に人を犠牲にすることには何の合理性もありません。こんな不経済なシステムが最悪な社会であることは明らかであり、このような時代の再来は決して見たくありません。
私は危惧します。
我が国が金融恐慌になっても今までの民主主義のルールがこれまでどおりに通用するのであろうかと・・。格差社会がどんどん進行しても法による規制が民主主義の原理として認識され続けるのであろうかと・・。
若かりし私が経験した二つの立場が決定的に対立していた時代が再来することを危惧せざるをえません。当時の社会状況が再度到来しない保証はないからです。
 
4 本来の労使紛争
 
経営者と労働者という二つの立場は、現在の法律上当然に予期されるべき立場であり、どちらの立場においても守られるべき立場、即ち我々法律の職人からするなら、それぞれに守られるべき権利があるのです。それらの権利は当然に保障され、つまり我々弁護士の職業上の課題となるのです。労使紛争においても民主主義としての一つの形が示され、現在機能していると判断できるからです。
学問用語ではこれを法治主義と言いますが、私はこの言葉があまり好きではないと本コラムでも書きました。法治主義は、自由競争という市場経済主義により生じる人の欲望に対する後追い規制政策にすぎないからです。
 
5 課題
 
現在を生きる我々の課題は、この二つの立場が全く融通性なく、非妥協に、対立する時代が来るということだけは避けなければならず、その工夫が必要だということです。

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